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第二章
油断は禁物 2
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唐揚げや焼き飯などの食べ物をひと通り食べ終わる。
「じゃあ」と花森が帰りを促したところで「もう一件行こうよ」と三木が席を立った。
「いえ、あの……もう遅いですし」
22時を回っているため、花森は早く帰りたい。だが、三木は「一件だけ。タクシーで送るし」と言って強引に花森を連れて行く。
こんなことになるのなら最初から断ればよかったと花森は後悔した。先輩が相手ではあまり強くも出られない。
ほぼ無理矢理連れてこられたのはバーらしき地下の店で、薄暗い店内にカウンター席しかないような狭い場所だった。他に客もいない。
並んで座ると、三木はバーテンダーに2人分のカクテルを何やら注文している。選ぶこともできないのか、と花森はおもむろに怪訝な表情を浮かべて三木を見た。
「はい、乾杯」
「はい……」
一口飲んでアルコール度の高さに花森は驚く。かあっと喉の奥に火が付いたように熱い。けほっと不自然な咳が出た。
「こ、れ強くないですか?」
「だいじょーぶだいじょーぶ、慣れるから」
慣れる、というのは一日でどうこうなるものではない気がする。もう一口だけ飲んでみると、今度は頭がくらりとした。
「ご、ごめんなさい。ちょっとトイレに行ってきます」
ふらついているのを知られるのはまずい、と花森は勘が働く。
この店の雰囲気と言い、三木といい、なんだか普通ではない気がする。
花森はなるべく平静を装いながら、こっそり会社の携帯電話を握りしめてトイレの個室にこもった。
「……っはあ……ううっ……」
ふらつき、目の前が回る。こんなに急激に酔ったのは初めてかもしれない。
まずい、というのは間違いないだろう。そう思うとジワリと目に涙が溜まる。
はめられたのかもしれない。
何も知らない新卒だからと、強い酒を飲まされてしまった。酔っているのを知られたら、三木はどうするつもりなのだろうか。いやな予感しかしない。
悔しい、悔しい、悔しい……。
トイレの床にぽたりと水滴が落ちる。
自分の弱さと断れなかった状況に涙が止まらなくなった。暫くトイレに腰を下ろして酔いがさめないかと待ってみる。
一向によくならないどころかますますアルコールが回って来た気がした。
携帯電話を握りしめる。電波は入っている。頼れるとしたら……。
思い当たる人があまりにもいなくて、花森は自分自身に呆れた。
電話をかけ始めると、2コールで相手が出る。
『どうした? こんな夜中に……』
「ぅぐっ……とーみ……さんっ……」
『泣いてるのか!? 何かあったのか??』
「お、お酒、飲まされてっ……わ、わたしっ……」
『分かった、そこを動くな、今からそっちに向かう。場所は会社の近くだな?」
「なん……なんで、ここが……?」
『お前のいる場所は俺のPCから見られる。ビルの何階だ?』
「ち……ちか、一階……です」
『地下一階だな。分かった。そこを動かないで待っていろ』
「うううううーーーー」
花森の目からとめどなく涙が溢れる。あんなに好きじゃないと思っていた相手の声に、何よりも安心してしまう。
『大丈夫だ、近くにいるからそんなにかからずに行ける』
「……はい」
そこで電話はプツリと切れた。
あと何分で東御はここに来るのだろう。その前に三木は放っておいて大丈夫なのだろうか。
「じゃあ」と花森が帰りを促したところで「もう一件行こうよ」と三木が席を立った。
「いえ、あの……もう遅いですし」
22時を回っているため、花森は早く帰りたい。だが、三木は「一件だけ。タクシーで送るし」と言って強引に花森を連れて行く。
こんなことになるのなら最初から断ればよかったと花森は後悔した。先輩が相手ではあまり強くも出られない。
ほぼ無理矢理連れてこられたのはバーらしき地下の店で、薄暗い店内にカウンター席しかないような狭い場所だった。他に客もいない。
並んで座ると、三木はバーテンダーに2人分のカクテルを何やら注文している。選ぶこともできないのか、と花森はおもむろに怪訝な表情を浮かべて三木を見た。
「はい、乾杯」
「はい……」
一口飲んでアルコール度の高さに花森は驚く。かあっと喉の奥に火が付いたように熱い。けほっと不自然な咳が出た。
「こ、れ強くないですか?」
「だいじょーぶだいじょーぶ、慣れるから」
慣れる、というのは一日でどうこうなるものではない気がする。もう一口だけ飲んでみると、今度は頭がくらりとした。
「ご、ごめんなさい。ちょっとトイレに行ってきます」
ふらついているのを知られるのはまずい、と花森は勘が働く。
この店の雰囲気と言い、三木といい、なんだか普通ではない気がする。
花森はなるべく平静を装いながら、こっそり会社の携帯電話を握りしめてトイレの個室にこもった。
「……っはあ……ううっ……」
ふらつき、目の前が回る。こんなに急激に酔ったのは初めてかもしれない。
まずい、というのは間違いないだろう。そう思うとジワリと目に涙が溜まる。
はめられたのかもしれない。
何も知らない新卒だからと、強い酒を飲まされてしまった。酔っているのを知られたら、三木はどうするつもりなのだろうか。いやな予感しかしない。
悔しい、悔しい、悔しい……。
トイレの床にぽたりと水滴が落ちる。
自分の弱さと断れなかった状況に涙が止まらなくなった。暫くトイレに腰を下ろして酔いがさめないかと待ってみる。
一向によくならないどころかますますアルコールが回って来た気がした。
携帯電話を握りしめる。電波は入っている。頼れるとしたら……。
思い当たる人があまりにもいなくて、花森は自分自身に呆れた。
電話をかけ始めると、2コールで相手が出る。
『どうした? こんな夜中に……』
「ぅぐっ……とーみ……さんっ……」
『泣いてるのか!? 何かあったのか??』
「お、お酒、飲まされてっ……わ、わたしっ……」
『分かった、そこを動くな、今からそっちに向かう。場所は会社の近くだな?」
「なん……なんで、ここが……?」
『お前のいる場所は俺のPCから見られる。ビルの何階だ?』
「ち……ちか、一階……です」
『地下一階だな。分かった。そこを動かないで待っていろ』
「うううううーーーー」
花森の目からとめどなく涙が溢れる。あんなに好きじゃないと思っていた相手の声に、何よりも安心してしまう。
『大丈夫だ、近くにいるからそんなにかからずに行ける』
「……はい」
そこで電話はプツリと切れた。
あと何分で東御はここに来るのだろう。その前に三木は放っておいて大丈夫なのだろうか。
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