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1章
Part 25『鍛錬』
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金槌が金属を叩く。高い金属音が工房に響く。まるで楽器を演奏しているような綺麗な音は、刀を作っているという印象を抱かせない。
最初は、積み上げられた鉄の山だったのが今では、一つの塊になり、金槌で打ち付けられてかなり平べったくなっていた。
叩くたびに火花が飛ぶ、キィンという音を立てて、コンの振るう金槌が一定のリズムで鋼を打つ。
赤く燃える鉄は叩かれ、伸びていく。何度も、何度も、何回、金槌を振るっただろうか
そして、ある程度伸びると、ウチガネの持つ小さな金槌にコンが金槌で叩きその下にあった、細長く伸ばされた鉄が二つに分断される。それが粘土のように折りたたまれ、水で冷やされ炭をつけ、炉に入れ真っ赤になった鉄が再び叩かれ伸びていく。
そんな動作が繰り返されているだけなのに、なぜ、こうも心を惹かれるのだろうか。
暑い、暑すぎるこの空間に残っていたいと思うのは、何故なのだろう。
空気は、ピリピリと張り詰めている。身動きすらとることが躊躇されるそんな、緊張感が工房の中にはあった。
今まで、こんなにも何かに向き合ってきた人間を俺は見たことがなかったのだ。これが職人なのかと実感する。
刀を作ることを仕事にしている。それ自体を漠然と認識していたが、これは、そんな半端な認識をぶち壊すものだと思った。ウチガネは、真剣に炉の炎と鉄に全神経を集中させている。そして、コンもそれに食らいつくように一振り一振りが力強く振るわれる。
鍛錬という工程に入ってから二人とも全く喋らない。時折、ウチガネが小さな金槌で合図を送り、コンがそれに反応して金槌を振るっていたようにも感じる。しかし、その辺りがどういう意味なのかは分からなかった。
気づけば、かなりの時間がすぎていた。かなり早く起きたはずだが、それでも、もう昼時だ。
しかし、鍛錬自体はする事が変わらない。打って伸ばして、折って、重ねて、叩いて、焼いてその繰り返しだ。
部屋の温度は、かなり高い。定期的に水分補給をしているが、真夏日以上の熱気のこもったこの部屋では、焼け石に水のような気すらしてくる。飲んだそばから汗になって吹き出しているかのような感覚すら感じるのだ。
しばらくすると先程から繰り返されていた鍛錬にも変化が訪れた。工房の端に置かれた石の土台をウチガネが持ってくる。石の土台は、台の中央の部分が凹んでいる。まさに凹型という感じだ。そして、先程までずっと打ち付けていた金属をそこに置く。
ウチガネは小さな金槌を鉄の中央に置くとコンが金槌を叩きつける。ゆっくりと金槌がU字型に変わっていく。
しばらく、その形を整えるとすぐに水につける。すると、蒸気がジューという音とともにあがる。
「ふぅ、腹減ったな。」
ウチガネがそんなことを言った。どうやら、作業がひと段落ついた様だ。
「飯もらってくるっす!」
「あ、俺が行きますよ。流石に何も出来てないですし・・・」
「じゃあ、お願いするっす! 多分、真冬さんがご飯用意してくれてるはずっすから」
「うん、すぐ戻る。」
そう言って俺は、工房を出て真冬さんのいる台所に向かった。
最初は、積み上げられた鉄の山だったのが今では、一つの塊になり、金槌で打ち付けられてかなり平べったくなっていた。
叩くたびに火花が飛ぶ、キィンという音を立てて、コンの振るう金槌が一定のリズムで鋼を打つ。
赤く燃える鉄は叩かれ、伸びていく。何度も、何度も、何回、金槌を振るっただろうか
そして、ある程度伸びると、ウチガネの持つ小さな金槌にコンが金槌で叩きその下にあった、細長く伸ばされた鉄が二つに分断される。それが粘土のように折りたたまれ、水で冷やされ炭をつけ、炉に入れ真っ赤になった鉄が再び叩かれ伸びていく。
そんな動作が繰り返されているだけなのに、なぜ、こうも心を惹かれるのだろうか。
暑い、暑すぎるこの空間に残っていたいと思うのは、何故なのだろう。
空気は、ピリピリと張り詰めている。身動きすらとることが躊躇されるそんな、緊張感が工房の中にはあった。
今まで、こんなにも何かに向き合ってきた人間を俺は見たことがなかったのだ。これが職人なのかと実感する。
刀を作ることを仕事にしている。それ自体を漠然と認識していたが、これは、そんな半端な認識をぶち壊すものだと思った。ウチガネは、真剣に炉の炎と鉄に全神経を集中させている。そして、コンもそれに食らいつくように一振り一振りが力強く振るわれる。
鍛錬という工程に入ってから二人とも全く喋らない。時折、ウチガネが小さな金槌で合図を送り、コンがそれに反応して金槌を振るっていたようにも感じる。しかし、その辺りがどういう意味なのかは分からなかった。
気づけば、かなりの時間がすぎていた。かなり早く起きたはずだが、それでも、もう昼時だ。
しかし、鍛錬自体はする事が変わらない。打って伸ばして、折って、重ねて、叩いて、焼いてその繰り返しだ。
部屋の温度は、かなり高い。定期的に水分補給をしているが、真夏日以上の熱気のこもったこの部屋では、焼け石に水のような気すらしてくる。飲んだそばから汗になって吹き出しているかのような感覚すら感じるのだ。
しばらくすると先程から繰り返されていた鍛錬にも変化が訪れた。工房の端に置かれた石の土台をウチガネが持ってくる。石の土台は、台の中央の部分が凹んでいる。まさに凹型という感じだ。そして、先程までずっと打ち付けていた金属をそこに置く。
ウチガネは小さな金槌を鉄の中央に置くとコンが金槌を叩きつける。ゆっくりと金槌がU字型に変わっていく。
しばらく、その形を整えるとすぐに水につける。すると、蒸気がジューという音とともにあがる。
「ふぅ、腹減ったな。」
ウチガネがそんなことを言った。どうやら、作業がひと段落ついた様だ。
「飯もらってくるっす!」
「あ、俺が行きますよ。流石に何も出来てないですし・・・」
「じゃあ、お願いするっす! 多分、真冬さんがご飯用意してくれてるはずっすから」
「うん、すぐ戻る。」
そう言って俺は、工房を出て真冬さんのいる台所に向かった。
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