オレ様エリートと愛のない妊活はじめました

有允ひろみ

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1巻

1-3

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 自分にそう言い聞かせると、姫乃はきっぱりと首を横に振って両方の口角を上げた。

「いいえ。さぁ、始めましょ」

 きっと神野は姫乃の強がりに気づいている。しかし、あえてそれ以上何も言わず、頷くだけに留めてくれた。
 それをありがたく思いつつ、姫乃は意を決して、さっきから視界にチラチラと入ってくる神野の男性器を見た。
 それはまだ勃起状態にはなっておらず、おそらくこのままでは硬くなる事はないだろう。

(やっぱり、私相手じゃ勃たないんだ……)

 そう悟るなり、姫乃はいたたまれずに表情を強張こわばらせて赤面する。
 こうなる前に何かしら準備しておくべきだった。それなのに、神野に対して必要なら補助的なグッズを用意するなどと悠長な事を言った上に、セックスに関するルールがいるなんて知ったような口をきいてしまった。
 こちらはよくても、神野自身がその気になれなければ、挿入はできない。頭の隅で予想していたとはいえ、実際にそうなってみると情けなさで胸が潰れそうだった。
 しかし、今はとりあえずこの状況から抜け出さなければならない。

「やっぱり、ルールなんて決めないほうがいいみたい。私、見てのとおりグラマラスとはほど遠い身体つきだから、自然に勃起ってわけにはいかないわよね。もし必要なら手を貸すし、具体的に言ってくれたらそのとおりにするけど……」

 我ながら、かなりあけすけな発言をしているものだと思う。けれど、ここまで来たら、もう恥じらっている場合ではない。

「俺のほうはどうにでもなるから、気遣いは無用だ。それより、君のほうの準備がまだ整っていないんじゃないか?」

 グッと顔を近づけられ、姫乃はたじろいで枕に頭を押し付けて神野との距離を保った。

「準備……って――」
「濡れてなきゃ、入るものも入らない。無理にれようとすれば、君の身体に負担がかかるだろうし、それは俺の本意ではない。それに、苦痛を伴うようなセックスで妊娠しても、あとあと辛い記憶が残ってしまうんじゃないか?」

 思いがけない気遣いに触れて、姫乃は神野を見つめたまま言葉をなくした。セックスをするのは頭ではなく身体だ。濡れるには気持ちの盛り上がりが必要だし、始めようと意気込んだだけでできるものではない。おそらくさっき神野がルールを決めるのを渋ったのは、こちらを気遣っての事だったのだ。
 姫乃は自分の思慮のなさを恥じ、上辺だけで彼の人となりを判断した事を猛省もうせいする。

「そうね。じゃあ、ちょっと待ってもらってもいい? どうにかして準備を整えてみるから」

 神野が頷き、姫乃の身体の上にブランケットをかけてくれた。そして、さりげなく身体を離し、隣に仰向けになって寝そべる。

「気遣ってくれて、ありがとう」
「どういたしまして」

 種付けをするには、方法はどうであれ膣内に精子を注入する必要がある。シリンジを使うにしろ男性器にしろ、挿入をスムーズにするためにはうるおいが必須だ。
 つまり、俗に言う愛液がなければインサートは困難になる。
 そのため、姫乃は事前にエロティックな映画やドラマを視聴したり、それっぽい妄想をしたりして愛液の分泌をうながす練習をしていた。しかし、もともと感じにくく濡れにくい体質らしい。
 練習の時にはうまくいったが、いざ本番を迎えると、思った以上に雑念に邪魔されて濡れるどころではない。

「時間はあるし、焦る必要はない。グラマラスとはほど遠い身体つきなのは間違いないが、綺麗に引き締まっているし、普段からきたえたり、きちんとメンテナンスをしているのは見ればわかる」

 忙しくてなかなか通えていないが、姫乃も一応ジムに通っている。立ち仕事の合間に軽くストレッチをしたり、早起きをした時などは近くにある公園でジョギングをする事もあった。

