329 / 352
4章
Part 326『時間』
しおりを挟む
文字を刻むタイプの呪術の戦闘方法として日常的な道具を強化し使うというのは定石である。
自身の身体能力を高めたところで相性の悪さは必ず出てくるため道具に頼るというのが現実的な方法だった。
俺は近くに落ちている木の枝を拾い上げると呪字を刻む。
妖怪に対して切れ味が上昇する/妖怪以外には一切傷が入らない。
拾い上げた木の棒は、妖怪に対してのみ名刀と変わらない切れ味を有することになった。
醜穢から伸びる影の糸を切り裂きながら醜穢に迫っていく。
それは確かに醜穢に対して有効打になっていた。先ほどまで皆無だった勝機が確かに出来たのだ。
状況的には俺が有利に思える。しかし、瞬間移動を使う醜穢に俺は一撃を当てることすら出来ずにいた。
そして、それは俺の時間を確実に奪っていた。
十分は経っただろうか。現状では、残り五分で決着をつけられる気がしない。
自分を守るために枝を振るうことは難しくない。しかし、それは素人に毛が生えたレベルであり戦うための技術がない。
将来の自分は呪術の道に邁進したのだろう。そして、自衛のためにある程度戦闘技術を獲得した。
それが今の自分の到達可能な状態。
これが終われば戦闘面で誰かに師事することも考えなければいけない。
もっとも、この状況を乗り切ることが出来ればの話だが・・・・・・
執拗に自分のことを狙っている醜穢から逃げられる気もしない。
奥の手はあるが、どうなるか分からない以上は使いたくない。
サクヤは無事に助けを呼びにいけたのだろうか。
俺はそう考えながら枝を振るって戦いを続けた。
***
助けを呼ぶそれは確実な戦闘能力を有さない二人が取る選択肢として一番高いものだった。
そして、不幸を望むハチがその辺りの手を回さない訳がなかった。
電話という一番楽な連絡手段を妨害し、更には魔道具を惜しみなく使い森からの通行を一時的に遮断している。
森全体を濃霧が覆っていた。サクヤは何度もその霧に入り外に出ようと試みるが、気が付けば戻ってきてしまうのだ。
いくら霧が濃いとはいえ、慣れ親しんだこの山で霧が濃くなった程度で、そこまで方向感覚を失う訳はない。
醜穢がそういう能力を持っているのではとサクヤは考える。しかし、すぐにこれだけ大規模な隔離を行えるほどの能力があの未知の存在にあるようには思えなかった。
そこまで考えたところで何者かが自分達を狙っていることをサクヤは確信した。
これが悪意によって仕組まれたことならば、ここに来てしまった時点で詰んでいる。
サクヤは、日向の元に戻ることにした。自分ではどうすることも出来ない。あれから15分以上経っている。
囮役でも何でも手伝えるはずだ。
サクヤが日向のいた場所に着くとその光景に驚愕の表情を浮かべていた。
そこいたのは、醜穢を圧倒している日向の姿だった。
自身の身体能力を高めたところで相性の悪さは必ず出てくるため道具に頼るというのが現実的な方法だった。
俺は近くに落ちている木の枝を拾い上げると呪字を刻む。
妖怪に対して切れ味が上昇する/妖怪以外には一切傷が入らない。
拾い上げた木の棒は、妖怪に対してのみ名刀と変わらない切れ味を有することになった。
醜穢から伸びる影の糸を切り裂きながら醜穢に迫っていく。
それは確かに醜穢に対して有効打になっていた。先ほどまで皆無だった勝機が確かに出来たのだ。
状況的には俺が有利に思える。しかし、瞬間移動を使う醜穢に俺は一撃を当てることすら出来ずにいた。
そして、それは俺の時間を確実に奪っていた。
十分は経っただろうか。現状では、残り五分で決着をつけられる気がしない。
自分を守るために枝を振るうことは難しくない。しかし、それは素人に毛が生えたレベルであり戦うための技術がない。
将来の自分は呪術の道に邁進したのだろう。そして、自衛のためにある程度戦闘技術を獲得した。
それが今の自分の到達可能な状態。
これが終われば戦闘面で誰かに師事することも考えなければいけない。
もっとも、この状況を乗り切ることが出来ればの話だが・・・・・・
執拗に自分のことを狙っている醜穢から逃げられる気もしない。
奥の手はあるが、どうなるか分からない以上は使いたくない。
サクヤは無事に助けを呼びにいけたのだろうか。
俺はそう考えながら枝を振るって戦いを続けた。
***
助けを呼ぶそれは確実な戦闘能力を有さない二人が取る選択肢として一番高いものだった。
そして、不幸を望むハチがその辺りの手を回さない訳がなかった。
電話という一番楽な連絡手段を妨害し、更には魔道具を惜しみなく使い森からの通行を一時的に遮断している。
森全体を濃霧が覆っていた。サクヤは何度もその霧に入り外に出ようと試みるが、気が付けば戻ってきてしまうのだ。
いくら霧が濃いとはいえ、慣れ親しんだこの山で霧が濃くなった程度で、そこまで方向感覚を失う訳はない。
醜穢がそういう能力を持っているのではとサクヤは考える。しかし、すぐにこれだけ大規模な隔離を行えるほどの能力があの未知の存在にあるようには思えなかった。
そこまで考えたところで何者かが自分達を狙っていることをサクヤは確信した。
これが悪意によって仕組まれたことならば、ここに来てしまった時点で詰んでいる。
サクヤは、日向の元に戻ることにした。自分ではどうすることも出来ない。あれから15分以上経っている。
囮役でも何でも手伝えるはずだ。
サクヤが日向のいた場所に着くとその光景に驚愕の表情を浮かべていた。
そこいたのは、醜穢を圧倒している日向の姿だった。
0
あなたにおすすめの小説
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
視える僕らのシェアハウス
橘しづき
ホラー
安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。
電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。
ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。
『月乃庭 管理人 竜崎奏多』
不思議なルームシェアが、始まる。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる