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第5章 フリージア=リークハルトの道先
第1話
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「フリージアよ。私は花に囲まれる生活というのをしたことがないのだが、想像上は夢のような光景であっても、実際にその只中にいると、その、なんだ。鼻が壊れそうだな?」
ジェームズは眉を寄せ、とても困った顔をしていた。
どうやら早速ワッシュの花攻めにあっているらしい。
ワッシュは森の中まで走らされたことをまだ怒っているのかもしれない。
それともイタズラの標的をグレイからジェームズに変えただけなのか。
「そう……ですね。庭園にいるときはちょうどいいのですが。窓を開けてみてはいかがですか?」
「いや、開けると今度は違う種類の甘ったるい匂いが流れ込んでくるのだ。そうするとなんだか変な匂いになってな。それぞれだとそれなりにいい匂いなのだが、合わさるともうかなわん」
なるほど、そこがワッシュの真の狙いであったらしい。
ジェームズはほとほと困った顔をしていた。
だが文句を言うわけでもなく、花などいらない、とも言わないところに根の人の良さが表れている。
フリージアは思わず、ふふ、と小さく笑った
「では、明日からは違う花を活けるようにいたしますね」
「すまない、そうしてくれ。私をもてなそうと気合を入れてくれたのはわかるのだが、常に匂いがつきまとうようで難儀していた」
ワッシュにわからないように、後で花瓶をいくつかフリージアの部屋へと移しておこう。
そうして廊下でジェームズと別れ、グレイを探したが姿が見当たらなかった。
先日ジェームズが鞄を持ってやって来てからというもの、グレイは何やら忙しくしていた。
今は執務室にこもっているのだろう。
何か手伝えることがあればと思ったのだが、グレイは「大丈夫だよ」と微笑むばかり。
仕方なくフリージアは、いつものように風呂をすませ、自室へと戻った。
部屋に一人になり、ふう、と息を吐くと突然背後からがばりと口を塞がれた。
「――!?」
もがこうとしたが、抱きつくように後ろから羽交い絞めにされ、身動きもとれない。
「落ち着け。私だ」
聞こえた声に、全身が一気に冷えた。
カーティスだ。
なぜこんなところにいるのか。いつの間に忍び込んだのか。
「大きな声をあげるな。話したいことがある」
こくりと頷けば、カーティスの拘束がゆるむ。
フリージアは咄嗟に距離を取り、カーティスに向き直った。
強く警戒するそんな姿に、カーティスが眉を寄せる。
「まるで悪者のような扱いだな」
「昼間に玄関からおいでくだされば客人としてお迎えしました。このように忍び入るような真似をして、一体何を話したいというのですか」
警戒しない方がおかしい。
カーティスは苦しげに息を吐くと、気持ちを改めるようにフリージアに顔を向けた。
「お前を助けに来たのだ」
今度はフリージアが眉を顰めた。
何を言っているのかわからなかった。
「お父様から聞いていないのですか? 私の力は生き物を操るようなものではありませんし、グレイ様は私を大切にしてくださっています。私は望んでグレイ様の妻に――」
「うるさい!」
突然激昂したカーティスに、フリージアはびくりと身をすくませた。
「そんなのは全部お前が思い描いた妄想だ。お前が操った結果に過ぎない。この邸を見張らせていたから私は知っている。あれの正体は魔物なのだろう? この邸には魔物ばかりが集まって暮らしているのだろう。だからお前はそいつらの心を支配し、自分のいいように操り、いい気になっているだけなのだ。目を覚ませ。そんなのはむなしいだけだろう」
どうやら父からは、グレイたちが魔物との混血であることは聞いていないようだ。
こうやって誤解したり、それを理由にフリージアを邸に連れ帰ろうとすると思い、伏せたのだろう。
「操ってなどいません。私にそんな力はないのです。グレイ様もこの邸の人たちも、私を大切に思ってくれているだけなのです」
「そう思いたいだけだ。お前は王まで操ったのだからな。やはり私が思った通り、人間すらも操ることができるのだろう? やはりその力は外に出していいものではなかった」
「陛下を……、私が? お義兄様、何を仰っているのですか?」
「この邸に魔物が潜んでいると内密に王に奏上したのだ。だが王はまともに取り合わなかった。あれは信じていないのではない。わかっていて、はぐらかしている目だった」
国王も魔物との混血の存在は知っている。
そして互いに利益のある関係なのだとグレイは言っていた。
ジェームズがこの邸を窺う者がいると言っていたことが本当だったのだから、それを知ったグレイが国王に知らせを飛ばしていたのかもしれない。
だがなぜこうも事実が歪んで解釈されてしまうのだろう。
フリージアはどこから誤解を解けばよいものかと言葉を探したが、カーティスはおもむろにすっと手を差し出した。
