293 / 352
4章
Part 292『気がつかなかったこと』
しおりを挟む
「お前の女は、妖精なのか。なるほど、それで焦ってた訳か。」
俺の話を篝さんは、しっかりと聞いてくれた。篝さんは、自分から質問してくれるようなタイプではないが、話せばきちんと聞いてくれる。
結局は、俺の忍耐力とコミュニケーション不足だったのだろう。
技術面や呪術についてしか話すことがなかったことが、問題だったのだ。結局、ここ数ヶ月で関わっても、俺は篝さんの人となりを全く理解していなかった。
理解していないのはお互い様である。よくもまあ、あそこまで、一人で怒れたものである。
意識して見てみれば、篝さんは、根本的に他人に興味を持ちにくいのだと思う。あの異常なまでの名前の覚えなさから見ても、そこは間違いない。
けれど、冷たい人かといえばそうではない。こうして、俺の境遇に対して共感してくれるし、呪術にしたって、俺のために叱ってくれたのだ。でなければ、わざわざ、勝手に呪術をした俺にこうまで怒ってはくれないだろう。
自分の作品に没頭する姿しか見えてなかったのだから、親しくなれるはずはない。
「事情は分かった。だが、課題を終えるまで呪術をすることは許さねぇ。削り針の持ち出しも禁止だ。作業は、うちでやれ。」
「分かってます。」
今更、あの光景を見て、自分勝手に呪術をしようなんて考えていない。自分は呪術をするには技術不足ということだ。
それならば、認めさせるだけの代物を作ってみせる。
「課題の出来によっては、すぐに教えてやる。だから、真剣にやれ」
「ありがとうございます!」
そのぶっきらぼうな言葉の中にある温かさを感じ、心の底から感謝した。失った信用は、すぐには戻らない。けれど、チャンスを貰ったのだ。必ず、そのチャンスに応えなければいけない。
「あの、今日、作っていってもいいですか?」
「・・・・・・好きにしろ。」
俺は、お礼を言うと篝さんの家に入り、作業に取り掛かった。未完成では、あるものの作りかけていた。
客観的に自分の作りかけの作品に意識を向ける。より良くするにはどうするべきか、そう考えていると、自分の作品の一部に少し削りの荒い部分が見つかった。
修正出来る程度だが、今までの自分では、気づかなかったかもしれない。
少しづつ修正を加えながら、作業を進めていく。
篝さんは、しばらく、その様子を見ていたが、また自分の作業に戻っていった。
そして、おおよそ半分ほど作品を作り終えて、眠気が現れ始める。この状態で作業をする訳にはいかないと、俺は、削り針をしまった。
数分だけ仮眠を取れば、眠気も取れるだろう。そう思って、俺は、家の壁に寄りかかって眠りについた。
俺の話を篝さんは、しっかりと聞いてくれた。篝さんは、自分から質問してくれるようなタイプではないが、話せばきちんと聞いてくれる。
結局は、俺の忍耐力とコミュニケーション不足だったのだろう。
技術面や呪術についてしか話すことがなかったことが、問題だったのだ。結局、ここ数ヶ月で関わっても、俺は篝さんの人となりを全く理解していなかった。
理解していないのはお互い様である。よくもまあ、あそこまで、一人で怒れたものである。
意識して見てみれば、篝さんは、根本的に他人に興味を持ちにくいのだと思う。あの異常なまでの名前の覚えなさから見ても、そこは間違いない。
けれど、冷たい人かといえばそうではない。こうして、俺の境遇に対して共感してくれるし、呪術にしたって、俺のために叱ってくれたのだ。でなければ、わざわざ、勝手に呪術をした俺にこうまで怒ってはくれないだろう。
自分の作品に没頭する姿しか見えてなかったのだから、親しくなれるはずはない。
「事情は分かった。だが、課題を終えるまで呪術をすることは許さねぇ。削り針の持ち出しも禁止だ。作業は、うちでやれ。」
「分かってます。」
今更、あの光景を見て、自分勝手に呪術をしようなんて考えていない。自分は呪術をするには技術不足ということだ。
それならば、認めさせるだけの代物を作ってみせる。
「課題の出来によっては、すぐに教えてやる。だから、真剣にやれ」
「ありがとうございます!」
そのぶっきらぼうな言葉の中にある温かさを感じ、心の底から感謝した。失った信用は、すぐには戻らない。けれど、チャンスを貰ったのだ。必ず、そのチャンスに応えなければいけない。
「あの、今日、作っていってもいいですか?」
「・・・・・・好きにしろ。」
俺は、お礼を言うと篝さんの家に入り、作業に取り掛かった。未完成では、あるものの作りかけていた。
客観的に自分の作りかけの作品に意識を向ける。より良くするにはどうするべきか、そう考えていると、自分の作品の一部に少し削りの荒い部分が見つかった。
修正出来る程度だが、今までの自分では、気づかなかったかもしれない。
少しづつ修正を加えながら、作業を進めていく。
篝さんは、しばらく、その様子を見ていたが、また自分の作業に戻っていった。
そして、おおよそ半分ほど作品を作り終えて、眠気が現れ始める。この状態で作業をする訳にはいかないと、俺は、削り針をしまった。
数分だけ仮眠を取れば、眠気も取れるだろう。そう思って、俺は、家の壁に寄りかかって眠りについた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
62
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる