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本編
幕間 結那と放課後の耳かき
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「ん~?」
わたし―高澤結那は、ガサガサと鳴る耳の中を気にしながら首をひねった。
「気のせいかな・・・?」
でも、だんだん耳の中がかゆくなってきたような気がする。
「気のせいだよね!」
自分に言い聞かせるように言うと、わたしは厩舎を出て授業を受けに向かった。
「う~ん・・・」
授業も終わった放課後の野馬追部厩舎。
「ダメか~」
わたしが自らの愛馬、鬼鹿毛の寝藁をすくう音が響く。でも、それとは明らかに違うガサガサ音が耳の中でこだましていた。
「なんなんだろう。この音とかゆみ」
耳を下に向けて叩いたりしてみるけど、音とかゆみは全く引かない。
(う~)
わたしは頭の中でうなりながら、厩舎二階の物置に向かう。
「こんな時は・・・」
壁際に山盛りにされた藁の中に潜り込む。幸い、今日の鬼鹿毛の運動は済ませておいた。
「いったん寝るに限る!」
わたしは頭から藁をかぶると、ひと時の眠りに落ちて行った。
「・・・那、結那」
耳元から聞こえる声と藁をかき分ける音。
「結那!」
ひときわ大きく呼ばれて起き上がると、そこには心配したようなあさひの顔。なんでかわからないけど、軍服を着てサーベルを吊り下げている。
「あさひ?その服は・・・?」
「写真部の部長にコスプレ撮影会に駆り出されてたの」
わたしが問うと、あさひは苦笑いして言った。
「あら、こんなとこにいたのね」
階段の方向から聞こえた声。その方向を見ると、あさひと同じように軍服を着た友里恵が覗き込んでいた。
「美月の撮影会に馬ごと駆り出されたと思ったら、戻ってきたらこんなことになってたなんてね・・・」
わたしが周りを見回してみると、窓の外はすでに暗くなりかけている。
「狼森先輩と光太は・・・?」
「二人なら先に帰ったよ」
あさひが差し出したのは、一枚の紙。「先に帰ります。戸締りよろしく。光太」という文字が書かれていた。
「それより結那」
手紙を放り投げると、あさひが体を乗り出して言う。
「ちょっとだけ、あんたの耳を見せてもらったんだけど、ずいぶん汚れているようね」
え⁉
「あはは~。それは見苦しいとこを見せちゃったな~」
そもそも、なんであさひがわたしの耳の中を見てるんだろう?それはともかくとして・・・・。
「じゃあ、わたしはここで~」
「ちょっと待ちなさい!」
退散しようとしたけど、あっさりあさひに捕まるわたし。
「あんた、そんな状態だと耳の中が相当かゆかったんじゃない?」
ギクッ!
「ちょっとここで待ってなさい。わたしが全部きれいにしてあげるから」
「おとなしくしてようね~」
いつの間にか、友里恵がわたしの左手をつかんでいる。
「悪いようにはしないから。はい、力を抜いて~」
逃げようとするわたしをしっかりと押さえ、頭をなでてくる友里恵。
「お待たせ」
あさひが戻ってくる。手にはなぜか湯気が立つ洗面器を抱えて。
「じゃあ、バトンタッチね」
友里恵の手が離れたと思った瞬間、わたしの頭はあさひの太股に乗せられていた。
「ちょっと!離してよ!」
わたしが暴れようとするけど、体に力が入らない。
「はい、おとなしくしようね~」
友里恵がわたしの足を抑えて・・・・なぜかマッサージするみたいに揉んでいる。
「じゃあ、まずは蒸しタオルで外側を掃除するからね」
あさひの声が聞こえると同時に、上にしている右耳に温かい布の感触が伝わってきた。
「はい。スリスリ・・・耳たぶにも汚れがたまってるから、全部きれいにしようね・・・」
擬音をささやきながら、蒸しタオルが優しく耳たぶをなでる。
「あぁ・・・」
抵抗しようとするけど、耳たぶから伝わる気持ちよさで体が動かない。
「ねえ、結那」
すっかりだらけきったわたしの耳に、あさひがささやく。
