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8、三男、ギルドへ
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「さて、カスミさん。チュートリアルはまだまだ続きます。大丈夫ですか?」
「はい、もちろん。な、マリ」
「きゅ!」
ほのぼのとした光景を微笑んで見ていてくれた篠田さんが促してくれた。
はしゃいじゃってすみません。
「では、続いてギルドに移ります。ここでは簡単な説明のみ行いますので、より詳しく知りたい場合は、チュートリアルではなく、本物のギルド職員に聞いてみてください」
「分かりました」
「きゅ」
「では、街へ転移します」
フォンという音と共に、また俺と篠田さんの足元が光り、一瞬のうちに辺りは木々から家や店などが並ぶ街へと代わり、耳に入る音も木々のざわめきや風の音から人々の声や生活の音へと変わった。
見た感じ洋風な作りのようだ。
「着きました。ここがこの世界の中心、シーマニア王国です。ちなみに、この世界の名はオリニシアと言います。詳しくはあちらの図書館に地図などが置いてますので、気が向いたらそちらで確認してください」
「オリニシアのシーマニア王国…ってことですか。図書館は、また随分と大きいですね」
篠田さんの指す方向を見れば、一際大きな洋館とも呼べる建物が見えた。
あれが図書館らしいが、流石はこの世界の中心の国。蔵書数が気になるところである。ぜひ行ってみたい。
「では、ギルドに向かいましょう」
「あ、はい」
横目で周囲を見ながら篠田さんの後を追う。人は多いが、どうやら全てNPC、ここで言う住民らしい。チュートリアルが終われば、住民の倍以上の数のプレイヤーが現れるのだが、今は住民のみであるそうだ。
図書館から反対の方向へと歩みを進めると、それは見えてきた。
先程の図書館ほどではないが、こちらも大きな洋館風の建物である。
「着きました。こちらがギルド本部です。各都市や街に支部がありますが、こちらで登録することをおすすめします。チュートリアルでも登録は出来ますが、しますか?」
「そうですね。お願いします」
広葉を待たせているかもしれないが、この場で出来ることは終わらせておきたい。
俺は腕のなかにいるマリを抱きしめ直してから、期待を込めてギルドの扉をくぐった。
「ようこそ、ギルドへ!」
扉をくぐると目の前にいたギルド職員と思われる人にそう声をかけられる。ドアマンみたいな人かな?ギルドの中は意外と静かであり、住民の冒険者達が数人ほど見られるだけであった。もちろん普段は多くのプレイヤーで満たされている、国で一番騒がしい場所であるらしいのだが。
「こんにちは。ギルド登録と、説明を聞きに来たのですが…」
「はい!どちらも受付の方で行いますので、こちらに」
「分かりました」
ギルドの中は、扉の向かい側に受付があり、その右側に依頼版らしきものが、反対側には食堂のようなものがあった。
「ひとまず登録をしましょう。説明はその後に行いますね」
「分かりました。よろしくお願いします」
指示に従って受付の前に立つ。
登録は差し出されたプレートに手をのせればいいらしいので、一旦マリを腕の中から肩へと移動する。
「マリ、ちょっとここにいてな」
「きゅ?…ぴきゅ!」
しばらくもぞもぞとした後にしっくり場所を見つけたのか、マリは肩の上で落ち着いたらしい。
それを確認してから、プレートの上に手のひらをのせた。
数秒待った後、プレートがほのかに青く光り、手のひらよりも大きかったプレートはカードのようなサイズへと変わり、先程まではなかった文字が現れていた。
「これは…」
「そちらが旅人様のギルドカードでございます。カードには旅人様の簡単な情報が載っています。なぜかよく聞かれるのですが、ギルドにランクなどばございません。代わりに、依頼達成度という項目が存在し、達成度と達成数、達成した依頼のランクなどによって旅人様への信頼とさせていただきます。」
「なるほど」
