咲かない桜

御伽 白

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1章

Part 24 『工房へ』

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 「おきてくださいっす! 朝っすよ!」

 コンの声が聞こえる。まだ眠たい・・・しかし、起きないわけにはいかない。

 「日向さん! 起きてこないと師匠に怒られるっす!」

 コンの声が頭に響く。「わかった。」と体を起こし瞼を開けると目の前にコンが立っていた。その頭には狐の耳が付いている。そして、後ろには毛並みの良さそうなふさふさの尻尾も生えている。
 
 「ん? どうしたっすか?」

 「コンって狐だったのか・・・ああ、だからコンなのか・・・」

 「そうっすよ。あれ?  言ってませんでしたっけ?」

 「きいてないよ。」

 「師匠にもお前が女だったら最高の耳と尻尾なんだがなっていわれてるっすよ。」

 「そ、そうなのか。」

 見境ないな・・・あの人。

 「とりあえず、行くっすよー」

 コンに引っ張られるまま、俺は食事を済ませてた。ウチガネさんはとっくに食事を済ませていたようで、真冬さんしかいなかった。

 「おはようございます。日向さん。よく眠れましたか?」

 「ええ、もう、ぐっすりでした。コンに起こされなかったら昼まで寝てたかも・・・」

 「さすがに怒られるどころじゃないっすよ。トンカチで殴られますよ?」

 「そうねぇ、ウチガネさん、生活習慣のだらしないかた嫌いですから」

 「・・・・・・明日は気をつけます。」

 あの丸太みたいな腕で殴られたら死んでしまうかもしれない。これは是が非でも生活習慣を改めるしかない。

 「今日は、長丁場ですし、いっぱい食べて頑張ってくださいね。」

 真冬さんの作ってくれた朝食を食べる。味噌汁から何から自分ではここまでのものに仕上げるのは無理だろうなと思うほどでゆっくりと味わって食べたかったが、コンが隣で急いで食べているの見てゆっくり食べるわけにはいかなかった。

 手早く食事をすませ、俺達は家の外にあるウチガネさんの工房に向かった。

 入り口に立った瞬間から熱気が体を纏わりつく。開けっ放しなはずなのにサウナのような温度だ。

 「暑いな・・・」

 「暑いっすよ。中はもっと熱いんで気をつけてくださいっす。」

 中に入るとウチガネさんが鉄の棒のようなものに石を積み上げていた。鉄の棒は、先端がオールのように平べったくなっていて、積み上げられた石は隙間なく積み上げられている。

 「遅いぞ。お前ら!」

 「すいませんっす!」

 ウチガネが昨日までとは明らかに雰囲気が違う。ケモミミがなんだと騒いでいたのに今は、真剣そのものだ。ピリピリとした緊張感が伝わってくる。

 本当に自分がここに居ていいのかと思うほどだ。

 「まあ、お前らの手伝いはまだいらねぇからそこで待ってな。」

 「了解っす!」

 入り口で呆然としている俺に気を使ってか、ウチガネさんがそんなことを言ってくる。

 コンが俺のそばに寄ってくる。「軽く説明するっすよ。」と言ってくれる。

 正直、何をしているのか分からない。その間にウチガネさんは、積み上げた石を紙にくるんで、熱された炉の中に突っ込んでいる。

 「今の師匠は、積み沸かしをしてるっす。本当は、良い鉄を選別する水へしと小割って作業があるんっすけどね。」

 「積み沸かしねぇ・・・全然、わからない。」

 「説明すると長くなるんすけど、ざっくり言うに刀を作るのに適切な鋼を集めて固めてるんっすよ。」

 「はぁ、なるほど・・・」

 二割もよくわかってない。その後も日本刀には、皮鉄と心鉄の二種類を使って心鉄を皮鉄に包んで作るとか言われたが理解が追いつかなかった。

 なんで包むんだ? 刀だよな? いまいち、よくわからん。

 「そんで、俺はなんの作業をするんだ? 金槌で叩くのか?」

 「いや、多分、初心者に叩かせるのは無理なんで、材料の用意とかっすね。炭とか、あとは師匠への飲み水とか」

 「ふーん・・・」

 正直、俺がいるのかと思ったが、これも経験だと思うことにする。実際、ちょっとでも手伝わないとご飯も寝る場所も用意してもらってる身としては肩身がせまい。

 しばらく、待っているとウチガネは、真っ赤になった鉄の棒を炉から取り出して軽く叩き始める。金属のぶつかる綺麗な音が部屋中に響く、そしてすぐに炭を鉄にくっつけ泥のようなものをかけて再び炉に入れる。

 そして、炉の横にある四角い箱から伸びた木の棒を出したり引いたりをしている。それに反応するように火の勢いが強くなっているので、おそらく、あの四角い箱から空気を送っているのだろう。

 温度はかなりのもので、もう、春だというのに汗だくになっていた。

 そして、何度も、その動作を繰り返していると、いつのまにか、小さな鉄の塊の山だったはずが、一つの塊の鉄に変わっている。

 「鍛錬するぞ。しっかり、覚えろよ。コン」

 「はいっす!」

 長い、とんでもなく長い、そして、とても速い、1日が始まった。
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