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スマイル32・王様のヒーローショー

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 でも、子供たちの何人かは早くも泣き出した。そりゃあそうでしょう。こんな恐ろしい怪獣がいきなり目の前に現れたら、怖いに決まってるわ。怪獣に食べられちゃう、って思うでしょうし。

「Xっ、ガキ共に手出しさせるか!」

 王雅が早速、偽パンチや偽キックを喰らわせている。なかなかの演技派ね。まあでも、Xはビクともしない。

「地球人のパンチなんか、効かぬわぁー」

 Xが王雅のお腹めがけて腕を振り下ろした。

「ううっ・・・・」

 王雅が顔を歪めて膝をついた。もの凄く痛そうな演技。上手いわ、王雅。

「ガキ共に手出しはさせねーぞ・・・・」

 王雅はXの太い足にしがみついて、子供たちに向かって叫んだ。「早く逃げろっ! 俺が食い止めるから!!」


「くっそおおお! よくも王雅にぃを! Xっ、俺がっ、や、やっ、やっつけてやる!!」


 怖いのにひっくり返った声で叫び、紙で作ったお気に入りの剣を振り回して、ライタ君がXに突撃した。



「ぐぁあぁ――っ!」



 怪獣Xはライタ君の攻撃を受け、わざわざ苦悶の声を漏らしてくれた。子供のちゃちな攻撃が利くワケ無いのに、更に悶え苦しむ演技まで見せてくれている。

 
「あ、スゴイ!! Xに攻撃が効いたわ! ライタ君、今のうちよっ! 早く逃げましょう!!」

 すぐにここから逃げるようにと、声を掛けた。

「遊戯室の方へ行こう! 早く隠れるんだ!」

 続いて真秀君が、みんなを連れて遊戯室へ誘導してくれた。

「みんな、急いで!!」


 真凛ちゃんも同様、子供たちを連れて出てくれた。
 私も近くの子供たちの手を引いて、遊戯室へ急いだ。


 遊戯室中に入って見渡すと、突如現れたステージを見て子供たちは驚いた顔を見せていた。私も初めて見たけれど、本当に驚きだわ! よく短時間で、ここまでのステージを用意してくれたと感心した。
 何時もは明るい遊戯室が、黒い幕に覆われていて少し薄暗くなっている。中央には簡易ステージまで用意されていて、大掛かりな音響設備のスピーカーやフラッシュの光等も用意されていた。本格的なステージだわ。

 今は電気が点いているからいいけれど、演出で後で電気が消えるから、子供たちが泣いたりしたらすぐフォローしてあげなきゃ。
 折角のヒーローショーが、怖い想い出になってしまってはいけないわ。
 王雅とライタ君は随分遅れて食堂から遊戯室にやってきた。ライタ君がしきりに辺りをキョロキョロして、随分焦っているわ。何かあったのかしら。
 王雅と二人で何やら話して、再びライタ君が遊戯室を出ようとしたその時だった。

 パッ、と遊戯室の電気が消され、辺りが暗くなってパチパチと照明のフラッシュが光った。
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