「結那、最近休んでないよね」
「・・・え?」
わたしが回らない頭で考える間もなく、あさひは耳をそうじしながら語りかけていった。
「だってさ、結那の鬼鹿毛って、超絶気性難じゃん」
それだけで心労半端ないはずだよ。というあさひ。それと同時に、耳の中がじわっと温かくなったような感じがした。
「耳の中のツボを押したの。ここは肩」
あさひは軽く笑いながら、指で耳のツボを刺激していく。そして、ゆっくり、静かに歌うように語りかけた。
「でさ、鬼鹿毛はわたしの天照とか友里恵のルルと違って種牡馬でもあるじゃん。ある程度体を絞っておかないといけないから、餌の管理も大変でしょ」
確かに、種牡馬の太りすぎは最悪種付不能に陥る。鬼鹿毛は食欲がすごいから、普段から栄養計算には気を使っていたな・・・。
「それと、鬼鹿毛って、しょっちゅう校内のどこかしらで二足歩行してるよね」
それも、結那を乗せたまま。っていうと、あさひは軽く笑う。
「だから、結那は、体全体に疲労がたまっているはず」
あさひが言うと同時に、もう一度耳の中が押された。
「だから・・・」
そういうと、あさひはさらに強い力で耳たぶを押す。
「今は、全部忘れて、力を抜いて・・・」
一言一言、かみしめるように言葉を紡いだ。
「わたしと友里恵に、思いっきり癒されてほしいの」
「ここは膝に効くツボ。結構使うでしょ、荒馬に乗るときは」
「あぁ~、いいよ」
あさひのマッサージが、凝り固まった耳と体をほぐしていく。わたしはそれに体をゆだね、思いっきりそれを楽しんでいた。
「そろそろ・・・」
マッサージ道具が指から耳かきに変わった。
「耳かき、していくね」
いよいよ耳穴の中に耳かきが入ってくるかと思ったら、あさひは耳かきで耳たぶをなで始める。
「最初っから中に入れるとびっくりしちゃうでしょ?最初は、耳たぶの汚れを取ってくね」
竹製の耳かきの匙が耳たぶをなで、ゆっくりと汚れが取られていく。
サリッ、サリッ・・・
意外なことに耳たぶにも耳垢がたまっているようで、掻かれているところが気持ちいい。
トントン
耳かきの匙にたまった耳垢を、あさひが懐紙の上に落とす。
「あさひ・・・」
「ん?」
わたしが言うと、あさひは少し首をかしげた。
「わたしの耳って、そんなに汚い?」
「う~ん。汚いね」
笑顔で言うあさひ。なんかショックだな・・・。
「でも、わたし好きだよ。こんな耳」
そんな声が聞こえると同時に、耳に温かく、柔らかい感触。少したって、それがあさひの唇だと気づいた。
「だって、耳かきのしがいがあるもん」
少し目線を上にあげると、あさひが舌なめずりしているのが見えた。
「わたしも好きだな~」
友里恵もそう言う・・・なぜかわたしに添い寝して頭をなでながら。
「なんでもいいから」
わたしの思考を読んだかのように、友里恵が言う。
「友里恵、そのままよろしくね」
あさひがそういうと、耳の中に耳かきが入ってくる感触。
「ほう、やっぱり・・・」
そんな声が聞こえたと同時に、まずは耳穴の入り口近くが掻かれ始めた。
「あさひ・・・」
「どうしたの?結那?」
「奥の方がかゆいから、そっち先・・・」
そう言うと、わたしは不意に恥ずかしくなった。なんか、懇願するような声の調子になっちゃったから。
「ダメ」
あさひはそう言って、浅いところを掻き続ける。
「結那の耳の中、だいぶ浅いところまで耳垢がべったりついてるの。そのまま奥を先にやるとね、むしろ耳垢を押し込んじゃうのよ」
しばらく我慢することね。と言うあさひ。
ペリッ、ペリッ、カリッ・・・・
わたしが話している間にも、あさひの耳かきが耳道にこびりついた耳垢を剥がしていく音が聞こえる。
カサッ
耳垢に耳かきが触れ、耳の中で音がこだました。
どれくらいの間、あさひに耳かきされたのかな・・・。
「じゃあ」
あさひが言うと、耳かきを持ちなおした。
「お待ちかねの、奥の方をやってくわね・・・」
(・・・来た!)
ゆっくりと耳かきがわたしの耳の奥に入ってくる。
「始めるから、痛かったりしたらすぐに言いなさい」
そう言うあさひの声と同時に、耳かきが耳奥の耳垢に触れた。その瞬間・・・
「‼」
これまで感じていた耳の痒みがより一層強くなる。
「大丈夫?やっぱり痛かった⁉」
思わずわたしが声を出したからか、あさひはいったん耳かきを抜いて声をかける。わたしは首を横に振ると、口を開く。
「違うの。耳の中がすごくかゆくなっただけ。むしろ・・・」
早く取って。というと、あさひはまるで弟か妹を見るような笑顔でうなずいた。
「もちろん。全部キレイにしてあげるからね・・・」
再び耳かきが耳の中に入ってきた。
「カリカリ、カリカリ・・・」
あさひが耳かきを動かし始める。なぜか擬音をささやきながら。
ズズッ
耳の中で何かが引きずられるような音がした。
「う~ん、この辺がくっついてるから・・・」
あさひが何か考えるように言って、耳かきが動く。
「ここから耳かきを差し込んで、てこの原理で動かせば・・・」
バキッ!
突然、耳の中で大きな音がした。
「‼」
思わず体を動かそうとすると、あさひがわたしの肩を押さえた。
「少しだけ我慢してて」
「うぅ・・・。わかった」
わたしの答えと同時に、再び耳かきが動き出す。
カリッ、ゴソッ
耳の中で耳垢が掻かれ、動かされる音が響いた。
「う~ん、ここに引っ掛ければ・・・」
あさひが言うや否や・・・。
ズズッ、ズゾゾゾゾゾ・・・・
耳の中で何かが引きずられるような音が響く。
「よしっ!取れた!」
あさひがそういうと同時に・・・
ズボォッ!
すごい音がして、耳道にあった異物感が一気に無くなった。
「どう?気持ちいいでしょ?」
あさひがそう言うけど・・・。
「あさひ!声大きい!」
さっきまでのわたしに合わせてたあさひの声。その大音量が右耳の中でハウリングする。
「ごめんごめん」
あさひが謝ると、わたしの背中をポンポンと叩いた。
「じゃあ、反対側もやるから、左耳をこっちに向けなさい」
結那がこっちに左耳を向けたのを確認し、わたし―春峰あさひは蒸しタオルを手に取った。
「こっちも外側の掃除からやってくわよ」
そういうと同時に、蒸しタオルで結那の耳たぶを包む。
「ゴシゴシ、ゴシゴシ・・・気持ちいいでしょ?」
「うん・・・」
結那の目がトロンとして、こっちから見ても気持ちいいのが分かる。
「結那さん、足もだいぶお疲れの様で・・・」
視線を左にずらすと、友里恵が結那の足をマッサージしているのが見える。
「んぁ~、そこだよそこ」
結那の口からよだれがたれ始めた。
「で、こっちも耳ツボを・・・」
わたしは冷たくなってきたタオルを片付けると、今度は指を結那の耳たぶに当てた。
「まずは・・・」
人間の耳には無数のツボがあり、ちょうど耳たぶに胎児の形を当てはめたとき、対応する部位に効くらしい。
ぐっ・・・
まず、上下二つあるくぼみの下の方。耳穴のあたりを親指で押す。ここは「肺」って言って、脂肪の燃焼に効果があるとこだ。
「体の痛みに効くとこは左側でやったから、こっちでは綺麗になれるツボを中心にやってくわね」
「ありがと~」
すっかりふやけた顔で結那が言う。
「ここは面頬、顔のリフトアップにいいところよ」
