287 / 352
4章
Part 286『後悔と自己嫌悪』
しおりを挟む
「やってしまった・・・・・・」
しばらく、歩きながら最初に呟いた言葉がそれだった。
感情に任せて行動してしまった。こんなのは、癇癪を起こした子供と変わらないじゃないか。
けれど、あのまま、不満を抱えて篝さんと一緒に作業をすることも考えられなかった。
しかし、もう完全にあそこには、戻れなくなってしまった。
なんとなく、帰る気にもなれずに、最後に椿に教えてもらったあの場所を見てから帰ろうと思った。
「まあ、いつかはこうなってたような気もするし、仕方ない。」
自分に言い聞かせるように呟いた言葉は、胸に残った後味の悪さを消してはくれない。
「削り針は返しちゃったし、道具も自分で作る事になるよな。どうやって作ってんだろ。」
削り針に使われていた呪術を思い出しながら自分に出来るかを考える。無理ではないような気がする。しかし、そんな事をしている場合ではないのも事実だ。
後先をきちんと考えるなら、我慢してでもあの場に残るべきだった。
後悔がより一層、自分の足を早くさせる。そして、気が付けば、目的地である滝に辿り着いていた。
滝に来るまでの間に、辺りは薄暗くなっていて、感情に任せて来るべきではなかったと思う。
昼間に来るのと違って、夜の森は不気味だ。異様に静まり返った森に水が叩きつけられる音だけが聞こえてくる。
「後悔してばっかりだな。本当に・・・・・・ダサいな」
自分の愚かさや忍耐力のなさに自己嫌悪がとまらない。このまま、いなくなってしまいたくなる。
その場に座り込んで、瞳を閉じて考え込む。今更になって、目頭が熱くなってくる。殴られた頬は、もう痛みも引いてきているはずなのに、どんどん痛くなっているような気さえする。
上を見上げて、それが溢れないように必死に抑える。
「お、どうした? 泣いてんのか?」
俺の顔を覗き込むように現れたのは、乱丸だった。
誰もいないと思っていたので、思わず仰け反り、転びそうになるのを乱丸に手を掴まれ助けられる。
「どうしてここに・・・・・・」
「なんか、こんな時間に、山の奥に行こうとする奴がいると思って追いかけてきた。」
「ああ、なるほど」
どうやら、乱丸には篝さんに怒られたことは、まだ知られていないようだ。
「なんか、あったのか? こんな夜中にこんなところで、泣いて」
「泣いてない。ちょっと、空を見上げてただけ。」
「まあ、それでも良いけどな。なんだ。あれか、伸び悩んでるとかか?」
「篝さんに帰れって言われた。まあ、自業自得なんだけど」
「へぇ、そいつは、急展開だな。」
俺の横に座り込んで乱丸は、「なにやったんだ?」と俺に尋ねる。
「勝手に呪いを練習した。」
俺がそう言うと乱丸は「は?」と気の抜けた声を出した。
しばらく、歩きながら最初に呟いた言葉がそれだった。
感情に任せて行動してしまった。こんなのは、癇癪を起こした子供と変わらないじゃないか。
けれど、あのまま、不満を抱えて篝さんと一緒に作業をすることも考えられなかった。
しかし、もう完全にあそこには、戻れなくなってしまった。
なんとなく、帰る気にもなれずに、最後に椿に教えてもらったあの場所を見てから帰ろうと思った。
「まあ、いつかはこうなってたような気もするし、仕方ない。」
自分に言い聞かせるように呟いた言葉は、胸に残った後味の悪さを消してはくれない。
「削り針は返しちゃったし、道具も自分で作る事になるよな。どうやって作ってんだろ。」
削り針に使われていた呪術を思い出しながら自分に出来るかを考える。無理ではないような気がする。しかし、そんな事をしている場合ではないのも事実だ。
後先をきちんと考えるなら、我慢してでもあの場に残るべきだった。
後悔がより一層、自分の足を早くさせる。そして、気が付けば、目的地である滝に辿り着いていた。
滝に来るまでの間に、辺りは薄暗くなっていて、感情に任せて来るべきではなかったと思う。
昼間に来るのと違って、夜の森は不気味だ。異様に静まり返った森に水が叩きつけられる音だけが聞こえてくる。
「後悔してばっかりだな。本当に・・・・・・ダサいな」
自分の愚かさや忍耐力のなさに自己嫌悪がとまらない。このまま、いなくなってしまいたくなる。
その場に座り込んで、瞳を閉じて考え込む。今更になって、目頭が熱くなってくる。殴られた頬は、もう痛みも引いてきているはずなのに、どんどん痛くなっているような気さえする。
上を見上げて、それが溢れないように必死に抑える。
「お、どうした? 泣いてんのか?」
俺の顔を覗き込むように現れたのは、乱丸だった。
誰もいないと思っていたので、思わず仰け反り、転びそうになるのを乱丸に手を掴まれ助けられる。
「どうしてここに・・・・・・」
「なんか、こんな時間に、山の奥に行こうとする奴がいると思って追いかけてきた。」
「ああ、なるほど」
どうやら、乱丸には篝さんに怒られたことは、まだ知られていないようだ。
「なんか、あったのか? こんな夜中にこんなところで、泣いて」
「泣いてない。ちょっと、空を見上げてただけ。」
「まあ、それでも良いけどな。なんだ。あれか、伸び悩んでるとかか?」
「篝さんに帰れって言われた。まあ、自業自得なんだけど」
「へぇ、そいつは、急展開だな。」
俺の横に座り込んで乱丸は、「なにやったんだ?」と俺に尋ねる。
「勝手に呪いを練習した。」
俺がそう言うと乱丸は「は?」と気の抜けた声を出した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
62
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる