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第5章 フリージア=リークハルトの道先
第9話
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一か月後。
グレイが王宮へと呼ばれ数日不在にしている中、再びリークハルト侯爵家をカーティスが訪れた。
昼間に玄関を真正面から訪ねたことからも、それを狙っていたわけではないようだったが。
その姿はどこか憔悴していて、それどころではないように見えた。
思わず心配になったフリージアがかける言葉を探すうち、カーティスが先に口を開いた。
「フリージア。すまなかった。これからは幸せになってほしい。私は兄にもそれ以外にもなれはしなかったが、これからはフリージアの幸せを祈っている」
その言葉にどれだけほっとし、許された気持ちになったことか。
フリージアは思わず涙ぐみそうになるのを堪えて、小さく笑みを浮かべた。
「お義兄様はお義兄様です。血のつながらない私を妹として受け入れ、私が寂しくないようにとお茶に誘ってくれました。楽しかった日々は忘れません」
カーティスがなんとも言えない目で見つめ、苦く笑む。
それからその視線がさまようように何者かを探した。
「お義兄様。リディをお探しですか?」
そう問えば、どこかうつろだった目が小さく見開かれた。
「やはりここにいるのか?」
「はい。私のお茶友達になってくれています」
カーティスがリディの姿を探すように一歩踏み出せば、奥の廊下からカツカツと足音を響かせ当の本人が姿を現した。
その顔を見るなり、カーティスは性急に口を開いた。
「リディ。お前に話がある」
「お断りします」
「まだ何も言っていない。私はお前に」
「私は私をただの一人の人間として見てくれる人のところにいたいのです」
珍しく敬語で話すリディに、そしてまたその言葉にカーティスは一度言葉を飲んだ。
それでもすぐに口を開く。
「わかっている。お前がフリージアと似ているのは顔だけで、中身はまるで違う人間であるということは。だから私はお前が気になって仕方がないのだ」
リディは冷たく笑った。
「それはフリージアに執着していたのと同じ、去って行くとなれば惜しくなって手元に留めたいだけでしょう」
「確かに私は、フリージアを大事に守らねばと思っていたところに、横からかっさらうように婚約者が決まって執着していただけだったのかもしれない。お前が私を恐れずに言葉を向けたから、あれからいろいろと考えた。だから私はどこまでも堕ちて行かずにこの足を留めることができた。感謝しているんだ」
「……本当にいまさらね」
「冷静になって様々なことを思い返し、一か月が経ってもお前は私の中から消えなかった。今はまだそれをうまく言葉にできない。だがリディにそばにいてほしいと思っている。それだけは確かなんだ」
「アシェント伯爵家の侍女にでも雇ってくださるつもりですか? でも働き口ならもう間に合ってますので」
「そうではない。私は――」
「私は平民よ。そんなこと、いちいち言わせないで」
言葉を遮るように冷たく言い放ったリディに、カーティスは矢継ぎ早に言葉を重ねた。
「わかっている。だがそんなことは問題にはならない。叔父の養子にしてもらえばいい」
「バカじゃないの? それで私と結婚でもするつもり? フリージアにそっくりな私なんかと結婚したら、あんたがどんな目で見られるかわかってんの?」
それこそ妹の身代わりとして結婚したのだと思われるだろう。
だが嘲笑うようなリディにも、カーティスは少しもたじろがなかった。
「問題ない。フリージアは社交界に顔を出していないからな。幼い頃のフリージアしか知る者はいないのだから、少し似ているだけの従姉妹で十分通る」
「……何言ってるかわかってんの? あんたにそこまでのことができるの? どうせ一瞬の気の迷いでしょ」
「そうかもしれない。だがこれがなんなのかわかる前にお前がいなくなってしまうのは嫌だ」
「あんたねえ。ふざけんのも大概にしなさいよ」
あまりに正直すぎるカーティスの物言いに、リディは苛立ちを隠さずに声を荒げた。
「なんでもあんたの思い通りになると思わないで。私は大人しくあんたに捕まるような人間でもないし、万一捕われたとしても、蹴破って出ていくわ。わかったら帰って。二度と私とフリージアの前に現れないで」
そう言って、リディはくるりと背を向け廊下の向こうへと消えて行った。
カーティスは唇を噛みしめながらも、「邪魔をしたな」と去って行った。
フリージアがリディを追いかければ、廊下の壁にもたれて顔を覆っていた。
「リディ……」
そっと声をかければ、リディがキッと顔を上げた。
「ありえない。最低最悪なクソ男だし、いい所なんて顔だけよ? その上、好きかどうかもわからないけどただつなぎとめておきたいとか、冗談じゃないってのよ。いきなり正直になりゃ許されるとでも思ってんの? バカにすんじゃないわよ」
だが、ふん、と顎をそらしたリディの目は赤く潤んでいた。
泣いていたのかもしれない。
どう声をかければいいのかフリージアが言葉に迷っていると、リディは「まあ、いいわ」と不敵に微笑んだ。
「私をお貴族様の養子にしてくれるって言うならのっておくべきよね。そこから後はゆっくり相手を選ぶって手もあるわけだし。そもそも私は侯爵夫人になる予定だったんだから」
そう言ってリディはくるりとフリージアに向き直った。
「だからさ。貴族のこととか、マナーとか、また教えてよ。前は付け焼刃だったし、玉の輿にのるには覚えとかないといけないからさ」
そう言って、にっと笑ったリディに涙の影はもうなかった。
フリージアは頷いて微笑んだ。
「わかったわ」
リディはきっと、自らの手で後悔しない道を選び取るだろう。
