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9「不甲斐ない父親と娘の性的乱れ~改~」
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僕はいつのまにか父親になってしまった。本当に、いつのまにか、だ。
時が流れるのは実に早いもので、もう娘は19歳になる。
本当は望まぬ妊娠だったところを、意図的に黙り込んで結婚して養っていった。
僕たち家族はとても前時代的な家庭だった。
妻はなにかと働きたくない理由をつけて、ずっと家に籠りっぱなしの人だった。
それに対してずっと不満を持ってはいたが、あの若い時の罪に対する罰のような気がして、僕はそれを贖罪だと思い込むようにした。
とてもつまらない人生だった。
僕たちが22歳に産んだ娘だから、もう僕たちは40を過ぎてしまった。
目的のない子育てほど、唐突に訪れた子育てほど、残酷なものはない。それは本能を無慈悲にくすぐり、かわいさに溺れさせる。
親は馬鹿になる。悪い馬鹿になる。なんの準備もないまま、馬鹿になる。
救いようがなかった。なにも考える余裕のないまま、人生の大半を送ってきてしまった。
だからだろうか。僕の性癖はどうにかしてしまった。本当に歪みに歪み、ついには自分の娘にまで欲情を抱くようになってしまった。
どうしてだろう。もうなにもかもわからない。何も考えずに生きてきた日々が祟ったのだろうか。本当に神様はどうにかしている。
なぁ……神様。人生にどうせ意味なんてないんだろう。意味があって助かるのってそれは本当は一部のおえらいさんだけなんじゃないか?
もうどうにでもなれ。
もう……
足は自然と娘の部屋に向かっていた。僕はもう人生に意味を見出すことを捨てた。
快楽に溺れることだけを選んだ。
人生を捨てるとは死ぬことじゃない。意味を見出すことをやめることだ。
娘の部屋に入った。
僕と世界の境界があいまいになった感覚のまま、娘に飛びついた。
しばらく抵抗していた娘は急にくたっと力が入らなくなった。
死んですぐの人間のような体になった。
娘も何かを諦めたのだろうか。
もうなにもかもが、変わってしまう。
そんな予感が僕の吐息から娘の瑞々しい唇へと伝わっていく。
「お父さん、私とこの家めちゃくちゃにしようか」
「え?」
「ただお母さんはお父さんにぶら下がっているだけ。それでいて偉そうに大人ぶって。お母さんね、もう誰も友達いないんだって。もう一ヶ月は外に出てないって」
「み、みはり……」
「意味のない世界に生きようよ」
「…………」
「一緒にずっと気持ちよくなろう?」
それからはもう快楽だけしかなかった。
家族を壊す前に僕たちは蒸発した。壊れた家族を見る前に僕たちは旅にでた。
娘と僕はふたりでどこかへ消えた。
行き先は国じゃないどこか。
人生に意味を持たせない場所。
そんなところがどこにあるのかもさっぱりわからない。
でも、何かが変わりそうな予感がした。
「気持ちいね、お父さん」
「ああ……」
僕と娘は一つになる。
何も考えずに一つになる。
溶ける。混じり合う。とろけあう。
『しゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ』
娘の放尿が黄金色に輝いて、僕の口のなかへ放物線を描いて……
吸い込まれていった。
もう僕たちはどこにいるのかもさえ分からないところまできていた……
永遠の底へ……
僕たちは吸い込まれていった。
【了】
時が流れるのは実に早いもので、もう娘は19歳になる。
本当は望まぬ妊娠だったところを、意図的に黙り込んで結婚して養っていった。
僕たち家族はとても前時代的な家庭だった。
妻はなにかと働きたくない理由をつけて、ずっと家に籠りっぱなしの人だった。
それに対してずっと不満を持ってはいたが、あの若い時の罪に対する罰のような気がして、僕はそれを贖罪だと思い込むようにした。
とてもつまらない人生だった。
僕たちが22歳に産んだ娘だから、もう僕たちは40を過ぎてしまった。
目的のない子育てほど、唐突に訪れた子育てほど、残酷なものはない。それは本能を無慈悲にくすぐり、かわいさに溺れさせる。
親は馬鹿になる。悪い馬鹿になる。なんの準備もないまま、馬鹿になる。
救いようがなかった。なにも考える余裕のないまま、人生の大半を送ってきてしまった。
だからだろうか。僕の性癖はどうにかしてしまった。本当に歪みに歪み、ついには自分の娘にまで欲情を抱くようになってしまった。
どうしてだろう。もうなにもかもわからない。何も考えずに生きてきた日々が祟ったのだろうか。本当に神様はどうにかしている。
なぁ……神様。人生にどうせ意味なんてないんだろう。意味があって助かるのってそれは本当は一部のおえらいさんだけなんじゃないか?
もうどうにでもなれ。
もう……
足は自然と娘の部屋に向かっていた。僕はもう人生に意味を見出すことを捨てた。
快楽に溺れることだけを選んだ。
人生を捨てるとは死ぬことじゃない。意味を見出すことをやめることだ。
娘の部屋に入った。
僕と世界の境界があいまいになった感覚のまま、娘に飛びついた。
しばらく抵抗していた娘は急にくたっと力が入らなくなった。
死んですぐの人間のような体になった。
娘も何かを諦めたのだろうか。
もうなにもかもが、変わってしまう。
そんな予感が僕の吐息から娘の瑞々しい唇へと伝わっていく。
「お父さん、私とこの家めちゃくちゃにしようか」
「え?」
「ただお母さんはお父さんにぶら下がっているだけ。それでいて偉そうに大人ぶって。お母さんね、もう誰も友達いないんだって。もう一ヶ月は外に出てないって」
「み、みはり……」
「意味のない世界に生きようよ」
「…………」
「一緒にずっと気持ちよくなろう?」
それからはもう快楽だけしかなかった。
家族を壊す前に僕たちは蒸発した。壊れた家族を見る前に僕たちは旅にでた。
娘と僕はふたりでどこかへ消えた。
行き先は国じゃないどこか。
人生に意味を持たせない場所。
そんなところがどこにあるのかもさっぱりわからない。
でも、何かが変わりそうな予感がした。
「気持ちいね、お父さん」
「ああ……」
僕と娘は一つになる。
何も考えずに一つになる。
溶ける。混じり合う。とろけあう。
『しゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ』
娘の放尿が黄金色に輝いて、僕の口のなかへ放物線を描いて……
吸い込まれていった。
もう僕たちはどこにいるのかもさえ分からないところまできていた……
永遠の底へ……
僕たちは吸い込まれていった。
【了】
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