「そう言ってくれて、ありがとう」
「礼には及ばない。思った事を言ったまでだ」

 神野の声のトーンは相変わらず淡々としており、感情の起伏がまったく見られない。きっと彼は、種付けをするという目的のみに注意を向けており、そのほかの事は気にならないのだろう。
 一方、姫乃はと言えば、平常心をよそおってはいるものの、非日常すぎる今の状況のせいで心拍数が上がりっぱなしだ。せめて彼が自分と同じくらいの容姿なら、もう少し気持ちに余裕が持てていたかもしれない。
 しかし、神野はこちらが萎縮いしゅくしてしまうほどゴージャスで非の打ちどころのない美男だ。
 それに、事前に聞いていたとおりのクールな俺様ぶりを発揮してくれている。

(でも祥子が言っていたとおり、根は悪い人ではないのかも。だけど、かなり上から目線だし、とっつきにくいのは確かだわ)

 どうせ期間限定の関係だし、必要以上に親しくなる必要はない。むしろ、距離を持って接したほうがいいし、身体は重ねても極力気持ちは通わせないほうがベターだ。

(神野さんの様子からして、気持ちが通い合うなんて事はなさそうだけど)

 互いの親友同士が夫婦とはいえ、おそらく子種を提供するなどという話がなければ知り合う事もなかった二人だ。縁あってこうして同じベッドに横たわっているが、今後妊娠出産しても、彼の名が出生届に記載される事はない。
 あれこれと余計な事を考えていたせいか、心も身体もガチガチのままだ。焦れば焦るほど気が逸れてしまい、濡れる気配すらなかった。
 このままではらちが明かない。それに、いつまでも何もせず横たわっているわけにはいかなかった。

「実は私、もともと感じにくいし濡れにくいの。もちろん今回の件をきっかけに、自分なりに練習をしたけど、今日は調子が悪いみたい。申し訳ないけど、少し時間を置いてもいいかな?」

 姫乃は思い切って、神野にそう打ち明けた。てっきり嫌な顔をされるかと思ったが、彼は無表情のままだ。

「そうか。必要なら、コンシェルジュに頼んで潤滑剤じゅんかつざいを買ってくるように依頼するが」

 神野が言いながら上体を起こそうとする。
 姫乃は、咄嗟とっさに首を横に振って彼を押し留めた。

「ま、待って! 私、そういったものはあまり使いたくないの。以前、使った事があるんだけど、肌に合わなかったし、逆に場が白けちゃって……」

 使ったのは、最後に付き合った同い年のカレとベッドインしようとした時だ。事前に用意されていたそれを試しに使ってみたのだが、香りがきつくベタベタするばかりで逆効果だった。
 結局、ベッドインは失敗。気まずくなり、その後一週間と経たずに関係を解消した。
 そんな経験もあって、潤滑剤じゅんかつざいを使うのは気が進まない。姫乃の気持ちを察したのか、神野が片肘をつく体勢で再び横になった。

「君はどうやら、あまりいいセックスをしてこなかったようだな」

 低い声でそう問われ、姫乃は斜め上から見下ろしてくる彼の顔を見つめた。

「ほかと比べようがないからよくわからないけど、たぶんそうかなって。正直言って、今まで一度もセックスで気持ちいいと思った事なんかないわ。当然オーガズムを迎えた経験もないの。そのせいか、私にとって、セックスなんて別になくても済ませられる程度のものでしかないのよ」

 抱かれたいという気持ちが、まったくないわけではない。けれどいつの頃からか、ムラムラしたり、どうしてもセックスがしたいとは思わなくなってしまっている。
 話しながら、姫乃は頭の中で過去の恋愛をざっとさらった。そうできるほど、姫乃の恋愛歴は浅く短いものばかりだ。

