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第19話
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水曜日の放課後になり、治は小さく息を吐いた。
滅茶苦茶、緊張していた。現在放課後の教室で、クラスメートたちが話しをしながら廊下へと出ていく姿が目に付いた。
「おい、見ろよ。オタクだぜ」
「ああ、今日も一人だな」
目立つ男子グループの二人が治を一瞥してニヤニヤと笑っていた。その馬鹿にするような視線には慣れっこで、特に気にはしていない。
それよりも、気にするべきことがあったからだ。
これから治は、咲とともに服を買いに行く。そんな大事件の前では、クラスメートからの理不尽な弄りなど、些細な問題だった。
治はスマホの地図アプリを開き、目的地であるショッピングモールを調べ、目的地に着くまでの時間を確認しながら、集合時間の17時になるよう調整して歩いていく。
ショッピングモールと治はあまり縁のない場所だった。ここ最近、カップルの観察をするために足を運んでこそいたが、それまではまったくといっていいほど足を運ぶことがなかった。
そのため、道を確認するように治は歩いていく。
(……結構、学生も多いんだな)
道行く学生に視線を向けながらそんなことをぼんやりと考え、治は待ち合わせ場所である西口の通用口前に来ていた。
しばらくそこで待っていた治が顔をあげる。周囲がざわついていたからだ。
「……お、おいあの子滅茶苦茶可愛くないか?」
「……うわ、モデルか? てか、あの制服水高のものだよな?」
「ってことは滅茶苦茶頭いいんだな……今一人なのかな?」
「こ、声とかかけてみよっかな……?」
そんな周囲の騒がしい声の中を歩くようにして、一人の女性が歩いてきた。
咲だ。彼女は周囲の喧噪など耳に届かないとばかりの様子で、堂々と歩いていた。その凛々しさに見惚れる。以前の財布が見つからず泣き出しそうだった咲の姿はどこにもなかった。
「すみません、お待たせしてしまいましたか?」
咲は治の前で足を止めると、微笑を携えたままこてんと小首をかしげる。
凛々しさと可愛らしさが同居したその表情に、治は眩暈のようなものを覚えながらも表情に出さないよう頷いた。
「いや、大丈夫だ。俺もさっき来たところだ」
治と咲が話すことで、周囲の人々はあんぐりと口を開いていた。なぜ、あの地味な男子が――そんな視線に治は気づいていた。
「……あ、あの二人つきあっているのか?」
「……い、いやどうなんだろう? 男の方は前髪が長くてあんまり顔がよく分からないけど、なんていうか……地味というか」
声が聞こえてきたところで、治は彼らの方をじろりと睨んだ。
それなりに体格の良い治に見られると、野次馬とかしていた彼らは逃げるように歩き去っていった。
付き合っている、などという失礼な話をしていた彼らに、治はため息をついた。
「悪いな、飛野……なんか変なことを言われてしまって」
「……い、いえ私は大丈夫です」
顔を赤くして俯いていた咲が、首を横に振る。
「そうか? けどな.…」
「こちらこそ、申し訳ありません。なんだか変なこと言われてしまって……」
「いや、俺もいいんだが……さっき付き合っているとかなんとか言われてしまっていたが――」
治はそれについてきちんと否定とともに謝罪をしようとしたが、咲は想像以上の反応となった。
「つつつつ付き合って、とかそ、そそういうの別に大丈夫ですから!」
「……本当か? 学校とかで変な噂がたって、誤解が生まれたら大変じゃないか?」
治は学校で噂を立てられるほど目立つことはないが、咲は違うだろう。
「だ、大丈夫です。別にそういったことは心配していませんから」
「……そうか、それならいいんだが」
「はい、それでは……行きましょうか? 仮にも……で、デートのようなものですからね」
「……あ、ああ」
「少しでも、参考になってくだされば……良いのですが」
