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2章
Part 49『失念と恐怖と逃走と』
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それからは、数日は、探索の生活が続いていた。大学に行って街へ出て魔女を探す。しかし、冷静になってみれば、夜にならないと化物はともかく魔女は出ないのではないのかという結論に至り、俺とサクヤは、夜の行動に切り替えたのだ。
個人的に夜の街は、不思議な雰囲気で気に入っている。まだ、駅周辺は、人は少しいるが、少し外れるとまるで別世界かの様に静寂に包まれる。
この全く別の場所にきてしまったかの様な感覚が個人的には好きなのだ。とはいえ、もう最近は、妖怪達が見えることもあって非日常の感覚もずいぶん薄れてしまったのだけれど・・・
というか、俺自身の目的も正直、そこまで重要なのか分からなくなってきていた。リューに依頼していた妖怪が見えなくなる方法に関してはっきり言えば、なくても支障がない。
そう思っている程度には、俺は妖怪達と良い出会いをしてきたと思う。
悪い妖怪もいるのかもしれないが、そんな事を言っても悪い人間だっているのだからトントンだ。今回の化物の様に危険な生き物もいる様だが・・・
「見つかりませんね。」
サクヤは呟きながら辺りをキョロキョロと様子見する。
「まあ、出現場所に関して情報がなさすぎるからなぁ・・・手当たり次第って感じだし・・・」
大きい街ではないとは言ってもそれなりの広さの街だ。むしろ、数日で会える様なものでもないのだ。なんとなく駅周辺を散策する事が多いけれど、それこそ、別の場所で活動している場合だってなくはない。
捜索する場所を変えてみるのも手かもしれないなとそんな事を考えていると悪臭が鼻を刺激する。
「なんだ。この臭い・・・」
生ゴミが発酵したような、それでいてヘドロのような鼻が曲がりそうな悪臭が周囲を覆う。吐き気を堪えながら腕で鼻を覆う。
ズルズルと引きずるような音が聞こえてくる。そして、3メートルを超えるなにかが目の前に現れる。その姿を見て、本能的に理解する。あれはヤバイものだと。
ブヨブヨと半固形の体の一部が動き、形が変わり眼が出現する。そして、その瞬間、全身の体が波打つように勢いよく震えるとその泥は全身に眼を出現させた。
完全に見られてしまった。だけど、大丈夫だ。普通の人間には被害はない・・・そう思ったところで、俺は最悪の思考が脳裏を掠めた。
見える人間は、普通の人間なのだろうか・・・と
俺は妖怪を観測している。その時点で半分は、彼らの世界の住人だ。現にサクヤに触れることも出来る。だとすれば、妖怪側が干渉できてもおかしくはないのではないのか?
おかしいどころか、至極当然だ・・・であれば・・・・・・まずい・・・
逃げなければと思うのに身体中が動かない。まるで足が地面に固定された様に動かない。恐怖が脳からの命令を全てシャットアウトしている。
「峰さん! 逃げましょう!」
俺の腕を掴んで引っ張るサクヤのおかげで機能する事を忘れていた足は、ゆっくりと動きを再開する。
全速力で走る。あれは、間違いなく関わってはいけない・・・
化物は俺達を追いかけてはいたが、うまく歩くことはできないのかモゾモゾとゆっくりと移動するだけですぐに振り切る事ができた。
次第に体力がなくなって立ち止まる。肩で息をしている自分はやっぱり運動不足だなと痛感した。
「大丈夫ですか? 峰さん。」
「ああ・・・・・・だいじょ・・・ぶ・・・」
サクヤの方は、走るというよりは飛んで逃げていたので息が切れている様子もない。少しその辺り羨ましいと思った。
息が整ってくるのを感じて俺はサクヤとの会話を再開する。
「あれがクロの言ってた化物か・・・」
「そう見たいですね。あんなに不気味な姿だとは・・・」
「醜穢という呼び名も納得だな・・・」
「けど、この分だと今日はここまでにしよう。あれと今もう一回会う度胸はない・・・」
「そうですね。解散にしましょう。」
