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序章
Part 2 『妖精(自称)』
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「私を咲かしてください!」
その言葉に一体どんな意味があるのか、俺には皆目見当がつかなかった。一つ確かなことは彼女が必死に何かをお俺に伝えようとしているということだ。
だから、事の重要性は、なんとなくわかった。彼女にとって「私を咲かせてください」という願いは、彼女にとって重大な意味を持っているに違いないのだ。
「あ、すみません! 突然こんなことを言っても意味わかりませんよね!」
「あ、はい・・・そうですね。出来ればもう少し、噛み砕いて説明してくださると・・・」
「そうですよね。あのですね・・・私、実は、桜の妖精なんです!」
「・・・・・・・・・」
なんだ。桜の妖精かぁ、なるほど、なるほど、そりゃあ、突然、後ろに現れたり、異様に長い髪だったりするわけだぁ・・・へぇ・・・・・・
「そうなんですかぁ・・・じゃあ、頑張ってください。」
「あの・・・私のお願いは・・・」
「俺・・・いえ、私、用事がありまして、申し訳ございません。またの機会にということで・・・」
「そんな明らかに距離を置かないでくださいよぉ! 本当なんです! 本当に桜の妖精なんです!」
「 はいはい。そうだねーあなたの中ではねー」
「私を痛い人みたいに扱わないでください! せっかく勇気を出してお願いしたのに!」
俺の服を掴んで離さない彼女の声は必死だった。何を彼女はこんなになるまで自分を桜の妖精だと言い張っているのだろうか・・・可能性としては・・・
「1. お酒の飲み過ぎで酔っ払っている。 2.厨二病の女の子バージョン 3.友達の罰ゲームで桜の妖精を演じている。」
「本物っていう選択肢がないんですけど!? ていうか、信じてくださいよ! 私、本当に桜の妖精なんですから!」
しまった・・・考えていることが口から漏れていたようだ。考え事をしているとたまに口から漏れてしまうのは悪い癖だ。直さないとな・・・
「分かりました。証拠を見せます! とっておきのです! 私が長い時間をかけて習得した必殺技をお見せします!」
「え? 必殺技・・・」
「いきます! むむむ・・・見えます。あなたは、私のことを痛い厨二病の女性だと思い込んでいますね!」
「え? うん、そうだけど?」
何を今更当然のことを・・・ていうか、それが必殺技? 必殺の意味知ってる?
「どうです!?」
誇らしげに彼女は俺に尋ねてくる。もしかしなくても、今のが必殺技だったらしい・・・
「長年、研究に研究を重ねて編み出した読心術です。どうです? 信じる気になりました?」
「微塵も」
「微塵も!? え、結構、頑張って覚えた技なんですけど!?」
「そんなん、俺でも当てられるわ。」
「え? あなたも妖精なんですか!?」
だめだ・・・本当に痛い子に出会ってしまったらしい。そして、若干、おつむが弱い
「でも! あなたに見捨てられたら私、金輪際、桜として生きていけませんよぉ~」
しかし、まだ続けるのか、この子。そのガッツだけは、認めてあげても良い。
「私が咲いたら良いこといっぱいありますよ!」
「良いことって?」
「桜が見れます!」
「そんなん、どこでも見れるわ!」
「あ、あと!」
「なんだよ・・・」
「・・・・・・・・・ぐすん」
「泣いた!? 」
いやいや、え? プレゼン内容しょぼくない!? 今時、高校生でももうちょっと良いプレゼンするよ?
「良いんですね。私のお願いをきいてくれないなら、私も最後の手段に出なければいけません。」
「な、なんだよ。呪ったりするのか?」
「そういうのは、出来ないので、四六時中、あなたの視界の隅っこで体育座りして睨んでます。」
「地味っ!」
予想以上にしょぼい嫌がらせだった。確かに嫌ではあるが・・・
こうなっては、仕方ない。古来より伝わる言葉に習って行動を起こすしかない。昔の人は言ったそうだ。
「世の中、逃げるが勝ち!」
俺は、急いで彼女から逃げる。流石に男子の全力疾走に勝てる女子もそう多くないだろう。勿論、自分も運動神経が抜群という訳ではないが、平均より少し上だ。女子にも早い人間はいるだろうが追いつけるはずは・・・
「な、なんで逃げるんですかぁ・・・」
追いかけてきていた。ていうか、浮いてませんか、あなた・・・
彼女の体は、地面に触れずにふわふわと浮いていた。まるで本物の幽霊や妖精のように・・・
「なんでもお前、浮いてんの!?」
「そりゃあ、妖精なんですから浮きますよ!」
なぜ、そのアピールを最初にしなかったのか・・・やっぱり、馬鹿・・・
「あ、それより、前! 前向いてください!」
「前・・・前って」
目の前にちょうど木があった。減速を始めても、もう遅い距離、まるで走馬灯のようにゆっくりと視界が進む。
あ、これ、ダメなやつじゃない・・・こんなことなら、もう少しちゃんと話を聞いてやるべきだったなんてことを思う。しかし、思考はゆっくりになっても体は全くの別で動いているかのように、凄まじい勢いで木にぶつかった。
全速力で木に激突した衝撃は、同時に身体中を木刀で殴りつけられたかのようだった。
身体中を走る激痛で立っていられなくなり、そのまま、倒れる。脳が揺れるのを感じる。世界が・・・揺れる・・・気持ち悪っ・・・
脳を直接揺さぶられているかのような、感覚
車酔いのような不快感が波のように何度も襲ってくる。最悪の気分だ。
そして、意識が遠のいていった。