恥ずかしそうにうつむきながらいう咲に、治はドキドキと弾む鼓動を押さえるように息をのんだ。
滅茶苦茶、緊張していた。現在放課後の教室で、クラスメートたちが話しをしながら廊下へと出ていく姿が目に付いた。
「おい、見ろよ。オタクだぜ」
「ああ、今日も一人だな」
目立つ男子グループの二人が治を一瞥してニヤニヤと笑っていた。その馬鹿にするような視線には慣れっこで、特に気にはしていない。
それよりも、気にするべきことがあったからだ。
これから治は、咲とともに服を買いに行く。そんな大事件の前では、クラスメートからの理不尽な弄りなど、些細な問題だった。
治はスマホの地図アプリを開き、目的地であるショッピングモールを調べ、目的地に着くまでの時間を確認しながら、集合時間の17時になるよう調整して歩いていく。
ショッピングモールと治はあまり縁のない場所だった。ここ最近、カップルの観察をするために足を運んでこそいたが、それまではまったくといっていいほど足を運ぶことがなかった。
そのため、道を確認するように治は歩いていく。
(……結構、学生も多いんだな)
道行く学生に視線を向けながらそんなことをぼんやりと考え、治は待ち合わせ場所である西口の通用口前に来ていた。
しばらくそこで待っていた治が顔をあげる。周囲がざわついていたからだ。
「……お、おいあの子滅茶苦茶可愛くないか?」
「……うわ、モデルか? てか、あの制服水高のものだよな?」
「ってことは滅茶苦茶頭いいんだな……今一人なのかな?」
「こ、声とかかけてみよっかな……?」
そんな周囲の騒がしい声の中を歩くようにして、一人の女性が歩いてきた。
咲だ。彼女は周囲の喧噪など耳に届かないとばかりの様子で、堂々と歩いていた。その凛々しさに見惚れる。以前の財布が見つからず泣き出しそうだった咲の姿はどこにもなかった。
「すみません、お待たせしてしまいましたか?」
咲は治の前で足を止めると、微笑を携えたままこてんと小首をかしげる。
凛々しさと可愛らしさが同居したその表情に、治は眩暈のようなものを覚えながらも表情に出さないよう頷いた。
「いや、大丈夫だ。俺もさっき来たところだ」
治と咲が話すことで、周囲の人々はあんぐりと口を開いていた。なぜ、あの地味な男子が――そんな視線に治は気づいていた。
「……あ、あの二人つきあっているのか?」
「……い、いやどうなんだろう? 男の方は前髪が長くてあんまり顔がよく分からないけど、なんていうか……地味というか」
声が聞こえてきたところで、治は彼らの方をじろりと睨んだ。
それなりに体格の良い治に見られると、野次馬とかしていた彼らは逃げるように歩き去っていった。
付き合っている、などという失礼な話をしていた彼らに、治はため息をついた。
「悪いな、飛野……なんか変なことを言われてしまって」
「……い、いえ私は大丈夫です」
顔を赤くして俯いていた咲が、首を横に振る。
「そうか? けどな.…」
「こちらこそ、申し訳ありません。なんだか変なこと言われてしまって……」
「いや、俺もいいんだが……さっき付き合っているとかなんとか言われてしまっていたが――」
治はそれについてきちんと否定とともに謝罪をしようとしたが、咲は想像以上の反応となった。
「つつつつ付き合って、とかそ、そそういうの別に大丈夫ですから!」
「……本当か? 学校とかで変な噂がたって、誤解が生まれたら大変じゃないか?」
治は学校で噂を立てられるほど目立つことはないが、咲は違うだろう。
「だ、大丈夫です。別にそういったことは心配していませんから」
「……そうか、それならいいんだが」
「はい、それでは……行きましょうか? 仮にも……で、デートのようなものですからね」
「……あ、ああ」
「少しでも、参考になってくだされば……良いのですが」
恥ずかしそうにうつむきながらいう咲に、治はドキドキと弾む鼓動を押さえるように息をのんだ。
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