上 下
4 / 8

後編

しおりを挟む
時の流れは早く、私が母国を離れて留学してから半年が過ぎ、私はグラウお兄様とトリアス殿下、そして、グラウお兄様の婚約者となられた留学先の国、ナコクのサクラ姉様、サクラ・イザヨイ公爵令嬢を加えた行きとは異なる4人で帰国しました。

サクラ姉様はグラウお兄様と同じく私よりも1歳歳上の艶やかな長く伸ばした美しい黒髪と切れ長の瞳が特徴的な私よりも頭1つ分背の高い方です。お会いした当初は、トリアス殿下を代表とした私達の世話役として、婚約者を決めていらっしゃらなかったトリアス殿下のお相手となるべく、ナコクから就けられた方でした。

しかし、私達と交流を重ねる内にトリアス殿下ではなく、グラウお兄様と相思相愛の間柄になり、イザヨイ公爵家もお兄様の実力と人柄をお認めになられ、凛々しくも素晴らしい女性なのに、何故か婚約者が決まっていなかったサクラ姉様とグラウお兄様の国は違えども、公爵家と子爵家から伯爵家になった家格差のある婚約を許されました。

サクラ姉様はナコクの生活に不慣れな私を積極的に導いてくださり、私の身に降りかかった婚約破棄についても親身になってくださりまして、本当の姉妹の様な間柄になりました。

留学してから1週間と少し過ぎてから、お父様達から私とアレウス・ユピタル元伯爵令息の婚約が正式に破棄されたお手紙が婚約破棄を証明する正規文書と共に届きました。

アレウス・ユピタルとヴィーナ・アプロスによるトリアス殿下主催のパーティー開始前の私への婚約破棄という暴挙は当初、私が考えていたよりも重くユピタル家とアプロス家は罰せられました。

まず、アレウス・ユピタルは王家、王族主催のパーティーを恣意的に事実を歪めて、婚約破棄を私の醜聞として利用しようとしたとして、ユピタル家を廃嫡となったうえ、性犯罪奴隷となり、薬で子供ができない体にされて競売に掛けられて、関係が冷え切っていた好事家夫妻に落札されて、2人の間に立った3人揃って睦まじい仲になって、夫婦関係に文字通り体を使って、現在も貢献しているそうです。

続いて、ヴィーナ・アプロスはアレウス・ユピタルと私の婚約破棄を共謀していたことに加えて、私の名を騙ったことでより罪が重くなり、実家と絶縁の上、ナコクとは正反対の内陸側への国外追放となりました。

最後に、ユピタル・アプロス両家は嫡子への教育、監督不行き届きと王族への不敬罪。ユピタル家はメティス家への借金の不返済などの余罪を併せて、即日爵位剥奪と借金と婚約破棄の慰謝料(アレウスの落札金を差し引いた不足分)の支払いが完了するまで、ユピタル家夫妻は借金犯罪奴隷落ちが決まり、元伯爵は鉱山送りとなって、ユピタル家は取り潰しとなりました。

アプロス家も男爵から平民落ちが確定していたので、ヴィーナを使って伯爵位だったユピタル家と縁をつなぐことで平民落ちを防ごうとしていたみたいです。

しかし、アプロス元男爵夫人が社交界での情報収集が拙かったので、ユピタル家が完全に斜陽である家とは裁かれる最後まで分からず、男爵令嬢が伯爵令息に見初められるという御伽噺に似た状況に親子ともども酔っていたことも悪い方向に拍車がかかってしまったみたいです。アプロス家夫妻は罪科確定後に、即日平民落ちとなって、犯罪奴隷となったそうです。

ナコクでの留学で私は新たな多くの友人を獲得し、帰国後も彼等・彼女等との文通は続いています。

その一方で、私は留学中にトリアス第二王子殿下と親密な関係を構築していき、帰国後にこれまで空席だった殿下の婚約者となりました。

殿下との婚約成立後、しばらくしてから、私はグラウお兄様からこれまで知らなかったいろいろな詳しいお話を聞きました。

あの日、アレウス・ユピタルによる婚約破棄騒動がなくとも、当初はお父様メティス家主導による、私とアレウスの婚約は白紙撤回という婚約破棄よりは穏便な方法で破談となることがほぼ決まっていたそうです。

また、トリアス第二王子殿下は学園入学後にグラウお兄様と出会い、身分差を越えた友情を育まれ、私の存在はお兄様のお話で知っていたそうですが、私の顔を見たのは私の学園入学時のときが初めてだったそうで、そのときに私に一目惚れされたそうです。

当時はまだメティス家は子爵という王族とは婚姻が許されない身分であることに加え、既に私がアレウスと親が決めたとはいえ、婚約していたことを知ってもトリアス殿下は諦めなかったそうです。

それからトリアス殿下はお兄様以外からも情報を集めて国王陛下などへの根回しと共に機を窺い、ユピタル家の不祥事などで私とアレウスの婚約の破談が確定となる情報の確証を得てから、私と会うためにあのパーティーを主催し、関係各所に私の好きなお料理等の様々な手配もされていたそうです。

普段は明晰で思い切りが良いのに、ミネルバ本人を目の前にすると別人の様にヘタレていたとグラウお兄様は当時のその光景が過られたのか、苦笑いを浮かべられました。

更に後日、王太子であらせられる第一王子殿下が戴冠されると、トリアス第二王子殿下は公爵家をおこされて臣籍降下されました。

そして、私があの場所で婚約破棄されてから、2年と少しの月日を経た今日、恐れ多くも国王王妃両陛下と先王様、王母様。また、私のお父様とお母様、ご結婚されて1男1女と更に双子の兄妹の父母となられたグラウお兄様とサクラお姉様はもとより、数多くの方達に盛大に祝福されるなか、私はトリアス様と結ばれました。
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...