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1巻
1-2
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二つ年上とはいえ、常に上から目線の話し方も気に入らない。けれど、とっつきにくい人物だと事前に聞いていたし、肝心なのは彼が持つ優秀な遺伝子なのだ。
ふと見ると、神野のグラスが空になっている。
姫乃は彼のグラスにワインを注ぎ足そうとボトルに手を伸ばした。しかし、一瞬早く動いた神野に先を越されてしまう。
彼が自分のグラスにワインを注ぎ、チラリと姫乃を見る。そして、姫乃が首を横に振ったのを見て、ボトルをワインクーラーに戻した。
「戸田夫妻は、君がほしがっている優秀な遺伝子を提供する者として、真っ先に俺のところに連絡したと言っていた。つまり、彼らが知っている大勢の人間の中で、俺が一番ふさわしいと考えたという事であり、その選択は百パーセント正しい判断だと思っている」
神野はそう言い切り、姫乃の目をまっすぐに見つめてきた。
これまでのやり取りから察するに、神野はかなりの自信家であり、それを隠そうともしない男だ。
今後それが鼻につく事もありそうだが、子供の父親としてこれ以上条件のいい男性はほかにいないだろう。
姫乃の思惑をよそに、神野が表情ひとつ動かさずにワイングラスを傾ける。
「ええ、確かに。引き受けてもらって、神野さんには心から感謝してるわ」
姫乃は彼に向かって丁寧に頭を下げた。実際、神野はなんの見返りも求めずに、今回の件を引き受けてくれたのだ。
「俺が今回の事を引き受けたのは、正光の頼みだからだ。それと、おそらく問題ないと思うが、俺にはこれまでに女性を妊娠させた実績がない。だからできるだけ早く病院に行って、しかるべき検査をするつもりだ」
「ありがとう。そうしてもらえると助かるわ」
確実に妊娠するためには、双方の生殖機能や感染症等の事前チェックは必須だ。タイミングを見計らって検査をしてほしいと言おうと思っていたところに、彼のほうから申し出てくれたのは、まさに渡りに船だった。
「正光に頼まれたからには、失敗で終わるわけにはいかないからな。今回の件は、必ず最後までやり遂げるつもりだ」
神野の口ぶりから察するに、彼は正光に対して相当の恩義を感じているみたいだった。それに、そこまで言うくらいだから、かなり義理堅い性格だと推測できる。
理由はどうであれ、神野がこの件に積極的に取り組もうとしているのだけはわかった。
これなら、きっとうまくいく――そう確信した姫乃は、彼の気持ちをそがないよう最大限気を配ろうと決意する。
「貴重な時間と労力を提供する決心をしてくれて、ありがとう。だけど、本当に見返りなしでいいの?」
「もちろんだ。俺は君に子種を提供する事によって、正光の願いを叶えることができる。それで十分だ。第一、仮に見返りを求めるとして、君は俺に何を提供できるんだ?」
そう言われ、姫乃は言葉に窮した。なるほど、すべてにおいて自分よりも格が上の彼に言うには、おこがましい台詞だったかもしれない。しかし、それでも何かしら自分にできる事があれば、多少なりともお礼をしたいと思う。
「私が提供できるものは、そう多くないわ。でも、もし何かあれば、遠慮なく言って。できる限りの事はするから」
またしても値踏みするような目で見られて、姫乃は密かにむかっ腹を立てた。けれど、当然表情に出したりせず、口元に浮かべた笑みを倍増させる。
「それと、戸田夫妻から聞いていると思うけど、妊娠するまでにかかる費用は全額私が負担するわ。検査費用はもちろん、今後また何かしら立て替えてもらうものが出てきたら、後日まとめて精算するって事でいいかしら?」
姫乃渾身の笑顔を見ても、神野はまったくの無反応だ。それどころか、若干うんざりしたような表情を浮かべながら口を開いた。
「話は聞いているが、費用に関してはいろいろと面倒だし、必要に応じてそれぞれが負担するという事にしてもらいたい」
「えっ……でも、ただでさえ見返りなしで協力してもらうのに、それだと神野さんに余計負担がかかるわ」
「負担? 俺にとっては、そのせせこましい考えのほうが負担だ。気持ちよく引き受けてもらいたいなら、面倒な事を言うのはよしてくれ」
いかにも煩わしそうに言われては、引き下がるしかなかった。
かくなる上は、すべてを終えたのちに改めてお礼をさせてほしいと申し出るしかないだろう。
「とにかく、さっさと種付けを終わらせてしまおう。そのためには、君が考えている具体策を聞かせてもらいたい。ちなみに、妊娠に至るまでの必要な知識はすでに頭の中に入っているから、その辺りの説明は不要だ」
神野の話し方は、終始冷ややかで淡々としている。それは姫乃自身への興味がまるでない事の表れなのだろうし、こちらだって関心があるのは彼の精子のみだ。
「私はもう検査を済ませていて、妊娠が可能なのは確認済みよ。でも、生理の周期が一定じゃないの。だから、排卵日がいつか予測するのが難しいし、基礎体温もあまりあてにならないのよ」
「だとしたら、タイミング法は使えないな。お互いに忙しい身だし、妊活期間は短ければ短いほうがいいだろう?」
「ええ、もちろんよ」
神野が頷き、グラスに残ったワインを喉の奥に流し込んだ。そして、ボトルを見つめながら三杯目のワインをグラスの中になみなみと注ぐ。
(量は飲まないと言ったくせに、結構飲むじゃない)
妊活中であっても、男性はアルコールを摂取しても問題はない。むろん、飲み過ぎて勃起不全になられると困るが、神野の様子からすると、おそらくアルコールに強いのではないだろうか。
姫乃は神野につい見惚れてしまっている自分に気づき、それとなく目を逸らした。
