同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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『ハワイアンズ旅行編』

第五八七話『常夏招待状──突然のハワイアンズ行き!』

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 目を覚ました瞬間、俺──真壁弘弥は、天井を見つめながらしばらく呼吸を整えていた。

「……うん、夢精してない」

 それを確認してからようやく起き上がる。すでに朝の習慣である。

 部屋のドアが突然開き、妹系ヒロインである真壁碧純(まかべ あおすみ)が頭にタオルを乗せて乱入してきた。

「兄、そろそろ起き──って、また自己点検してるでしょ!? 朝から変態!」

「違うんだ、これはもう義務なんだよ」

「義務なら堂々とやるな!」

 怒られた。が、すでに慣れている。俺の青春には羞恥が常備されているのだ。

 そんな俺に、碧純が封筒をひとつ手渡してきた。

「ほら、ポストに来てた。なんかお堅そうな封筒だけど……また税金の通知とかじゃないよね?」

「いや、たぶん違う。これは……」

 封筒の表には「出版記念特別賞 真壁弘弥様」と書かれていた。出版社のロゴ、編集部印──間違いない。俺の作品『君と、納豆と、発酵と。』が純文学賞を受賞したことに伴うご褒美だ。

「“スパリゾートハワイアンズ ご招待券……5泊6日”……!?」

「なっ……兄、それ、ひとりで行こうとしてたの!? ずるい!!」

 碧純の怒声が廊下に響き、その振動で他のヒロインたちが、部屋のあちこちからぞろぞろと現れる。

「何よ何よ、今の悲鳴。まさかまた夢精でもした?」

「兄さん、今日は何の発酵テーマですか?」

「弘弥くん……どこか行くんですか? それは、単独で?」

「先生、まさか……常夏でひとりハーレムとか、考えてませんわよね?」

 それぞれ、白神ルナ、水無瀬すみれ、一ノ瀬ひより、ミレーヌ・ヴァランシエヌ。

 おい、なぜこの家は朝からハーレム会議が始まるのか。

「違う違う違う!! これは、出版社からのご褒美で、俺もさっき知ったんだって! で、俺ひとりじゃもったいないし……」

「そうだよね? だから、連れてってくれるんだよね?」

「行くしかないっしょ! ハワイアンズってさ、すごいんだよ!? スライダー、ビーチ風プール、夜のフラダンスショー!」

「南国風リゾートに、温泉、足湯……ふふ、文化と癒しの融合……素敵」

「気温、湿度、発汗率……青春反応値の上昇が予測される」

「……わたくし、今すぐ水着を買いに行く準備しますの」

 話が早すぎる。

「みんな、まだ誰も“一緒に行く”って言ってないんだけどな……」

 弘弥がそう呟いたときには、すでにヒロイン全員がスマホを取り出し、予定調整・荷造りモードに突入していた。

 三日後。

「というわけで、スパリゾート・ハワイアンズに到着しましたー!!」

 白神ルナがテンション全開で叫ぶ横で、俺は日焼け止めと胃薬を同時に取り出していた。

「……すでに胃が痛い」

 車移動中も、機内風の車内での「水着プレゼン大会」により胃酸過多で死にかけた。

「兄、旅先だからって油断しないでね。夜も、ぜったいに夢精させないから」

「すでにフラグが立ってるぅぅ!!」

 ヒロインズはみんな南国仕様のファッションで目のやり場がない。

 水無瀬すみれは白のロングワンピースで肩を露出させ、ひよりはフードつきのパーカー水着、ミレーヌは謎に布面積の少ないサラサラドレス。そして碧純は、見慣れたようで見慣れない、“お姉ちゃん風”日焼け対策の長袖シャツ姿。

「えっと……とりあえず部屋にチェックインしようか」

 宿泊施設は、出版社の粋な計らいでファミリー向けのコテージタイプ。まさかの“全室大浴場付き”。

「先生と一緒の浴室ですの……?」とミレーヌが聞いた瞬間、全員が「まさか交代制!?」「混浴は!?」「カーテンある!?」と混乱。

 今日も、平和な日常が全力で破壊されようとしている。

 その夜。

 ベッドで横になりながら、俺は天井を見つめていた。

 水着、露出、南国、温泉……俺の脳は今日だけでエロギャグ8巻分くらいの素材を取り込んだ。

 でも。

(……悪くないな)

 みんなとこうして過ごす夏は、かけがえのないものだ。

 常夏の夜風が窓を揺らし、どこからか甘いシャンプーの香りが漂う。

「弘弥くん、電気、消してもいい?」

 すみれの声がした。

「ああ……ありがとう」

 そうして訪れた、ほんの一瞬の静寂。

 だが次の瞬間──

「布団の上、満員じゃん!!」

 ルナが叫んだ。

 見れば、すでに布団には全員が交互に入り込んでいた。

 この旅もまた、波乱しかないと確信した。
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