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1巻
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毎年、この時期になると「武本旅館」の裏手にある竹林の若竹が芽を出す。新筍の若竹煮は旅館の名物料理のひとつであり、こだわりの逸品でもある。
「うわぁ、美味しい! さすが『武本旅館』の若竹煮は、一味も二味も違うよね」
今年最初に作られた筍の煮物を食べた武本理沙は、一口食べるなり満面の笑みを浮かべた。
「筍もわかめも味が染みてるし、器と上にちょこんとのってる木の芽も合わせて、ビジュアルも最高だね」
理沙の実家は「武本旅館」という温泉旅館で、東京近郊の温泉街に創業して今年で七十六年になる。
建物は三階建てで、客室は十室。自慢は山と渓谷に囲まれた環境と四季折々の風景と料理で、一度泊まればリピーターになること請け合いだ。
季節は春。
三月になったばかりの木曜日、理沙は何カ月ぶりかで両親とともに少し早めの夕食の席に着いていた。
家族が住む家は庭を挟んだ旅館の裏手にあり、何かあればすぐに仕事に戻れるようになっている。
普段は各自手が空いた時に食べるから、こうして一家揃っての食事はかなり久しぶりだ。
横長のテーブルに両親が並んで椅子に腰掛け、理沙は二人の正面に座る。
食卓に並ぶのは母の手料理で、どれも簡単に作れるものばかりだが、それぞれに愛情が籠もっていて味わい深い。
しかし、家族団らんのひと時は、旅館の経営者である理沙の父・栄一の話を聞いた途端、あっけなく崩壊してしまった。
「理沙。実はな――」
そう切り出した栄一が語ることには「武本旅館」の経営はかなり逼迫しており、このままでは存続できない状況にあるらしい。そこへ買収の話が持ち込まれ、両親はそれを受け入れるしかないと諦めている様子だった。
「嘘でしょ!? うちが買収されるとか……そんなの、冗談だよね?」
両親から買収の話を聞くなり、理沙は目を剥いて大声を張り上げた。
「いや、嘘でも冗談でもない。ずっと隠していて悪かったが『武本旅館』はもう火の車なんだよ」
栄一曰く、物価の高騰や観光業界全体の低迷など、経営悪化の理由はいろいろある。それらを乗り越える気概はあるけれど、基盤となる財力が底をついてしまったのだ。
「なんとか頑張ってきたけど上手くいかなかったし、思うような結果は得られなかったわ。建物も老朽化してきてるのに、建て替えるためのお金がないの。貯金も取り崩してほとんど残っていないし、買収を受け入れるほかに手立てがないのよ」
旅館の女将である母の美和子がそう言い、深いため息をつく。
「それに一昨日、市役所の建築指導課から連絡が入って、建物の老朽化と耐震性に問題があるんじゃないかって言われたの。それで、近々立ち入り検査を実施したいって。検査されたら、改修が必要だって言われるに決まってるわ。だけどうちにはそんなお金はないし、もう八方塞がりなのよ」
人一倍真面目で努力家の父親はともかく、いつも明るい笑顔を絶やさない母親が、見たこともないほど悲痛な表情を浮かべている。
両親の深刻な様子を目の当たりにして、理沙はようやく事の重大さを理解した。
「買収って、どんな形で? まさか『武本旅館』がなくなるってことじゃないよね?」
「それは今後、相手先と話し合うことになるだろうが、どうであれ『武本旅館』はもう自力でどうこうできる状態にないんだ」
項垂れる栄一の背中に、美和子がそっと手を添える。
はじめて聞かされた旅館の現状に驚き、理沙はただ呆然として寄り添う両親を見つめ続けた。
「そんな……」
理沙にとって『武本旅館』は生活の地盤であり、なくてはならない存在だ。
生まれた時からここにあり、それを当然だと思ってこれまで暮らしてきた。それなのに、今さら買収されて人手に渡るなど、受け入れられるはずがなかった。
「だけど、何かしらまだできることがあるんじゃない? 老朽化してるところは自分たちで直すとかできないかな? 昔はよく、おじいちゃんがトンカチを持って屋根に上ったり縁の下にもぐったりしてたよね?」
旅館の先代である理沙の祖父は次男で、成人後は大工として地域で一番大きな工務店に勤めていた。しかし、本来旅館のあとを継ぐ長男が急逝。先代は急遽「武本旅館」を継いで、今から八年前に他界した。
祖父が旅館を修復できていたのは、彼の大工としての確かな腕があってこそのものだ。
それをわかっていながら無意味な発言をしてしまったのは、旅館の危機を知って真っ先に浮かんできたのが祖父の顔だったからだ。
『理沙。くれぐれも「武本旅館」を頼んだぞ』
晩年の祖父は病床に就いており、亡くなる直前まで旅館のことを気にしていた。
むろん、頼まれたのは理沙だけではないし、一番念を押されていたのは後継ぎだった栄一だろう。
しかし、理沙は祖父と特に仲が良かったし、トンカチを持って旅館の点検をする彼について回るのが好きだった。
最新鋭の設備が自慢の高級宿泊施設もいいが、理沙にとっては小さな傷のひとつひとつにその時々の歴史が刻まれている「武本旅館」に勝るものはない。
幼かった理沙のお気に入りの遊びは新旧の女将を真似ての旅館ごっこだったし、舞台はもちろん「武本旅館」だった。
物心ついた時から建物の中を歩かない日はなかったし、これからも歴史は続いていくと信じて疑わなかった。そんな大事なものが人手に渡るなんて、どうしても受け入れられない。
「お姉ちゃんは? このことは知ってるの?」
「ええ。環には、先週の休みに会いに行って事情はすべて話したから」
理沙より三つ年上の姉、環は高校卒業を機に家を出て都内の大学に進学した。卒業後は都心にある外資系のホテルに入社し、今もそこで働いている。
それは将来的に「武本旅館」の女将になるための修業の一環であり、家族は皆そのつもりで力を合わせて頑張ってきたのだ。
それなのに、いったいいつから今のような状況に陥ってしまったのだろうか……
「それで、お姉ちゃんはなんて?」
「仕方ないって言ってたよ。環には前々からうちの経営状態が悪いことは伝えてあったし、資金調達ができないなら買収はやむを得ないって」
「黙っててごめんね。理沙には、もっと早く言わなきゃいけなかったわよね。でも、いろいろと頑張ってくれている理沙を見ると、どうしても言えなくて。お父さんとギリギリまで頑張ろうって話しているうちに、とうとう限界を迎えちゃって……」
栄一が答え、美和子が口添えをする。夫婦は顔を見合わせたのち、同時に理沙を見てすまなさそうな表情を浮かべた。
「そうなんだ……。ごめん。私、そんな状況に陥ってるなんて、ぜんぜん知らなくって……」
「いや、理沙は謝らなくていい。俺がいけなかったんだ。俺がもっとしっかり考えて経営していれば、こんなことにはならなかったのに……。情けない父親で、本当にすまない」
「お父さんだけが悪いんじゃないわ。私も、もっとちゃんと経営に口を出すべきだったのよ」
美和子が言い、栄一の背中を労うようにそっと撫でる。
父母は昔から仲が良く、この地域では知らない人がいないほどのおしどり夫婦だ。そんな二人が守り続けてきた「武本旅館」がなくなるかもしれないなんて、にわかには信じがたい。
(いったい、いつからこんなことに?)