子種の提供者は美男子であるに越した事はない。しかし、彼は姫乃の予想していた何十倍も美形だ。喜ばしい事ではあるが、かっこよすぎてなんだかいろいろとやりにくい。そういった意味でも、神野との妊活は短期間で済ませたいと思う。
今回の話を持ち出した時から、種付けの方法についていろいろと考えを巡らせていた。
医師の手を借りる事は当初から考えていないため、自力で行う必要がある。
ひとつは提供者に精子を採取してもらい、それを即座にシリンジを使って自分で膣内に注入する方法だ。もうひとつは実際に性行為をする方法だが、これは相手の同意がなければ実行できない。
姫乃は性行為をする覚悟はできているし、自身の生理不順を念頭に置くと、むしろ前向きに考えたいと思っていた。しかし、さすがに自分の意見を押し付けるわけにはいかないし、まずは神野の意向を聞いてからだろう。
一連の種付けに関する話をしたあと、姫乃は神野自身の希望を訊ねた。
「確実性を重視するなら、精子を採取して膣内に注入するより、実際にセックスをしたほうが効率的だと思うが」
「そうね。そうすれば直接精子を体内に入れられるし、手っ取り早くて確実だわ」
椅子の背にもたれかかっていた神野が、少しだけ身体を前に倒して姫乃を見る。
「君はもう、そうする心づもりができているという事か?」
「もちろんよ。私、どうしても子供がほしいの。そのためならなんでもするわ。私としては、排卵日がはっきりしない分、とにかく回数を重ねてできる限り早く妊娠したいの。そのために、できるだけ努力する――そういうスタンスでいるんだけど、どうかしら?」
「異論はないよ。お互いに忙しい身だが、種付けをするだけだし、やろうと思えば会って短時間で終わらせるのも可能だ」
「じゃあ、スケジュールを共有して、時間が空いた時は互いに連絡を取り合うという事でいい?」
「問題ない」
幸い、二人の職場は車で三十分の距離にある。彼さえ積極的に協力してくれたら、すぐにでも目的を達成できそうだ。そう考えると自然と気持ちが高揚し、作り物でない笑顔が浮かんでくる。
ついニヤついていると、神野がミニバーに行き、新しいグラスとともに瓶入りのミネラルウォーターを持って戻って来た。そして瓶の栓を抜いてグラスに注ぐと、無言で姫乃に手渡してくる。
「ありがとう」
姫乃は礼を言い、続けざまに三口ミネラルウォーターを飲んだ。きっと知らない間に喉が渇いていたのだろう。そのせいか、飲み込む時にいつも以上に喉が鳴ってしまった。
「具体策については、これで決まりね。あと、確認なんだけど、目的が妊娠だから極力性的な快楽を得るのは避けたほうがいいわよね?」
「と、言うと?」
「例えば、本当の恋人同士のようなキスや前戯は必要ない。余計な気遣いもなしって事でいいわよね? 洋服についても極力脱がずに済ませたいでしょう? あと、もし必要なら、何かしら補助的なグッズを用意するから、リクエストがあれば言ってちょうだい」
姫乃は自分が性的に魅力的な女だとは思っていないし、「そそる」か「そそらない」かで言えば後者だと思う。妊娠を目的としたセックスには挿入が必須だが、自分が相手では神野が勃起しない可能性もある。
「行為が終わったら、それぞれのタイミングで速やかに立ち去る。妊娠したとわかったら、すぐに連絡をするわ。連絡先は、神野さん個人の番号で構わない?」
姫乃は事前に考えておいた、セックスに関する一連のルールを口にした。
特に異論もなく承諾してくれるものと思っていたが、神野は小首を傾げながらワイングラスを揺らしている。
「何か気になる点がある? あるなら、はっきり言ってくれて構わないわよ」
姫乃はグラスにミネラルウォーターを注ぎ足し、再度喉を潤した。
「そこまで細かく決める必要があるか? あえてそうしなければならない理由があるなら、聞かせてもらいたい」
恋愛関係にない自分達がセックスをするのだ。むしろ、もっと細かな決め事を作ってもいいくらいだ。
姫乃は彼の発言を意外に思いながら、自分の考えを口にした。
「もちろん、必要以上の接触を避けて、多少なりとも感情が揺さぶられるのを避けるためよ」
そう明言した姫乃の顔を見ながら、神野が腑に落ちないといった表情を浮かべる。
「セックスをすれば、多少なりとも快感が伴うのは当然だ。女性がオーガズムを強く感じれば感じるほど妊娠率がアップするというし、そうであれば、むしろ積極的に快楽を追求したほうがいいと思うが?」
確かにそういう事を書いた資料を読んだし、快楽によって身体が開き、妊娠の可能性が高まるのは科学的に証明されているようだ。
「だけど、あくまでも妊娠が目的なんだから、挿入して射精さえすれば事足りるわけだし……」
種付けを依頼した立場の自分が言うのもなんだが、恋人同士ではない男女がセックスをする事自体、不道徳だ。
それを伝えたつもりだが、もっと具体的に言わなければわかりづらかっただろうか?
神野の発言から判断するに、二人の間には実際の種付けに関する考えに少しずれがあるようだ。
姫乃がどうしたものかと考え込んでいると、神野が指でトンとテーブルを叩いた。
「ああ、そうか。もしかして君は、セックスで強い快楽を感じる事で、恋愛感情が生まれる――つまり、俺に本気になるかもしれないと心配しているという事か?」
「はあ?」
思ってもみない事を言われ、姫乃は唖然として固まる。そして、すぐに首を横に振って否定した。
「違うわ! そんな心配は、まったくしてないから!」
冗談じゃない!
たかが妊娠目的のセックスをしたくらいで、誰が本気になったりするものか。そんなにチョロい女ではないし、もともと淡白でセックスへの執着もない。
姫乃の鼻孔が膨らむのを見て、神野が片方の眉尻を上げた。
「それなら問題ないな。俺のほうもぜったいに本気にならないから安心してくれ」
シニカルな表情を浮かべながらそう言われ、少なからずカチンとくる。
(失礼ね! いくらイケメンでも、そこまではっきりと言わなくてもいいでしょ!)
