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15.王族侮辱罪
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王宮に戻り一週間。
ギディオン国王の命令で、私はドリアーヌ王妃がバルニエ王国にいる間の業務を請負うことになった。
王子妃の業務以上に王妃の業務は多岐に渡る。ドリアーヌ王妃の執務室に積み上がった書類は多くの情報で溢れていた。
別荘での一件は生還した八人の騎士の証言で、ロイ・ベルモンによるテロ行為とうい事で片付いた。
勿論、彼が独断で第一王子夫妻と騎士たちを巻き込む爆発を起こしたとは誰も思っていない。
私は彼の父で、ドートリッシュ王国の宰相であるアダム・ベルモン伯爵を召喚した。焦茶色の髪に黄土色の瞳をした神経質そうな方だ。
ノックの音と共に部屋に入って来たアダム・ベルモン伯爵は私を見るなり、面倒そうに挨拶をした。
「フェリシア・ドートリッシュ王子妃殿下に、アダム・ベルモンがお目にかかります」
「そのように渋々とされる挨拶ならば不要です。私は今日大切な話で貴方を呼んでいます」
「渋々と、とられてしまったなら申し訳ございません。ただ、フェリシア様の稀有な美しさに緊張して挨拶がお座なりになってしまっただけです」
アダム・ベルモンの馬鹿にしたような口振りに溜息が漏れる。今は王子妃でも私は元貧乏男爵令嬢。生まれを重視するドートリッシュ王国においては、鼠が綺麗な服を着て偉そうにしているように思われているのだろう。
「ロイ・ベルモンの件ですが⋯⋯」
「彼の事は勘当しました」
「事前に暗殺計画を知っていたからですか?」
「出来の悪い三男坊なので、不要だからですよ」
投げ捨てるような物言い。アダム・ベルモンは大きな事件を起こした息子を切り離して今の地位を守りたいのだろう。それでも、黒幕に繋がりそうな彼を逃す訳にはいかない。
「ロイ・ベルモンはどうして王族を巻き込むようなテロ行為を起こしたと思いますか?」
「存じ上げません。ロイ・ベルモンはベルモン伯爵家とは関係のない他人ですから。もう、宜しいですか? ご存知ないかもしれませんが、行政部はこの時期は大変忙しいのですよ」
「私も忙しい中、貴方を呼んでいるのですよ」
「分かっております。フェリシア王子妃殿下は本当に素晴らしい方です。二ヶ月前まで誰も知らなかった令嬢が、今はこの国の女性最高位の椅子に座っておられるのですから」
私を気に入らない気持ちを隠そうとせず、睨みつけてくるアダム・ベルモン。地位や名誉など私にとってはどうでも良い。人の価値観をどうこう言いたくないが、私にとって大事なのは大切な人を守る事だけ。
「今はドリアーヌ王妃の不在を預かってるだけですわ、正直、貴方が私個人をどう思っていようと興味はありません」
「流石です。ジスラン王子殿下を籠絡し、今やギディオン国王陛下まで思うがままに動かしてる。フェリシア王子妃殿下が、私程度の男に興味がないのは当然です」
王子妃の仕事は死に物狂いで覚えた。そんな私にギディオン国王が、ドリアーヌ王妃の仕事が滞ってるから進めておいて欲しいと頼んで来ただけの事。
「王族批判はそこまでにしなさい。今日、私がなぜ貴方を呼んだか心当たりはありませんか?」
