義手の探偵

御伽 白

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無用心な二人と危険な女

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「や、やっと・・・・・・着きました」
「そ、そう・・・・・・ですね」
息も絶え絶えといった様子で二人は目的地である彼女の家にたどり着いた。神社の裏手にある二階建ての木造住宅がナユタの住む家である。
境内けいだいに家があるんですね」
「ええ、見えにくい場所に立ててますから、参拝に来られる方は知らないことが多いですけどね」
 ナユタはポケットから鍵を取り出して、家を開けるとダンボールを玄関に置いていく。
「本当に助かりました。美琴さんがいなければ、もっと時間がかかってました」
「無事にお手伝い出来てよかったです」
「お茶だけでもしていってください」
そう言って、誠はナユタに腕を引かれて家へと連れられる。拒否する間も無く、連れられるまま階段を上り、一室に案内されると「お茶を入れてくるので少しだけ待っててくださいね」とすぐにナユタは誠を残して、部屋を出ていってしまった。
「あ・・・・・・はい」
 誠はそう返事をすると改めて案内された部屋を見渡した。白を基調とした家具に可愛らしい小物が置かれ、非常に女子らしい部屋という印象を受ける。部屋の壁には制服が掛けられており、この辺りでは有名な高校の制服だった。
「ここって客室じゃないよな」
 明らかに彼女の自室に案内された誠は、自分がかなり危険な状況に陥ってることを自覚した。
(女装した男性が、女子高生の自室に侵入って、完全に通報案件だ)
 しかも、ナユタの父はそう言ったことに厳しく恐ろしいと聞いている。誠にとってかなり、危険な場所にのこのこと付いてきてしまったということだった。
「なんで初対面の相手を自室に通すんだ・・・・・・僕が悪人だったらどうするんだろう」
 そう呟きながらも、勝手に家をうろつくわけにもいかず、誠は溜め息を吐きながら机の前に座った。
「ふあぁ・・・・・・あれ? ・・・・・・ナユタ、帰ってきたんですか?」
 眠たげな欠伸と共に布団から声が聞こえて、誠の心臓が大きく跳ねた。
 布団からひょっこりと顔を出したのは、キラキラと輝く銀髪の少女だった。
 誠と銀髪の少女の視線が交錯する。呆然と見つめ合う二人。少女は首を傾げ、誠は苦笑いを浮かべていた。
「誰?」
 お互い様な発言を少女が呟く。誠としても同じ部屋に全く見知らぬ人がいるとは予想していなかった。
「・・・・・・犬養 美琴です。あなたは・・・・・・?」
 誠は混乱しながらも自己紹介をすると少女は「シロノです」とだけ答えると誠の顔をまじまじと見つめてくる。
「・・・・・・え? なんでこの部屋に見知らぬ人がいるんですか?」
「それは、私も聞きたい」
 誠は大まかに話の流れを説明するとシロノは頷きながら話を聞いていた。半分は、呆れた表情を浮かべながら、そして、もう半分は頭を抱えながら聞いていた。
「相変わらず、ナユタは危機管理ガバガバですね。びっくりですよ・・・・・・」
「疑わないんですか?」
「はい。ナユタの危機管理の甘さは、私もよく知ってますからね。納得です」
 そう言いながらシロノは布団から起きると誠の隣に座ると、眠そうに欠伸をする。彼女は可愛らしい浴衣を羽織っており、寝起きなのか服が緩んでおり、はだけて扇情的な格好になっている。誠はとっさに顔を背けると話題を変えた。
「そういえば、なんでシロノさんは、ナユタさんの部屋で寝てたんですか?」
「え? ああ、私、匂いフェチなんで」
「ああ、なるほど、匂いフェチなんですか・・・・・・なんて?」
 サラリと奇妙な発言が聞こえた気がして、誠は再び問いかける。
「匂いに興奮するんです。ナユタは良い匂いして落ち着くんですよね。嗅いだら分かりますよ。是非!」
(やばい人と一緒の部屋になってしまった。何が是非なんだ。一緒になって嗅いだら僕は完全にお巡りさんの厄介になるよ)
 誠はそう思いながら作り笑いを浮かべて誤魔化した。
「お姉さんは何フェチなんですか?」
 そんなことを言いながら、シロノは誠に近づいてくる。シロノは誠が女性だと思い込んでいるのか、距離感が近い。警戒心のない距離感の取り方に誠の心臓は早鐘を撃っていた。誠も健全な男性であり、浴衣から見えるスラリとした細い足に視線が向いてしまう。視線を感じ取ったのかシロノはニヤリと笑うと獲物を狙う獣の様な表情を見せた。
「なるほど、足ですか。仲良くなれそうですね。それじゃあ、私の足を見てて良いので、美琴さんも嗅がせてもらいましょうかね。ふふふ」
 そう言って誠を押し倒してシロノは馬乗りになる。誠は抵抗しようとするが下手に暴れるとズラが外れてしまう様な気がして、大きく抵抗できない。
「や、やめてください。なんでいきなり・・・・・・」
「ナユタも防犯意識に欠けますけど、美琴さんも十分に無防備ですよ? 見ず知らずの人の家に上がり込むなんて、悪い女の子に襲われちゃいますよ」
 首筋をシロノの指先が触れて、くすぐったくなって誠は身をよじった。女装がバレる恐怖と貞操の危機を両方を感じながら抵抗するもマウントポジションを取られている状態では、中々抜け出せなかった。
「あ、なんか、これ、興奮しますね」
 抵抗する誠を見ながらシロノはそう呟いた。嗜虐心からついつい口元が緩くなるのを感じていた。
「何してるの? シロノ」
「そりゃあ、お楽しみを・・・・・・あ」
 突然、冷め切った声が聞こえて、シロノの血の気が引いていく。我に返ったシロノは確認する様にゆっくりと視線を向けた。
 そこには、お茶を持って冷たい視線を向けるナユタの姿があった。
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