そのためにできることがあれば、フリージアは精一杯手伝うだけだ。
リディも、フリージアも、もう誰かに強制された人生など歩む必要はなく、自らの足で歩いていける強さを持っているのだから。
グレイが王宮へと呼ばれ数日不在にしている中、再びリークハルト侯爵家をカーティスが訪れた。
昼間に玄関を真正面から訪ねたことからも、それを狙っていたわけではないようだったが。
その姿はどこか憔悴していて、それどころではないように見えた。
思わず心配になったフリージアがかける言葉を探すうち、カーティスが先に口を開いた。
「フリージア。すまなかった。これからは幸せになってほしい。私は兄にもそれ以外にもなれはしなかったが、これからはフリージアの幸せを祈っている」
その言葉にどれだけほっとし、許された気持ちになったことか。
フリージアは思わず涙ぐみそうになるのを堪えて、小さく笑みを浮かべた。
「お義兄様はお義兄様です。血のつながらない私を妹として受け入れ、私が寂しくないようにとお茶に誘ってくれました。楽しかった日々は忘れません」
カーティスがなんとも言えない目で見つめ、苦く笑む。
それからその視線がさまようように何者かを探した。
「お義兄様。リディをお探しですか?」
そう問えば、どこかうつろだった目が小さく見開かれた。
「やはりここにいるのか?」
「はい。私のお茶友達になってくれています」
カーティスがリディの姿を探すように一歩踏み出せば、奥の廊下からカツカツと足音を響かせ当の本人が姿を現した。
その顔を見るなり、カーティスは性急に口を開いた。
「リディ。お前に話がある」
「お断りします」
「まだ何も言っていない。私はお前に」
「私は私をただの一人の人間として見てくれる人のところにいたいのです」
珍しく敬語で話すリディに、そしてまたその言葉にカーティスは一度言葉を飲んだ。
それでもすぐに口を開く。
「わかっている。お前がフリージアと似ているのは顔だけで、中身はまるで違う人間であるということは。だから私はお前が気になって仕方がないのだ」
リディは冷たく笑った。
「それはフリージアに執着していたのと同じ、去って行くとなれば惜しくなって手元に留めたいだけでしょう」
「確かに私は、フリージアを大事に守らねばと思っていたところに、横からかっさらうように婚約者が決まって執着していただけだったのかもしれない。お前が私を恐れずに言葉を向けたから、あれからいろいろと考えた。だから私はどこまでも堕ちて行かずにこの足を留めることができた。感謝しているんだ」
「……本当にいまさらね」
「冷静になって様々なことを思い返し、一か月が経ってもお前は私の中から消えなかった。今はまだそれをうまく言葉にできない。だがリディにそばにいてほしいと思っている。それだけは確かなんだ」
「アシェント伯爵家の侍女にでも雇ってくださるつもりですか? でも働き口ならもう間に合ってますので」
「そうではない。私は――」
「私は平民よ。そんなこと、いちいち言わせないで」
言葉を遮るように冷たく言い放ったリディに、カーティスは矢継ぎ早に言葉を重ねた。
「わかっている。だがそんなことは問題にはならない。叔父の養子にしてもらえばいい」
「バカじゃないの? それで私と結婚でもするつもり? フリージアにそっくりな私なんかと結婚したら、あんたがどんな目で見られるかわかってんの?」
それこそ妹の身代わりとして結婚したのだと思われるだろう。
だが嘲笑うようなリディにも、カーティスは少しもたじろがなかった。
「問題ない。フリージアは社交界に顔を出していないからな。幼い頃のフリージアしか知る者はいないのだから、少し似ているだけの従姉妹で十分通る」
「……何言ってるかわかってんの? あんたにそこまでのことができるの? どうせ一瞬の気の迷いでしょ」
「そうかもしれない。だがこれがなんなのかわかる前にお前がいなくなってしまうのは嫌だ」
「あんたねえ。ふざけんのも大概にしなさいよ」
あまりに正直すぎるカーティスの物言いに、リディは苛立ちを隠さずに声を荒げた。
「なんでもあんたの思い通りになると思わないで。私は大人しくあんたに捕まるような人間でもないし、万一捕われたとしても、蹴破って出ていくわ。わかったら帰って。二度と私とフリージアの前に現れないで」
そう言って、リディはくるりと背を向け廊下の向こうへと消えて行った。
カーティスは唇を噛みしめながらも、「邪魔をしたな」と去って行った。
フリージアがリディを追いかければ、廊下の壁にもたれて顔を覆っていた。
「リディ……」
そっと声をかければ、リディがキッと顔を上げた。
「ありえない。最低最悪なクソ男だし、いい所なんて顔だけよ? その上、好きかどうかもわからないけどただつなぎとめておきたいとか、冗談じゃないってのよ。いきなり正直になりゃ許されるとでも思ってんの? バカにすんじゃないわよ」
だが、ふん、と顎をそらしたリディの目は赤く潤んでいた。
泣いていたのかもしれない。
どう声をかければいいのかフリージアが言葉に迷っていると、リディは「まあ、いいわ」と不敵に微笑んだ。
「私をお貴族様の養子にしてくれるって言うならのっておくべきよね。そこから後はゆっくり相手を選ぶって手もあるわけだし。そもそも私は侯爵夫人になる予定だったんだから」
そう言ってリディはくるりとフリージアに向き直った。
「だからさ。貴族のこととか、マナーとか、また教えてよ。前は付け焼刃だったし、玉の輿にのるには覚えとかないといけないからさ」
そう言って、にっと笑ったリディに涙の影はもうなかった。
フリージアは頷いて微笑んだ。
「わかったわ」
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