耳たぶの後ろ側、軟骨との境界線あたりをつまむように押した。
「うぁあ~」
結那の顔がさらにふやけたのを見て、わたしは腰の弾薬盒の蓋を開く。本来だったら騎兵銃の弾薬が入っているけど、わたしのは中子を取り外して耳かき道具が入っている。
「さて・・・」
竹製の耳かき。それを右手に持つと、わたしは結那に声をかけた。
「こっちも耳かきしていくから、動くんじゃないわよ」
手元のライトで耳の中を照らすと、そこには積もりに積もった耳垢の山。
「こっちも耳かきはしてないみたいね。いったいどれくらい放りっぱなしなんだか・・・」
ライトの光で照らしながら、竹製の耳かきをゆっくりと入れる。
「手前からやってくわよ。まずはこの辺から」
耳穴の外側に近い方、耳壁に貼りついた耳垢に匙の先を近づけた。
「カリカリ、ここに引っ掛けて・・・」
擬音をささやきながら耳垢をはがしていくと、結那は気持ちいいのか少し体を震わせる。
「ペリッ、取れた」
剝がれた耳垢をそっと耳の外に出し、黒い懐紙の上に落としていく。
「ん・・・・」
結那の口から気持ちよさそうな声が漏れた。
「ここも、匙をひっかけて・・・ペリペリッ」
優しく、力をこめないように耳垢を剝がしていく。そして・・・
「あとはこれだけね・・・」
結那の耳の奥、いつからそこにあるのかも分からないような巨大な耳垢。その摘出にかかる。
「これから耳の奥まで耳かきを入れるから、動くんじゃないわよ」
軽くうなずく結那。それを確認すると、わたしは竹製の耳かきをゆっくりと耳穴に差し込んだ。
「改めて見てもすごいわね」
耳穴がふさがってる。と、言うと、結那は恥ずかしそうに顔を赤らめる。
本人には見えないだろうけど、結那の耳の中は、耳垢で膜を張ったような感じでふさがっていた。
「でも、完全にふさがってるわけじゃない。だから・・・」
耳垢の端にある隙間に、耳かきの匙を差し込む。
「こうやって隙間から、少しずつ周りを剥がしていくの」
ほら、気持ちいいでしょ?と言うと、結那がピクンと体を震わせた。
「パリッ。取れた」
剥がれた耳垢を慎重にすくいあげ、懐紙に落とす。
「気持ちいい?痛かったらすぐに言いなさいよ」
わたしの問いに軽く声を漏らす結那。
「さっきの耳垢の奥にも、少しあるわね」
さらに奥の耳垢も耳かきの匙ですくい上げる。そして・・・
「これで終わりね。もう少しだけじっとしてなさい」
耳かきをしまうと、わたしは代わりに瓶と綿棒を取り出した。
「耳用のローションで耳の中を保護するから、じっとしてなさいよ」
瓶の中身を綿棒に染み込ませ、それを結那の耳に近づける。
ピチャッ
綿棒の綿玉が耳壁に触れた瞬間、結那が軽く声を漏らした。
「どう?耳の中がスーッとして気持ちいいでしょ?」
「うん・・・」
両耳とも丁寧に保護した後で、わたしは結那の背をポンポンと叩く。
「これで終わりよ。結那からとれたの、見る?」
「うへぇ・・・」
懐紙の上に積み上げられたわたしの耳垢。その持ち主だったわたし―高澤結那は、それを見ながらよくわからない声を発していた。
「この一番大きいの、右耳の一番奥にあった耳垢ね。大きいでしょ?」
その耳垢・・・はっきり言って汚い塊を指さして説明するあさひ。なんでそんなに嬉しそうなの?
