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セフレからでお願いします!!

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 俺の名前は舞元優紀まいもと ゆうき。どこにでもいる普通で平凡な男子高校生だ。

 俺はとある事情でいまは放課後の学校の屋上にいる。

 今日の屋上は心地よい風が吹いており、景色もきれいだった。

 雲一つない夕方の光景は俺に少しだけではあるが勇気を与えてくれている。

 
 ……………


 そう、俺は今日とある勇気ある行動を起こしたのだ。


 それは、俺の好きな女の子である橘綾羽たちばな あやはに告白をするということ。

 今日の朝、俺は彼女の下駄箱にラブレターのようなものを入れておいたのだ。

 さすがに、俺はラブレターの中で告白をするような男ではない。

 しっかりと直接に彼女と向き合って、自分の気持ちを伝えたかった。


「綾羽さん、来てくれるかな……」


 時間が経つにつれて少し不安になってきている自分がいる。


 それもそのはずだ。


 俺はこれが初めての告白だった。


 生まれてこのかた、いままでで告白したことは一度もなかった。


 好きな女の子はもちろん、過去に何人もいた。


 だけど、俺はそのとき毎に告白を躊躇い、そして結局はしなかった。


 しかし、そんな自分とも今日でおさらばだ。


 もちろん成功はしてほしいけど、失敗しても俺は後悔だけはしないと思う。


 告白せずに後悔するよりも、失敗して泣いた方がよっぽど自分にとっては良いことだと思う。


 そうだ、俺は後悔だけはしたくなかったんだ……


「だから、綾羽さん。来てくれ……」


 すると、屋上の真ん中にあるドアが軋みを立てて開いた。


「えっと……。優紀くん、私になにか用かな?」


 心配せずとも綾羽さんは来てくれた。


 まずはそのことで涙が溢れそうになった。


「う、うん。今日はわざわざ俺のためにここまで来てくれてありがとな」


「え、ええ。それくらい大したことないわ」


「えっと。それじゃあ……」


 俺は覚悟を決める。


「一言でいうね」


「う、うん……」


「俺と付き合ってください!!!!」


 俺は勢いよく綾羽さんに告白した。


 人生で初めての告白だ。


 ああ、こんなにも緊張するものなんだな。


 心臓が今にも破裂してしまいそうだ。


 返事までの間の時間が驚くほどに長い。


 永遠の時間のようにさえ感じる。


 しかし、返事は必ずやってくるものだ。


 彼女の口が開きかけている。


 さあ、返事はどうだ!!


 俺は受け入れてもらえるのか?


 それとも悲しくも振られてしまうのか?


 どっちだ!?








「ごめんなさい! セフレからでお願いします!!」



「はい????????」


 俺の間抜けな声がやけに響いて聞こえるのだった。
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