「不感症気味の女を相手にして、面白いわけないわよね。『お前はセックスが下手へただ』って、はっきり言われた事もあるし。だからって自分の意志でどうにかなるものでもなくて」
「なるほどな。君が濡れないのは、過去のセックスが原因のようだな。快感を得た事がないんだから性に対して興味が薄い。別にしたいと思わないから、濡れる練習をしても成果が出ないのは当たり前だ」

 端的にまとめられ、改めて自分の性に対する姿勢を思い返す。今までじっくりと考えた事はなかったが、すべて納得できるし、反論の余地もない。

「確かにそうね。そんなんだから、恋愛なんかもういいやって思うようになって、淡白だから恋人ができても仕事を優先してしまうの。逆を言えば、仕事を忘れるくらい深く誰かを想った経験がないって事よ。付き合っても一年ともたなかったし、結局はすべて自分のせいなのよね」

 神野に話したおかげで、今まで胸に抱え続けていたモヤモヤがスッと消えたような気がした。
 幾分心が軽くなり、我知らず口元に笑みを浮かべる。

「いろいろあって、今の恋愛下手べたな私ができたってわけね。でも、恋愛そっちのけで仕事に打ち込んできたからこそ、起業が成功したのは確かよ。後悔はないし、恋愛で得られる快楽よりも仕事をする上で感じる快感のほうがよっぽど大事だし、気持ちいいわ」

 姫乃は吹っ切れた顔で神野を見つめた。彼も姫乃の顔をまじまじと見つめ返してくる。

「君の恋愛の仕方や姿勢は、驚くほど俺に似てるな。俺もこれまで付き合った女性とは一年どころか、三か月ともたなかった。別れの理由も同じだし、仕事で得られる快感に勝るものはない」

 神野の話を聞いて、姫乃は彼が仕事に没頭するあまり恋人をないがしろにする姿を想像した。
 恋愛下手べたで淡白なワーカホリック。
 似た者同士、探せばもっと共通点が出てくるかもしれない。
 思えば、男性とここまであからさまに性に関する話をした事などなかったし、元カレ達はピロートークとは無縁の人ばかりだった。
 今さらながら、今日会ったばかりの男性と裸でベッドに横たわり、赤裸々せきららな恋バナをしている事に、姫乃は新鮮な驚きを感じた。
 ビジネスで男性と接する機会は少なくないが、彼らに性別など存在しない。そう考えると、神野は姫乃が久しぶりに異性と認識して接している男性だった。

「どうだ? 濡れてきそうか?」

 ふいに目前まで顔を近づけられて、図らずも心臓が跳ねた。ただでさえ緊張で鼓動が速くなっているのに、余計胸の高鳴りが大きくなる。

「う~ん……少しだけ濡れてきたかも。でも、まだぜんぜん足りないって感じかな」

 特別エロティックな妄想をしたわけでもないのに、若干濡れてきているような気がする。触って確かめようにも、さすがに恥ずかしくて気が引けた。
 姫乃がモジモジとつま先をすり合わせていると、神野がさらに顔を近づけてくる。

「さっき言ったとおり、感じて濡れていたほうが妊娠の確率が高くなる。濡れる手助けをされるのは、やはり気が進まないか?」

「感じて濡れて」「濡れる手助け」――
 さっきまでは普通に聞けていた言葉が、今はパワーワードになって姫乃の聴覚を刺激してくる。
 神野の口調は変わらない。けれど、多少なりとも彼の人となりを知り、二人の距離が少しだけ近づいたような気がしていた。

「……手助け、お願いしてもいい?」

 姫乃は努めて冷静さを保ちながら、そう答えた。

「わかった。じゃあそうさせてもらおうか」

 返事をした神野が、表情はそのままで、ゆったりと姫乃の身体の上におおいかぶさってきた。
 今まで天井てんじょうが見えていた視界をさえぎられ、彼の体重を身体の上に感じる。
 いよいよ、実際に種付けが始まる――
 そう思うだけで全身に緊張が走り、心臓がさらに早鐘を打ち始める。できる限り平静を保とうとするのに、上から見下ろすように見つめられてだんだんと息が弾んできた。
 神野が姫乃の目を見据えたまま、ゆっくりと顔を近づけてくる。
 まさか、キスをされる?
 そう思って身構えた直後、彼の唇が姫乃の左耳に逸れた。

