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5.すれ違う二人
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「バレたか⋯⋯。既に今晩の舞踏会の格好は僕の独断で決めていたんだ。がっかりしたか?」
「何がですか? 用意周到なところも素敵ですし、ドレス選びを装ったお遊びも私は楽しんでましたよ」
思ったままのことを言ったのに、ジスランは照れたように頬を染めていた。
「ジスラン・ドートリッシュ王子殿下と、フェリシア・ドートリッシュ王子妃殿下の入場です」
豪華絢爛とした王宮の舞踏会会場にいる貴族たちが一斉に私たちに注目する。一際、敵意を感じる視線の先を見たら銀髪に深い紫色の瞳をしたドリアーヌ王妃が私たちを睨みつけていた。
舞踏会の開始を告げるダンスをジスランと私が踊る。
曲はジスランが昨晩鼻歌で歌っていた曲。
彼の腕が私の腰に回り、引き寄せられる。
私が恋した琥珀色の瞳がそこにある。
彼としか踊ったことがないから分からないが、ジスランはリードが抜群に上手いと思う。私は時折、ジスランと目線を合わせながら踊った。一晩一緒に練習したせいか、私の中で彼は一緒に戦っている同士感がある
足の痛みに耐えながら踊り終えると、しばらく動けないくらいの激痛に襲われる。演奏家たちが二曲目を演奏する準備を始めるのが見えた。
「二曲連続で踊るなんて本当に仲睦まじいのね」
誰かが囁いた声にハッとする。
(私たちが動かないから、もう一曲踊ると誤解されてる?)
ジスランの顔を見上げると、私の不安を察したように頷いた。
瞬間、体が浮くのが分かる。
「きゃ」
思わず声を上げてしまい慌てて口元に手を当てた。すると、その手をジスランが自分の首に回させる。
「皆様、僕たちはここで失礼させて頂きます。楽しい一時をお過ごしください」
ジスランの発した言葉に何故かところどころから小さな歓声が上がる。私には全く状況が理解できない。
「まあ、待ってくれジスラン王子。私から仲睦まじい新婚夫婦にプレゼントがあるのだ」
女性にしては低く重厚感のある声の主は私たちを睨みつけていたドリアーヌ王妃のもの。
「ドリアーヌ王妃、フェリシアには昨晩無理をさせている。贈り物は後日、日を改めてくれないだろうか?」
ジスランの声が堅くてとても贈り物を頂く雰囲気ではない。
二人は明らかに睨み合っている。
「すぐに終わりますわ。私の祖国バルニエにある別荘を二人にプレゼントさせてください。予定されている公務は今日のようにグレイアムが請け負えばいいですし、冬がくる前の過ごしやすい季節です。明日から二人でハネムーンに行ってきてくださいな」
ドリアーヌ王妃の提案に、拍手が湧き起こる。
王妃の隣にいる銀髪に琥珀色の瞳をしたグレイアム王子が私たちに向かって上品に微笑んだ。
グレイアム王子はジスランより四歳年下の十六歳。
彼は出兵したこともなければ、剣も握ったことさえないと噂される深窓のご令嬢のような王子様だ。
ジスランの表情が一層強張るのが分かった。
もしかしたら、何か罠が仕掛けてあるのかもしれない。
しかし、このような公のお祝いの場で王妃様からの贈り物を断ることもできない。
「ドリアーヌ王妃様。私共夫婦の為に過分なお気遣いありがとうございます」
私の言葉にドッと歓声が沸き起こった。
ジスランは私に小声で「罠だと分からないのか?」と囁く。
私は彼の首回した腕をより深く回し、彼の耳元で囁き返した。
「分かっております。何があっても期間限定の妻としてジスランを守り抜くと誓います」
罠だと分かっていても、蟠りを残さない為に飛び込むしかない。
噂レベルでは王妃が手引きしてジスランの母親を殺させたという話もある。にもかかわらず、貴族連中の盛り上がりを見るとジスランに味方は少なそうだ。