手元のカードを見ると、名前とレベル、職業、依頼達成数、達成依頼ランク、依頼達成度という項目があった。
本当に簡単な情報だな。
「依頼はあちらの依頼ボードにあります。受けたい依頼の書かれた紙をこちらの受け付けまでお持ちください」
「分かりました。あ、すみません。あっちってなんですか?」
依頼版、ではなく依頼ボードと言うらしいそこには、多くの紙が貼られているのが見えた。依頼のランクはFからSで、Fはお使いのような簡単なもので、Sはドラゴンの捕獲などの高難易度なものだそうだ。
ふむふむと依頼についての情報を整理しながら、ふと気になっていたことを聞いてみた。
食堂だったら嬉しいな。
「あちらは食堂です。ギルドメンバーやギルド職員であれば、格安で頼むことができます。お酒はでませんが、時々珍しい食材が見られるので、興味があればぜひ一度行ってみてください」
「なるほど。ありがとうございます」
やはり食堂だったようだ。しかもギルドに登録すれば安く済むという言葉に、定期的に行くことを決めた。
「2階から上は生産職の方のための施設となっています。ご用意しているのは、調理道具、裁縫道具、錬金道具、調合道具、細工道具と、それを行うための場所です。鍛治や釣り、農業などは住民の方からの提供という形になりますので、まずは住民の方の依頼を受けてみてください」
「へぇ。施設はどうやって使うんですか?」
「上の施設の利用は階段の手前にあるプレートで空き部屋や場所を確認して、該当箇所を選択し利用時間を設定してください。全てが終わると自動的に料金が支払われ、ギルドカードに一時的な鍵機能が追加されます。所持しているだけでその効果は発揮されますので、旅人様は選んだ場所を決めた時間の間だけ、好きなように使うことができます。ちなみに、料金は1時間一律で1000リンです」
その説明の中で受付と食堂の間に位置する階段を見ると、階段の前には説明の通りにプレートが置いてあった。
それは書見台のような見た目をしており、本来なら本がのる位置にプレートが存在していた。
今後俺はこの施設を愛用することになるのだが、今はまだ先の話である。
「はい、もちろん。な、マリ」
「きゅ!」
ほのぼのとした光景を微笑んで見ていてくれた篠田さんが促してくれた。
はしゃいじゃってすみません。
「では、続いてギルドに移ります。ここでは簡単な説明のみ行いますので、より詳しく知りたい場合は、チュートリアルではなく、本物のギルド職員に聞いてみてください」
「分かりました」
「きゅ」
「では、街へ転移します」
フォンという音と共に、また俺と篠田さんの足元が光り、一瞬のうちに辺りは木々から家や店などが並ぶ街へと代わり、耳に入る音も木々のざわめきや風の音から人々の声や生活の音へと変わった。
見た感じ洋風な作りのようだ。
「着きました。ここがこの世界の中心、シーマニア王国です。ちなみに、この世界の名はオリニシアと言います。詳しくはあちらの図書館に地図などが置いてますので、気が向いたらそちらで確認してください」
「オリニシアのシーマニア王国…ってことですか。図書館は、また随分と大きいですね」
篠田さんの指す方向を見れば、一際大きな洋館とも呼べる建物が見えた。
あれが図書館らしいが、流石はこの世界の中心の国。蔵書数が気になるところである。ぜひ行ってみたい。
「では、ギルドに向かいましょう」
「あ、はい」
横目で周囲を見ながら篠田さんの後を追う。人は多いが、どうやら全てNPC、ここで言う住民らしい。チュートリアルが終われば、住民の倍以上の数のプレイヤーが現れるのだが、今は住民のみであるそうだ。
図書館から反対の方向へと歩みを進めると、それは見えてきた。
先程の図書館ほどではないが、こちらも大きな洋館風の建物である。
「着きました。こちらがギルド本部です。各都市や街に支部がありますが、こちらで登録することをおすすめします。チュートリアルでも登録は出来ますが、しますか?」
「そうですね。お願いします」
広葉を待たせているかもしれないが、この場で出来ることは終わらせておきたい。