私は手元にある資料の束を彼に見せびらかすように振った。行政部が決めた予算や支出に関する書類は全て国庫を最終的に管理するドリアーヌ王妃の元に届く。
「フェリシア王子妃殿下が何についてお話をされたいのか、さっぱりです。私にはなぜ此処に招集されたのか皆目検討もつきません」
口元に浮かべた薄笑い。アダム・ベルモンが私を軽んじてのらりくらりこの場をやり過ごそうとしているのは理解した。
「予算において雑費とされる部分から、この一年だけでも千五百リッシュ消えています。小さな邸宅が買えるくらいの額が、給与とは別に国庫からベルモン伯爵の手元に渡っているようです」
私の言葉にベルモン伯爵の顔色が変わる。遡ると彼は行政部に入って二年目から実に十五年国庫を横領している。最初は少額だったが、ここ三年は歯止めが効かなくなっていた。
「それが何ですか? ドリアーヌ王妃には一度も指摘されたことがありませんし、私のドートリッシュ王国への貢献を考えれば、然程、問題にすることでもないはずです」
「王妃には指摘された事がない」とは、まるで他の誰かには指摘されたかのような言い方に聞こえる。
国庫横領を黙認する代わりに息子をテロの実行犯として差し出した⋯⋯流石に妄想が飛躍し過ぎているかもしれない。
「そうですか?」
「あまりお金の話をなさると、お里が知れますよ」
冷や汗をかきながらも私を侮辱する言葉を止められない彼。
「私のことが気に入らなそうですね」
「それはそうでしょう。その席は雲の上の生まれの方やアメリア・ノリッジ公爵令嬢のような特別な才がある方のみが座るのを許されるはずです」
半ば興奮気味に息巻くアダム・ベルモン。ここでジスランの元婚約者アメリア・ノリッジの名前を聞くとは思わなかった。彼女はドートリッシュ王国創立以来の天才で貴族令嬢のお手本と評されている。
凡人の私は大人しくしていろというのはアダム・ベルモンの意見。
今、期間限定とはいえ私はジスランの妻。王子妃として不在の王妃の代理をしていたら不正に気がついたから、問い詰めているだけ。役割を貰い頼られたのだから、全力を尽くす。
「では、次の質問です」
「まだあるのですか? 私は忙しいのです。私がいないと、このドートリッシュ王国は回りません」
国庫横領までしておいて、ベルモン伯爵の言い分には呆れるしかない。私は次なる彼の罪を暴いた。
「今年の8月28日、バルニエ王国の外交官オスカー・エイベルと会食をしたと申告していますが、オスカー・エイベルは同日マルケル王国に赴きマルケル国王と会談しています」
バルニエ王国とマルケル王国は馬車で二ヶ月以上は掛かる距離。会談をした新聞記事まである。ベルモン伯爵が虚偽申告をしたのは明白だ。
「誰にでも間違うことはあります!」
「どうして間違えたと思いますか?」
「そのような昔の細かい事は覚えておりません!」
「たった三ヶ月前の事を覚えていられないのならば、もう引退なさった方が宜しいのではないですか?」
私の言葉に目を吊りあげたアダム・ベルモンは、突然私の首を締め上げてくる。
「私がどれだけの苦労をしてここまで来たか⋯⋯」
私はロイ・ベルモンに首を絞められたのを思い出していた。彼は家族の為、親であるアダム・ベルモンは自分の非を否定されて激昂して愚行に及んでいる。
私は外の人に気付いて貰えるように、後ろ足で窓際に飾ってあった花瓶を落として割った。
ガシャン!