これがリッチで成功したイケメン特有のものなら、そのご立派な鼻っ柱をへし折ってやりたい気持ちになる。しかし、向こうが言い出した事とはいえ、先に否定したのは自分だし、彼はそれに追従しただけだ。
(とにかく、今は我慢!)
姫乃は強いて穏やかに微笑み、憤る気持ちを呑み下した。
「今回の件はビジネスと同じだ。やるからにはぜったいに成功させる。いずれにせよ、俺は目的達成のためなら手段は選ばないし、協力も惜しまない」
「ありがとう。今回の事は、私も神野さんと同じように捉えてるわ」
さすが一流の経営者だ。実にビジネスライクだし、細かい事はともかく、基本的な考え方は似たところがある。
性格に多少の難はあるが、これならうまくやっていけるかもしれない。
そう思ったのも束の間、神野の視線が姫乃の着ているカットソーの胸元に下りた。
まっすぐそこを見る目は、まるで遠慮がない。腕を交差させて隠したいという衝動に駆られたが、自意識過剰だと思われるのが嫌でじっと我慢する。
「俺は君の協力者として、君が速やかに妊娠する事を望んでいる。俺が思うに、そのためにはあれこれ規制しないほうがいいんじゃないか?」
「それはつまり、付き合っている者同士がするような、普通のセックスをするって事?」
「普通、とは?」
「えっ……と、例えば、会ってハグやキスをして、気持ちが盛り上がってから洋服を脱いで――」
「セックスは人それぞれだし、同じ段階を踏むとは限らない」
「それはそうだけど……。とにかく、イチャイチャしてきちんと洋服を――って、脱がないでする時もあるし、会っていきなりって事もあるわよね――」
神野が言うように、セックスの始め方は様々だ。そんな当たり前の事を言われ、うっかり馬鹿正直に反応してしまった。
いけ好かないばかりか、癇に障る男だ。
姫乃が口を噤んだのを見て、神野が口元に冷ややかな笑みを浮かべる。
「どうやら君は、もう長い間セックスをしていないようだな」
それだけ言うと、神野がこちらの返事を待つような視線を投げかけてきた。
確かに、もうずいぶん長い間ご無沙汰だ。けれど、それがなんだというのか。とにかく、これ以上冷笑を浴びせられるのはごめんだった。
「あなたは、どうしたいの? 希望を聞かせてもらってもいいかしら」
少々強気になってそう訊ねるも、神野は表情を変えずに姫乃を見つめてくる。
「待ち合わせをして、セックスをする。それだけでいいんじゃないか? あれこれルールを決めておくと、それに気を取られるし、ルールなしのほうが、こちらとしてもやりやすい。だが、最終的な判断は君に任せる」
こちらが示した方針を掻き回しておいて、決定権はそちらにあると丸投げされた。
神野友哉という人物は、いったい何を考えているのかわからないし、思っていた以上に扱いにくい男であるらしい。
「じゃあ、とりあえず実際に一度やってみるっていうのはどう? 進めながら、ルールを決めるかどうか話し合う感じで」
「わかった。参考までに聞くが、前にセックスをしたのはいつだった?」
「それ、関係ある?」
「大いにあるね。女性の身体はデリケートだ。それによって、いろいろとやり方を変える必要が出てくる」
やり方とは、当然セックスの事を指しているのだろう。余裕のある態度は気に入らないが、ここは正直に答えるべきだと判断する。
「二年前よ。別にそれで支障はなかったし、恋愛はもうこりごりなの」
少しばかり動揺したせいか、つい余計な事まで言ってしまった。しかし、知られたとしても相手はただの精子提供者だ。
いくらイケメンであろうと、彼が言ったとおり、これはビジネスだと思えばいい。
姫乃はグラスに入ったミネラルウォーターを一気に飲み干し、どうにか落ち着きを取り戻した。
「恋愛に関しては俺も同意見だな。面倒だし、わざわざ時間を割いてまでするようなものじゃない」
なるほど。神野の容姿からすると、おそらくモテすぎて相手に事欠かず、恋愛に対して食傷気味といったところだろうか。
癪に障る男だが、女性の扱いに慣れているのは、こちらにとっては好都合だ。
「さて……俺のほうはいつでも準備万端だ。バスルーム、先に使うか?」
「いえ、お先にどうぞ」
神野に先を譲り、姫乃は椅子から立ち上がって窓際に向かった。彼が部屋を出てバスルームのドアを開ける音が聞こえてくる。
姫乃はようやく肩から力を抜いて、夜景を眺めながら大きく深呼吸をした。
(なんだかんだで主導権を握られっぱなしだな……。だけど、立場的に今のままで行くしかないのかも)
優先すべきは妊娠であり、そのほかの事はぜんぶ後回しにしなくてはならない。そう腹を括り、窓の外を見つめ続ける。
「先に向こうの部屋に行かせてもらうよ」
しばらく経って、背後から神野に声をかけられた。振り向くと、備え付けのバスローブを着た彼がベッドルームに向かって歩いていくところだった。
「私も、すぐに行くわ」
姫乃は神野がいなくなると同時に、バッグを持ってバスルームに急いだ。中に入ってドアを閉めると、洗面台に両手をついて自分の顔をまじまじと見つめた。
(する時って、照明はどうするのかな。明るかったら嫌だし、メイクは落とさなくてもいいよね?)
鏡に向かって頷くと、姫乃は急ぎながらも入念に身体を洗い、下着を着けないまま備え付けのバスローブを羽織った。ここに来るまでの間に、できる限りのボディメンテナンスは済ませている。
早足で廊下を歩いてベッドルームに入ると、背中を向けて立っていた神野が姫乃を振り返った。
「早かったな」
「お互い、迅速に事を進めたいのは一緒だから。それに、明日は二人とも仕事――わわっ!」
歩き進めた先に見えてきたベッドの上に、薔薇の花びらで描かれたハートマークが見えた。
その存在を、すっかり忘れていた!
そもそも部屋のそこかしこに薔薇が飾られているのに、神野の存在が強すぎてすっかり意識から抜け落ちてしまっていたのだ。
「こ、これは違うの! 用意したのは私じゃなくて、祥子が変に気を回しちゃって。彼女、たまに突拍子もない事をする時があるのよ。これもそのうちのひとつで――」
「なるほどな。祥子さんならやりかねない」
おそらく姫乃同様、過去に祥子に驚かされるような事があったのだろう。姫乃が言い訳をするまでもなく、神野が納得したような表情を浮かべる。
わかってもらえて、よかった!
誤解されずに済んで、姫乃はホッと胸を撫で下ろした。
「祥子さんとは、いつからの縁なんだ?」
「高校の時に同じクラスになって以来の仲なの。私と祥子って外見からすると、まったく合わなそうでしょう? 昔からよく不思議がられたりしたものだわ」
長身の姫乃に比べて、祥子は三十代女性の平均身長に満たない。
昔からスレンダーで女性らしさに欠ける姫乃に対して、祥子は適度に丸みを帯びた身体つきをしている。おまけに、可愛げのある美人で性格も優しく、学生時代からかなりモテていた。
そんな彼女は、大学卒業後は新卒で「ソリス」に入社し、秘書課に配属された。ほどなくして、元来の愛想の良さと仕事ぶりを買われ、社長秘書に抜擢。その後、かねてから片想いされていた正光の猛アプローチを受けた末に、彼の妻に納まったというわけだ。
「私と違って、祥子は女性から見ても放っておけないタイプでしょう? はじめは合わないなって思ってたんだけど、話してみると妙に気が合っちゃって。家もそう遠くなかったし、自然と親しくなって、今では一番の親友なの」
「そうか」
ついと伸びてきた神野の手が、姫乃の頭からバンスクリップを外した。ひとまとめになっていた髪の毛が、ゆるいカーブを描きながらバスローブの肩を覆う。彼は姫乃の髪の毛を指で梳き、サラサラと落ちる様を見つめている。
突然の事に、姫乃は彼の顔を見たまま固まってしまった。
「綺麗な黒髪だな。指どおりがよくて、まるで絹糸みたいだ」
姫乃はこれまでに一度も髪の毛を染めた事がなく、パーマも未経験だった。
豊かで艶やかな髪の毛は姫乃が自慢できる数少ないもののひとつだ。けれど、今まで一度も男性の目に留まった事はなかった。異性からの讃辞に免疫がないせいか、神野の言葉が思いのほか心に染みる。
「ありがとう。日頃お客様と接する仕事をしているから、一応外見には気を遣ってるの」
「いい心掛けだな。経営者たる者、会社のトップとして常に自分を正しくプロデュースすべきだ。さあ、お喋りはこのくらいにして、そろそろ始めようか。部屋の灯りはどうしたい?」
雑談から急に本題に入られ、少なからず動揺する。しかし、実際に性行為をしての子作りは想定していたし、今さらあわてるなんて変だ。
おそらく神野が想像を遥かに超えるハイスペックイケメンだった事が理由だろうが、ここは予定どおり、ビジネスと同様に毅然とした態度を貫かねばならない。
そして、今までにないほど手ごわい相手である彼を、しっかりと迎え撃たなければ――
姫乃は自分を鼓舞し、覚悟を決めて口を開いた。
「ヘッドボードの裏と、テーブルの間接照明だけで」
「了解」
姫乃が言ったとおりに照明を落とすと、神野がおもむろにバスローブの前を寛げた。引き締まった胸筋は驚くほど均整が取れており、日頃からきちんと鍛えているのがわかる。
それだけならまだしも、全体のフォルムがセクシーで、その肉体美といったら時折女性誌の表紙を飾る男性モデル以上に魅惑的だ。
(す、すごい……。洋服を着ている時は、それほどじゃなかったのに、脱いだらフェロモンだだ漏れって感じ……!)
だが、ここで怯んではいけない。
姫乃は自分を奮い立たせ、彼の前に進んで右手を差し出した。
「では、神野友哉さん。改めて、どうぞよろしく」
「よろしく」
神野が姫乃の手を掴み、ギュッと握ってきた。
こちらを見つめてくる瞳が、磨き上げた宝石のように綺麗だ。彼は、それからすぐに姫乃の手を離し、なんの躊躇もなくバスローブを脱いでベッドサイドに置かれたカウチの上に置いた。
一糸纏わぬ姿になった神野が、ベッドの上のハートマークに視線を向ける。その立ち姿は、モデルどころか、ギリシア神話に出てくる男神さながらという感じだ。
姫乃は目のやり場に困り、彼の上体に視線を固定させた。
「せっかく祥子さんが演出してくれたんだ。あとでしつこく感想を聞かれるだろうし、一応ハートの上にダイブでもしておくか」
そう語る彼の眉間には、薄っすらと皺が刻まれている。
(うわっ、いかにも迷惑そう)
確かに、祥子はノリノリで「どうだった?」と気が済むまで聞いてきそうだ。神野の機嫌を損ねないためにも、ここは彼の言葉に従っておくべきだろう。
姫乃は頷きながら彼に一歩近づき、バスローブの腰ひもを解いた。そして、ひと思いにそれを脱いで、カウチの上に放り投げる。
「そうね。どうせならダイブして花びらをそこら中に撒き散らしましょ」
裸を見られまいと神野のすぐそばまで近づくと同時に、腕の中に取り込まれ、そのまま仰向けになってベッドの上に倒れ込んだ。
その途端、何枚もの薔薇の花びらが飛び散り、神野の背後をふわふわと舞い踊る。
姫乃はポカンと口を開けたまま、目をパチクリさせる。まさか、いきなり抱き寄せられるとは思っていなかったし、薔薇の花びらを背負う神野は、昔見た少女漫画のヒーローのようだ。
「は……花びらの上にダイブすると、こうなるのね」
何か言わなければと話した声が、明らかに上ずっている。
我ながら間の抜けた事を言ったものだと悔やんでいると、姫乃の身体を囲むようにして手をついていた神野が、おもむろに身を起こした。
姫乃の腰を挟む位置で膝立ちになった彼の顔には、白けたような表情が浮かんでいる。
少なくとも、神野がまったくこの演出を喜んでいない事だけは確かだ。その証拠に、眉間の縦皺がより深くなっている。
「ふん……まるで新婚初夜を迎えるカップルだな」
「確かに」
短くそう答えた姫乃を、神野が上から見下ろしてきた。そして、そのまま視線を姫乃の胸元に移動させる。彼の位置からは、姫乃の全身が見えるわけではない。けれど、さすがに全裸だと落ち着かないし、かなり強い羞恥心も感じる。
『これじゃ興奮しないし、見るからに感度も悪そうだな』
『胸、小さすぎて揉み甲斐がないよ』
姫乃の頭の中に、かつて元カレ達に言われた言葉が思い浮かぶ。
顔同様、姫乃の身体は凹凸に乏しく、胸に至っては寄せて上げてようやくCカップだ。身体つきは割とバランスがよく、骨格もしっかりしている。けれど、女性らしい丸みに欠けるし、お世辞にもセクシーとは言い難かった。
ビジネス上必要を感じて、外見には気を付けている。けれど、恋愛から遠ざかるうちに、服を脱いだ時の自分と向き合う機会は格段に減った。エチケットとして全身のメンテナンスはしたが、どこを取っても完璧な神野には対抗できないし、自分では明らかに力不足だ。
(元カレ達と同じような事を言われたらどうしよう……)
そう思いながら顔を横に向けて黙り込んでいると、神野が再び肘を折って姫乃の目前まで顔を近づけてきた。
「もしかして、緊張してるのか?」
そう訊ねられ、姫乃はギクリとして顔を上げた。
神野は彼氏ではなく、単なる子種の提供者だ。ここに来て緊張して固まるなんて、彼にしたら迷惑でしかないし、今は過去の感情に囚われている場合ではない。
ふと見ると、神野のグラスが空になっている。
姫乃は彼のグラスにワインを注ぎ足そうとボトルに手を伸ばした。しかし、一瞬早く動いた神野に先を越されてしまう。
彼が自分のグラスにワインを注ぎ、チラリと姫乃を見る。そして、姫乃が首を横に振ったのを見て、ボトルをワインクーラーに戻した。
「戸田夫妻は、君がほしがっている優秀な遺伝子を提供する者として、真っ先に俺のところに連絡したと言っていた。つまり、彼らが知っている大勢の人間の中で、俺が一番ふさわしいと考えたという事であり、その選択は百パーセント正しい判断だと思っている」
神野はそう言い切り、姫乃の目をまっすぐに見つめてきた。
これまでのやり取りから察するに、神野はかなりの自信家であり、それを隠そうともしない男だ。
今後それが鼻につく事もありそうだが、子供の父親としてこれ以上条件のいい男性はほかにいないだろう。
姫乃の思惑をよそに、神野が表情ひとつ動かさずにワイングラスを傾ける。
「ええ、確かに。引き受けてもらって、神野さんには心から感謝してるわ」
姫乃は彼に向かって丁寧に頭を下げた。実際、神野はなんの見返りも求めずに、今回の件を引き受けてくれたのだ。
「俺が今回の事を引き受けたのは、正光の頼みだからだ。それと、おそらく問題ないと思うが、俺にはこれまでに女性を妊娠させた実績がない。だからできるだけ早く病院に行って、しかるべき検査をするつもりだ」
「ありがとう。そうしてもらえると助かるわ」
確実に妊娠するためには、双方の生殖機能や感染症等の事前チェックは必須だ。タイミングを見計らって検査をしてほしいと言おうと思っていたところに、彼のほうから申し出てくれたのは、まさに渡りに船だった。
「正光に頼まれたからには、失敗で終わるわけにはいかないからな。今回の件は、必ず最後までやり遂げるつもりだ」
神野の口ぶりから察するに、彼は正光に対して相当の恩義を感じているみたいだった。それに、そこまで言うくらいだから、かなり義理堅い性格だと推測できる。
理由はどうであれ、神野がこの件に積極的に取り組もうとしているのだけはわかった。
これなら、きっとうまくいく――そう確信した姫乃は、彼の気持ちをそがないよう最大限気を配ろうと決意する。
「貴重な時間と労力を提供する決心をしてくれて、ありがとう。だけど、本当に見返りなしでいいの?」
「もちろんだ。俺は君に子種を提供する事によって、正光の願いを叶えることができる。それで十分だ。第一、仮に見返りを求めるとして、君は俺に何を提供できるんだ?」
そう言われ、姫乃は言葉に窮した。なるほど、すべてにおいて自分よりも格が上の彼に言うには、おこがましい台詞だったかもしれない。しかし、それでも何かしら自分にできる事があれば、多少なりともお礼をしたいと思う。
「私が提供できるものは、そう多くないわ。でも、もし何かあれば、遠慮なく言って。できる限りの事はするから」
またしても値踏みするような目で見られて、姫乃は密かにむかっ腹を立てた。けれど、当然表情に出したりせず、口元に浮かべた笑みを倍増させる。
「それと、戸田夫妻から聞いていると思うけど、妊娠するまでにかかる費用は全額私が負担するわ。検査費用はもちろん、今後また何かしら立て替えてもらうものが出てきたら、後日まとめて精算するって事でいいかしら?」