「でね、こっちのパイシートみたいなのは・・・」
「ちょっとあさひ、結那引いてる」
わたしの表情を見たのか、あさひを制止する友里恵。
「そういえば、鬼鹿毛は・・・」
そう訊こうとした瞬間・・・・
「ヴヒヒヒヒ~ン!」
外の馬場から、鬼鹿毛のいななきが聞こえてきた。
「あっ!」
わたしは急いで飛び起きると、引手をつかんで鬼鹿毛の待つ馬場へと向かう。
軽くなった耳に、愛馬の嬉しそうな声が聞こえてきた。
わたし―高澤結那は、ガサガサと鳴る耳の中を気にしながら首をひねった。
「気のせいかな・・・?」
でも、だんだん耳の中がかゆくなってきたような気がする。
「気のせいだよね!」
自分に言い聞かせるように言うと、わたしは厩舎を出て授業を受けに向かった。
「う~ん・・・」
授業も終わった放課後の野馬追部厩舎。
「ダメか~」
わたしが自らの愛馬、鬼鹿毛の寝藁をすくう音が響く。でも、それとは明らかに違うガサガサ音が耳の中でこだましていた。
「なんなんだろう。この音とかゆみ」
耳を下に向けて叩いたりしてみるけど、音とかゆみは全く引かない。
(う~)
わたしは頭の中でうなりながら、厩舎二階の物置に向かう。
「こんな時は・・・」
壁際に山盛りにされた藁の中に潜り込む。幸い、今日の鬼鹿毛の運動は済ませておいた。
「いったん寝るに限る!」
わたしは頭から藁をかぶると、ひと時の眠りに落ちて行った。
「・・・那、結那」
耳元から聞こえる声と藁をかき分ける音。
「結那!」
ひときわ大きく呼ばれて起き上がると、そこには心配したようなあさひの顔。なんでかわからないけど、軍服を着てサーベルを吊り下げている。
「あさひ?その服は・・・?」
「写真部の部長にコスプレ撮影会に駆り出されてたの」
わたしが問うと、あさひは苦笑いして言った。
「あら、こんなとこにいたのね」
階段の方向から聞こえた声。その方向を見ると、あさひと同じように軍服を着た友里恵が覗き込んでいた。
「美月の撮影会に馬ごと駆り出されたと思ったら、戻ってきたらこんなことになってたなんてね・・・」
わたしが周りを見回してみると、窓の外はすでに暗くなりかけている。
「狼森先輩と光太は・・・?」
「二人なら先に帰ったよ」
あさひが差し出したのは、一枚の紙。「先に帰ります。戸締りよろしく。光太」という文字が書かれていた。
「それより結那」
手紙を放り投げると、あさひが体を乗り出して言う。
「ちょっとだけ、あんたの耳を見せてもらったんだけど、ずいぶん汚れているようね」
え⁉
「あはは~。それは見苦しいとこを見せちゃったな~」
そもそも、なんであさひがわたしの耳の中を見てるんだろう?それはともかくとして・・・・。
「じゃあ、わたしはここで~」
「ちょっと待ちなさい!」
退散しようとしたけど、あっさりあさひに捕まるわたし。
「あんた、そんな状態だと耳の中が相当かゆかったんじゃない?」
ギクッ!
「ちょっとここで待ってなさい。わたしが全部きれいにしてあげるから」
「おとなしくしてようね~」
いつの間にか、友里恵がわたしの左手をつかんでいる。
「悪いようにはしないから。はい、力を抜いて~」
逃げようとするわたしをしっかりと押さえ、頭をなでてくる友里恵。
「お待たせ」
あさひが戻ってくる。手にはなぜか湯気が立つ洗面器を抱えて。
「じゃあ、バトンタッチね」
友里恵の手が離れたと思った瞬間、わたしの頭はあさひの太股に乗せられていた。
「ちょっと!離してよ!」
わたしが暴れようとするけど、体に力が入らない。
「はい、おとなしくしようね~」
友里恵がわたしの足を抑えて・・・・なぜかマッサージするみたいに揉んでいる。
「じゃあ、まずは蒸しタオルで外側を掃除するからね」
あさひの声が聞こえると同時に、上にしている右耳に温かい布の感触が伝わってきた。
「はい。スリスリ・・・耳たぶにも汚れがたまってるから、全部きれいにしようね・・・」
擬音をささやきながら、蒸しタオルが優しく耳たぶをなでる。
「あぁ・・・」
抵抗しようとするけど、耳たぶから伝わる気持ちよさで体が動かない。
