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スマイル7・王様と五十億円

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『待ってたぜ。今、開けてやる』扉が開錠され、王雅が現れた。「逃げずに来たんだな。褒めてやる」

「約束したでしょ。私は、一度言ったらちゃんと守るわよ」

「いい心がけだ。・・・・ま、座れよ。何か食うか?」

「いらない」

 こんな状況で、食事なんか出来るワケないでしょ。
 それに、私は早く帰らなきゃいけないのよ。子供達が心配だもの。

「施設の件、どうなったの? もうカタ付いたの?」

 気になっていた件を、単刀直入に尋ねた。

「誰に聞いてんだよ。もうとっくに片付けた。施設の土地は今日から櫻井グループ・・・・いや、正確に言うと俺のモンだ。施設の土地は、三十億で花井から買い取った」


「三十億!?」


 想像以上の金額に、思わず目を剥いた。お金持ちにしても、ケタが違い過ぎるわ。この男。

「そうだ。それに、ホテルの計画潰すのにも二十億使った。お前のために五十億も使ったんだ。きっちり身体で払えよ。書面ならあるぜ。契約書やら束にしてそこに置いてあるだろ? 好きなだけ確かめろよ」

「・・・・」

 五十億円・・・・。
 おおよそ殆どの人間が、一生手にすることは無い金額であろうものなのに、この男はいとも簡単に・・・・まるでスーパーでお惣菜を買うみたいに、躊躇なく支払って、手に入れてしまうのね。
 きっと今までも、欲しいと思ったものはそうやって手に入れて来たに違いない。
 大理石で出来たテーブルの上に置いてある封書に手を伸ばし、中の書面を見た。
 丁寧に確認した後、封筒に書類を戻した。
 新しく出来た契約書には、土地の権利は王雅のものとなっていて、今後はこの王様と私が契約をすることになっている。
 つらつらと契約書には注意事項が書かれていたけれど、結局のところ王雅は私を好きにするという目的があるから、施設の地代は、半永久的に無償貸出という形になっていた。
特にこちらが困るような契約では無かった。

「もう、これで施設は大丈夫なのね?」

「ああ。約束は守ったろ。今度はお前が守れよ。俺に尽くせ」


「いいわ。好きにしてよ」


 王雅の傍に行った。
 この男、性格は最悪だけど、仕事はしっかり出来るみたいね。
 契約書なんかも細々きちんと整えられているし、短時間でこれだけの書類を作成し、話をつけてしまうんですものね。

「それより、よく来れたな。呼び出しといて何だけど、ガキ共は大丈夫なのかよ?」

 あら。

「心配してくれてんの?」

 やっぱり、少しはいい所、あるのね。

「あ、いやっ・・・・別にそーゆーんじゃ・・・・」

 王雅は何やら焦っている様子だった。
 
「子供達の心配してくれてるのなら、話が早いわ。さっさと終わらせてよ。今、施設には子供達しか居ないし、ちょっと抜け出して来ただけだから、用が済んだらすぐ帰らせてもらうつもりだし」

「バッ・・・・バカ! そんな風に言うなよな。処女の癖に! 俺がリードしてやるから黙ってろ」

 あっさり言ったのが気に入らなかったのか、王雅はちょっと怒っているようだ。




「残念だけど」またもあっさり伝えた。「処女じゃないから」




 
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