姫乃渾身の笑顔を見ても、神野はまったくの無反応だ。それどころか、若干うんざりしたような表情を浮かべながら口を開いた。
「話は聞いているが、費用に関してはいろいろと面倒だし、必要に応じてそれぞれが負担するという事にしてもらいたい」
「えっ……でも、ただでさえ見返りなしで協力してもらうのに、それだと神野さんに余計負担がかかるわ」
「負担? 俺にとっては、そのせせこましい考えのほうが負担だ。気持ちよく引き受けてもらいたいなら、面倒な事を言うのはよしてくれ」
いかにも煩わしそうに言われては、引き下がるしかなかった。
かくなる上は、すべてを終えたのちに改めてお礼をさせてほしいと申し出るしかないだろう。
「とにかく、さっさと種付けを終わらせてしまおう。そのためには、君が考えている具体策を聞かせてもらいたい。ちなみに、妊娠に至るまでの必要な知識はすでに頭の中に入っているから、その辺りの説明は不要だ」
神野の話し方は、終始冷ややかで淡々としている。それは姫乃自身への興味がまるでない事の表れなのだろうし、こちらだって関心があるのは彼の精子のみだ。
「私はもう検査を済ませていて、妊娠が可能なのは確認済みよ。でも、生理の周期が一定じゃないの。だから、排卵日がいつか予測するのが難しいし、基礎体温もあまりあてにならないのよ」
「だとしたら、タイミング法は使えないな。お互いに忙しい身だし、妊活期間は短ければ短いほうがいいだろう?」
「ええ、もちろんよ」
神野が頷き、グラスに残ったワインを喉の奥に流し込んだ。そして、ボトルを見つめながら三杯目のワインをグラスの中になみなみと注ぐ。
(量は飲まないと言ったくせに、結構飲むじゃない)
妊活中であっても、男性はアルコールを摂取しても問題はない。むろん、飲み過ぎて勃起不全になられると困るが、神野の様子からすると、おそらくアルコールに強いのではないだろうか。
姫乃は神野につい見惚れてしまっている自分に気づき、それとなく目を逸らした。
子種の提供者は美男子であるに越した事はない。しかし、彼は姫乃の予想していた何十倍も美形だ。喜ばしい事ではあるが、かっこよすぎてなんだかいろいろとやりにくい。そういった意味でも、神野との妊活は短期間で済ませたいと思う。
今回の話を持ち出した時から、種付けの方法についていろいろと考えを巡らせていた。
医師の手を借りる事は当初から考えていないため、自力で行う必要がある。
ひとつは提供者に精子を採取してもらい、それを即座にシリンジを使って自分で膣内に注入する方法だ。もうひとつは実際に性行為をする方法だが、これは相手の同意がなければ実行できない。
姫乃は性行為をする覚悟はできているし、自身の生理不順を念頭に置くと、むしろ前向きに考えたいと思っていた。しかし、さすがに自分の意見を押し付けるわけにはいかないし、まずは神野の意向を聞いてからだろう。
一連の種付けに関する話をしたあと、姫乃は神野自身の希望を訊ねた。
「確実性を重視するなら、精子を採取して膣内に注入するより、実際にセックスをしたほうが効率的だと思うが」
「そうね。そうすれば直接精子を体内に入れられるし、手っ取り早くて確実だわ」
椅子の背にもたれかかっていた神野が、少しだけ身体を前に倒して姫乃を見る。
「君はもう、そうする心づもりができているという事か?」
「もちろんよ。私、どうしても子供がほしいの。そのためならなんでもするわ。私としては、排卵日がはっきりしない分、とにかく回数を重ねてできる限り早く妊娠したいの。そのために、できるだけ努力する――そういうスタンスでいるんだけど、どうかしら?」
「異論はないよ。お互いに忙しい身だが、種付けをするだけだし、やろうと思えば会って短時間で終わらせるのも可能だ」
「じゃあ、スケジュールを共有して、時間が空いた時は互いに連絡を取り合うという事でいい?」
「問題ない」
幸い、二人の職場は車で三十分の距離にある。彼さえ積極的に協力してくれたら、すぐにでも目的を達成できそうだ。そう考えると自然と気持ちが高揚し、作り物でない笑顔が浮かんでくる。
ついニヤついていると、神野がミニバーに行き、新しいグラスとともに瓶入りのミネラルウォーターを持って戻って来た。そして瓶の栓を抜いてグラスに注ぐと、無言で姫乃に手渡してくる。
「ありがとう」
姫乃は礼を言い、続けざまに三口ミネラルウォーターを飲んだ。きっと知らない間に喉が渇いていたのだろう。そのせいか、飲み込む時にいつも以上に喉が鳴ってしまった。
「具体策については、これで決まりね。あと、確認なんだけど、目的が妊娠だから極力性的な快楽を得るのは避けたほうがいいわよね?」
「と、言うと?」
「例えば、本当の恋人同士のようなキスや前戯は必要ない。余計な気遣いもなしって事でいいわよね? 洋服についても極力脱がずに済ませたいでしょう? あと、もし必要なら、何かしら補助的なグッズを用意するから、リクエストがあれば言ってちょうだい」
姫乃は自分が性的に魅力的な女だとは思っていないし、「そそる」か「そそらない」かで言えば後者だと思う。妊娠を目的としたセックスには挿入が必須だが、自分が相手では神野が勃起しない可能性もある。
「行為が終わったら、それぞれのタイミングで速やかに立ち去る。妊娠したとわかったら、すぐに連絡をするわ。連絡先は、神野さん個人の番号で構わない?」
姫乃は事前に考えておいた、セックスに関する一連のルールを口にした。
特に異論もなく承諾してくれるものと思っていたが、神野は小首を傾げながらワイングラスを揺らしている。
「何か気になる点がある? あるなら、はっきり言ってくれて構わないわよ」
姫乃はグラスにミネラルウォーターを注ぎ足し、再度喉を潤した。
「そこまで細かく決める必要があるか? あえてそうしなければならない理由があるなら、聞かせてもらいたい」
恋愛関係にない自分達がセックスをするのだ。むしろ、もっと細かな決め事を作ってもいいくらいだ。
姫乃は彼の発言を意外に思いながら、自分の考えを口にした。
「もちろん、必要以上の接触を避けて、多少なりとも感情が揺さぶられるのを避けるためよ」
そう明言した姫乃の顔を見ながら、神野が腑に落ちないといった表情を浮かべる。
「セックスをすれば、多少なりとも快感が伴うのは当然だ。女性がオーガズムを強く感じれば感じるほど妊娠率がアップするというし、そうであれば、むしろ積極的に快楽を追求したほうがいいと思うが?」
確かにそういう事を書いた資料を読んだし、快楽によって身体が開き、妊娠の可能性が高まるのは科学的に証明されているようだ。
「だけど、あくまでも妊娠が目的なんだから、挿入して射精さえすれば事足りるわけだし……」
種付けを依頼した立場の自分が言うのもなんだが、恋人同士ではない男女がセックスをする事自体、不道徳だ。
それを伝えたつもりだが、もっと具体的に言わなければわかりづらかっただろうか?
