【R18】婚約破棄されたらおっとり系アラフォーを攻めることになりまして

チーズたると

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「父さんが、こういうの好きだったんだ。地下の部屋に繋がってる。部屋に繋がるもの以外にも一応道はあるんだけど……僕にはその道がどこに繋がってるのかまでは、わからない」

「道はあるけど、それを行けば迷う可能性が高い……って、ことですか?」
「そういうこと。今は、おとなしく地下の部屋に避難するのが無難だと思う」

 彼の言葉に首肯して、ニアンナはナミアと共に地下へと延びる階段をくだった。
 外では、依然としてヤンダークがよくわからないことをわめいている。

「お前達、朝まで俺の部屋に近付くんじゃないぞ! あと、朝食にはあっさりとしたものを用意しておけ! そうだな、フルーツなんかが良い! なんか良い雰囲気になりそうな良い感じのフルーツを用意しておけ!」

「王子、説明がガバガバすぎます」
「察しろ! 俺と心を通じ合わせるんだ!」

 常にあんな妄言に付き合わされているのかと思うと、彼の家臣もなかなかに大変である。

 そんなことを考えながら、地下への扉をきっちりと閉めて、ふたりは下へと進んだ。

 粗削りな階段をおりた先にあったのは、洞窟の通路だった。
 先に続く真っ暗な道を唖然として見て、ニアンナは訊く。

「まさかとは思いますけど……これ、ナミアさんのお父さんが掘ったんですか……?」

 彼は苦笑交じりに答えた。

「そのまさかなんだ。暗くて足許がわかりにくいから、気を付けて」
「はい」

 洞窟内に明かりはなく、故に暗さに慣れていく己の目だけが頼りである。
 少し歩くと、分かれ道に遭遇した。ニアンナは戸惑う。

「ナミアさん、道が……」
「大丈夫。こっちだよ」

 不安を覚え始めたニアンナとは裏腹に、ナミアは迷うことなく道を進んでいく。
 歩きながら、彼がそれを説明した。

「亡くなった父さんが残した地下だから、父さんがよく使ってた部屋は、定期的に掃除してるんだよ」

 なるほど、とニアンナは内心で納得する。つまり、ナミアにとって、ここは通い慣れた道であるわけだ。

 それにしても、こんな地下通路を掘り、その上、秘密の部屋まで作ってしまうあたり、彼の父はずいぶんとロマンチストだったらしい。少年の心を持ったまま大人になったということなのだろう。

「ここまで掘るのに、いったいどれだけ掛かったんでしょう……」
「うーん……友人達に手伝ってもらったっていう話は、聞いたことあるけど……」

 そんなことを話していると、道の先が壁に遮られた。行き止まりだった。
 これにはニアンナもさすがに困惑して、ナミアを見る。

「……ナミアさん、行き止まりですけど」
「そう見えるでしょう。だけどね……」

 返した彼は、手探りで行き止まりの壁をさぐった。

 なにをしているのかと思った直後、ナミアが指先にチカラを入れたのに合わせて、なんと壁が横に動き始める。

 行き止まりの壁ではなく、カムフラージュされた扉らしかった。

 まるで壁が引き戸のごとく、ゆっくりとひらいていく。そんな様子を、ニアンナはぽかんとして眺めた。

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