部屋数は十室と規模は小さいが、「武本旅館」は家庭的なもてなしと料理が自慢の宿だ。
長年通ってきてくれる常連客もいるし、繁盛しているとは言えないまでもそれなりに稼げていると思っていたのだが、そうではなかったのだろうか?
「でも、なんで急に検査が入ることになったの? だって、いきなりすぎるし、疑いたくはないけど、もしかして誰かが役所に連絡をしたのかも?」
急な検査が入る場合、どこかから告発を受けての対応や、密告の可能性が高い。
「それは、わからないわ。だけど、それがなくても赤字続きだったし、いずれは旅館をたたまざるを得なかったでしょうね……」
美和子が心底悲しそうな表情を浮かべながら、しょんぼりと肩を落とす。
理沙は武本家の次女であり、旅館を継ぐのは環だ。そのため、経営には一切口出しすることを控えてきたし、あえて収支関連の数字も見てこなかった。
こんなことなら、もっと経営に関わっていればよかった。
そう思ったものの、仮にそうしていたとしても、今の危機的状況を避けられたかどうか……
いずれにせよ、もうのっぴきならないところまで来ているということだった。
「それで、どこがうちを買収するっていう話になっているの?」
理沙が訊ねると、栄一が軽く咳払いをする。
「実は少し込み入っていて、うちをどうこうしようとしている会社の候補は二社あるんだ」
「二社? うちって、そんなに目をつけられてたの?」
「うむ……順を追って話すと、最初に話を持ち掛けてきたのは外資系投資ファンドの会社で、うちを買い取って長期滞在者用のコンドミニアムを建設したいそうだ。この話だと『武本旅館』は廃業を免れない」
栄一が重々しい声で話しながら、沈痛な表情を浮かべる。
廃業という言葉が胸に刺さり、理沙は眉を顰めて苦い顔をした。
「コンドミニアム? そんなの、ダメに決まってる! この辺りの景観に合わないし、代々ここで頑張ってきた歴史が、ぜんぶなかったことになるのも同然じゃないの!」
にわかには信じられないような話を聞かされ、理沙は思わず声を荒らげた。
この辺りは純和風の建物ばかりで、そこに洋風の建築物が建つなどもってのほかだ。
周辺の人たちも同様に思うだろうし、この場所にコンドミニアムが建とうものなら、地域住民に対して申しわけが立たない。
ここに限らず、全国の温泉地にもインバウンドの波は押し寄せてきている。
需要があるのなら、ある程度の変化はやむを得ないかもしれない。けれど、大切な歴史や文化を壊すことだけはしてはならないだろう。
「もうひとつは、どんな感じなの?」
「そこは、今話した買収話を聞きつけて話を持ち込んでくれたんだが――」
栄一が言うには、もうひとつの買収元は理沙と同意見で、コンドミニアムの建設には反対のようだ。その上で「武本旅館」を再建させるべく資金提供をする考えでいるらしい。しかも、場合によっては旅館の経営権は武本に残したまま、スポンサー契約をすることも可能だ、と。
「スポンサー契約って、よくスポーツ選手とかが企業とするやつ?」
「同じと言えば同じだが、それとはまた別というか……。とにかく、うちは資金提供してもらえるし、経営権は保持したままでいられる。つまり、うちにはメリットしかないということだ」
「何それ? それって、話が美味すぎない?」
理沙は目を丸くして、声を大にする。願ってもない話だが、さすがに胡散臭すぎて手放しでは喜べない。
「その話、何か裏があるんじゃない? 後々、とんでもない負債を背負わされるとか、旅館どころか家まで根こそぎ持っていかれるとか」
「いや、さすがにそれはないと思う。……なぁ、母さん」
「え? ええ、そうね」
理沙が疑問を呈すると、栄一が曖昧に否定して美和子と顔を見合わせる。なんだか歯切れが悪いし、二人の様子もどことなく妙な感じだ。
何かしら、まだ口にしていない重大な秘密でもあるのだろうか?
理沙は両親の顔を交互に見ながら、首をひねった。
「何せ、相手は信頼できる大手だからな。ただそれには条件があって、詳しい話をしたいから一度理沙に時間を取ってほしいそうなんだ」
「えっ、私に?」
理沙が自分を指さすと、栄一と美和子が二度、三度と頷く。
「なんで? どうして、お父さんでもお母さんでもなく私なの? っていうか、いったいどこの誰がそう言ってるの?」
理沙がそう訊ねると、栄一がテーブルの向こうからグッと身を乗り出してきた。
「それなんだが……。実は『ホテル室月』の敦司君なんだ」
「はあぁ!? 敦司が?」
驚きのあまり、理沙は椅子から立ち上がって目を剥いた。
室月敦司――
理沙の幼馴染にして喧嘩友達でもある彼は、同じ温泉街にある大型リゾートホテル「ホテル室月」の若き経営者だ。
幼い頃は一緒に近所中を駆け回って遊んだし、毎日のように顔を合わせていた。今もその頃の関係は続いており、会えばなんだかんだとよく話をする。
ともに負けず嫌いだが、理沙は閃くとすぐに行動に移す感覚派で、敦司は理屈を捏ねながら石橋を叩いて渡る理論派だ。
そんな二人は、お互いに遠慮がないせいか、話している最中によく言い合いになる。しかし、怒りをあらわにする理沙に対して、敦司はムキになる幼馴染を飄々とした顔でかわし、話をすり替えるなどしていつの間にか口喧嘩を終わらせてしまう。そのせいか、どんなに言い合いになっても縁が切れるほど険悪にはならず、そんなところも合わせての腐れ縁だ。
敦司とは連絡先を交換しているし、つい先日も用事があってSMSでメッセージをやりとりしたばかりだった。
それなのに、なぜ彼は買収の話を事前に教えてくれなかったのだろう?
にわかに憤りを感じて、理沙は眉間に皺を寄せた。
「だいたい、なんで敦司がうちの買収話を知ってるの?」
理沙がふと疑問を口にすると、栄一がサッと視線を外した。
栄一は昔から自分に都合の悪いことが起きそうになると、すぐに目を逸らす癖があるのだ。
「あっ! もしかして、お父さん?」
「えっ……うん、実はそうなんだ。でも、この問題はうちだけで抱えるには大きすぎるし、この地域全体に関わる問題だ。どのみちしかるべき人に相談しなければならないと思っていたんだよ」
「ホテル室月」と「武本旅館」は、いずれも地域の温泉旅館ホテル組合に加入しており、二人はともに組合の副理事長を務めている。
そう言えば、栄一と敦司は、組合の会合が終わったあとに、よく自分たちだけで飲みに行くと聞いていた。若くはあるけれど、敦司は大企業の役職に就いているだけあって見識も広く経験値も高い。
おそらく、組合の活動を通じて自然と親しく話すようになり、それが今回の買収話に彼が介入することに繋がったのだろう。
外資系投資ファンドに買収されて「武本旅館」の歴史が無下にされるくらいなら、敦司の話に乗ったほうが何倍もマシだ。
しかし、どう考えても美味すぎる話だし、何かしら企んでいるようにしか思えない。
「まあ、座りなさいな」
美和子に促され、理沙はむっつりした顔をして椅子に座り直した。
「敦司君は『ホテル室月』の社長ではなく、『室月ホテル&リゾート』の副社長として買収の話を進めたいと言っている。ちなみに、もう社長の承認も得ているそうだ」
「はぁ? 敦司ったら、何を勝手に話を進めてるのよ。そもそも、どうして彼がうちの問題にそこまで首を突っ込むの?」
「室月ホテル&リゾート」は「ホテル室月」の親会社であり、敦司は同社の副社長を兼務している。
しかし、だからといって彼の一存で買収話が進むはずがない。もう本社決裁が下りているようだが、いったいどういう経緯でそんな話になったのだろう?
「室月ホテル&リゾート」は、ここを含めて国内で六つのホテルを経営している。
そのほかにもゴルフ場やレストラン経営などにも事業を広げており、同社は今や従業員数が千五百人を超える大企業だ。
その礎となる「ホテル室月」がオープンしたのは明治中期で、敷地面積はおよそ二万七千平方メートル。部屋数は百二十室で、顧客には国内外のVIPも多数いると聞いている。敷地内にはレストランやラウンジなどのほかにリラクゼーションサロンやジム、屋内外のプールといった施設が充実しており、本館の横にある別館は今後結婚式場にリニューアルする予定であるらしい。
総じて「ホテル室月」は歴史、格式ともに温泉街にあるほかの宿泊施設とは一線を画す存在だ。
そんな大企業が、なぜあえて経営が逼迫している「武本旅館」再建の手助けなどするのだろう?
コンドミニアムの建設を阻止し、景観を守るため?
これについては、なんとしてでも実現を阻まねばならない。
しかし「武本旅館」の再建にはかなりの金額が必要になるだろうし、景観保持が目的ならもっと安価でたやすい方法があるはずだ。
そもそも「室月ホテル&リゾート」が「武本旅館」の再建に手を貸して、なんのメリットがあるというのか。
今回の買収話は疑問だらけだし、栄一の説明だけでは何ひとつ納得がいかない。けれど、両親はもう敦司からの申し出を受けるつもりでいる様子だ。
だが、本当はどうだろう?
