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最終話.勇者

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「……?」

 魔王に斬られた後、目を覚ますと真っ白な空間にいた

「魔王はどうなった……?」

 体は傷を負っていない、どういう事だ……


「お久しぶりです、勇者ルーク」

「!!」

 白衣を来た、見覚えのある者が横に居る

「神か……久しぶりだな」

 俺が勇者になった時、何度か夢で話したことを思い出した

「俺は……どうなっているんだ?」

「……生きていますよ、ここでの時間は止まっています。だからもう少しお話しましょう」

 死んでいなかったか、この状況だとそう思ってしまう

「あなたが美咲を元の世界に返して頂き助かりました、私も他の世界のことまでなんとか出来る訳ではなかったので」

「……美咲はしっかりとやっているか?」

「安心してください、楽しそうにしていましたよ」

 そう言うと女神が後ろを振り向いて空間に手をかざした

「俺の家か……」

 まだ勇者になる前の、家と呼べるほどのものではないが……

「この頃に魔王は生まれました、そしてあなたが勇者として戦うことになりました」

「そうだな、ここでレガンに見つかった」

 三十年前のことを思い出して、少し懐かしくなった

「そうです……あら、もう終わりのようです」


 ……ここに来た時と同じように、意識が朦朧として来た

「あと、もう【勇者】ではなくなりますので、少し能力は落ちてしまいますよ……」

 声は聞こえるが、眠りにつきそうな感覚だ……




 ~魔王城~




「……!」

 目の前に倒れこんだ魔王がいる、本当に時間が経たず戻ってきたようだ

「うっ……」

 神と話している時は問題なかったが、先ほど斬られた傷と、魔力の使い過ぎで体が痛む

「階段は……?」

 塞がれたままだ、もうとっくに死んでいるはずだが……


「!」

 階段は塞がっているが、特別強固な物でもなくなっている

「【風操剣】!」

 剣で床を切り刻んだ、下には戦闘後の騎士達の姿が見えた

「ルーク!!」

 一番前にいたレガンがすぐに上へ上がってくる

「……魔王を倒したか、さすがだ、塞がれたと聞いた時は焦ったぞ」

「いや、そっちも無事でよかった」

 魔王軍のロラウズが転移してこちらに来ると思っていたが、恐らくレガンが倒してくれたおかげで来なかったのだろう

「勇者様!!」

 他の騎士には俺の事はバレているようだが……

「魔王城から出るぞ、もうここに魔王軍はいないはずだ」

 騎士団はボロボロのようだ、良く頑張ってくれた





「ルーク!」

「やはり生きていましたか」

 カラネイラとスターフの元に行く、カラネイラは少し驚いていた

「ああ、なんとか倒せ……た……」

 喋っている途中急に頭がめまいがして、その場に座り込んだ

「……魔力が枯渇しているわ、とにかく一度王都に戻りましょう」

 王都の騎士団を戻すことも含めて、王都へ帰ることにした




 ~王都~




「ポーションを飲んだおかげで大分回復した」

 王都の密室へ入りレガン、カラネイラ、スターフと俺の四人で話をしていた

「……とにかく、ルークや魔王については何とかしておく、騒ぎにならないようにな」

「助かる」

 レガンは国王と話をして魔王軍などの騒ぎをできるだけ抑え込むということだ

「……それと、俺はもう【勇者】ではなくなっている、だから普通の【魔法剣士】だった」

「だとしたら……ステータスが変わったんじゃないの?」

「さっき見たが、魔力が少し下がって【魔抗】が無くなっていただけだった、他の魔法は残っていたな」

【ゴーレム召喚】とかは消えると思っていたが、剣術スキルも含めて残っていた

「……今日の話はこれで終わりだ、また何かあったらここに呼ぶ」

 魔王討伐後の話は、小一時間で終了した


「では、私は家に帰ります、さようなら」

「ああ、またな」

 スターフがそそくさと帰り、三人で少し話した

「……ルークはどうするんだ? 騎士団に入るか?」

「いや、それは勘弁だ」

 騎士団もいいが前の印象があり、入る気になれない

「ならどうするの?」

「冒険者として生きる、過剰な依頼は受けないが、最低限食費と宿代は確保しなければならないからな」

「分かったわ、気をつけなさい」

 王都の出口で二人と別れる

「たまには王都にも来いよ!」

「私のとこにもね」

「もちろんだ」







「……依頼が大分変わっているな、どれを受けようか……」

「!! ルークか!」

 冒険者ギルドでサザベルと出会った

「この前は助かった、サザベル」

「いや、お前こそ……」

 何か言いたげだったが、すぐ口を塞いだ

「すまん……こういうことは言ったら良くないな」

 サザベルも、さすがに俺の正体は気づいていたみたいだった

「……というか、またリフガに戻ってきたんだな!」

 色々考えてコスタルも良かったが、結局最初に来たリフガに戻ってくることにした

「そうだ、それで今日も依頼を受けに来た」

 そのまま依頼書を取ってギルドの受付に向かう

「ルークさん!? ……って失礼しました!依頼ですね!!」

 受付嬢が俺をみて少し驚いた表情を見せる

「ありがとう」


 冒険者ギルドを出て、馴染みのある森へ歩いた……





「……勇者になってから大変だったが、ここで俺は第二の人生を過ごすーー」





 魔王と相討ちになった俺は気が付いたら30年後の世界にいた 完結
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