神野の発言から判断するに、二人の間には実際の種付けに関する考えに少しずれがあるようだ。
姫乃がどうしたものかと考え込んでいると、神野が指でトンとテーブルを叩いた。
「ああ、そうか。もしかして君は、セックスで強い快楽を感じる事で、恋愛感情が生まれる――つまり、俺に本気になるかもしれないと心配しているという事か?」
「はあ?」
思ってもみない事を言われ、姫乃は唖然として固まる。そして、すぐに首を横に振って否定した。
「違うわ! そんな心配は、まったくしてないから!」
冗談じゃない!
たかが妊娠目的のセックスをしたくらいで、誰が本気になったりするものか。そんなにチョロい女ではないし、もともと淡白でセックスへの執着もない。
姫乃の鼻孔が膨らむのを見て、神野が片方の眉尻を上げた。
「それなら問題ないな。俺のほうもぜったいに本気にならないから安心してくれ」
シニカルな表情を浮かべながらそう言われ、少なからずカチンとくる。
(失礼ね! いくらイケメンでも、そこまではっきりと言わなくてもいいでしょ!)
これがリッチで成功したイケメン特有のものなら、そのご立派な鼻っ柱をへし折ってやりたい気持ちになる。しかし、向こうが言い出した事とはいえ、先に否定したのは自分だし、彼はそれに追従しただけだ。
(とにかく、今は我慢!)
姫乃は強いて穏やかに微笑み、憤る気持ちを呑み下した。
「今回の件はビジネスと同じだ。やるからにはぜったいに成功させる。いずれにせよ、俺は目的達成のためなら手段は選ばないし、協力も惜しまない」
「ありがとう。今回の事は、私も神野さんと同じように捉えてるわ」
さすが一流の経営者だ。実にビジネスライクだし、細かい事はともかく、基本的な考え方は似たところがある。
性格に多少の難はあるが、これならうまくやっていけるかもしれない。
そう思ったのも束の間、神野の視線が姫乃の着ているカットソーの胸元に下りた。
まっすぐそこを見る目は、まるで遠慮がない。腕を交差させて隠したいという衝動に駆られたが、自意識過剰だと思われるのが嫌でじっと我慢する。
「俺は君の協力者として、君が速やかに妊娠する事を望んでいる。俺が思うに、そのためにはあれこれ規制しないほうがいいんじゃないか?」
「それはつまり、付き合っている者同士がするような、普通のセックスをするって事?」
「普通、とは?」
「えっ……と、例えば、会ってハグやキスをして、気持ちが盛り上がってから洋服を脱いで――」
「セックスは人それぞれだし、同じ段階を踏むとは限らない」
「それはそうだけど……。とにかく、イチャイチャしてきちんと洋服を――って、脱がないでする時もあるし、会っていきなりって事もあるわよね――」
神野が言うように、セックスの始め方は様々だ。そんな当たり前の事を言われ、うっかり馬鹿正直に反応してしまった。
いけ好かないばかりか、癇に障る男だ。
姫乃が口を噤んだのを見て、神野が口元に冷ややかな笑みを浮かべる。
「どうやら君は、もう長い間セックスをしていないようだな」
それだけ言うと、神野がこちらの返事を待つような視線を投げかけてきた。
確かに、もうずいぶん長い間ご無沙汰だ。けれど、それがなんだというのか。とにかく、これ以上冷笑を浴びせられるのはごめんだった。
「あなたは、どうしたいの? 希望を聞かせてもらってもいいかしら」
少々強気になってそう訊ねるも、神野は表情を変えずに姫乃を見つめてくる。
「待ち合わせをして、セックスをする。それだけでいいんじゃないか? あれこれルールを決めておくと、それに気を取られるし、ルールなしのほうが、こちらとしてもやりやすい。だが、最終的な判断は君に任せる」
こちらが示した方針を掻き回しておいて、決定権はそちらにあると丸投げされた。
神野友哉という人物は、いったい何を考えているのかわからないし、思っていた以上に扱いにくい男であるらしい。
「じゃあ、とりあえず実際に一度やってみるっていうのはどう? 進めながら、ルールを決めるかどうか話し合う感じで」
「わかった。参考までに聞くが、前にセックスをしたのはいつだった?」
「それ、関係ある?」
「大いにあるね。女性の身体はデリケートだ。それによって、いろいろとやり方を変える必要が出てくる」
やり方とは、当然セックスの事を指しているのだろう。余裕のある態度は気に入らないが、ここは正直に答えるべきだと判断する。
「二年前よ。別にそれで支障はなかったし、恋愛はもうこりごりなの」
少しばかり動揺したせいか、つい余計な事まで言ってしまった。しかし、知られたとしても相手はただの精子提供者だ。
いくらイケメンであろうと、彼が言ったとおり、これはビジネスだと思えばいい。
姫乃はグラスに入ったミネラルウォーターを一気に飲み干し、どうにか落ち着きを取り戻した。
「恋愛に関しては俺も同意見だな。面倒だし、わざわざ時間を割いてまでするようなものじゃない」
