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第三章
湧き上がる復讐心 3
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「さっき東御さんいなかった? えっうそ、もしかして一緒に通勤?」
「いえ、電車で会っただけです。コーヒーを買うから、と言って先に行きましたよ」
「必死になってるの? あやしいなあ」
「やめてください」
花森は、一番会いたくない先輩に会ってしまったと頭が痛い。
朝からついてないなと三木に視線もやらずに歩き続けた。
「花森ちゃんて、ああいう人が好きなんだねえ」
「何を言ってるんですか? 変な誤解をしないでいただけますか?」
そのまま改札を抜け駅を出て、花森は会社を目指して早歩きになる。
なるべく三木との時間を減らそうと思うと、今にも走り出したかった。
「あの日、なんで東御さんを呼んだわけ? 俺、ずっと納得いかなかったんだよね。男と飲んでて別の男に電話するなんてまあまあ異常だよ? だってさ、東御さんに助けてって電話したんでしょ?」
「……」
「俺、気付いたわけ。花森ちゃんは東御さんが好きだったんだなあって」
三木の話す言葉が花森の一歩一歩にまとわりついてくる。
言い返したいと思うのに、あの日の恐怖がぞわりと身体に蘇って声すら上げられない。
三木から語られる「あの日」の出来事に、花森の息が徐々に荒くなっていく。
「花森!」
そこで後ろから声が上がった。
花森がよく知る声に振り返ると、息を切らしながらこちらに向かって走ってくる黒いパンツスーツ姿の松井がいた。
「何やってんの、三木」
「あ、松井さん」
三木は先輩である松井の姿を目に入れてへらりと笑う。
松井は花森と三木の間に立ち、怯える花森の腕を掴んだ。
「行こ、花森」
「はい……」
松井は三木の元から花森を引き離し、急いで会社のビルに入る。
三木が後ろから来ていないのを確認すると、営業部のデスクに向かう前に花森を連れて休憩室に向かった。
休憩室に着くと、松井は花森を席に座らせて立ったまま携帯電話を取り出す。
どこかに電話をしているようだ。
「あ、お疲れさま。今、デスク?」
誰かと話をしている松井を花森はじっと待っている。
「花森と一緒に休憩室にいる。三木が花森に接触してきて、花森怯えてるから落ち着くまでここにいてもいい? そう。うん。分かってるって。うん。心配だよね、少ししたらこっそり様子見に来てあげて。うん、じゃ」
携帯電話を切った松井は花森の隣に腰掛けた。
「東御に報告したから。もうちょっとしたらここに来ると思う」
「あ、ありがとうございます……」
松井は隣に座る花森の前髪を手で梳かしながら、「怖かったね」と声をかけた。
花森は堪らず涙を零す。先ほどまでは耐えていたが、あんなに自分が何もできなくなるとは思わなかった。
「いえ、電車で会っただけです。コーヒーを買うから、と言って先に行きましたよ」
「必死になってるの? あやしいなあ」
「やめてください」
花森は、一番会いたくない先輩に会ってしまったと頭が痛い。
朝からついてないなと三木に視線もやらずに歩き続けた。
「花森ちゃんて、ああいう人が好きなんだねえ」
「何を言ってるんですか? 変な誤解をしないでいただけますか?」
そのまま改札を抜け駅を出て、花森は会社を目指して早歩きになる。
なるべく三木との時間を減らそうと思うと、今にも走り出したかった。
「あの日、なんで東御さんを呼んだわけ? 俺、ずっと納得いかなかったんだよね。男と飲んでて別の男に電話するなんてまあまあ異常だよ? だってさ、東御さんに助けてって電話したんでしょ?」
「……」
「俺、気付いたわけ。花森ちゃんは東御さんが好きだったんだなあって」
三木の話す言葉が花森の一歩一歩にまとわりついてくる。
言い返したいと思うのに、あの日の恐怖がぞわりと身体に蘇って声すら上げられない。
三木から語られる「あの日」の出来事に、花森の息が徐々に荒くなっていく。
「花森!」
そこで後ろから声が上がった。
花森がよく知る声に振り返ると、息を切らしながらこちらに向かって走ってくる黒いパンツスーツ姿の松井がいた。
「何やってんの、三木」
「あ、松井さん」
三木は先輩である松井の姿を目に入れてへらりと笑う。
松井は花森と三木の間に立ち、怯える花森の腕を掴んだ。
「行こ、花森」
「はい……」
松井は三木の元から花森を引き離し、急いで会社のビルに入る。
三木が後ろから来ていないのを確認すると、営業部のデスクに向かう前に花森を連れて休憩室に向かった。
休憩室に着くと、松井は花森を席に座らせて立ったまま携帯電話を取り出す。
どこかに電話をしているようだ。
「あ、お疲れさま。今、デスク?」
誰かと話をしている松井を花森はじっと待っている。
「花森と一緒に休憩室にいる。三木が花森に接触してきて、花森怯えてるから落ち着くまでここにいてもいい? そう。うん。分かってるって。うん。心配だよね、少ししたらこっそり様子見に来てあげて。うん、じゃ」
携帯電話を切った松井は花森の隣に腰掛けた。
「東御に報告したから。もうちょっとしたらここに来ると思う」
「あ、ありがとうございます……」
松井は隣に座る花森の前髪を手で梳かしながら、「怖かったね」と声をかけた。
花森は堪らず涙を零す。先ほどまでは耐えていたが、あんなに自分が何もできなくなるとは思わなかった。
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