「フリージア。明日ここには魔物の討伐隊が来る。このままこの邸にいては巻き込まれる可能性もある。だから今のうちに私と逃げよう」
その言葉に、冷やりとしたものが体の中心を駆け抜けていった。
「何を……仰っているのですか……? 討伐隊? 一体、どうしてそんな――」
「だから助けに来たと言っただろう。魔物など、いつ裏切るかわからない。いつお前に危害を加えようとするかもわからない。操る力が緩んだ隙を突かれればおしまいだ」
「ですから、私にそんな力はありませんし、このお邸にはそんなことをする人は一人もおりません!」
ただ平和に、幸せに暮らしているだけなのに。
なぜそれを脅かされねばならないのか。
誰にも何もしていないのに。
フリージアの中に焦りと共に憤りが沸き上がった。
しかしカーティスは、鼻を鳴らすようにして言った。
「だが先日、黒い竜に連れ去られたのだろう。それも魔物たちを操って助けを呼び、さらには黒い竜すら手懐けて戻った」
見張りからの報告を、カーティスはそのように受け取ったのだ。
フリージアは頭が痛むのを感じた。
どこからどう説明すればわかってくれるのだろう。
溝が深すぎて、理解してもらえる気がしない。
それでもこのままでは大変なことになる。
焦るフリージアの耳に、ガチャリと部屋の扉が開いた音が聞こえた。
はっとして振り返れば、グレイがカーティスに厳しい目を向けていた。
「こんなところで何をしていらっしゃるのです?」
「グレイ様!」
ほっとしたフリージアは、気付けばグレイの元へと走り寄っていた。
冷え切った湯上りの体を抱き締め、グレイが眉を寄せる。
カーティスは苦々しげな目を向けると、舌打ちをした。
「お前だけは逃がしてやろうと思ったのに。また私のこの手を裏切るのか」
「裏切る、って……! それはいつもいつもお義兄様の方ではありませんか! 私を信じてくださらない、約束も守ってくださらなかった! それどころか、やっと手に入れた私の幸せを、どうして――!」
フリージアの言葉をカーティスが最後まで聞くことはなかった。
グレイを睨みつけ、ふいっと顔を逸らすと、そのまま窓枠に足をかけて二階から飛び降りて行ってしまったからだ。
夜風にふわりふわりと揺れるカーテンを見つめ、フリージアはグレイにぎゅっとしがみついた。
「ごめんなさい……、ごめんなさい、グレイ様。またお義兄様が――」
「大丈夫だ。何も心配しなくていい。フリージアも、みんなも、僕が守るよ」
冷えた体をグレイの温かな体が包んでくれた。
「だけど、一つだけ許してほしいことがあるんだ。聞いてくれる?」
顔を上げれば、困ったように微笑むグレイの顔がそこにあった。
フリージアは迷うことなく笑むと、深く頷いた。
「はい――。もちろんです」
「ありがとう。明日のことを、みんなと話そう」
ジェームズは眉を寄せ、とても困った顔をしていた。
どうやら早速ワッシュの花攻めにあっているらしい。
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「そう……ですね。庭園にいるときはちょうどいいのですが。窓を開けてみてはいかがですか?」
「いや、開けると今度は違う種類の甘ったるい匂いが流れ込んでくるのだ。そうするとなんだか変な匂いになってな。それぞれだとそれなりにいい匂いなのだが、合わさるともうかなわん」
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ジェームズはほとほと困った顔をしていた。
だが文句を言うわけでもなく、花などいらない、とも言わないところに根の人の良さが表れている。
フリージアは思わず、ふふ、と小さく笑った
「では、明日からは違う花を活けるようにいたしますね」
「すまない、そうしてくれ。私をもてなそうと気合を入れてくれたのはわかるのだが、常に匂いがつきまとうようで難儀していた」
ワッシュにわからないように、後で花瓶をいくつかフリージアの部屋へと移しておこう。
そうして廊下でジェームズと別れ、グレイを探したが姿が見当たらなかった。
先日ジェームズが鞄を持ってやって来てからというもの、グレイは何やら忙しくしていた。
今は執務室にこもっているのだろう。
何か手伝えることがあればと思ったのだが、グレイは「大丈夫だよ」と微笑むばかり。
仕方なくフリージアは、いつものように風呂をすませ、自室へと戻った。
部屋に一人になり、ふう、と息を吐くと突然背後からがばりと口を塞がれた。
「――!?」
もがこうとしたが、抱きつくように後ろから羽交い絞めにされ、身動きもとれない。
「落ち着け。私だ」
聞こえた声に、全身が一気に冷えた。
カーティスだ。
なぜこんなところにいるのか。いつの間に忍び込んだのか。
「大きな声をあげるな。話したいことがある」
こくりと頷けば、カーティスの拘束がゆるむ。
フリージアは咄嗟に距離を取り、カーティスに向き直った。
強く警戒するそんな姿に、カーティスが眉を寄せる。
「まるで悪者のような扱いだな」