ああ、散々な日だ・・・こんな事なら飲み会で酒を飲み続けて寝てしまった方が良かった。
その言葉に一体どんな意味があるのか、俺には皆目見当がつかなかった。一つ確かなことは彼女が必死に何かをお俺に伝えようとしているということだ。
だから、事の重要性は、なんとなくわかった。彼女にとって「私を咲かせてください」という願いは、彼女にとって重大な意味を持っているに違いないのだ。
「あ、すみません! 突然こんなことを言っても意味わかりませんよね!」
「あ、はい・・・そうですね。出来ればもう少し、噛み砕いて説明してくださると・・・」
「そうですよね。あのですね・・・私、実は、桜の妖精なんです!」
「・・・・・・・・・」
なんだ。桜の妖精かぁ、なるほど、なるほど、そりゃあ、突然、後ろに現れたり、異様に長い髪だったりするわけだぁ・・・へぇ・・・・・・
「そうなんですかぁ・・・じゃあ、頑張ってください。」
「あの・・・私のお願いは・・・」
「俺・・・いえ、私、用事がありまして、申し訳ございません。またの機会にということで・・・」
「そんな明らかに距離を置かないでくださいよぉ! 本当なんです! 本当に桜の妖精なんです!」
「 はいはい。そうだねーあなたの中ではねー」
「私を痛い人みたいに扱わないでください! せっかく勇気を出してお願いしたのに!」
俺の服を掴んで離さない彼女の声は必死だった。何を彼女はこんなになるまで自分を桜の妖精だと言い張っているのだろうか・・・可能性としては・・・
「1. お酒の飲み過ぎで酔っ払っている。 2.厨二病の女の子バージョン 3.友達の罰ゲームで桜の妖精を演じている。」
「本物っていう選択肢がないんですけど!? ていうか、信じてくださいよ! 私、本当に桜の妖精なんですから!」
しまった・・・考えていることが口から漏れていたようだ。考え事をしているとたまに口から漏れてしまうのは悪い癖だ。直さないとな・・・
「分かりました。証拠を見せます! とっておきのです! 私が長い時間をかけて習得した必殺技をお見せします!」
「え? 必殺技・・・」
「いきます! むむむ・・・見えます。あなたは、私のことを痛い厨二病の女性だと思い込んでいますね!」
「え? うん、そうだけど?」
何を今更当然のことを・・・ていうか、それが必殺技? 必殺の意味知ってる?
「どうです!?」
誇らしげに彼女は俺に尋ねてくる。もしかしなくても、今のが必殺技だったらしい・・・
「長年、研究に研究を重ねて編み出した読心術です。どうです? 信じる気になりました?」
「微塵も」
「微塵も!? え、結構、頑張って覚えた技なんですけど!?」
「そんなん、俺でも当てられるわ。」
「え? あなたも妖精なんですか!?」
だめだ・・・本当に痛い子に出会ってしまったらしい。そして、若干、おつむが弱い
「でも! あなたに見捨てられたら私、金輪際、桜として生きていけませんよぉ~」
しかし、まだ続けるのか、この子。そのガッツだけは、認めてあげても良い。
「私が咲いたら良いこといっぱいありますよ!」
「良いことって?」
「桜が見れます!」
「そんなん、どこでも見れるわ!」
「あ、あと!」
「なんだよ・・・」
「・・・・・・・・・ぐすん」
「泣いた!? 」
いやいや、え? プレゼン内容しょぼくない!? 今時、高校生でももうちょっと良いプレゼンするよ?
「良いんですね。私のお願いをきいてくれないなら、私も最後の手段に出なければいけません。」
「な、なんだよ。呪ったりするのか?」
「そういうのは、出来ないので、四六時中、あなたの視界の隅っこで体育座りして睨んでます。」
「地味っ!」
予想以上にしょぼい嫌がらせだった。確かに嫌ではあるが・・・
こうなっては、仕方ない。古来より伝わる言葉に習って行動を起こすしかない。昔の人は言ったそうだ。
「世の中、逃げるが勝ち!」
俺は、急いで彼女から逃げる。流石に男子の全力疾走に勝てる女子もそう多くないだろう。勿論、自分も運動神経が抜群という訳ではないが、平均より少し上だ。女子にも早い人間はいるだろうが追いつけるはずは・・・
「な、なんで逃げるんですかぁ・・・」
追いかけてきていた。ていうか、浮いてませんか、あなた・・・
彼女の体は、地面に触れずにふわふわと浮いていた。まるで本物の幽霊や妖精のように・・・
「なんでもお前、浮いてんの!?」
「そりゃあ、妖精なんですから浮きますよ!」
なぜ、そのアピールを最初にしなかったのか・・・やっぱり、馬鹿・・・
「あ、それより、前! 前向いてください!」
「前・・・前って」
目の前にちょうど木があった。減速を始めても、もう遅い距離、まるで走馬灯のようにゆっくりと視界が進む。
あ、これ、ダメなやつじゃない・・・こんなことなら、もう少しちゃんと話を聞いてやるべきだったなんてことを思う。しかし、思考はゆっくりになっても体は全くの別で動いているかのように、凄まじい勢いで木にぶつかった。
全速力で木に激突した衝撃は、同時に身体中を木刀で殴りつけられたかのようだった。
身体中を走る激痛で立っていられなくなり、そのまま、倒れる。脳が揺れるのを感じる。世界が・・・揺れる・・・気持ち悪っ・・・
脳を直接揺さぶられているかのような、感覚
車酔いのような不快感が波のように何度も襲ってくる。最悪の気分だ。
そして、意識が遠のいていった。
ああ、散々な日だ・・・こんな事なら飲み会で酒を飲み続けて寝てしまった方が良かった。
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