「いかが致しましたか、フェリシア王子妃殿下」
扉の前で待機していたルイス・ビュイ卿が入って来る。
咄嗟にアダム・ベルモンは私の首から手を離した。
「アダム・ベルモン伯爵を拘束して! 王族暗殺未遂よ」
ルイス・ビュイに拘束されるとベルモン伯爵は暴れ出した。
「誤解だ。私は何も。この女に嵌められたんだ」
彼を拘束できればジスランを暗殺した件についても尋問できる。
「この女とは、聞き捨てなりませんわね」
その時、低く凛とした女の声がし、皆が声の方向を見た。
「ベルモン伯爵閣下、王族侮辱罪ですわ」
「アメリア・ノリッジ公爵令嬢⋯⋯」
艶やかな黒髪を高い位置で纏め上げ、切長の灼眼をした女性。アメリア・ノリッジ公爵令嬢、ジスランの元婚約者だ。贅沢にルビーを使った真っ赤なドレスの存在感にも負けない圧倒的な威圧感。まるで、アメリアが歩いて来る花道を作るように皆が道を開けた。
ギディオン国王の命令で、私はドリアーヌ王妃がバルニエ王国にいる間の業務を請負うことになった。
王子妃の業務以上に王妃の業務は多岐に渡る。ドリアーヌ王妃の執務室に積み上がった書類は多くの情報で溢れていた。
別荘での一件は生還した八人の騎士の証言で、ロイ・ベルモンによるテロ行為とうい事で片付いた。
勿論、彼が独断で第一王子夫妻と騎士たちを巻き込む爆発を起こしたとは誰も思っていない。
私は彼の父で、ドートリッシュ王国の宰相であるアダム・ベルモン伯爵を召喚した。焦茶色の髪に黄土色の瞳をした神経質そうな方だ。
ノックの音と共に部屋に入って来たアダム・ベルモン伯爵は私を見るなり、面倒そうに挨拶をした。
「フェリシア・ドートリッシュ王子妃殿下に、アダム・ベルモンがお目にかかります」
「そのように渋々とされる挨拶ならば不要です。私は今日大切な話で貴方を呼んでいます」
「渋々と、とられてしまったなら申し訳ございません。ただ、フェリシア様の稀有な美しさに緊張して挨拶がお座なりになってしまっただけです」
アダム・ベルモンの馬鹿にしたような口振りに溜息が漏れる。今は王子妃でも私は元貧乏男爵令嬢。生まれを重視するドートリッシュ王国においては、鼠が綺麗な服を着て偉そうにしているように思われているのだろう。
「ロイ・ベルモンの件ですが⋯⋯」
「彼の事は勘当しました」
「事前に暗殺計画を知っていたからですか?」
「出来の悪い三男坊なので、不要だからですよ」
投げ捨てるような物言い。アダム・ベルモンは大きな事件を起こした息子を切り離して今の地位を守りたいのだろう。それでも、黒幕に繋がりそうな彼を逃す訳にはいかない。
「ロイ・ベルモンはどうして王族を巻き込むようなテロ行為を起こしたと思いますか?」
「存じ上げません。ロイ・ベルモンはベルモン伯爵家とは関係のない他人ですから。もう、宜しいですか? ご存知ないかもしれませんが、行政部はこの時期は大変忙しいのですよ」
「私も忙しい中、貴方を呼んでいるのですよ」
「分かっております。フェリシア王子妃殿下は本当に素晴らしい方です。二ヶ月前まで誰も知らなかった令嬢が、今はこの国の女性最高位の椅子に座っておられるのですから」
私を気に入らない気持ちを隠そうとせず、睨みつけてくるアダム・ベルモン。地位や名誉など私にとってはどうでも良い。人の価値観をどうこう言いたくないが、私にとって大事なのは大切な人を守る事だけ。
「今はドリアーヌ王妃の不在を預かってるだけですわ、正直、貴方が私個人をどう思っていようと興味はありません」
「流石です。ジスラン王子殿下を籠絡し、今やギディオン国王陛下まで思うがままに動かしてる。フェリシア王子妃殿下が、私程度の男に興味がないのは当然です」
王子妃の仕事は死に物狂いで覚えた。そんな私にギディオン国王が、ドリアーヌ王妃の仕事が滞ってるから進めておいて欲しいと頼んで来ただけの事。
「王族批判はそこまでにしなさい。今日、私がなぜ貴方を呼んだか心当たりはありませんか?」
私は手元にある資料の束を彼に見せびらかすように振った。行政部が決めた予算や支出に関する書類は全て国庫を最終的に管理するドリアーヌ王妃の元に届く。
「フェリシア王子妃殿下が何についてお話をされたいのか、さっぱりです。私にはなぜ此処に招集されたのか皆目検討もつきません」
