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第1章 突入! エベレストダンジョン!
第36話 想定外が重なる。
しおりを挟む下の階層からの侵入に備えて塞いでいた壁を取り除く。
「まだ、敵は来ていないな」
《オブストラクション》でステルス性を上げてから飛んで行く。
ガンダー軍の先頭にいる集団に《インダクション》を掛けて上に誘導してから、奥へ向かった。
「いやー、5,000の軍勢ともなると壮観だな」
5,000の軍勢を飛び越えて、57階層へ繋がるスロープを塞ぐ。
改めてガンダー軍最後尾から《インダクション》を掛けつつ移動する。
――だが、中ほどまで戻ったところで、大きな岩が飛んできた。
「うおっと! ……何だ?」
ガーーーン!
避けた岩が壁に当たって砕け散った。
岩が自然に飛んでくるなんてことは無いので、誰が投げたのか探す……っと、いた。
あいつだ。……あれがガンダーだな。他の魔人族と比べてもひと際デカイ。
ガンダーの周りの魔人族やモンスターは誘導に掛かっていて、ゆらゆらと移動している。
ガンダーには効いていないようだ。
モンスターと同様、魔人族も魔力を身に纏って、攻撃にも防御にも利用している。……効いていないという事は、その魔力の膜が厚いという事か。
「吾輩の言葉が聞こえる同胞に告ぐ! 坂を塞げーい! あいつを上に行かせるな!」
ガンダーが俺に岩を投げつつ、大声で指示を発すると、まだ誘導に掛かっていない魔人がハイオーガやジャイアントライノを操り、スロープ前に立ち塞がった。
「チッ!」
それでもガンダーの上を旋回し、飛んでくる岩を避けつつ《インダクション》を届く範囲に掛け続けた。
「だいだい届いたか」
ある程度の距離を保ち、地面に降りる。
「お前は獣人では無いな。……幼子でもない。……何者だ?」
上から見ていてもデカかったが、想像以上にデカイな。アンドレ・ザ・ジャイアントっていう昔いたプロレスラーよりデカイ。
髪型もモジャモジャでそっくりだが、はっきりとした違いがある。
角だ。大きく、まっすぐな角が一対、生えている。
「まあ、仲間? 保護者? みたいな者だ」
「ほう、お前の庇護下にある者が我らが魔王様の軍である吾輩の軍の邪魔をしているという事だな?」
「邪魔かどうかは見方によるな……。俺とアイツは絡んで来たヤツらに対応しただけだ」
「その対応とやらは、どういったものだ?」
ガンダーの赤い瞳がギラリと光った。
******ミケ
ユウトが飛び出していくと、ガンダー軍が入って来おった。
……序盤は上手くいっておるな。
分かれ道で隊は分かれ、行き止まりにはマグマ地帯がある。
誘導に掛かった奴らはお構いなしにマグマにハマってゆくし、アニカ達の攻撃も加わり、数を減らしておる。
我も別の行き止まりで魔人やらモンスターやらを屠っておる。
しばらく経つと、誘導が解けたのかモンスター共が迷路など関係無いとばかりに、壁を破壊して直線的に進みだしおった。
ガーンッ!! ドガン! ガラガラガラ……
せっかく皆で作った迷路が壊されてゆく。
「まずいのー。どうしたものかのぅ?」
とりあえず、近場の敵にトドメを刺して2人の元へ向かおう。
「おーい! アニカとアニタよ、なかなかまずい事になったの~」
「その割には落ちついていますね。ミケさん」
「まぁ、まだまだ始まったばかりじゃからのう」
2人には前線を下げて、魔人族を引き込んでから倒してもらうようにし、我はデカブツ共を駆逐してゆく。
ユウトも戻って来んし、何かが起こったようじゃのう。まあ下からはいまだに敵が登ってきておるから、作戦自体は上手くいっておる。
……と、言う事は、ガンダーじゃな。ユウトなら遅れは取らんじゃろうし、我らは我らでこ奴らを潰してゆくだけじゃな。
「よ~し、2人ともいったん下がっておれー。雷がゆくぞー」
「わかった~」
離れた所で戦っておる2人を我より後ろに下げて、“電気の層”を走らせる。
バチバチバチバチッ! ボワァ~! チリチリチリ……
「ウワァーーーー!」「グゥオーーーウ!」
魔人族の悲鳴や、モンスターの鳴き声がそこかしこで上がる。
「アニカー、アニター、もうよいぞ~」
「ミケさん! ありがとー!」「今日もきれいだったね~」
2人が元気に魔人狩りに戻ったし……
「このデカブツ共の相手は、白狐になった方が楽じゃな」
体格はハイオーガよりデカく、ジャイアントライノと同じくらいでいいじゃろ。それでもハイオーガは我の動きについてこれまい。
「よし、ゆくぞ!」
******ユウト
「どう対応したかって? それは決まっている。全員にお亡くなり頂いたんだよ」
「なぁにぃ? 全員だぁ?」
「そうだ。――ああそれと、グンガルガとグンダリデは一緒の墓に弔ってやったぞ。他の魔人族も弔ったし、角も奪っていない」
ガンダーは、歯を食いしばり、怒りに震えてはいるが、取り乱さないな。
「そうか、お前達と戦い、散ったか。……その上、弔ってまで貰って……感謝するぞ」
さすが一軍の将、こりゃ強敵だ。
「――だが!!」
階層全体に響くような大声だった。
「今、ここには吾輩とお前の2人しかおらん」
確かに殆どが上に向かっている。
「吾輩は、魔王軍第1軍団長<力>のガンダーである。魔王様の名代として、任を預かってはいるが、それを成すにはお前を避けては通れん!」
ガンダーの身体が紅潮していく。
「よって、お主と1対1の決闘を申し込む。これは、吾輩の愚妹、愚弟の弔い合戦でもある!」
要は仇を取りたいということね。
「俺の知っている娘は、お前達が作ったこのダンジョンの所為で父親を失い、他にも罪なき人々が巻き込まれて死んでいる」
まぁ、アニカ達の仇討ち以外は正直どうでもいいんだがな。
「俺の名は馬場勇人。ヒト族だ。この決闘、受けよう」
「感謝する。ヒト族のババ・ユウトよ」
ガンダーは背中に背負っていた何かの金属で出来ている巨大な槌を片手に持ち、もう片方の手で自分と同じくらいの巨岩を鷲掴みにして、高々と持ち上げた。
「吾輩がこの岩を上に放り、落ちたところで開始とする。よいか?」
そんなに大きい岩にする必要ある? とは思ったが、別に支障はない。
「ああ、いいぞ」
ガンダーは高々と上げた岩を、俺とガンダーの中間辺りを狙って高く放り投げた。
岩は天井に着くんじゃないかと言うほど高く上がり、再び加速度をつけて地面に落ちる。
ドッシャーーーン!
「ぶっ潰ーす!!」
ガンダーはまっすぐ俺に向かって走り出し、その俺は抜刀してその場に構えた。
「来い!」
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