咲かない桜

御伽 白

文字の大きさ
324 / 352
4章

Part 321『伝わる好意』

しおりを挟む
 「あのさ。サクヤは積極的に来て欲しいの?」

 サクヤと二人で帰りながら俺は先ほどの会話を掘り返していた。

 俺はサクヤに対して奥手になり過ぎているところもあるので、不満があってもおかしくない。

 「い、いえ。気になるだけで、その・・・・・・別に・・・・・・」

 サクヤはそう言って否定する。しかし、その声音はどこか遠慮の様なものが見て取れた。

 関係性の進展は、俺も望んでいる。恋人関係になって終わりではない。

 将来をずっと共にする以上は、もう少し好意を示したり欲望をぶつけるべきなのかもしれない。

 普段の自分と違う振る舞いをするのは、演技っぽくて恥ずかしい。

 俺の葛藤を察してかサクヤは微笑する。

 「しばらくはこのままで大丈夫です。肉食系な日向さんも確かに気になりますけど、普段の日向さんが好きです。落ち着きますし、ちゃんと愛情も感じてますよ。私のためにあんなに努力してくれてるんですから」

 「でも、出来る限り言うようにするよ。言わなきゃ伝わらないもんな。」

 「それは本当に嬉しいですけど、言わなくても伝わることもありますよ。例えば、一番最初に作ってくれた指輪を見て実感しました。日向さんの気持ちが伝わってくるみたいな暖かい指輪でした。」

 そう言われて少し頬が熱くなる。確かに作品に想いを込めたのは間違いない。想いが届けと願ったのは本当だ。

 しかし、実際に感じたと言われると嬉しさよりも恥ずかしさが優っていた。

 書いてる途中で照れくさ過ぎて捨てたラブレターを好きな子に拾われて読まれるような羞恥心だ。

 穴があったら入りたい。

 「大丈夫ですか? 日向さん。」

 「ああ、大丈夫だ。心臓をやられただけだ。」

 「致命傷なんですけど!?」

 ある意味では、本当に致命傷だ。しかし、嬉しさも当然あるので否定はしない。口に出して言われると恐ろしく照れ臭いが伝わらないよりはマシだ。

 しかし、自分だけこんな辱めを受けるのは納得がいかなかった。

 完全に逆恨みなのだが、そこはご愛嬌ということで俺は反撃に出た。

 「・・・・・・そうだよ。俺のサクヤが大切だって気持ちが届けって思いながら作ったよ。」

 自分でもクサイことを言ってるのを自覚しながら俺はサクヤを見る。

 すると感極まった様子でサクヤは破顔した。

 「ありがとうございます! 大切にします!」

 「大切にするって埋めちゃったけどな。」

 「あ、えっと、思い出をちゃんと大切にします!」

 照れさせようと思ったが結局自爆しただけだった。しかし、ここまで喜んでくれるならやっぱり積極的に好意を伝えるのは大事だなと思った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

視える僕らのシェアハウス

橘しづき
ホラー
 安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。    電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。    ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。 『月乃庭 管理人 竜崎奏多』      不思議なルームシェアが、始まる。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

処理中です...