「ねえ、結那」
すっかりだらけきったわたしの耳に、あさひがささやく。
「結那、最近休んでないよね」
「・・・え?」
わたしが回らない頭で考える間もなく、あさひは耳をそうじしながら語りかけていった。
「だってさ、結那の鬼鹿毛って、超絶気性難じゃん」
それだけで心労半端ないはずだよ。というあさひ。それと同時に、耳の中がじわっと温かくなったような感じがした。
「耳の中のツボを押したの。ここは肩」
あさひは軽く笑いながら、指で耳のツボを刺激していく。そして、ゆっくり、静かに歌うように語りかけた。
「でさ、鬼鹿毛はわたしの天照とか友里恵のルルと違って種牡馬でもあるじゃん。ある程度体を絞っておかないといけないから、餌の管理も大変でしょ」
確かに、種牡馬の太りすぎは最悪種付不能に陥る。鬼鹿毛は食欲がすごいから、普段から栄養計算には気を使っていたな・・・。
「それと、鬼鹿毛って、しょっちゅう校内のどこかしらで二足歩行してるよね」
それも、結那を乗せたまま。っていうと、あさひは軽く笑う。
「だから、結那は、体全体に疲労がたまっているはず」
あさひが言うと同時に、もう一度耳の中が押された。
「だから・・・」
そういうと、あさひはさらに強い力で耳たぶを押す。
「今は、全部忘れて、力を抜いて・・・」
一言一言、かみしめるように言葉を紡いだ。
「わたしと友里恵に、思いっきり癒されてほしいの」
「ここは膝に効くツボ。結構使うでしょ、荒馬に乗るときは」
「あぁ~、いいよ」
あさひのマッサージが、凝り固まった耳と体をほぐしていく。わたしはそれに体をゆだね、思いっきりそれを楽しんでいた。
「そろそろ・・・」
マッサージ道具が指から耳かきに変わった。
「耳かき、していくね」
いよいよ耳穴の中に耳かきが入ってくるかと思ったら、あさひは耳かきで耳たぶをなで始める。
「最初っから中に入れるとびっくりしちゃうでしょ?最初は、耳たぶの汚れを取ってくね」
竹製の耳かきの匙が耳たぶをなで、ゆっくりと汚れが取られていく。
サリッ、サリッ・・・
意外なことに耳たぶにも耳垢がたまっているようで、掻かれているところが気持ちいい。
トントン
耳かきの匙にたまった耳垢を、あさひが懐紙の上に落とす。
「あさひ・・・」
「ん?」
わたしが言うと、あさひは少し首をかしげた。
「わたしの耳って、そんなに汚い?」
「う~ん。汚いね」
笑顔で言うあさひ。なんかショックだな・・・。
「でも、わたし好きだよ。こんな耳」
そんな声が聞こえると同時に、耳に温かく、柔らかい感触。少したって、それがあさひの唇だと気づいた。
「だって、耳かきのしがいがあるもん」
少し目線を上にあげると、あさひが舌なめずりしているのが見えた。
「わたしも好きだな~」
友里恵もそう言う・・・なぜかわたしに添い寝して頭をなでながら。
「なんでもいいから」
わたしの思考を読んだかのように、友里恵が言う。
「友里恵、そのままよろしくね」
あさひがそういうと、耳の中に耳かきが入ってくる感触。
「ほう、やっぱり・・・」
そんな声が聞こえたと同時に、まずは耳穴の入り口近くが掻かれ始めた。
「あさひ・・・」
「どうしたの?結那?」
「奥の方がかゆいから、そっち先・・・」
そう言うと、わたしは不意に恥ずかしくなった。なんか、懇願するような声の調子になっちゃったから。
「ダメ」
あさひはそう言って、浅いところを掻き続ける。
「結那の耳の中、だいぶ浅いところまで耳垢がべったりついてるの。そのまま奥を先にやるとね、むしろ耳垢を押し込んじゃうのよ」
しばらく我慢することね。と言うあさひ。
ペリッ、ペリッ、カリッ・・・・
わたしが話している間にも、あさひの耳かきが耳道にこびりついた耳垢を剥がしていく音が聞こえる。
カサッ
耳垢に耳かきが触れ、耳の中で音がこだました。
どれくらいの間、あさひに耳かきされたのかな・・・。
「じゃあ」
あさひが言うと、耳かきを持ちなおした。
「お待ちかねの、奥の方をやってくわね・・・」
(・・・来た!)