いくら「武本旅館」再建のためとはいえ、思うところがあるのではないだろうか。
「室月ホテル&リゾート」の経営は、代々創業者の直系の子孫が引き継いでおり、現在は敦司の父である室月肇が社長を務めている。
栄一と肇は同い年で、幼少期から高校まで同じ学校に通った仲だ。
もともと先代同士の仲が良く、二人が学生の頃はプライベートでもしょっちゅう行き来があったと聞いている。けれど、ともに代替わりしてからは急に疎遠になり、顔を合わせるのは組合の会合に出席する時くらいだ。
今でこそ元気に動き回っている栄一だが、少し前まで持病の腰痛が悪化して車椅子生活を余儀なくされていた。その間、栄一の代理を務めていたのは理沙であり、復帰した今もあれこれと雑務をこなすようになっている。
理沙が知る会合時の二人は、近くにいても目は合わさないし挨拶すら交わさない。あからさまに喧嘩をするわけではないが、互いを避けているのは明らかだ。
そんなこともあり、栄一が諸手を上げて敦司からの買収話を受け入れているとは思えない。
しかし、結局は背に腹は代えられないということなのだろう。
理沙はポケットからスマートフォンを取り出し、敦司に今どこにいるのか訊ねるメッセージを送った。すると、実家にいるとすぐに返事が届く。
やはり、思ったとおりだ。
「室月ホテル&リゾート」の本社は都心のビジネス街にあり、敦司は普段そちらにいることのほうが多い。しかし、今日は午後七時から温泉旅館ホテル組合の会合があり、副理事長を務めている敦司は毎回欠かさず顔を出しているのだ。
どうせ話をするなら、一刻も早いほうがいい。
『買収の件で話がある』
そう送るとすぐに返信があって、話し合いの場に彼の実家を指定された。
理沙はさらにメッセージを送り、これから会う約束を取り付けた。
「敦司、今実家にいるみたい。私、これから彼に会ってくるね。それで、疑問に思うことをぜんぶ聞いて、納得がいくまで話し合いをする」
よほど険しい顔つきをしていたのか、美和子が立ち上がった理沙のすぐそばに駆けつけてきた。
「理沙、お願いするわね。大役を任せることになっちゃったけど、くれぐれも喧嘩腰にはならないようにしてちょうだい」
昔から二人が言い合いをするのを見慣れている美和子が、心配そうな顔で理沙の頬にそっと掌を当てる。
美人でおっとりした性格の美和子は、いつも微笑みを絶やさない。そんな母は一家の癒し的存在であり、その笑顔にはこれまでに何度となく助けられた。それだけに悲しむ顔を見るのはできる限り避けたいと思うし、これに関しては父も姉も同じ気持ちだろう。
「大丈夫。ぜったい喧嘩腰にはならないし、冷静に話をするって約束する」
理沙は気遣ってくれる母に向かって、にっこりと笑いかけた。そして、両親に見送られてリビングルームをあとにする。
玄関に向かう前に洗面所に立ち寄り、鏡に映る自分をまじまじと見つめた。
理沙はどちらかといえば父親似で、顔のパーツのすべてが丸っこく、程よい位置に収まっている。
はじめに目が行くのは二重のどんぐり眼で、特別美人でも不美人でもないといった感じだ。
メイクをするとなぜか老け顔になるため、普段仕事の時に使うのはファンデーションとアイライナーのみ。プライベートに至っては色付きの日焼け止めクリームを塗って終わりだ。
「別に、このままでもいいか」
理沙はもともとちょっとガサツで、細かいことは気にしないタイプだ。
もちろん、悩みを抱えたり苦悩したりする時もあるが、根が明るく元気だからか、いつまでもクヨクヨするのは性に合わない。
結局、髪の毛を撫でつけただけで鏡の前を離れ、自宅の裏手から敷地の外に出て、温泉街とは反対方向に向かって歩き出した。
「武本旅館」は温泉街の端にあり、室月邸はここからさらに離れた位置にある。速足で行けば五分とかからないし、外にはまだ明るさが残っている。
(敦司ったら、なんで私に一言の断りもなく、話を進めたの?)
本音を言えば、とりあえず敦司を怒鳴りつけたくてたまらない。
けれど、母親に喧嘩腰にはならないと約束したし、まずは事実確認をして条件がどんなものか確かめなければ。
(冷静に。でも、敦司のほうから挑発してきたら? ちょっとくらい言い返してもいいよね?)
彼は子供の頃から弁が立ち、思ったことをストレートに言う傾向がある。どちらかといえば口うるさく、三つ年下の理沙に対してはいつもどこか上から目線だ。
しかし、今でも顔を合わせれば声を掛け合うし、彼の昇進とともにほぼ機会がなくなってはいるが、時間があれば行きつけの店で長々と話し込むことだってある。
時には恋愛や将来について話し合ったり、相談に乗ってもらったり。
決して口には出さないものの、理沙は敦司のことをちょっとした親友くらいに思っていた。
だからこそ、今回の話に関して何も言ってくれなかったことに憤りを感じる。
(なんで言ってくれなかったの? 言えば、あれこれと口出ししそうだから? そんなの、当たり前でしょ!)
腹立ちまぎれに敦司の顔を思い浮かべ、頭の中でその頬を思い切りつねる。
子供の頃、彼と口喧嘩になった時、理沙は実際に敦司の頬をつねろうとした。しかし、いくら手を伸ばしても彼の腕の長さまでしか近づくことができず、そのたびに諦めてアカンベエをしたのを思い出す。
(なによ! いつも余裕綽々って感じで憎たらしいったら……)
敦司は幼少の頃から眉目秀麗で、美男美女の両親のいいところを集めたような容姿をしている。オマケに頭脳明晰かつスポーツ万能である上に、カリスマ性もあって人を惹きつけるオーラまで兼ね備えている。それに加えて、生まれながらに経営者としての資質を持ち合わせているのだから、向かうところ敵なしだ。
理沙にしてみれば、それらのすべてが癪に障る要因でしかないが、当の本人が時にそれを逆手にとって挑発してくるのだから始末が悪い。
とにかく、納得のいくような説明をしてもらい、気になる条件とやらがなんであるかを確認しなければならない。
理沙は怒り心頭に発しながら歩き続け、それでもなんとか気を静めようと深呼吸を繰り返した。
以前は家族で住んでいた敦司の実家だが、今やそれぞれが都内に居を構え、こちらで全員が顔を合わせるのは月の半分にも満たないと聞いている。
(本社決済が下りているってことは、敦司のお父さんも買収の件を承知しているってことだよね)
父親同士の仲は良好とは言えないが、一流のビジネスパーソンたるもの、公私はきちんと分けているということだろうか。
しかし、いったい何がきっかけで疎遠になったのやら……
かつて仲が良かった幼馴染の二人は、今や成人した子を持つ既婚者同士だ。
以前聞いた話では、先に結婚したのは栄一で、肇はその一年後に既婚者になった。
美和子は都内に住むサラリーマン家庭に生まれ育ち、二人とは幼少期の習い事を通じて友達になったと聞かされている。栄一は優しく子煩悩で、父親としては百点満点の人だ。
その上、義理人情に厚く、努力家で真面目な性格は誰からも好かれる。
けれど、残念ながら経営者としては今ひとつで、決断力に欠けるところがあった。それが積もり積もっての今だろうが、まさか幼馴染が経営する会社に買収されることになるなんて想像すらしなかっただろう……
(さあ、着いた)
辿り着いた室月家は温泉街から少し離れた場所にあり、敷地は二百坪を優に超える。十五年前に建て替えた建物は二階建ての日本家屋で、庭に一歩足を踏み入れるなり、見事に咲いたハクモクレンが目を引く。
子供の頃はよくここで遊んだが、来るのは「ホテル室月」の先代女将が亡くなった時以来だ。
庭木は綺麗に管理されており、室月家の几帳面さが如実に表れている。
「いい香り」
「うわぁ、美味しい! さすが『武本旅館』の若竹煮は、一味も二味も違うよね」
今年最初に作られた筍の煮物を食べた武本理沙は、一口食べるなり満面の笑みを浮かべた。
「筍もわかめも味が染みてるし、器と上にちょこんとのってる木の芽も合わせて、ビジュアルも最高だね」
理沙の実家は「武本旅館」という温泉旅館で、東京近郊の温泉街に創業して今年で七十六年になる。
建物は三階建てで、客室は十室。自慢は山と渓谷に囲まれた環境と四季折々の風景と料理で、一度泊まればリピーターになること請け合いだ。
季節は春。
三月になったばかりの木曜日、理沙は何カ月ぶりかで両親とともに少し早めの夕食の席に着いていた。
家族が住む家は庭を挟んだ旅館の裏手にあり、何かあればすぐに仕事に戻れるようになっている。
普段は各自手が空いた時に食べるから、こうして一家揃っての食事はかなり久しぶりだ。
横長のテーブルに両親が並んで椅子に腰掛け、理沙は二人の正面に座る。
食卓に並ぶのは母の手料理で、どれも簡単に作れるものばかりだが、それぞれに愛情が籠もっていて味わい深い。
しかし、家族団らんのひと時は、旅館の経営者である理沙の父・栄一の話を聞いた途端、あっけなく崩壊してしまった。
「理沙。実はな――」
そう切り出した栄一が語ることには「武本旅館」の経営はかなり逼迫しており、このままでは存続できない状況にあるらしい。そこへ買収の話が持ち込まれ、両親はそれを受け入れるしかないと諦めている様子だった。
「嘘でしょ!? うちが買収されるとか……そんなの、冗談だよね?」
両親から買収の話を聞くなり、理沙は目を剥いて大声を張り上げた。
「いや、嘘でも冗談でもない。ずっと隠していて悪かったが『武本旅館』はもう火の車なんだよ」
栄一曰く、物価の高騰や観光業界全体の低迷など、経営悪化の理由はいろいろある。それらを乗り越える気概はあるけれど、基盤となる財力が底をついてしまったのだ。
「なんとか頑張ってきたけど上手くいかなかったし、思うような結果は得られなかったわ。建物も老朽化してきてるのに、建て替えるためのお金がないの。貯金も取り崩してほとんど残っていないし、買収を受け入れるほかに手立てがないのよ」
旅館の女将である母の美和子がそう言い、深いため息をつく。
「それに一昨日、市役所の建築指導課から連絡が入って、建物の老朽化と耐震性に問題があるんじゃないかって言われたの。それで、近々立ち入り検査を実施したいって。検査されたら、改修が必要だって言われるに決まってるわ。だけどうちにはそんなお金はないし、もう八方塞がりなのよ」
人一倍真面目で努力家の父親はともかく、いつも明るい笑顔を絶やさない母親が、見たこともないほど悲痛な表情を浮かべている。
両親の深刻な様子を目の当たりにして、理沙はようやく事の重大さを理解した。
「買収って、どんな形で? まさか『武本旅館』がなくなるってことじゃないよね?」
「それは今後、相手先と話し合うことになるだろうが、どうであれ『武本旅館』はもう自力でどうこうできる状態にないんだ」
項垂れる栄一の背中に、美和子がそっと手を添える。
はじめて聞かされた旅館の現状に驚き、理沙はただ呆然として寄り添う両親を見つめ続けた。
「そんな……」
理沙にとって『武本旅館』は生活の地盤であり、なくてはならない存在だ。
生まれた時からここにあり、それを当然だと思ってこれまで暮らしてきた。それなのに、今さら買収されて人手に渡るなど、受け入れられるはずがなかった。
「だけど、何かしらまだできることがあるんじゃない? 老朽化してるところは自分たちで直すとかできないかな? 昔はよく、おじいちゃんがトンカチを持って屋根に上ったり縁の下にもぐったりしてたよね?」
旅館の先代である理沙の祖父は次男で、成人後は大工として地域で一番大きな工務店に勤めていた。しかし、本来旅館のあとを継ぐ長男が急逝。先代は急遽「武本旅館」を継いで、今から八年前に他界した。
祖父が旅館を修復できていたのは、彼の大工としての確かな腕があってこそのものだ。
それをわかっていながら無意味な発言をしてしまったのは、旅館の危機を知って真っ先に浮かんできたのが祖父の顔だったからだ。
『理沙。くれぐれも「武本旅館」を頼んだぞ』
晩年の祖父は病床に就いており、亡くなる直前まで旅館のことを気にしていた。
むろん、頼まれたのは理沙だけではないし、一番念を押されていたのは後継ぎだった栄一だろう。
しかし、理沙は祖父と特に仲が良かったし、トンカチを持って旅館の点検をする彼について回るのが好きだった。
最新鋭の設備が自慢の高級宿泊施設もいいが、理沙にとっては小さな傷のひとつひとつにその時々の歴史が刻まれている「武本旅館」に勝るものはない。
幼かった理沙のお気に入りの遊びは新旧の女将を真似ての旅館ごっこだったし、舞台はもちろん「武本旅館」だった。
物心ついた時から建物の中を歩かない日はなかったし、これからも歴史は続いていくと信じて疑わなかった。そんな大事なものが人手に渡るなんて、どうしても受け入れられない。
「お姉ちゃんは? このことは知ってるの?」
「ええ。環には、先週の休みに会いに行って事情はすべて話したから」
理沙より三つ年上の姉、環は高校卒業を機に家を出て都内の大学に進学した。卒業後は都心にある外資系のホテルに入社し、今もそこで働いている。
それは将来的に「武本旅館」の女将になるための修業の一環であり、家族は皆そのつもりで力を合わせて頑張ってきたのだ。
それなのに、いったいいつから今のような状況に陥ってしまったのだろうか……
「それで、お姉ちゃんはなんて?」
「仕方ないって言ってたよ。環には前々からうちの経営状態が悪いことは伝えてあったし、資金調達ができないなら買収はやむを得ないって」
「黙っててごめんね。理沙には、もっと早く言わなきゃいけなかったわよね。でも、いろいろと頑張ってくれている理沙を見ると、どうしても言えなくて。お父さんとギリギリまで頑張ろうって話しているうちに、とうとう限界を迎えちゃって……」
栄一が答え、美和子が口添えをする。夫婦は顔を見合わせたのち、同時に理沙を見てすまなさそうな表情を浮かべた。
「そうなんだ……。ごめん。私、そんな状況に陥ってるなんて、ぜんぜん知らなくって……」
「いや、理沙は謝らなくていい。俺がいけなかったんだ。俺がもっとしっかり考えて経営していれば、こんなことにはならなかったのに……。情けない父親で、本当にすまない」
「お父さんだけが悪いんじゃないわ。私も、もっとちゃんと経営に口を出すべきだったのよ」
美和子が言い、栄一の背中を労うようにそっと撫でる。
父母は昔から仲が良く、この地域では知らない人がいないほどのおしどり夫婦だ。そんな二人が守り続けてきた「武本旅館」がなくなるかもしれないなんて、にわかには信じがたい。
(いったい、いつからこんなことに?)
部屋数は十室と規模は小さいが、「武本旅館」は家庭的なもてなしと料理が自慢の宿だ。
長年通ってきてくれる常連客もいるし、繁盛しているとは言えないまでもそれなりに稼げていると思っていたのだが、そうではなかったのだろうか?
「でも、なんで急に検査が入ることになったの? だって、いきなりすぎるし、疑いたくはないけど、もしかして誰かが役所に連絡をしたのかも?」
急な検査が入る場合、どこかから告発を受けての対応や、密告の可能性が高い。
「それは、わからないわ。だけど、それがなくても赤字続きだったし、いずれは旅館をたたまざるを得なかったでしょうね……」
美和子が心底悲しそうな表情を浮かべながら、しょんぼりと肩を落とす。
理沙は武本家の次女であり、旅館を継ぐのは環だ。そのため、経営には一切口出しすることを控えてきたし、あえて収支関連の数字も見てこなかった。
こんなことなら、もっと経営に関わっていればよかった。
そう思ったものの、仮にそうしていたとしても、今の危機的状況を避けられたかどうか……
いずれにせよ、もうのっぴきならないところまで来ているということだった。
「それで、どこがうちを買収するっていう話になっているの?」
理沙が訊ねると、栄一が軽く咳払いをする。
「実は少し込み入っていて、うちをどうこうしようとしている会社の候補は二社あるんだ」
「二社? うちって、そんなに目をつけられてたの?」
「うむ……順を追って話すと、最初に話を持ち掛けてきたのは外資系投資ファンドの会社で、うちを買い取って長期滞在者用のコンドミニアムを建設したいそうだ。この話だと『武本旅館』は廃業を免れない」
栄一が重々しい声で話しながら、沈痛な表情を浮かべる。
廃業という言葉が胸に刺さり、理沙は眉を顰めて苦い顔をした。
「コンドミニアム? そんなの、ダメに決まってる! この辺りの景観に合わないし、代々ここで頑張ってきた歴史が、ぜんぶなかったことになるのも同然じゃないの!」
にわかには信じられないような話を聞かされ、理沙は思わず声を荒らげた。
この辺りは純和風の建物ばかりで、そこに洋風の建築物が建つなどもってのほかだ。
周辺の人たちも同様に思うだろうし、この場所にコンドミニアムが建とうものなら、地域住民に対して申しわけが立たない。
ここに限らず、全国の温泉地にもインバウンドの波は押し寄せてきている。
需要があるのなら、ある程度の変化はやむを得ないかもしれない。けれど、大切な歴史や文化を壊すことだけはしてはならないだろう。
「もうひとつは、どんな感じなの?」
「そこは、今話した買収話を聞きつけて話を持ち込んでくれたんだが――」
栄一が言うには、もうひとつの買収元は理沙と同意見で、コンドミニアムの建設には反対のようだ。その上で「武本旅館」を再建させるべく資金提供をする考えでいるらしい。しかも、場合によっては旅館の経営権は武本に残したまま、スポンサー契約をすることも可能だ、と。
「スポンサー契約って、よくスポーツ選手とかが企業とするやつ?」
「同じと言えば同じだが、それとはまた別というか……。とにかく、うちは資金提供してもらえるし、経営権は保持したままでいられる。つまり、うちにはメリットしかないということだ」
「何それ? それって、話が美味すぎない?」
理沙は目を丸くして、声を大にする。願ってもない話だが、さすがに胡散臭すぎて手放しでは喜べない。
「その話、何か裏があるんじゃない? 後々、とんでもない負債を背負わされるとか、旅館どころか家まで根こそぎ持っていかれるとか」
「いや、さすがにそれはないと思う。……なぁ、母さん」
「え? ええ、そうね」
理沙が疑問を呈すると、栄一が曖昧に否定して美和子と顔を見合わせる。なんだか歯切れが悪いし、二人の様子もどことなく妙な感じだ。
何かしら、まだ口にしていない重大な秘密でもあるのだろうか?
理沙は両親の顔を交互に見ながら、首をひねった。
「何せ、相手は信頼できる大手だからな。ただそれには条件があって、詳しい話をしたいから一度理沙に時間を取ってほしいそうなんだ」
「えっ、私に?」
理沙が自分を指さすと、栄一と美和子が二度、三度と頷く。
「なんで? どうして、お父さんでもお母さんでもなく私なの? っていうか、いったいどこの誰がそう言ってるの?」
理沙がそう訊ねると、栄一がテーブルの向こうからグッと身を乗り出してきた。
「それなんだが……。実は『ホテル室月』の敦司君なんだ」
「はあぁ!? 敦司が?」
驚きのあまり、理沙は椅子から立ち上がって目を剥いた。
室月敦司――
理沙の幼馴染にして喧嘩友達でもある彼は、同じ温泉街にある大型リゾートホテル「ホテル室月」の若き経営者だ。
幼い頃は一緒に近所中を駆け回って遊んだし、毎日のように顔を合わせていた。今もその頃の関係は続いており、会えばなんだかんだとよく話をする。
ともに負けず嫌いだが、理沙は閃くとすぐに行動に移す感覚派で、敦司は理屈を捏ねながら石橋を叩いて渡る理論派だ。
そんな二人は、お互いに遠慮がないせいか、話している最中によく言い合いになる。しかし、怒りをあらわにする理沙に対して、敦司はムキになる幼馴染を飄々とした顔でかわし、話をすり替えるなどしていつの間にか口喧嘩を終わらせてしまう。そのせいか、どんなに言い合いになっても縁が切れるほど険悪にはならず、そんなところも合わせての腐れ縁だ。
敦司とは連絡先を交換しているし、つい先日も用事があってSMSでメッセージをやりとりしたばかりだった。
それなのに、なぜ彼は買収の話を事前に教えてくれなかったのだろう?