そうして、俺達は帰ることにした。帰ろうと駅前を歩いていると道路を挟んだ向こうの歩道に柏木さんがいた様な気がした。
見間違いかと思って確認しようとするとその人はすぐに曲がり角に入ってしまってはっきりとは確認できなかった。
個人的に夜の街は、不思議な雰囲気で気に入っている。まだ、駅周辺は、人は少しいるが、少し外れるとまるで別世界かの様に静寂に包まれる。
この全く別の場所にきてしまったかの様な感覚が個人的には好きなのだ。とはいえ、もう最近は、妖怪達が見えることもあって非日常の感覚もずいぶん薄れてしまったのだけれど・・・
というか、俺自身の目的も正直、そこまで重要なのか分からなくなってきていた。リューに依頼していた妖怪が見えなくなる方法に関してはっきり言えば、なくても支障がない。
そう思っている程度には、俺は妖怪達と良い出会いをしてきたと思う。
悪い妖怪もいるのかもしれないが、そんな事を言っても悪い人間だっているのだからトントンだ。今回の化物の様に危険な生き物もいる様だが・・・
「見つかりませんね。」
サクヤは呟きながら辺りをキョロキョロと様子見する。
「まあ、出現場所に関して情報がなさすぎるからなぁ・・・手当たり次第って感じだし・・・」
大きい街ではないとは言ってもそれなりの広さの街だ。むしろ、数日で会える様なものでもないのだ。なんとなく駅周辺を散策する事が多いけれど、それこそ、別の場所で活動している場合だってなくはない。
捜索する場所を変えてみるのも手かもしれないなとそんな事を考えていると悪臭が鼻を刺激する。
「なんだ。この臭い・・・」
生ゴミが発酵したような、それでいてヘドロのような鼻が曲がりそうな悪臭が周囲を覆う。吐き気を堪えながら腕で鼻を覆う。
ズルズルと引きずるような音が聞こえてくる。そして、3メートルを超えるなにかが目の前に現れる。その姿を見て、本能的に理解する。あれはヤバイものだと。
ブヨブヨと半固形の体の一部が動き、形が変わり眼が出現する。そして、その瞬間、全身の体が波打つように勢いよく震えるとその泥は全身に眼を出現させた。
完全に見られてしまった。だけど、大丈夫だ。普通の人間には被害はない・・・そう思ったところで、俺は最悪の思考が脳裏を掠めた。
見える人間は、普通の人間なのだろうか・・・と
俺は妖怪を観測している。その時点で半分は、彼らの世界の住人だ。現にサクヤに触れることも出来る。だとすれば、妖怪側が干渉できてもおかしくはないのではないのか?
おかしいどころか、至極当然だ・・・であれば・・・・・・まずい・・・
逃げなければと思うのに身体中が動かない。まるで足が地面に固定された様に動かない。恐怖が脳からの命令を全てシャットアウトしている。
「峰さん! 逃げましょう!」
俺の腕を掴んで引っ張るサクヤのおかげで機能する事を忘れていた足は、ゆっくりと動きを再開する。
全速力で走る。あれは、間違いなく関わってはいけない・・・
化物は俺達を追いかけてはいたが、うまく歩くことはできないのかモゾモゾとゆっくりと移動するだけですぐに振り切る事ができた。
次第に体力がなくなって立ち止まる。肩で息をしている自分はやっぱり運動不足だなと痛感した。
「大丈夫ですか? 峰さん。」
「ああ・・・・・・だいじょ・・・ぶ・・・」
サクヤの方は、走るというよりは飛んで逃げていたので息が切れている様子もない。少しその辺り羨ましいと思った。
息が整ってくるのを感じて俺はサクヤとの会話を再開する。
「あれがクロの言ってた化物か・・・」
「そう見たいですね。あんなに不気味な姿だとは・・・」
「醜穢という呼び名も納得だな・・・」
「けど、この分だと今日はここまでにしよう。あれと今もう一回会う度胸はない・・・」
「そうですね。解散にしましょう。」
そうして、俺達は帰ることにした。帰ろうと駅前を歩いていると道路を挟んだ向こうの歩道に柏木さんがいた様な気がした。
見間違いかと思って確認しようとするとその人はすぐに曲がり角に入ってしまってはっきりとは確認できなかった。
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