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人の姿になったユキ

第83話 ザックとユキ

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 販売会という名の飲み会を始めてしばらくした後。

「すまん、すまん遅くなった」

 ザックが会場に姿を見せた。その後ろにはナンニャさんとユキが居た。

 ユキは自分の姿を見つけるなり。

「誠明ただいま~~~、見て見てこれ可愛い~?」

 と言いながら駆け寄り飛び着いてきた。

「おかえり、飛びついてきたら見えないんだが……」
「そっか~そうだよね~」

 なんというか、とても動きやすそうな冒険者風の服装だった。おへそが見え首回りも結構開いている黒の半袖に黒の皮製ホットパンツに黒のハイソックスに白いブーツ、その上から肩当てやら胸当てを付けていた。

 黒系の衣類のおかげかユキの白い肌が際立つな~なんて思っていた。

 ユキは自分から少し離れると、その場でくるっと一回転した。

「どうかな~?」
「うん可愛いと思う、ってかユキ黒が好きなの?」
「うん~白以外だとそうなるかな~?」
「そっか、可愛いよ」
「ふっへっへ~」

 ふっへっへって、変な喜び方だな。

「ユキちゃん良かったねぇ」
「うん!ナンニャありがとう!」
「はいよ」

 そんなやり取りをしていると、ジルさんが寄って来た。

「のぉ誠明よ、この子はユキか?」
「そうだよ~」

 ジルが自分に聞いてきたのにもかかわらず、ユキが答えた。

「ほぉ~人になれたか」
「うん!なれた!」
「ほぉそっかそっか、よかったのぉ~ユキやちょっとこっち来なさい」
「はい?」

 ジルさんに連れられ、ユキはクロン王に挨拶をしていた。

「誠明、良かったな」

 気づけば横にザックが居た。

「良かったって何がです?」
「おまえさんが言ってた願だ、ユキなら嫁として文句ないんじゃないのか?」
「まぁそうですね、なんというか理想過ぎて恐れ多いというかなんというか……、というか一緒だったんです?」
「あぁ、2人が降りて来たところに鉢合わせてな、それでそのまま買い物に付き合ったわけだ。一目見てわかったぞ、この娘はユキだってな」
「そうですかそれで」
「あぁ、ほれ酒くれ缶ビールでいい」
「あ、はい」

 ザックに缶ビールを渡すといつものメンバーの所に行って話をし始めた。

「まっさあき~うちにも何か頂戴!」
「何かって、お前酒飲むの?」
「みんな美味しそうに飲んでるから飲んでみたい!」

 大丈夫かな……?

「何飲むの?」
「ん~……」

 ユキは、どれにしようか悩み始めた。

「せんせ、カシスオレンジ頂戴」
「あ、はい」

 ナンニャさんが悩んでいるユキの横から注文してきた。

「うちもそれで!」
「はいよ」

 ユキにもナンニャさんと同じカシスオレンジを渡してやると直ぐに開けて飲み始めた。

「あっまい!」
「そりゃそういうやつだからな」

 ほんとに何事も楽しんでる感がすごくする。

「せんせ」
「ん?」

 ナンニャさんがユキの飲んでるのを見たあとこっちに話しかけてきた。

「ザックとも話したんだけどね、ユキちゃんをしばらくうちに預けてくれないかね?」
「へ?なんでです?」
「人としての常識や女としての常識を教えてあげたくてね」

 あ~それは大事かもしれない、買い物中に何かやらかしたのかな?

「もしかして買い物中になにか?」
「そうだねぇ、問題らしい問題はないんだけどね」

 まぁ女性としての云々は自分じゃどうすることも出来ないからユキさえ良ければ構わないと思う。

「ユキはいいの?」
「うん~いいよ~料理とか教えてくれるっていうの~」
「あ~家事とかも教えてくれるんです?」
「それ位はね、2人で暮らすなら出来るものは少しでも多くすべきだろ?」
「たしかに、ユキが良いならお願いします」
「はいよ、それじゃあさっそく今夜からで良いかい?」
「お願いします。あ、それで服代は……」
「あぁそれは良いよ、ザックが父親代わりとして俺が出してやるっていってってねぇ、全部ザックが出したんだよ」

 たしかにユキの父親代わりがザックというのは納得できる部分はある。ユキはいつもこの時間ザックの所に行ってたし、色々ザックを頼りにしていたからなぁ。

 もしかしてザックに「娘さんをください!」なんて言わなきゃいかんのか……?普通にOKだしそうではあるが。

「ザックさんに渡した方がいい感じです?」
「いや、父親代わりとしてって言ってたんだから、そのままにしてやんな」
「はぁ」

 あとでお礼を言っとかなきゃかな。

「誠明~おかわり頂戴!」
「もう飲んだのか、早いな」

 2本目のカシスオレンジを手渡すと、ユキはザックの所に走っていった。

「んじゃ、ユキの事お願いします」
「はいよ」

 ん~ザックが父親代わりならナンニャさんは母親代わりと行いった感じだな、ふとしばらく夜は1人か?なんて思った。

「お~い誠明こっちこい!」

 ジルさんが手招きしているのでジルさん達の輪で飲み始めた。

 時間もあとわずかとなってきた時

「まっさあき~」

 という声と共に、右腕に柔らかい感触を感じた瞬間床にたたきつけられた。

「キャ」「うおぉ」

 ユキがフライングボディアタックを仕掛けてきた。

「ん~誠明~」

 顔が赤い完全に酔ってる。まだ2本しか飲んでないはずだが……。

 抱き着いたまま顔を擦り付けてきた。狐時代なら撫でてのサインだろうが抱き着かれたままじゃ撫でにくい……。

「撫でてほしいなら少し離れてくれないと撫でれないよ」
「はい!」

 ユキが、太ももの上に頭を乗せてきた。まぁ確かに撫でるときは膝の上に乗ってきたが、こりゃ膝枕って奴じゃん、逆がいいな。

「なんか暑いのぉ」
「だな、窓でも開けるか」

 ジルさんとクロンさんがからかいモードだな、暑くもないし!

 周囲からも「クスクス」って笑い声が聞こえるし皆ニヤニヤしているのが分かった。

 恥ずかしいとかそういうのはあるが、撫でてほしそうにしているユキの髪を撫でた。

 狐時代は顎下首回りお腹周りはフサフサって感じで触り心地が良かったが。女の子の髪ってのもなかなかサラサラで触り心地がいいな。

「んふふふ~♪」
「ご機嫌だな」
「うちはこのために生きてるからね~」

 そんなんでいいのか?なんて思ってしまった。
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