「なるべくリラックスして、感じる事だけに集中しろ」

 耳元で低く響く命令調の言葉。
 キスではなかった事に安堵しつつも、なぜか胸の奥にレモン汁を垂らされたように身体がキュッと縮こまる。
 それを誤魔化すように「はい」と言った声が、びっくりするくらい小さかった。
 考える間もなく大きなてのひらに右の乳房を包み込まれ、先端を指でキュッと摘ままれる。そこから生じた快感が、さざ波のように一瞬で全身に広がっていく。まだ少ししか触られていないのに、身体が敏感に反応する。

(ちょっ……なんで、こんなになるの?)

 思わず声が漏れそうになり、あわてて唇を噛む。
 どうにかやり過ごしたのも束の間、首筋に緩く噛みつかれ、背中がシーツから浮き上がった。
 鎖骨から胸元へと徐々に下に向かう神野の唇が、姫乃の肌に何度となく吸いついてくる。
 そこがジィンと熱くなり、まるで身体にキスの刻印を押されているような気分になった。
 だんだん全身から力が抜けていき、脚の間が早々に濡れ始める。
 これほど早い段階で感じた事など、いまだかつてなかったのに……
 ぴったりと吸いつくように触れてくる神野のてのひらが、乳房から離れ下腹部に下りた。ゆっくりと円を描くように撫でられたそこは、ちょうど子宮がある位置だ。

「君は今から俺とセックスをする。一度の射精で放出される精子は、およそ三億個。精子は子宮を経て卵管に入る。一方、卵巣から出た成熟した卵子は、卵管膨大部に移動して精子が来るのを今か今かと待ち構えている」

 シンとして静かな部屋の中で、神野の声がやけにクリアに聞こえる。
 神野の指は正確かつ淡々と各部位がある場所を示し、姫乃は医学書などで見たそれらを頭の中に思い浮かべた。

「精子は膣内から子宮を経て卵管内に入ると、三日から五日間ほど生きて受精を試みる。うまくいけば卵子は卵管膨大部で精子と出会い、受精する」

 神野はごく当たり前の事実を述べているだけだ。それなのに、まるで秀逸なプレゼンテーションを聞いている時のように、意識が彼の声と指の動きに集中した。

「受精卵は五、六日で子宮内に到達し、子宮内膜にもぐり込んで胎盤を形成する。着床すれば妊娠が成立し、君の胎内に新しい生命が宿る。そうなるためには、もっと感じてグチュグチュに濡れてもらわないとな」
(い、今、グチュグチュって言った?)

 淡々と話していた神野の声が、いつの間にか低くセクシーなものに変わり、硬かった口調が一変して、愛液を連想させる擬音語をささやいてきた。

「あんっ!」

 それに驚いている暇もなく左乳房をまれ、抑えきれずに小さく声を上げる。いつもよりワンオクターブ高く響く声は、間違いなく自分が出したものだ。
 神野の舌が乳先をね、上顎うわあごに擦り付けるようにして乳嘴にゅうしを刺激してくる。
 いまだかつてそんな愛撫あいぶを受けた事がない姫乃は、瞬時に涙目になった。ただ、胸の先を吸われるだけなら、これまでにも何度か経験した事がある。けれど姫乃が知るそれは、いつだってどこかおざなりで、ただ相手が自身の興奮を高めるだけの行為にすぎなかった。
 けれど、今されているのは明らかに違う。
 この行為に心がないのはわかっている。それでも、こちらの気持ちを高めようとしてくれているのが伝わってくるし、だからこそ身体だけではなく心まで反応してしまうのだ。

