ハッピーエンドを迎えたら、溺愛王子から逃げたくなりました。

専業プウタ

文字の大きさ
5 / 20

5.すれ違う二人

しおりを挟む
「バレたか⋯⋯。既に今晩の舞踏会の格好は僕の独断で決めていたんだ。がっかりしたか?」

「何がですか? 用意周到なところも素敵ですし、ドレス選びを装ったお遊びも私は楽しんでましたよ」

思ったままのことを言ったのに、ジスランは照れたように頬を染めていた。

「ジスラン・ドートリッシュ王子殿下と、フェリシア・ドートリッシュ王子妃殿下の入場です」

豪華絢爛とした王宮の舞踏会会場にいる貴族たちが一斉に私たちに注目する。一際、敵意を感じる視線の先を見たら銀髪に深い紫色の瞳をしたドリアーヌ王妃が私たちを睨みつけていた。

舞踏会の開始を告げるダンスをジスランと私が踊る。

曲はジスランが昨晩鼻歌で歌っていた曲。

彼の腕が私の腰に回り、引き寄せられる。
私が恋した琥珀色の瞳がそこにある。

彼としか踊ったことがないから分からないが、ジスランはリードが抜群に上手いと思う。私は時折、ジスランと目線を合わせながら踊った。一晩一緒に練習したせいか、私の中で彼は一緒に戦っている同士感がある

足の痛みに耐えながら踊り終えると、しばらく動けないくらいの激痛に襲われる。演奏家たちが二曲目を演奏する準備を始めるのが見えた。

「二曲連続で踊るなんて本当に仲睦まじいのね」
誰かが囁いた声にハッとする。

(私たちが動かないから、もう一曲踊ると誤解されてる?)

ジスランの顔を見上げると、私の不安を察したように頷いた。

瞬間、体が浮くのが分かる。

「きゃ」

思わず声を上げてしまい慌てて口元に手を当てた。すると、その手をジスランが自分の首に回させる。

「皆様、僕たちはここで失礼させて頂きます。楽しい一時をお過ごしください」

ジスランの発した言葉に何故かところどころから小さな歓声が上がる。私には全く状況が理解できない。

「まあ、待ってくれジスラン王子。私から仲睦まじい新婚夫婦にプレゼントがあるのだ」

女性にしては低く重厚感のある声の主は私たちを睨みつけていたドリアーヌ王妃のもの。

「ドリアーヌ王妃、フェリシアには昨晩無理をさせている。贈り物は後日、日を改めてくれないだろうか?」

ジスランの声が堅くてとても贈り物を頂く雰囲気ではない。

二人は明らかに睨み合っている。

「すぐに終わりますわ。私の祖国バルニエにある別荘を二人にプレゼントさせてください。予定されている公務は今日のようにグレイアムが請け負えばいいですし、冬がくる前の過ごしやすい季節です。明日から二人でハネムーンに行ってきてくださいな」

ドリアーヌ王妃の提案に、拍手が湧き起こる。

王妃の隣にいる銀髪に琥珀色の瞳をしたグレイアム王子が私たちに向かって上品に微笑んだ。

グレイアム王子はジスランより四歳年下の十六歳。

彼は出兵したこともなければ、剣も握ったことさえないと噂される深窓のご令嬢のような王子様だ。

ジスランの表情が一層強張るのが分かった。

もしかしたら、何か罠が仕掛けてあるのかもしれない。

しかし、このような公のお祝いの場で王妃様からの贈り物を断ることもできない。

「ドリアーヌ王妃様。私共夫婦の為に過分なお気遣いありがとうございます」

私の言葉にドッと歓声が沸き起こった。

ジスランは私に小声で「罠だと分からないのか?」と囁く。

私は彼の首回した腕をより深く回し、彼の耳元で囁き返した。

「分かっております。何があっても期間限定の妻としてジスランを守り抜くと誓います」

罠だと分かっていても、蟠りを残さない為に飛び込むしかない。

噂レベルでは王妃が手引きしてジスランの母親を殺させたという話もある。にもかかわらず、貴族連中の盛り上がりを見るとジスランに味方は少なそうだ。

ジスランは私を横抱きにしながら、呆れたように「君に何ができる⋯⋯」と呟いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる

