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しおりを挟むニアンナの背筋を、ぞくぞくとしたなにかが這い上がってくる。ナミアを、快感と羞恥心でめちゃくちゃにしてしまいたくなった。
意地悪を言って、恥じらいに泣かせてしまいたい。いやらしい台詞を言わせてやりたい。淫らな行動をとらせたい。
己の中にこのような欲求があったことにニアンナは驚くが、しかし、ナミアを前にすると、そのような希求は自然と湧き上がるのだった。
彼が身をよじりながら、息を乱す。
「はぁ、ン……だめ、なのに……ッ」
それは、イケナイのに感じてしまう己の肉体への戸惑いに聞こえた。ナミアの純真な精神が、他ならぬ貪婪な自らの体についてきていないのである。
ニアンナが触れるたびにびくびくと痙攣し、喘ぎを零す彼の感度はあまりに良好だった。疑うまでもなく、あの催淫効果のある煙のおかげだろう。
ナミアの肌は汗ばみ、癖のある黒髪が、ひたいやこめかみに貼りついている。年上の男性のわかっていながら、潤んでいる瞳に可愛らしさを覚えた。
ニアンナは舌を相手の胸に移動させる。と、ナミアは声を抑えて、枕にすがった。まるで、健気な生娘のごとき反応だった。
ニアンナの舌がねっとりとした愛撫を施すたびに、彼の足が落ち着きなさげにシーツを蹴る。悩ましげに身をよじる姿が、見る者をたまらない気持ちにさせた。
そこで、ニアンナは相手の下腹部が反応を示していることに感付く。
内心で笑って、衣服の上から彼の性器に触れた。
「あっ……!」
目を見張って声を零したナミアは、直後に顔を真っ赤に染める。
ニアンナは薄く笑みをうかべながら訊いた。
「ここ、こんなにしちゃうくらい、気持ちよかったんですか? まだ少ししか触ってませんよ」
「ち、ちが……っ」
布越しにそこを刺激すれば、彼は自身の手でくちを塞いで、喘ぎを抑えようとする。
相手が健気な言動をとるたびに虐めてしまいたくなるのは、どうしてなのだろうか。
「声、抑えたら、もっと意地悪しちゃいますけど」
ニアンナに言われると、ナミアは目をしばたたいて、戸惑う表情になる。どうすればいいのか、わからないのだろう。
手でくちを塞ぐことをやめない相手に、ニアンナは笑いかけた。
「……それは、私に虐められたいっていうことで、いいんですか?」
ナミアが本当にそんなことを願って行動するわけはないとわかっていながら、ニアンナは敢えて尋ねる。
彼は顔を真っ赤に染めたまま、眉尻をさげて困り果てた面持ちを作った。無意識にそんな顔をしているのであれば、なかなかに恐ろしいと思う。無自覚的な被虐体質――とでも、言ったところだろうか。
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