「昼間に玄関からおいでくだされば客人としてお迎えしました。このように忍び入るような真似をして、一体何を話したいというのですか」
警戒しない方がおかしい。
カーティスは苦しげに息を吐くと、気持ちを改めるようにフリージアに顔を向けた。
「お前を助けに来たのだ」
今度はフリージアが眉を顰めた。
何を言っているのかわからなかった。
「お父様から聞いていないのですか? 私の力は生き物を操るようなものではありませんし、グレイ様は私を大切にしてくださっています。私は望んでグレイ様の妻に――」
「うるさい!」
突然激昂したカーティスに、フリージアはびくりと身をすくませた。
「そんなのは全部お前が思い描いた妄想だ。お前が操った結果に過ぎない。この邸を見張らせていたから私は知っている。あれの正体は魔物なのだろう? この邸には魔物ばかりが集まって暮らしているのだろう。だからお前はそいつらの心を支配し、自分のいいように操り、いい気になっているだけなのだ。目を覚ませ。そんなのはむなしいだけだろう」
どうやら父からは、グレイたちが魔物との混血であることは聞いていないようだ。
こうやって誤解したり、それを理由にフリージアを邸に連れ帰ろうとすると思い、伏せたのだろう。
「操ってなどいません。私にそんな力はないのです。グレイ様もこの邸の人たちも、私を大切に思ってくれているだけなのです」
「そう思いたいだけだ。お前は王まで操ったのだからな。やはり私が思った通り、人間すらも操ることができるのだろう? やはりその力は外に出していいものではなかった」
「陛下を……、私が? お義兄様、何を仰っているのですか?」
「この邸に魔物が潜んでいると内密に王に奏上したのだ。だが王はまともに取り合わなかった。あれは信じていないのではない。わかっていて、はぐらかしている目だった」
国王も魔物との混血の存在は知っている。
そして互いに利益のある関係なのだとグレイは言っていた。
ジェームズがこの邸を窺う者がいると言っていたことが本当だったのだから、それを知ったグレイが国王に知らせを飛ばしていたのかもしれない。
だがなぜこうも事実が歪んで解釈されてしまうのだろう。
フリージアはどこから誤解を解けばよいものかと言葉を探したが、カーティスはおもむろにすっと手を差し出した。
「フリージア。明日ここには魔物の討伐隊が来る。このままこの邸にいては巻き込まれる可能性もある。だから今のうちに私と逃げよう」
その言葉に、冷やりとしたものが体の中心を駆け抜けていった。
「何を……仰っているのですか……? 討伐隊? 一体、どうしてそんな――」
「だから助けに来たと言っただろう。魔物など、いつ裏切るかわからない。いつお前に危害を加えようとするかもわからない。操る力が緩んだ隙を突かれればおしまいだ」
「ですから、私にそんな力はありませんし、このお邸にはそんなことをする人は一人もおりません!」
ただ平和に、幸せに暮らしているだけなのに。
なぜそれを脅かされねばならないのか。
誰にも何もしていないのに。
フリージアの中に焦りと共に憤りが沸き上がった。
しかしカーティスは、鼻を鳴らすようにして言った。
「だが先日、黒い竜に連れ去られたのだろう。それも魔物たちを操って助けを呼び、さらには黒い竜すら手懐けて戻った」
見張りからの報告を、カーティスはそのように受け取ったのだ。
フリージアは頭が痛むのを感じた。
どこからどう説明すればわかってくれるのだろう。
溝が深すぎて、理解してもらえる気がしない。
それでもこのままでは大変なことになる。
焦るフリージアの耳に、ガチャリと部屋の扉が開いた音が聞こえた。
はっとして振り返れば、グレイがカーティスに厳しい目を向けていた。
「こんなところで何をしていらっしゃるのです?」
「グレイ様!」
ほっとしたフリージアは、気付けばグレイの元へと走り寄っていた。
冷え切った湯上りの体を抱き締め、グレイが眉を寄せる。
カーティスは苦々しげな目を向けると、舌打ちをした。
「お前だけは逃がしてやろうと思ったのに。また私のこの手を裏切るのか」
「裏切る、って……! それはいつもいつもお義兄様の方ではありませんか! 私を信じてくださらない、約束も守ってくださらなかった! それどころか、やっと手に入れた私の幸せを、どうして――!」
フリージアの言葉をカーティスが最後まで聞くことはなかった。
グレイを睨みつけ、ふいっと顔を逸らすと、そのまま窓枠に足をかけて二階から飛び降りて行ってしまったからだ。
夜風にふわりふわりと揺れるカーテンを見つめ、フリージアはグレイにぎゅっとしがみついた。
「ごめんなさい……、ごめんなさい、グレイ様。またお義兄様が――」
「大丈夫だ。何も心配しなくていい。フリージアも、みんなも、僕が守るよ」
冷えた体をグレイの温かな体が包んでくれた。
「だけど、一つだけ許してほしいことがあるんだ。聞いてくれる?」
顔を上げれば、困ったように微笑むグレイの顔がそこにあった。
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