同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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『ハワイアンズ旅行編』

【第五九二話】 『露天風呂での事件──タオルが…消えた!?』

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「……ふぅ、極楽……」
 夜の露天風呂に、弘弥の気の抜けたため息が響く。

 温泉の湯気が月明かりに照らされて幻想的な光を放ち、檜の香りが鼻をくすぐる。フラショー後の混乱を引きずったまま、弘弥はひとり、男湯として割り当てられた時間にのんびり湯に浸かっていた。

 ──が。

「……はぁ……。いいお湯ですの……」
 その声は、明らかに女性のものだった。

(……ん?)
 耳を疑い、首だけひょいと上げると──そこにいたのは、

「ミレーヌぅぅぅぅぅ!?」
 しっかり濡れた金髪を背中に流し、胸元にうっすら湯気がかかる姿。
 だが、タオルが、ない。いや、持っていたはずのタオルが……

「ちょ、まってミレーヌ!タオル!タオルどこ!?」
「さっきまであったのですけれど……滑っていってしまって……。でも平気ですの。わたくし、肌など──絵画と同じ扱いを受けて育っておりますから」
「そういう問題じゃない!!」

 まさかの“ノータオル未遂”に、弘弥の思考はフリーズ。
 血圧が一気に急上昇し、鼻血がぷしゅっ。

「というかなんでこっちの時間にミレーヌがいるの!?男女交代制のはず──」

「わたくし、少し時間を間違えてしまって……それに、弘弥様に会いたくなりましたの」

 直球だった。

(この子、たまにマジで貴族砲ぶっ放してくるよな……)

 しかし、そのタイミングで──
「ミレーヌ!?まさか入った!?」「って、ぎゃあああああ弘弥いるううううう!?」

 次々に、バスタオル姿のヒロインたちが浴場の入り口に飛び込んできた。
 先頭の碧純が弘弥の鼻血を見て絶叫。

「ミレーヌ!!その姿はナシ!!完全アウト!!!」
「兄はもう二度と風呂入れちゃダメ!!!」
「ていうか兄を温泉に浸けると毎回事件になるのどうにかして!!」

 怒号がこだまし、夜の露天風呂は戦場へと変わった。

 弘弥はその場で白目をむきながら──

「やっぱり俺……温泉向いてないんじゃないかな……」
 と、呟いて湯船に沈みかけた。

(つづく)

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