同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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『ハワイアンズ旅行編』

【第五九一話】『夜のフラショーと、まさかの告白劇』

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 南国の夜風が、静かに髪を撫でた。
 熱気を帯びた昼間とは違い、夜のハワイアンズは幻想的な灯りに包まれていた。ライトアップされた舞台では、フラガールたちがゆったりと腰を揺らし、観客を異国の夢へと誘っていた。

 弘弥は、ステージの前列に座っていた。
 その隣には──すみれ。

「……綺麗だね」
 弘弥がぽつりと呟く。

「ええ。とても」
 すみれの声は穏やかで、どこか遠くを見つめるようだった。

(こんな風に、すみれと二人きりでショーを見るの、初めてかも……)

 気づけば、他のヒロインたちはそれぞれ後列の席や売店へ散っていて、奇跡的にすみれと“ふたりきりの時間”が訪れていた。

 ──その静けさの中で、すみれがふと呟いた。

「こうしてると、夢みたいね。……ずっと、このまま、私だけ見てくれたらいいのに」

 一瞬、弘弥の思考が止まった。

「えっ……?」

「ふふっ。ごめんなさい、冗談よ」
 すみれは微笑んだが、その表情はどこか切なげだった。

 しかし、彼女の言葉は──他の誰よりも先に、他の誰よりも深く──弘弥の胸に届いていた。

「……すみれ、それって……」

「言葉のままよ。あの子たちと比べて、私が特別じゃないのはわかってる。でもね、それでも、たまには……“私だけ”を見てほしくなるの」

 甘くも重い言葉。観客の拍手、フラの音楽がゆったりと流れている。その中で、弘弥の心だけが激しく波打っていた。

 ──そして、背後の席。

 碧純は、息を呑んだ。

「……すみれさん……?」

 ルナが手にしたドリンクを落としそうになる。
 ひよりが観察メモを握りしめる手に、力がこもる。

 ミレーヌの目が鋭くなり、
 ことねがポップコーンを口元に運ぶのを忘れていた。

「これは……戦争の火蓋が……落ちた……?」

 夜のフラの炎が、戦火の狼煙に変わった。

 そして──物語は、静かに、確実に、次の修羅場へ進み始める。

(つづく)

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