ゆっくりと耳かきがわたしの耳の奥に入ってくる。
「始めるから、痛かったりしたらすぐに言いなさい」
そう言うあさひの声と同時に、耳かきが耳奥の耳垢に触れた。その瞬間・・・
「‼」
これまで感じていた耳の痒みがより一層強くなる。
「大丈夫?やっぱり痛かった⁉」
思わずわたしが声を出したからか、あさひはいったん耳かきを抜いて声をかける。わたしは首を横に振ると、口を開く。
「違うの。耳の中がすごくかゆくなっただけ。むしろ・・・」
早く取って。というと、あさひはまるで弟か妹を見るような笑顔でうなずいた。
「もちろん。全部キレイにしてあげるからね・・・」
再び耳かきが耳の中に入ってきた。
「カリカリ、カリカリ・・・」
あさひが耳かきを動かし始める。なぜか擬音をささやきながら。
ズズッ
耳の中で何かが引きずられるような音がした。
「う~ん、この辺がくっついてるから・・・」
あさひが何か考えるように言って、耳かきが動く。
「ここから耳かきを差し込んで、てこの原理で動かせば・・・」
バキッ!
突然、耳の中で大きな音がした。
「‼」
思わず体を動かそうとすると、あさひがわたしの肩を押さえた。
「少しだけ我慢してて」
「うぅ・・・。わかった」
わたしの答えと同時に、再び耳かきが動き出す。
カリッ、ゴソッ
耳の中で耳垢が掻かれ、動かされる音が響いた。
「う~ん、ここに引っ掛ければ・・・」
あさひが言うや否や・・・。
ズズッ、ズゾゾゾゾゾ・・・・
耳の中で何かが引きずられるような音が響く。
「よしっ!取れた!」
あさひがそういうと同時に・・・
ズボォッ!
すごい音がして、耳道にあった異物感が一気に無くなった。
「どう?気持ちいいでしょ?」
あさひがそう言うけど・・・。
「あさひ!声大きい!」
さっきまでのわたしに合わせてたあさひの声。その大音量が右耳の中でハウリングする。
「ごめんごめん」
あさひが謝ると、わたしの背中をポンポンと叩いた。
「じゃあ、反対側もやるから、左耳をこっちに向けなさい」
結那がこっちに左耳を向けたのを確認し、わたし―春峰あさひは蒸しタオルを手に取った。
「こっちも外側の掃除からやってくわよ」
そういうと同時に、蒸しタオルで結那の耳たぶを包む。
「ゴシゴシ、ゴシゴシ・・・気持ちいいでしょ?」
「うん・・・」
結那の目がトロンとして、こっちから見ても気持ちいいのが分かる。
「結那さん、足もだいぶお疲れの様で・・・」
視線を左にずらすと、友里恵が結那の足をマッサージしているのが見える。
「んぁ~、そこだよそこ」
結那の口からよだれがたれ始めた。
「で、こっちも耳ツボを・・・」
わたしは冷たくなってきたタオルを片付けると、今度は指を結那の耳たぶに当てた。
「まずは・・・」
人間の耳には無数のツボがあり、ちょうど耳たぶに胎児の形を当てはめたとき、対応する部位に効くらしい。
ぐっ・・・
まず、上下二つあるくぼみの下の方。耳穴のあたりを親指で押す。ここは「肺」って言って、脂肪の燃焼に効果があるとこだ。
「体の痛みに効くとこは左側でやったから、こっちでは綺麗になれるツボを中心にやってくわね」
「ありがと~」
すっかりふやけた顔で結那が言う。
「ここは面頬、顔のリフトアップにいいところよ」
耳たぶの後ろ側、軟骨との境界線あたりをつまむように押した。
「うぁあ~」
結那の顔がさらにふやけたのを見て、わたしは腰の弾薬盒の蓋を開く。本来だったら騎兵銃の弾薬が入っているけど、わたしのは中子を取り外して耳かき道具が入っている。