「……んっ……く……。ふぁっ……」

 抑えていた声がどうしようもなく漏れ始めた頃、いつの間にか左右に大きく広げられた脚の間に神野の手が忍んできた。
 ジムでトレーニングをする時に、同じような姿勢を取る事がある。
 けれど、今は神野とセックスをするためにそんな格好をしていて、しかも裸だ。これからする行為は妊娠を目的とした営みであり、当然避妊具なしで行われる。
 姫乃は特別セックスが好きなわけではなかったし、今だってそうだ。それだから二年もの間行為なしでも平気だったし、むしろなくてせいせいしていたくらいだった。
 けれど神野とこうしている今、姫乃は言いようのない高揚感にとらわれて、いつになく期待で胸を膨らませている。
 姫乃だって女だ。女としてのよろこびを感じたくないわけではないし、いつの間にか彼が与えてくれるはずの快感を心待ちにしている。
 太ももの内側に指をわされ、それだけで蜜窟の入口がギュッとすぼんだ。それからまたすぐに緩んで、まるで挿入を待ちわびているかのようにいやらしくうごめいているのがわかる。

(こんなふうになるなんてはじめてだし、すごくエッチ……)

 いつもどこか冷めたセックスしかしてこなかった自分が、これほど卑猥ひわいな反応をするなんて思ってもみなかった。
 それもこれも、ぜんぶ神野のおかげだ――
 姫乃がそう思った時、彼の指が花房に触れた。

「あっ……」

 自然と声が漏れると同時に、身体中がカッと熱くなった。蜜窟の前庭をう彼の指の動きが、たまらなくみだらだ。指の腹で粘膜をねられ、全身がブルブルと震えだす。別の指がゆるゆると秘裂の中を蛇行だこうし、突起した花芽のふもとでピタリと止まった。

「ふむ……思ったとおり、君は不感症なんかじゃないな。セックスが下手へたなのは君じゃなく、君の元カレ達だ。濡れなかったのは、そいつらが自分本位な愛撫あいぶしかしなかったせいだ」

 神野はそう断言するなり、指で花芽の先を捕らえ、そこをねじるようにいじり始める。

「あぁんっ! んっ……あぁんっ!」

 抑えきれない声が喉の奥から漏れ出て、くぐもった嬌声きょうせいに変わる。声を抑えれば抑えるほど、神野に触れられている部分が硬くしこった。

「声を我慢してるなら、今すぐにやめろ」

 目を見つめられながらそう言われ、すぐに自分でも聞いた事がないような甘い声が唇から零れた。花芽をね回され、頭の芯がジィンと熱くなる。
 一瞬、意識が途切れそうになり、姫乃は大きくあえぎながら身をよじった。

「ひっ……あ……ああぁんっ! あ……やぁっ……も……そこ、ダ……ダメッ!」
「何がどうダメなんだ? 本当はダメなんかじゃないだろ?」

 神野が聞こえるか聞こえないかの声でささやいたあと、花芽の突端を摘まんだまま指を小刻みに振動させ始める。
 途端に目の前でバチバチと火花が散ったようになり、全身がビクリと跳ね上がった。強すぎる快楽を感じて腰がガクガクと震え、息をするのもままならなくなる。

「たったこれだけの愛撫あいぶで、これほど濡れるとはな。グチュグチュどころか、びしょ濡れだ。君は濡れにくいどころか、むしろ濡れやすい。それに、すごく感度がいい」

 話しながら愛撫あいぶする手を止められ、姫乃はようやく荒い息を吐きながら、快楽でうるんだ目をまたたかせた。
 神野が姫乃を見下ろしながら、自身の唇の隙間をスッとめる。そんな仕草をの当たりにして、横になっていながら腰が抜けそうになった。

「だが、もう二年も男を受け入れてないんだし、外だけじゃなく中も少しほぐしてかられたほうがいいな」
「ぁんっ!」

 花芽の周りをクルクルと円を描くように撫で回され、別の指で蜜窟の入口をそっと引っ掻かれる。
 姫乃は神野の愛撫あいぶ翻弄ほんろうされ、なすすべもなく身を震わせて声を上げた。

