咲かない桜

御伽 白

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4章

Part 321『伝わる好意』

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 「あのさ。サクヤは積極的に来て欲しいの?」

 サクヤと二人で帰りながら俺は先ほどの会話を掘り返していた。

 俺はサクヤに対して奥手になり過ぎているところもあるので、不満があってもおかしくない。

 「い、いえ。気になるだけで、その・・・・・・別に・・・・・・」

 サクヤはそう言って否定する。しかし、その声音はどこか遠慮の様なものが見て取れた。

 関係性の進展は、俺も望んでいる。恋人関係になって終わりではない。

 将来をずっと共にする以上は、もう少し好意を示したり欲望をぶつけるべきなのかもしれない。

 普段の自分と違う振る舞いをするのは、演技っぽくて恥ずかしい。

 俺の葛藤を察してかサクヤは微笑する。

 「しばらくはこのままで大丈夫です。肉食系な日向さんも確かに気になりますけど、普段の日向さんが好きです。落ち着きますし、ちゃんと愛情も感じてますよ。私のためにあんなに努力してくれてるんですから」

 「でも、出来る限り言うようにするよ。言わなきゃ伝わらないもんな。」

 「それは本当に嬉しいですけど、言わなくても伝わることもありますよ。例えば、一番最初に作ってくれた指輪を見て実感しました。日向さんの気持ちが伝わってくるみたいな暖かい指輪でした。」

 そう言われて少し頬が熱くなる。確かに作品に想いを込めたのは間違いない。想いが届けと願ったのは本当だ。

 しかし、実際に感じたと言われると嬉しさよりも恥ずかしさが優っていた。

 書いてる途中で照れくさ過ぎて捨てたラブレターを好きな子に拾われて読まれるような羞恥心だ。

 穴があったら入りたい。

 「大丈夫ですか? 日向さん。」

 「ああ、大丈夫だ。心臓をやられただけだ。」

 「致命傷なんですけど!?」

 ある意味では、本当に致命傷だ。しかし、嬉しさも当然あるので否定はしない。口に出して言われると恐ろしく照れ臭いが伝わらないよりはマシだ。

 しかし、自分だけこんな辱めを受けるのは納得がいかなかった。

 完全に逆恨みなのだが、そこはご愛嬌ということで俺は反撃に出た。

 「・・・・・・そうだよ。俺のサクヤが大切だって気持ちが届けって思いながら作ったよ。」

 自分でもクサイことを言ってるのを自覚しながら俺はサクヤを見る。

 すると感極まった様子でサクヤは破顔した。

 「ありがとうございます! 大切にします!」

 「大切にするって埋めちゃったけどな。」

 「あ、えっと、思い出をちゃんと大切にします!」

 照れさせようと思ったが結局自爆しただけだった。しかし、ここまで喜んでくれるならやっぱり積極的に好意を伝えるのは大事だなと思った。
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