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第三章
順序が違うけれど 5
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花森は本気で怒り始めていた。
自分が言っていることのおかしさに気付けていない。
「いいか、沙穂。ちょうどいいのは沙穂側の理屈だ。俺にとってちょうどいいかどうか、もう少し冷静になれ」
「……八雲さんにとってちょうどいいか、どうか……」
「俺は搾取されるために沙穂といるってことになるだろ」
「それの何がいけないんですか……」
「……そうか、そういう考え方なのか」
東御は堂々と持論を述べる花森に清々しさを感じる。
自分が何もできないことに対して、こんなに自信を持っているのは何故なのか。
「いや、そうか。納得した。俺は沙穂に与えるために存在するんだな」
「そうです。八雲さんは私のためにずっと尽くすことになりますよ? 大変かもしれませんよ? やっぱり結婚やめますか?」
「いや? 俄然やる気になった」
「今は良くても、そのうち嫌になると思うんです」
「ならない」
「どうしてそんなこと言えるんですか。人の気持ちは変わるんです」
花森は東御の心変わりを確信しているらしい。
今はこんな風に言っていても、呆れて付き合いきれなくなった時に失うものは大きい。
「人の気持ちも、努力次第だ」
「努力次第??」
「自分の気持ちを持続させることだってできる」
「……どうやって?」
花森は横になりながら、側にある東御に詰め寄る様に尋ねる。
心変わりは自然な変化であり、努力などというのは精神論に聞こえてしまうのだ。
「言っただろう? 俺は自己管理能力には自信がある」
東御は得意げに言うと花森の後頭部を掴んで引き寄せ、そのままゆっくりと唇を重ねた。
何度か角度を変えて触れると、離れ際に鼻頭にも口づけを落とす。
「そんな……自己管理でどうこうなる問題じゃ……」
花森は口をへの字に曲げたまま、東御を縋るように捉える。
それを無条件で信じられたら、こんな不安になることはない。
東御が自分に対する興味を失ってしまった時、花森は甘やかされたままの感覚でひとりぼっちになってしまうかもしれないのだ。
「おいで」
東御は不安げな花森を抱きしめて背中に触れた。
しばらくそうやって花森を落ち着かせると、ゆっくりと深いキスを続ける。
「不安があるから、世界中でダイヤモンドが贈られるのだろうな」
「永遠を願うからですか?」
「そうであって欲しいと思って願いをかけるんだろう」
「でも、離婚をするカップルは多いです」
「人生は色々だ」
極論すぎる、と花森は東御の上唇を噛んだ。
まだ22年しか生きていない花森は、それ以上の時間を一緒に過ごすというパートナーの存在が容易には思い描けない。
「痛い」
「痛くしたんですよ」
べ、と花森は舌を出して東御を背にして横になった。
「何を拗ねているんだ、沙穂」
「もっと安心をください。八雲さんと一緒に生きて行けば、一生幸せになれるって思いたいんです」
自分が言っていることのおかしさに気付けていない。
「いいか、沙穂。ちょうどいいのは沙穂側の理屈だ。俺にとってちょうどいいかどうか、もう少し冷静になれ」
「……八雲さんにとってちょうどいいか、どうか……」
「俺は搾取されるために沙穂といるってことになるだろ」
「それの何がいけないんですか……」
「……そうか、そういう考え方なのか」
東御は堂々と持論を述べる花森に清々しさを感じる。
自分が何もできないことに対して、こんなに自信を持っているのは何故なのか。
「いや、そうか。納得した。俺は沙穂に与えるために存在するんだな」
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「いや? 俄然やる気になった」
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「ならない」
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「言っただろう? 俺は自己管理能力には自信がある」
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「そんな……自己管理でどうこうなる問題じゃ……」
花森は口をへの字に曲げたまま、東御を縋るように捉える。
それを無条件で信じられたら、こんな不安になることはない。
東御が自分に対する興味を失ってしまった時、花森は甘やかされたままの感覚でひとりぼっちになってしまうかもしれないのだ。
「おいで」
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しばらくそうやって花森を落ち着かせると、ゆっくりと深いキスを続ける。
「不安があるから、世界中でダイヤモンドが贈られるのだろうな」
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「痛い」
「痛くしたんですよ」
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「もっと安心をください。八雲さんと一緒に生きて行けば、一生幸せになれるって思いたいんです」
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