にわかに憤りを感じて、理沙は眉間に皺を寄せた。
「だいたい、なんで敦司がうちの買収話を知ってるの?」
理沙がふと疑問を口にすると、栄一がサッと視線を外した。
栄一は昔から自分に都合の悪いことが起きそうになると、すぐに目を逸らす癖があるのだ。
「あっ! もしかして、お父さん?」
「えっ……うん、実はそうなんだ。でも、この問題はうちだけで抱えるには大きすぎるし、この地域全体に関わる問題だ。どのみちしかるべき人に相談しなければならないと思っていたんだよ」
「ホテル室月」と「武本旅館」は、いずれも地域の温泉旅館ホテル組合に加入しており、二人はともに組合の副理事長を務めている。
そう言えば、栄一と敦司は、組合の会合が終わったあとに、よく自分たちだけで飲みに行くと聞いていた。若くはあるけれど、敦司は大企業の役職に就いているだけあって見識も広く経験値も高い。
おそらく、組合の活動を通じて自然と親しく話すようになり、それが今回の買収話に彼が介入することに繋がったのだろう。
外資系投資ファンドに買収されて「武本旅館」の歴史が無下にされるくらいなら、敦司の話に乗ったほうが何倍もマシだ。
しかし、どう考えても美味すぎる話だし、何かしら企んでいるようにしか思えない。
「まあ、座りなさいな」
美和子に促され、理沙はむっつりした顔をして椅子に座り直した。
「敦司君は『ホテル室月』の社長ではなく、『室月ホテル&リゾート』の副社長として買収の話を進めたいと言っている。ちなみに、もう社長の承認も得ているそうだ」
「はぁ? 敦司ったら、何を勝手に話を進めてるのよ。そもそも、どうして彼がうちの問題にそこまで首を突っ込むの?」
「室月ホテル&リゾート」は「ホテル室月」の親会社であり、敦司は同社の副社長を兼務している。
しかし、だからといって彼の一存で買収話が進むはずがない。もう本社決裁が下りているようだが、いったいどういう経緯でそんな話になったのだろう?
「室月ホテル&リゾート」は、ここを含めて国内で六つのホテルを経営している。
そのほかにもゴルフ場やレストラン経営などにも事業を広げており、同社は今や従業員数が千五百人を超える大企業だ。
その礎となる「ホテル室月」がオープンしたのは明治中期で、敷地面積はおよそ二万七千平方メートル。部屋数は百二十室で、顧客には国内外のVIPも多数いると聞いている。敷地内にはレストランやラウンジなどのほかにリラクゼーションサロンやジム、屋内外のプールといった施設が充実しており、本館の横にある別館は今後結婚式場にリニューアルする予定であるらしい。
総じて「ホテル室月」は歴史、格式ともに温泉街にあるほかの宿泊施設とは一線を画す存在だ。
そんな大企業が、なぜあえて経営が逼迫している「武本旅館」再建の手助けなどするのだろう?
コンドミニアムの建設を阻止し、景観を守るため?
これについては、なんとしてでも実現を阻まねばならない。
しかし「武本旅館」の再建にはかなりの金額が必要になるだろうし、景観保持が目的ならもっと安価でたやすい方法があるはずだ。
そもそも「室月ホテル&リゾート」が「武本旅館」の再建に手を貸して、なんのメリットがあるというのか。
今回の買収話は疑問だらけだし、栄一の説明だけでは何ひとつ納得がいかない。けれど、両親はもう敦司からの申し出を受けるつもりでいる様子だ。
だが、本当はどうだろう?