「まだ雑念があるみたいだな。それとも、恥じらいか? いずれにせよ、もっと集中して感じるんだ」

 彼の話し口調が、また当初の淡々としたものに変わった。口にする言葉は尊大ですらある。けれど、なぜかまったく嫌じゃないし、逆に激しく心を揺さぶられるのを感じた。
 いつもならむかっ腹を立てているはずの命令口調なのに、むしろそんな言われ方をされている事によろこびを感じてしまう。
 まるで、自分でも知らなかった自身の隠れた部分を暴かれているような感覚――
 再び近寄ってきた彼の唇が、姫乃の乳房の先を強く吸った。そしてすぐに離したかと思ったら、もう片方の乳暈にゅううんにかぶりついてくる。

「あっ……、あ……!」

 秘裂をいじられながら両方の乳房を交互に攻め立てられ、身体のあちこちに欲望の炎が宿る。
 今までの姫乃は、濡れるという感覚を知らずにいた。けれど今感じている熱いうずきは、そこが濡れているばかりか、あふれ出る愛液にまみれている事をわからせてくれる。
 自分の身体なのにまるでコントロールできないし、どうにかなってしまいそうなくらい気持ちがいい――
 もうじっとしていられなくなり、姫乃はシーツを強く掴み、唇を噛みしめながら身をらせた。浮き上がった腰を引き寄せられ、鼻先がくっつきそうになるまで顔を近づけられる。
 見つめられながら蜜窟の縁をねられ、れったさに膝がワナワナと震えだした。

「まだ足りない。もっと濡れて感じるんだ」

 強い口調でそう言われ、胸がキュンとして肌が熱くざわめく。
 頷いて「はい」と返事をすると、神野が満足そうに片方の眉尻を上げる。思わせぶりな視線を投げかけられ、いっそう期待に胸が膨らみ、頬がチリチリと焼けた。
 自分は今、明らかに性的な興奮状態にある――そう自覚するなり、思いきり感じたくてたまらなくなる。
 姫乃がそう思うと同時に、神野の指が沈み込むように姫乃の蜜窟の中に入ってきた。

「んぁっ! あっ……あ、ああああっ!」

 もう声を我慢するなんて選択肢はなかった。込み上げる快楽に身を任せ、少しでも感じようと挿入されている部分に意識を集中させる。

「きっつ……」

 低く呟く彼の声に反応して、そこがキュッと収縮する。
 指の腹で恥骨の裏側を探られ、腰が砕けそうになった。脚がガクガクと震えだし、何かにしがみついていなければ身体が底のない穴に吸い込まれてしまうような感覚におちいる。

「やぁああんっ……!」

 姫乃は咄嗟とっさに手を伸ばし、必死になって神野の肩にしがみついた。すぐにたくましい腕に背中を支えられ、ギュッと抱きしめられる。
 途端にホッとするような安堵感に包み込まれて、身体から余分な力が抜け落ちた。それと同時に、蜜窟の中がひっきりなしに収縮し始める。

「指、もう一本じゃ足りないみたいだな」

 ささやき声とともに蜜窟に出入りする指の本数が増え、挿入がより深くなる。奥を探られ、侵入されるよろこびに脳天がビリビリとしびれた。
 感じるままに声を出すと、快感がいっそう強くなって姫乃の全身を席巻せっけんする。身体のあちこちに宿っていた炎が燃え盛り、かたまりとなって全身を焼き尽くしていくみたいだ。

「ぁ……そこっ……き……気持ちい……あっ! ああああんっ!」

 これまでにないほど強い愉悦ゆえつを感じて、姫乃は嬌声きょうせいを上げながら身もだえする。身体はもはや神野の思うままだし、心さえ彼の意のままになってしまいそうだ。

「ここか。見つけたぞ、君のいいところ」

 神野の呟きが聞こえた。「ここ」と言われたところに指をグッと押し込まれ、恥ずかしい声が何度となく唇から漏れる。きっとそれがGスポットと言われる場所だ。
 てっきり自分にはそんなものは存在しないのだと思っていたのに、そうじゃなかった。
 姫乃は、はじめて知る快楽におぼれ、全身がふわふわと浮き上がる感覚に身を任せた。

