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第三章
湧き上がる復讐心 2
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翌朝から、東御は花森と一緒に通勤するようになった。
「さすがに通勤中に何かしてくることはないはずですよ」と花森は東御の心配をなだめたが、東御源愈は隙に付け入るのが得意な男だ。調査がどこまでされているか分からないが、生活サイクルは把握されていると考えた方が良い。
そんな話をわざわざ花森にする気がおきず、東御は「念のためだ」とだけ言って花森と電車に乗った。
通勤時間の満員電車はぎゅうぎゅうと周りから圧が掛かる。
東御は花森を守るように自分が壁を作り、花森のスペースを作った。
自分の前で捕まる場所がなくフラフラしている花森の背に手を回し、「腕に捕まっていると良い」と囁く。
花森の隣に立っていた女性が、漏れ聞こえる東御の提案に明らかに鼻息を荒くしたが東御は気付かないふりを通す。
花森は東御の腕に捕まった。
東御は片手をつり革が下がっているパイプ部分にかけ、片手を花森の背中に当てている。
花森は、自分の背中に回っている腕に軽く手を添えて東御に密着していた。
朝から公共の場で抱き合っている気分だ。
満員電車だから、不可抗力ですよ……と花森は揺れる電車に合わせて東御の胸に頭を付ける。
そんなわけで東御は頭突きを受け続けていた。
「朝の通勤電車って大変ですねえ」
電車を降りて花森が「ふう」と息を吐く。
「……お前、楽しんでただろ」
「え?? やだあ、何がですかあ?」
花森はあからさまに「ぎく」という顔をしたが、楽しんでいたのではない、甘えていたのだ。
東御にとってはそれが頭突き行為だったとしても。
「会社に入るのは別々が良いだろうから、俺はコーヒーでも買っていく」
「はい……」
「じゃあな」
「お疲れ様です」
会社近くの駅のホームで、東御は歩くスピードを上げ先に行ってしまった。
花森は東御との交際を公にするつもりはなかったが、ただ恋愛をしているだけなのになと思う。
これが社会ではなく学校であれば、学生生活で堂々と出来たのだろう。
社会人というのは外の顔が必要らしい。
こうなってみると、以前、堂々としていたいと言っていた東御の気持ちが分かった。
悪いことをしているわけではないのに、こそこそとするのは何だか寂しい。
秘密があるのはスリルがあって楽しいのだろうと楽観的に考えていたが、一緒にコーヒーショップへ立ち寄ることもできないのだ。
花森は肩を落としてゆっくりと電車のホームを歩く。
すると、花森の隣にぬっとあらわれたサラリーマンが「おはよう」と声を発した。
「おはようございます、三木さん……」
仕事での接点がなくなり、ここ最近では会話もしていなかった。
こんなのただの朝の挨拶じゃないか、と花森は無理に笑顔を作ろうとする。
「さすがに通勤中に何かしてくることはないはずですよ」と花森は東御の心配をなだめたが、東御源愈は隙に付け入るのが得意な男だ。調査がどこまでされているか分からないが、生活サイクルは把握されていると考えた方が良い。
そんな話をわざわざ花森にする気がおきず、東御は「念のためだ」とだけ言って花森と電車に乗った。
通勤時間の満員電車はぎゅうぎゅうと周りから圧が掛かる。
東御は花森を守るように自分が壁を作り、花森のスペースを作った。
自分の前で捕まる場所がなくフラフラしている花森の背に手を回し、「腕に捕まっていると良い」と囁く。
花森の隣に立っていた女性が、漏れ聞こえる東御の提案に明らかに鼻息を荒くしたが東御は気付かないふりを通す。
花森は東御の腕に捕まった。
東御は片手をつり革が下がっているパイプ部分にかけ、片手を花森の背中に当てている。
花森は、自分の背中に回っている腕に軽く手を添えて東御に密着していた。
朝から公共の場で抱き合っている気分だ。
満員電車だから、不可抗力ですよ……と花森は揺れる電車に合わせて東御の胸に頭を付ける。
そんなわけで東御は頭突きを受け続けていた。
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「え?? やだあ、何がですかあ?」
花森はあからさまに「ぎく」という顔をしたが、楽しんでいたのではない、甘えていたのだ。
東御にとってはそれが頭突き行為だったとしても。
「会社に入るのは別々が良いだろうから、俺はコーヒーでも買っていく」
「はい……」
「じゃあな」
「お疲れ様です」
会社近くの駅のホームで、東御は歩くスピードを上げ先に行ってしまった。
花森は東御との交際を公にするつもりはなかったが、ただ恋愛をしているだけなのになと思う。
これが社会ではなく学校であれば、学生生活で堂々と出来たのだろう。
社会人というのは外の顔が必要らしい。
こうなってみると、以前、堂々としていたいと言っていた東御の気持ちが分かった。
悪いことをしているわけではないのに、こそこそとするのは何だか寂しい。
秘密があるのはスリルがあって楽しいのだろうと楽観的に考えていたが、一緒にコーヒーショップへ立ち寄ることもできないのだ。
花森は肩を落としてゆっくりと電車のホームを歩く。
すると、花森の隣にぬっとあらわれたサラリーマンが「おはよう」と声を発した。
「おはようございます、三木さん……」
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こんなのただの朝の挨拶じゃないか、と花森は無理に笑顔を作ろうとする。
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