ジスランは私を横抱きにしながら、呆れたように「君に何ができる⋯⋯」と呟いた。
「何がですか? 用意周到なところも素敵ですし、ドレス選びを装ったお遊びも私は楽しんでましたよ」
思ったままのことを言ったのに、ジスランは照れたように頬を染めていた。
「ジスラン・ドートリッシュ王子殿下と、フェリシア・ドートリッシュ王子妃殿下の入場です」
豪華絢爛とした王宮の舞踏会会場にいる貴族たちが一斉に私たちに注目する。一際、敵意を感じる視線の先を見たら銀髪に深い紫色の瞳をしたドリアーヌ王妃が私たちを睨みつけていた。
舞踏会の開始を告げるダンスをジスランと私が踊る。
曲はジスランが昨晩鼻歌で歌っていた曲。
彼の腕が私の腰に回り、引き寄せられる。
私が恋した琥珀色の瞳がそこにある。
彼としか踊ったことがないから分からないが、ジスランはリードが抜群に上手いと思う。私は時折、ジスランと目線を合わせながら踊った。一晩一緒に練習したせいか、私の中で彼は一緒に戦っている同士感がある
足の痛みに耐えながら踊り終えると、しばらく動けないくらいの激痛に襲われる。演奏家たちが二曲目を演奏する準備を始めるのが見えた。
「二曲連続で踊るなんて本当に仲睦まじいのね」
誰かが囁いた声にハッとする。
(私たちが動かないから、もう一曲踊ると誤解されてる?)
ジスランの顔を見上げると、私の不安を察したように頷いた。
瞬間、体が浮くのが分かる。
「きゃ」
思わず声を上げてしまい慌てて口元に手を当てた。すると、その手をジスランが自分の首に回させる。
「皆様、僕たちはここで失礼させて頂きます。楽しい一時をお過ごしください」
ジスランの発した言葉に何故かところどころから小さな歓声が上がる。私には全く状況が理解できない。
「まあ、待ってくれジスラン王子。私から仲睦まじい新婚夫婦にプレゼントがあるのだ」
女性にしては低く重厚感のある声の主は私たちを睨みつけていたドリアーヌ王妃のもの。
「ドリアーヌ王妃、フェリシアには昨晩無理をさせている。贈り物は後日、日を改めてくれないだろうか?」
ジスランの声が堅くてとても贈り物を頂く雰囲気ではない。
二人は明らかに睨み合っている。
「すぐに終わりますわ。私の祖国バルニエにある別荘を二人にプレゼントさせてください。予定されている公務は今日のようにグレイアムが請け負えばいいですし、冬がくる前の過ごしやすい季節です。明日から二人でハネムーンに行ってきてくださいな」
ドリアーヌ王妃の提案に、拍手が湧き起こる。
王妃の隣にいる銀髪に琥珀色の瞳をしたグレイアム王子が私たちに向かって上品に微笑んだ。
グレイアム王子はジスランより四歳年下の十六歳。
彼は出兵したこともなければ、剣も握ったことさえないと噂される深窓のご令嬢のような王子様だ。
ジスランの表情が一層強張るのが分かった。
もしかしたら、何か罠が仕掛けてあるのかもしれない。
しかし、このような公のお祝いの場で王妃様からの贈り物を断ることもできない。
「ドリアーヌ王妃様。私共夫婦の為に過分なお気遣いありがとうございます」
私の言葉にドッと歓声が沸き起こった。
ジスランは私に小声で「罠だと分からないのか?」と囁く。
私は彼の首回した腕をより深く回し、彼の耳元で囁き返した。
「分かっております。何があっても期間限定の妻としてジスランを守り抜くと誓います」
罠だと分かっていても、蟠りを残さない為に飛び込むしかない。
噂レベルでは王妃が手引きしてジスランの母親を殺させたという話もある。にもかかわらず、貴族連中の盛り上がりを見るとジスランに味方は少なそうだ。
ジスランは私を横抱きにしながら、呆れたように「君に何ができる⋯⋯」と呟いた。
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