口元に浮かべた薄笑い。アダム・ベルモンが私を軽んじてのらりくらりこの場をやり過ごそうとしているのは理解した。
「予算において雑費とされる部分から、この一年だけでも千五百リッシュ消えています。小さな邸宅が買えるくらいの額が、給与とは別に国庫からベルモン伯爵の手元に渡っているようです」
私の言葉にベルモン伯爵の顔色が変わる。遡ると彼は行政部に入って二年目から実に十五年国庫を横領している。最初は少額だったが、ここ三年は歯止めが効かなくなっていた。
「それが何ですか? ドリアーヌ王妃には一度も指摘されたことがありませんし、私のドートリッシュ王国への貢献を考えれば、然程、問題にすることでもないはずです」
「王妃には指摘された事がない」とは、まるで他の誰かには指摘されたかのような言い方に聞こえる。
国庫横領を黙認する代わりに息子をテロの実行犯として差し出した⋯⋯流石に妄想が飛躍し過ぎているかもしれない。
「そうですか?」
「あまりお金の話をなさると、お里が知れますよ」
冷や汗をかきながらも私を侮辱する言葉を止められない彼。
「私のことが気に入らなそうですね」
「それはそうでしょう。その席は雲の上の生まれの方やアメリア・ノリッジ公爵令嬢のような特別な才がある方のみが座るのを許されるはずです」
半ば興奮気味に息巻くアダム・ベルモン。ここでジスランの元婚約者アメリア・ノリッジの名前を聞くとは思わなかった。彼女はドートリッシュ王国創立以来の天才で貴族令嬢のお手本と評されている。
凡人の私は大人しくしていろというのはアダム・ベルモンの意見。
今、期間限定とはいえ私はジスランの妻。王子妃として不在の王妃の代理をしていたら不正に気がついたから、問い詰めているだけ。役割を貰い頼られたのだから、全力を尽くす。
「では、次の質問です」
「まだあるのですか? 私は忙しいのです。私がいないと、このドートリッシュ王国は回りません」
国庫横領までしておいて、ベルモン伯爵の言い分には呆れるしかない。私は次なる彼の罪を暴いた。
「今年の8月28日、バルニエ王国の外交官オスカー・エイベルと会食をしたと申告していますが、オスカー・エイベルは同日マルケル王国に赴きマルケル国王と会談しています」
バルニエ王国とマルケル王国は馬車で二ヶ月以上は掛かる距離。会談をした新聞記事まである。ベルモン伯爵が虚偽申告をしたのは明白だ。
「誰にでも間違うことはあります!」
「どうして間違えたと思いますか?」
「そのような昔の細かい事は覚えておりません!」
「たった三ヶ月前の事を覚えていられないのならば、もう引退なさった方が宜しいのではないですか?」
私の言葉に目を吊りあげたアダム・ベルモンは、突然私の首を締め上げてくる。
「私がどれだけの苦労をしてここまで来たか⋯⋯」
私はロイ・ベルモンに首を絞められたのを思い出していた。彼は家族の為、親であるアダム・ベルモンは自分の非を否定されて激昂して愚行に及んでいる。
私は外の人に気付いて貰えるように、後ろ足で窓際に飾ってあった花瓶を落として割った。
ガシャン!
「いかが致しましたか、フェリシア王子妃殿下」
扉の前で待機していたルイス・ビュイ卿が入って来る。
咄嗟にアダム・ベルモンは私の首から手を離した。
「アダム・ベルモン伯爵を拘束して! 王族暗殺未遂よ」
ルイス・ビュイに拘束されるとベルモン伯爵は暴れ出した。
「誤解だ。私は何も。この女に嵌められたんだ」
彼を拘束できればジスランを暗殺した件についても尋問できる。
「この女とは、聞き捨てなりませんわね」
その時、低く凛とした女の声がし、皆が声の方向を見た。
「ベルモン伯爵閣下、王族侮辱罪ですわ」
「アメリア・ノリッジ公爵令嬢⋯⋯」
艶やかな黒髪を高い位置で纏め上げ、切長の灼眼をした女性。アメリア・ノリッジ公爵令嬢、ジスランの元婚約者だ。贅沢にルビーを使った真っ赤なドレスの存在感にも負けない圧倒的な威圧感。まるで、アメリアが歩いて来る花道を作るように皆が道を開けた。
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