「まだまだ、これからだ。それに、今みたいに感じる場所は一か所とは限らないからな」

 ずるりと指を引き抜かれたと思ったら、間髪かんはつれず硬く太い熱塊が蜜窟の中に滑り込んできた。
 凄まじい圧迫感に息が止まりそうになり、姫乃は身をらせて声を上げる。

「ああぁっ!」

 深さは指を入れた時の半分に満たない。けれど容積はもとより、形状や挿入の衝撃がまるで違う。
 ずっと性的な役割を果たさないまま放置されていたそこが、懐柔かいじゅうされるよろこびに戦慄わななく。まだ強張こわばりが残っている隘路あいろをメリメリと広げられ、いくつもの快楽の種が蜜窟の中で芽吹きだす。

(入ってるっ……私の中に……神野さんが――)

 姫乃は夢中になって、感じている愉悦ゆえつに意識を集中させた。まだ挿入したばかりだというのに、今までにないほど強い快感を味わっている。
 恋人でもない人とのセックスで、これほど感じてもいいのだろうか?
 一瞬、そんな考えが頭をかすめるも、記憶にすら残らないまますぐに消えていった。

「少し、動くぞ」

 声が出せないまま頷くと、神野が小刻みに腰を動かし始めた。
 最初は、ごく浅いところで。先端のくびれた部分で蜜窟の入口を何度となくほぐされ、穿うがたれるたびに挿入が少しずつ深くなる。
 徐々に深さを増していく屹立きつりつに、身体ばかりか心までこじ開けられていくみたいだ。
 姫乃は、まるではじめて身体を開いているような初々ういういしい気持ちになり、思わずあごを上向かせて嬌声きょうせいを上げた。

「あっ……! あっ……ああああ――」

 暴かれた中がヒクヒクとうごめき、ずっしりとして硬い屹立きつりつを、緩急をつけて締め付けるのがわかる。

(気持ちいい……。ものすごく、気持ちいいっ……!)

 実際に、そう口に出したわけではない。けれど、これほど蜜窟の中がうねっているのだから、きっと神野にも伝わっているはずだ。
 セックスが、こんなにも気持ちのいいものだとは知らなかった。
 身体を根底から揺るがすような悦楽えつらくうずに巻き込まれて、姫乃は与えられる快感を取り零すまいと、いっそう強く彼の身体にしがみつく。
 顔を上げてまばたきをすると、神野の顔が今にも触れてしまいそうな位置にあった。
 あと少し顔をずらせば、唇が重なる――
 姫乃はどうにもならないもどかしさを感じながら、唇を強く噛みしめて下腹に力を入れた。
 内奥ないおう屹立きつりつが容量を増し、硬さを増しながら先端で子宮に続く入口を擦り上げる。
 ズンズンと突かれるたびに挿入が深くなり、打ち付ける力も格段に強くなった。
 自分の中で一番奥深いところを、男性器がじかに触れているという感覚――
 女性としての器官が熱くれ上がって、神野のものをめるように包み込んでいく。
 すごくいやらしくて、言葉に尽くせないほど気持ちがいい……
 姫乃は夢心地になってうっとりと目蓋まぶたを下ろした。

「……あっ……」

 姫乃が吐息を漏らした直後、神野がグッと腰を前に押し進めた。子宮に続く丸い膨らみに切っ先を感じて、蜜窟がギュッとすぼまって屹立きつりつを締め上げる。
 姫乃の身体を挟み込むように肘をついていた神野が、低い声でうめき声を上げた。それと同時に、最奥さいおうに達した切っ先がビクリと力強く跳ね上がる。


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逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

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