「さて・・・」
竹製の耳かき。それを右手に持つと、わたしは結那に声をかけた。
「こっちも耳かきしていくから、動くんじゃないわよ」
手元のライトで耳の中を照らすと、そこには積もりに積もった耳垢の山。
「こっちも耳かきはしてないみたいね。いったいどれくらい放りっぱなしなんだか・・・」
ライトの光で照らしながら、竹製の耳かきをゆっくりと入れる。
「手前からやってくわよ。まずはこの辺から」
耳穴の外側に近い方、耳壁に貼りついた耳垢に匙の先を近づけた。
「カリカリ、ここに引っ掛けて・・・」
擬音をささやきながら耳垢をはがしていくと、結那は気持ちいいのか少し体を震わせる。
「ペリッ、取れた」
剝がれた耳垢をそっと耳の外に出し、黒い懐紙の上に落としていく。
「ん・・・・」
結那の口から気持ちよさそうな声が漏れた。
「ここも、匙をひっかけて・・・ペリペリッ」
優しく、力をこめないように耳垢を剝がしていく。そして・・・
「あとはこれだけね・・・」
結那の耳の奥、いつからそこにあるのかも分からないような巨大な耳垢。その摘出にかかる。
「これから耳の奥まで耳かきを入れるから、動くんじゃないわよ」
軽くうなずく結那。それを確認すると、わたしは竹製の耳かきをゆっくりと耳穴に差し込んだ。
「改めて見てもすごいわね」
耳穴がふさがってる。と、言うと、結那は恥ずかしそうに顔を赤らめる。
本人には見えないだろうけど、結那の耳の中は、耳垢で膜を張ったような感じでふさがっていた。
「でも、完全にふさがってるわけじゃない。だから・・・」
耳垢の端にある隙間に、耳かきの匙を差し込む。
「こうやって隙間から、少しずつ周りを剥がしていくの」
ほら、気持ちいいでしょ?と言うと、結那がピクンと体を震わせた。
「パリッ。取れた」
剥がれた耳垢を慎重にすくいあげ、懐紙に落とす。
「気持ちいい?痛かったらすぐに言いなさいよ」
わたしの問いに軽く声を漏らす結那。
「さっきの耳垢の奥にも、少しあるわね」
さらに奥の耳垢も耳かきの匙ですくい上げる。そして・・・
「これで終わりね。もう少しだけじっとしてなさい」
耳かきをしまうと、わたしは代わりに瓶と綿棒を取り出した。
「耳用のローションで耳の中を保護するから、じっとしてなさいよ」
瓶の中身を綿棒に染み込ませ、それを結那の耳に近づける。
ピチャッ
綿棒の綿玉が耳壁に触れた瞬間、結那が軽く声を漏らした。
「どう?耳の中がスーッとして気持ちいいでしょ?」
「うん・・・」
両耳とも丁寧に保護した後で、わたしは結那の背をポンポンと叩く。
「これで終わりよ。結那からとれたの、見る?」
「うへぇ・・・」
懐紙の上に積み上げられたわたしの耳垢。その持ち主だったわたし―高澤結那は、それを見ながらよくわからない声を発していた。
「この一番大きいの、右耳の一番奥にあった耳垢ね。大きいでしょ?」
その耳垢・・・はっきり言って汚い塊を指さして説明するあさひ。なんでそんなに嬉しそうなの?
「でね、こっちのパイシートみたいなのは・・・」
「ちょっとあさひ、結那引いてる」
わたしの表情を見たのか、あさひを制止する友里恵。
「そういえば、鬼鹿毛は・・・」
そう訊こうとした瞬間・・・・
「ヴヒヒヒヒ~ン!」
外の馬場から、鬼鹿毛のいななきが聞こえてきた。
「あっ!」
わたしは急いで飛び起きると、引手をつかんで鬼鹿毛の待つ馬場へと向かう。
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