鷹 綾
恋愛
永遠の十七歳―― それは祝福ではなく、三百年続く“呪い”だった。 公には「名門イソファガス家の孫娘」として知られる少女キクコ。 だがその正体は、歴史の裏側で幾度も国を救ってきた不老の元聖女であり、 王家すら真実を知らぬ“生きた時代遺産”。 政治も権力も、面倒ごとは大嫌い。 紅茶と読書に囲まれた静かな余生(?)を望んでいたキクコだったが―― 魔王討伐後、王位継承問題に巻き込まれたことをきっかけに、 まさかの王位継承権十七位という事実が発覚する。 「……私が女王? 冗談じゃないわ」 回避策として動いたはずが、 誕生した新国王アルフェリットから、なぜか突然の求婚。 しかも彼は、 幼少期に命を救われた“恩人”がキクコであることを覚えていた―― 年を取らぬ姿のままで。 永遠に老いない少女と、 彼女の真実を問わず選んだ自分ファーストな若き王。 王妃になどなる気はない。 けれど、逃げ続けることももうできない。 これは、 歴史の影に生きてきた少女が、 はじめて「誰かの隣」を選ぶかもしれない物語。 ざまぁも陰謀も押し付けない。 それでも―― この国で一番、誰よりも“強い”のは彼女だった。

ローザリンデの第二の人生

梨丸
恋愛
伯爵令嬢、ローザリンデの夫はいつも彼女より仕事を優先させ、彼女を無碍にしている。 彼には今はもういない想い人がいた。 私と結婚したことにいい思いをしていないことは知っていた。 けれど、私の命が懸かっていた時でさえも、彼の精神は変わらなかった。 あなたが愛してくれないのなら、私は勝手に幸せになります。 吹っ切れたローザリンデは自分自身の幸せのために動くことにした。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)

王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。

あざとさを捨てた令嬢は、若き公爵に溺愛される

古紫汐桜
恋愛
婚約者の裏切りを目撃し、命を落とした“私”が目を覚ましたのは、 見知らぬ貴族令嬢の身体の中だった。 そこは、誰かの悪意によって評判を地に落とした世界。 かつて“あざとさ”で生きていた彼女の代わりに、 私はその人生を引き受けることになる。 もう、首を揺らして媚びる生き方はしない。 そう決めた瞬間から、運命は静かに歪み始めた。 冷酷と噂される若公爵ユリエル。 彼もまた、自らの運命に抗い続けてきた男だった。 そんな彼が、私にだけ見せた執着と溺愛。 選び直した生き方の先で待っていたのは、 溺れるほどの愛だった。 あざとさを捨てた令嬢と、運命に翻弄される若公爵。 これは、“やり直し”では終わらない、致命的な恋の物語。

煤かぶり姫は光の貴公子の溺愛が罰ゲームだと知っている。

朝霧心惺
恋愛
「ベルティア・ローレル。僕の恋人になってくれないかい?」  煌めく猫っ毛の金髪に太陽の瞳、光の貴公子の名を欲しいがままにするエドワード・ルードバーグ公爵令息の告白。  普通の令嬢ならば、嬉しさのあまり失神してしまうかもしれない状況に、告白された令嬢、ベルティア・ローレルは無表情のままぴくりとも頬を動かさない。  何故なら———、 (罰ゲームで告白なんて、最低の極みね)  黄金の髪こそが美しいという貴族の価値観の中で、煤を被ったような漆黒の髪を持つベルティアには、『煤かぶり姫』という蔑称がある。  そして、それは罰ゲーム結果の恋人に選ばれるほどに、貴族にとっては酷い見た目であるらしい。  3年間にも及ぶ学園生活も終盤に迫ったこの日告白されたベルティア、実家は伯爵家といえども辺境であり、長年の凶作続きにより没落寸前。  もちろん、実家は公爵家に反抗できるほどの力など持ち合わせていない。  目立つ事が大嫌いでありながらも渋々受け入れた恋人生活、けれど、彼の罰ゲームはただ付き合うだけでは終わらず、加速していく溺愛、溺愛、溺愛………!!  甘すぎる苦しみが、ベルティアを苦しめる。 「どうして僕の愛を疑うんだっ!!」 (疑うも何も、そもそもこの恋人ごっこはあなたへの罰ゲームでしょ!?)

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

顔が良ければそれでいいと思っていたけれど、気づけば彼に本気で恋していました。

朝日みらい
恋愛
魔物を討伐し国を救った若き魔術師アリア・フェルディナンド。 国王から「望むものを何でも与える」と言われた彼女が選んだ褒美は―― 「国一番の美男子を、夫にください」 という前代未聞のひと言だった。 急遽開かれた婿候補サロンで、アリアが一目で心を奪われたのは、 “夜の街の帝王”と呼ばれる美貌の青年ルシアン・クロード。 女たらし、金遣いが荒い、家の恥―― そんな悪評だらけの彼を、アリアは迷わず指名する。 「顔が好きだからです」 直球すぎる理由に戸惑うルシアン。 だが彼には、誰にも言えない孤独と過去があった。 これは、 顔だけで選んだはずの英雄と、 誰にも本気で愛されたことのない美貌の青年が、 “契約婚”から始める恋の物語。

処理中です...