咲かない桜

御伽 白

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4章

Part 292『気がつかなかったこと』

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 「お前の女は、妖精なのか。なるほど、それで焦ってた訳か。」

 俺の話を篝さんは、しっかりと聞いてくれた。篝さんは、自分から質問してくれるようなタイプではないが、話せばきちんと聞いてくれる。

 結局は、俺の忍耐力とコミュニケーション不足だったのだろう。

 技術面や呪術についてしか話すことがなかったことが、問題だったのだ。結局、ここ数ヶ月で関わっても、俺は篝さんの人となりを全く理解していなかった。

 理解していないのはお互い様である。よくもまあ、あそこまで、一人で怒れたものである。

 意識して見てみれば、篝さんは、根本的に他人に興味を持ちにくいのだと思う。あの異常なまでの名前の覚えなさから見ても、そこは間違いない。

 けれど、冷たい人かといえばそうではない。こうして、俺の境遇に対して共感してくれるし、呪術にしたって、俺のために叱ってくれたのだ。でなければ、わざわざ、勝手に呪術をした俺にこうまで怒ってはくれないだろう。

 自分の作品に没頭する姿しか見えてなかったのだから、親しくなれるはずはない。

 「事情は分かった。だが、課題を終えるまで呪術をすることは許さねぇ。削り針の持ち出しも禁止だ。作業は、うちでやれ。」

 「分かってます。」

 今更、あの光景を見て、自分勝手に呪術をしようなんて考えていない。自分は呪術をするには技術不足ということだ。

 それならば、認めさせるだけの代物を作ってみせる。

 「課題の出来によっては、すぐに教えてやる。だから、真剣にやれ」

 「ありがとうございます!」

 そのぶっきらぼうな言葉の中にある温かさを感じ、心の底から感謝した。失った信用は、すぐには戻らない。けれど、チャンスを貰ったのだ。必ず、そのチャンスに応えなければいけない。

 「あの、今日、作っていってもいいですか?」

 「・・・・・・好きにしろ。」

 俺は、お礼を言うと篝さんの家に入り、作業に取り掛かった。未完成では、あるものの作りかけていた。

 客観的に自分の作りかけの作品に意識を向ける。より良くするにはどうするべきか、そう考えていると、自分の作品の一部に少し削りの荒い部分が見つかった。

 修正出来る程度だが、今までの自分では、気づかなかったかもしれない。

 少しづつ修正を加えながら、作業を進めていく。

 篝さんは、しばらく、その様子を見ていたが、また自分の作業に戻っていった。

 そして、おおよそ半分ほど作品を作り終えて、眠気が現れ始める。この状態で作業をする訳にはいかないと、俺は、削り針をしまった。

 数分だけ仮眠を取れば、眠気も取れるだろう。そう思って、俺は、家の壁に寄りかかって眠りについた。
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