俺は腕のなかにいるマリを抱きしめ直してから、期待を込めてギルドの扉をくぐった。
「ようこそ、ギルドへ!」
扉をくぐると目の前にいたギルド職員と思われる人にそう声をかけられる。ドアマンみたいな人かな?ギルドの中は意外と静かであり、住民の冒険者達が数人ほど見られるだけであった。もちろん普段は多くのプレイヤーで満たされている、国で一番騒がしい場所であるらしいのだが。
「こんにちは。ギルド登録と、説明を聞きに来たのですが…」
「はい!どちらも受付の方で行いますので、こちらに」
「分かりました」
ギルドの中は、扉の向かい側に受付があり、その右側に依頼版らしきものが、反対側には食堂のようなものがあった。
「ひとまず登録をしましょう。説明はその後に行いますね」
「分かりました。よろしくお願いします」
指示に従って受付の前に立つ。
登録は差し出されたプレートに手をのせればいいらしいので、一旦マリを腕の中から肩へと移動する。
「マリ、ちょっとここにいてな」
「きゅ?…ぴきゅ!」
しばらくもぞもぞとした後にしっくり場所を見つけたのか、マリは肩の上で落ち着いたらしい。
それを確認してから、プレートの上に手のひらをのせた。
数秒待った後、プレートがほのかに青く光り、手のひらよりも大きかったプレートはカードのようなサイズへと変わり、先程まではなかった文字が現れていた。
「これは…」
「そちらが旅人様のギルドカードでございます。カードには旅人様の簡単な情報が載っています。なぜかよく聞かれるのですが、ギルドにランクなどばございません。代わりに、依頼達成度という項目が存在し、達成度と達成数、達成した依頼のランクなどによって旅人様への信頼とさせていただきます。」
「なるほど」
手元のカードを見ると、名前とレベル、職業、依頼達成数、達成依頼ランク、依頼達成度という項目があった。
本当に簡単な情報だな。
「依頼はあちらの依頼ボードにあります。受けたい依頼の書かれた紙をこちらの受け付けまでお持ちください」
「分かりました。あ、すみません。あっちってなんですか?」
依頼版、ではなく依頼ボードと言うらしいそこには、多くの紙が貼られているのが見えた。依頼のランクはFからSで、Fはお使いのような簡単なもので、Sはドラゴンの捕獲などの高難易度なものだそうだ。
ふむふむと依頼についての情報を整理しながら、ふと気になっていたことを聞いてみた。
食堂だったら嬉しいな。
「あちらは食堂です。ギルドメンバーやギルド職員であれば、格安で頼むことができます。お酒はでませんが、時々珍しい食材が見られるので、興味があればぜひ一度行ってみてください」
「なるほど。ありがとうございます」
やはり食堂だったようだ。しかもギルドに登録すれば安く済むという言葉に、定期的に行くことを決めた。
「2階から上は生産職の方のための施設となっています。ご用意しているのは、調理道具、裁縫道具、錬金道具、調合道具、細工道具と、それを行うための場所です。鍛治や釣り、農業などは住民の方からの提供という形になりますので、まずは住民の方の依頼を受けてみてください」
「へぇ。施設はどうやって使うんですか?」
「上の施設の利用は階段の手前にあるプレートで空き部屋や場所を確認して、該当箇所を選択し利用時間を設定してください。全てが終わると自動的に料金が支払われ、ギルドカードに一時的な鍵機能が追加されます。所持しているだけでその効果は発揮されますので、旅人様は選んだ場所を決めた時間の間だけ、好きなように使うことができます。ちなみに、料金は1時間一律で1000リンです」
その説明の中で受付と食堂の間に位置する階段を見ると、階段の前には説明の通りにプレートが置いてあった。
それは書見台のような見た目をしており、本来なら本がのる位置にプレートが存在していた。
今後俺はこの施設を愛用することになるのだが、今はまだ先の話である。
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