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第三章
順序が違うけれど 7
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「おいたが過ぎるぞ。沙穂」
「いたずらなんかじゃありません! これは怒ってるんです!」
「怒ったら、相手を噛んでも良いのか?」
「私の表現方法なんですー!」
「噛み癖を直さないとな。こんなに色々噛まれたら、歯型が気になってジムにも行けなくなる」
東御は、一度息を吐いた。
「怒っていいと言われたので、反撃してやる」
花森の口を左手で塞ぎ、体重をかけて身動きを封じる。
逃れようとする様子を見ながら、東御は首筋にくっきりと残るキスマークを付けた。
花森が必死に何かを訴えているが、口を塞がれていて言葉になっていない。
東御はその後も次々に赤い跡を残した。
服を着ていても隠せない場所は最初につけた首筋のものだけだが、服を脱ぐようなーー例えば公衆浴場などには恥ずかしくて行けないくらいに沢山の跡がはっきりと残っている。
「お仕置きは、この程度で許してやる」
東御は塞いでいた口を解放した。必死に逃れようとしていた花森の目には涙が溜まっている。
「首は……ひどいです。明日、会社に行けません!」
はだけたパジャマを元に戻しながら、自分の目で確認できていない東御の印を必死で気にしている。
「明日は婚約を伝えにいくんだ。犯人は俺で明確になる」
「そんなの生々しすぎて嫌です、恥ずかしいですよ。学生でもないのに、こんなの……」
「何が恥ずかしい? 婚約を済ませて同棲中の関係なんだから自然だ。三木に見せつけてやればいい」
花森は挑発してしまったことを後悔するしかない。怒ってみろと言ったのは花森だ。
東御に噛み付いて跡を残してしまったのもいけなかったのだ。
「いい大人が恋人の存在と、身体の関係を一目でわかるようにするなんて」
「結婚指輪と何が違うんだ」
「大違いです!」
花森はショックでポロポロと涙を流し始める。
東御とのことを会社で公にする勇気すら削がれてしまった。
「……そうか、これが喧嘩か」
「ようやく分かったんですか。私は許しません」
「沙穂が手を切った時に買ったテープがある。あれをして出社すればいい。首を怪我する機会なんてなかなかないが、生傷が絶えない沙穂なら自然だろう」
「……そうしますけど、勘の良い人だっているんですから」
涙を流しながら、花森は少しずつ落ち着いてくる。
喧嘩をけしかけたのは自分だったが、いざしてみると良いものではなかったなと肩を落とす。
「沙穂、落ち込んでいるんだな?」
「……はい。こんなことになるなんて思いませんでした」
「喧嘩は積極的にするものではないな。不安がられて挑発されるのは、やっぱり気分が良くなかった」
「そう思ったら、お互い我慢しないで理解できるまで……例えできなくても寄り添えるようにしましょう」
東御は柔らかく微笑んだ。
「もう、そんなところに印をつけるのは止める」
「二度としないでください」
「でも、気分はいいな。首輪をつけている気分だ」
「ペットじゃありませんから!」
花森を見ながら、東御はこうして怒ってくれる人がいるというのはいいなと思う。
「いたずらなんかじゃありません! これは怒ってるんです!」
「怒ったら、相手を噛んでも良いのか?」
「私の表現方法なんですー!」
「噛み癖を直さないとな。こんなに色々噛まれたら、歯型が気になってジムにも行けなくなる」
東御は、一度息を吐いた。
「怒っていいと言われたので、反撃してやる」
花森の口を左手で塞ぎ、体重をかけて身動きを封じる。
逃れようとする様子を見ながら、東御は首筋にくっきりと残るキスマークを付けた。
花森が必死に何かを訴えているが、口を塞がれていて言葉になっていない。
東御はその後も次々に赤い跡を残した。
服を着ていても隠せない場所は最初につけた首筋のものだけだが、服を脱ぐようなーー例えば公衆浴場などには恥ずかしくて行けないくらいに沢山の跡がはっきりと残っている。
「お仕置きは、この程度で許してやる」
東御は塞いでいた口を解放した。必死に逃れようとしていた花森の目には涙が溜まっている。
「首は……ひどいです。明日、会社に行けません!」
はだけたパジャマを元に戻しながら、自分の目で確認できていない東御の印を必死で気にしている。
「明日は婚約を伝えにいくんだ。犯人は俺で明確になる」
「そんなの生々しすぎて嫌です、恥ずかしいですよ。学生でもないのに、こんなの……」
「何が恥ずかしい? 婚約を済ませて同棲中の関係なんだから自然だ。三木に見せつけてやればいい」
花森は挑発してしまったことを後悔するしかない。怒ってみろと言ったのは花森だ。
東御に噛み付いて跡を残してしまったのもいけなかったのだ。
「いい大人が恋人の存在と、身体の関係を一目でわかるようにするなんて」
「結婚指輪と何が違うんだ」
「大違いです!」
花森はショックでポロポロと涙を流し始める。
東御とのことを会社で公にする勇気すら削がれてしまった。
「……そうか、これが喧嘩か」
「ようやく分かったんですか。私は許しません」
「沙穂が手を切った時に買ったテープがある。あれをして出社すればいい。首を怪我する機会なんてなかなかないが、生傷が絶えない沙穂なら自然だろう」
「……そうしますけど、勘の良い人だっているんですから」
涙を流しながら、花森は少しずつ落ち着いてくる。
喧嘩をけしかけたのは自分だったが、いざしてみると良いものではなかったなと肩を落とす。
「沙穂、落ち込んでいるんだな?」
「……はい。こんなことになるなんて思いませんでした」
「喧嘩は積極的にするものではないな。不安がられて挑発されるのは、やっぱり気分が良くなかった」
「そう思ったら、お互い我慢しないで理解できるまで……例えできなくても寄り添えるようにしましょう」
東御は柔らかく微笑んだ。
「もう、そんなところに印をつけるのは止める」
「二度としないでください」
「でも、気分はいいな。首輪をつけている気分だ」
「ペットじゃありませんから!」
花森を見ながら、東御はこうして怒ってくれる人がいるというのはいいなと思う。
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