いくら「武本旅館」再建のためとはいえ、思うところがあるのではないだろうか。
「室月ホテル&リゾート」の経営は、代々創業者の直系の子孫が引き継いでおり、現在は敦司の父である室月肇が社長を務めている。
栄一と肇は同い年で、幼少期から高校まで同じ学校に通った仲だ。
もともと先代同士の仲が良く、二人が学生の頃はプライベートでもしょっちゅう行き来があったと聞いている。けれど、ともに代替わりしてからは急に疎遠になり、顔を合わせるのは組合の会合に出席する時くらいだ。
今でこそ元気に動き回っている栄一だが、少し前まで持病の腰痛が悪化して車椅子生活を余儀なくされていた。その間、栄一の代理を務めていたのは理沙であり、復帰した今もあれこれと雑務をこなすようになっている。
理沙が知る会合時の二人は、近くにいても目は合わさないし挨拶すら交わさない。あからさまに喧嘩をするわけではないが、互いを避けているのは明らかだ。
そんなこともあり、栄一が諸手を上げて敦司からの買収話を受け入れているとは思えない。
しかし、結局は背に腹は代えられないということなのだろう。
理沙はポケットからスマートフォンを取り出し、敦司に今どこにいるのか訊ねるメッセージを送った。すると、実家にいるとすぐに返事が届く。
やはり、思ったとおりだ。
「室月ホテル&リゾート」の本社は都心のビジネス街にあり、敦司は普段そちらにいることのほうが多い。しかし、今日は午後七時から温泉旅館ホテル組合の会合があり、副理事長を務めている敦司は毎回欠かさず顔を出しているのだ。
どうせ話をするなら、一刻も早いほうがいい。
『買収の件で話がある』
そう送るとすぐに返信があって、話し合いの場に彼の実家を指定された。
理沙はさらにメッセージを送り、これから会う約束を取り付けた。
「敦司、今実家にいるみたい。私、これから彼に会ってくるね。それで、疑問に思うことをぜんぶ聞いて、納得がいくまで話し合いをする」
よほど険しい顔つきをしていたのか、美和子が立ち上がった理沙のすぐそばに駆けつけてきた。
「理沙、お願いするわね。大役を任せることになっちゃったけど、くれぐれも喧嘩腰にはならないようにしてちょうだい」
昔から二人が言い合いをするのを見慣れている美和子が、心配そうな顔で理沙の頬にそっと掌を当てる。
美人でおっとりした性格の美和子は、いつも微笑みを絶やさない。そんな母は一家の癒し的存在であり、その笑顔にはこれまでに何度となく助けられた。それだけに悲しむ顔を見るのはできる限り避けたいと思うし、これに関しては父も姉も同じ気持ちだろう。
「大丈夫。ぜったい喧嘩腰にはならないし、冷静に話をするって約束する」
理沙は気遣ってくれる母に向かって、にっこりと笑いかけた。そして、両親に見送られてリビングルームをあとにする。
玄関に向かう前に洗面所に立ち寄り、鏡に映る自分をまじまじと見つめた。
理沙はどちらかといえば父親似で、顔のパーツのすべてが丸っこく、程よい位置に収まっている。
はじめに目が行くのは二重のどんぐり眼で、特別美人でも不美人でもないといった感じだ。
メイクをするとなぜか老け顔になるため、普段仕事の時に使うのはファンデーションとアイライナーのみ。プライベートに至っては色付きの日焼け止めクリームを塗って終わりだ。
「別に、このままでもいいか」
理沙はもともとちょっとガサツで、細かいことは気にしないタイプだ。
もちろん、悩みを抱えたり苦悩したりする時もあるが、根が明るく元気だからか、いつまでもクヨクヨするのは性に合わない。
結局、髪の毛を撫でつけただけで鏡の前を離れ、自宅の裏手から敷地の外に出て、温泉街とは反対方向に向かって歩き出した。
「武本旅館」は温泉街の端にあり、室月邸はここからさらに離れた位置にある。速足で行けば五分とかからないし、外にはまだ明るさが残っている。
(敦司ったら、なんで私に一言の断りもなく、話を進めたの?)
本音を言えば、とりあえず敦司を怒鳴りつけたくてたまらない。
けれど、母親に喧嘩腰にはならないと約束したし、まずは事実確認をして条件がどんなものか確かめなければ。
(冷静に。でも、敦司のほうから挑発してきたら? ちょっとくらい言い返してもいいよね?)
彼は子供の頃から弁が立ち、思ったことをストレートに言う傾向がある。どちらかといえば口うるさく、三つ年下の理沙に対してはいつもどこか上から目線だ。
しかし、今でも顔を合わせれば声を掛け合うし、彼の昇進とともにほぼ機会がなくなってはいるが、時間があれば行きつけの店で長々と話し込むことだってある。
時には恋愛や将来について話し合ったり、相談に乗ってもらったり。
決して口には出さないものの、理沙は敦司のことをちょっとした親友くらいに思っていた。
だからこそ、今回の話に関して何も言ってくれなかったことに憤りを感じる。
(なんで言ってくれなかったの? 言えば、あれこれと口出ししそうだから? そんなの、当たり前でしょ!)
腹立ちまぎれに敦司の顔を思い浮かべ、頭の中でその頬を思い切りつねる。
子供の頃、彼と口喧嘩になった時、理沙は実際に敦司の頬をつねろうとした。しかし、いくら手を伸ばしても彼の腕の長さまでしか近づくことができず、そのたびに諦めてアカンベエをしたのを思い出す。
(なによ! いつも余裕綽々って感じで憎たらしいったら……)
敦司は幼少の頃から眉目秀麗で、美男美女の両親のいいところを集めたような容姿をしている。オマケに頭脳明晰かつスポーツ万能である上に、カリスマ性もあって人を惹きつけるオーラまで兼ね備えている。それに加えて、生まれながらに経営者としての資質を持ち合わせているのだから、向かうところ敵なしだ。
理沙にしてみれば、それらのすべてが癪に障る要因でしかないが、当の本人が時にそれを逆手にとって挑発してくるのだから始末が悪い。
とにかく、納得のいくような説明をしてもらい、気になる条件とやらがなんであるかを確認しなければならない。
理沙は怒り心頭に発しながら歩き続け、それでもなんとか気を静めようと深呼吸を繰り返した。
以前は家族で住んでいた敦司の実家だが、今やそれぞれが都内に居を構え、こちらで全員が顔を合わせるのは月の半分にも満たないと聞いている。
(本社決済が下りているってことは、敦司のお父さんも買収の件を承知しているってことだよね)
父親同士の仲は良好とは言えないが、一流のビジネスパーソンたるもの、公私はきちんと分けているということだろうか。
しかし、いったい何がきっかけで疎遠になったのやら……
かつて仲が良かった幼馴染の二人は、今や成人した子を持つ既婚者同士だ。
以前聞いた話では、先に結婚したのは栄一で、肇はその一年後に既婚者になった。
美和子は都内に住むサラリーマン家庭に生まれ育ち、二人とは幼少期の習い事を通じて友達になったと聞かされている。栄一は優しく子煩悩で、父親としては百点満点の人だ。
その上、義理人情に厚く、努力家で真面目な性格は誰からも好かれる。
けれど、残念ながら経営者としては今ひとつで、決断力に欠けるところがあった。それが積もり積もっての今だろうが、まさか幼馴染が経営する会社に買収されることになるなんて想像すらしなかっただろう……
(さあ、着いた)
辿り着いた室月家は温泉街から少し離れた場所にあり、敷地は二百坪を優に超える。十五年前に建て替えた建物は二階建ての日本家屋で、庭に一歩足を踏み入れるなり、見事に咲いたハクモクレンが目を引く。
子供の頃はよくここで遊んだが、来るのは「ホテル室月」の先代女将が亡くなった時以来だ。
庭木は綺麗に管理されており、室月家の几帳面さが如実に表れている。
「いい香り」
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