なるほど。神野の容姿からすると、おそらくモテすぎて相手に事欠かず、恋愛に対して食傷気味といったところだろうか。
癪に障る男だが、女性の扱いに慣れているのは、こちらにとっては好都合だ。
「さて……俺のほうはいつでも準備万端だ。バスルーム、先に使うか?」
「いえ、お先にどうぞ」
神野に先を譲り、姫乃は椅子から立ち上がって窓際に向かった。彼が部屋を出てバスルームのドアを開ける音が聞こえてくる。
姫乃はようやく肩から力を抜いて、夜景を眺めながら大きく深呼吸をした。
(なんだかんだで主導権を握られっぱなしだな……。だけど、立場的に今のままで行くしかないのかも)
優先すべきは妊娠であり、そのほかの事はぜんぶ後回しにしなくてはならない。そう腹を括り、窓の外を見つめ続ける。
「先に向こうの部屋に行かせてもらうよ」
しばらく経って、背後から神野に声をかけられた。振り向くと、備え付けのバスローブを着た彼がベッドルームに向かって歩いていくところだった。
「私も、すぐに行くわ」
姫乃は神野がいなくなると同時に、バッグを持ってバスルームに急いだ。中に入ってドアを閉めると、洗面台に両手をついて自分の顔をまじまじと見つめた。
(する時って、照明はどうするのかな。明るかったら嫌だし、メイクは落とさなくてもいいよね?)
鏡に向かって頷くと、姫乃は急ぎながらも入念に身体を洗い、下着を着けないまま備え付けのバスローブを羽織った。ここに来るまでの間に、できる限りのボディメンテナンスは済ませている。
早足で廊下を歩いてベッドルームに入ると、背中を向けて立っていた神野が姫乃を振り返った。
「早かったな」
「お互い、迅速に事を進めたいのは一緒だから。それに、明日は二人とも仕事――わわっ!」
歩き進めた先に見えてきたベッドの上に、薔薇の花びらで描かれたハートマークが見えた。
その存在を、すっかり忘れていた!
そもそも部屋のそこかしこに薔薇が飾られているのに、神野の存在が強すぎてすっかり意識から抜け落ちてしまっていたのだ。
「こ、これは違うの! 用意したのは私じゃなくて、祥子が変に気を回しちゃって。彼女、たまに突拍子もない事をする時があるのよ。これもそのうちのひとつで――」
「なるほどな。祥子さんならやりかねない」
おそらく姫乃同様、過去に祥子に驚かされるような事があったのだろう。姫乃が言い訳をするまでもなく、神野が納得したような表情を浮かべる。
わかってもらえて、よかった!
誤解されずに済んで、姫乃はホッと胸を撫で下ろした。
「祥子さんとは、いつからの縁なんだ?」
「高校の時に同じクラスになって以来の仲なの。私と祥子って外見からすると、まったく合わなそうでしょう? 昔からよく不思議がられたりしたものだわ」
長身の姫乃に比べて、祥子は三十代女性の平均身長に満たない。
昔からスレンダーで女性らしさに欠ける姫乃に対して、祥子は適度に丸みを帯びた身体つきをしている。おまけに、可愛げのある美人で性格も優しく、学生時代からかなりモテていた。
そんな彼女は、大学卒業後は新卒で「ソリス」に入社し、秘書課に配属された。ほどなくして、元来の愛想の良さと仕事ぶりを買われ、社長秘書に抜擢。その後、かねてから片想いされていた正光の猛アプローチを受けた末に、彼の妻に納まったというわけだ。
「私と違って、祥子は女性から見ても放っておけないタイプでしょう? はじめは合わないなって思ってたんだけど、話してみると妙に気が合っちゃって。家もそう遠くなかったし、自然と親しくなって、今では一番の親友なの」
「そうか」
ついと伸びてきた神野の手が、姫乃の頭からバンスクリップを外した。ひとまとめになっていた髪の毛が、ゆるいカーブを描きながらバスローブの肩を覆う。彼は姫乃の髪の毛を指で梳き、サラサラと落ちる様を見つめている。
突然の事に、姫乃は彼の顔を見たまま固まってしまった。
「綺麗な黒髪だな。指どおりがよくて、まるで絹糸みたいだ」
姫乃はこれまでに一度も髪の毛を染めた事がなく、パーマも未経験だった。
豊かで艶やかな髪の毛は姫乃が自慢できる数少ないもののひとつだ。けれど、今まで一度も男性の目に留まった事はなかった。異性からの讃辞に免疫がないせいか、神野の言葉が思いのほか心に染みる。
「ありがとう。日頃お客様と接する仕事をしているから、一応外見には気を遣ってるの」
「いい心掛けだな。経営者たる者、会社のトップとして常に自分を正しくプロデュースすべきだ。さあ、お喋りはこのくらいにして、そろそろ始めようか。部屋の灯りはどうしたい?」
雑談から急に本題に入られ、少なからず動揺する。しかし、実際に性行為をしての子作りは想定していたし、今さらあわてるなんて変だ。
おそらく神野が想像を遥かに超えるハイスペックイケメンだった事が理由だろうが、ここは予定どおり、ビジネスと同様に毅然とした態度を貫かねばならない。
そして、今までにないほど手ごわい相手である彼を、しっかりと迎え撃たなければ――
姫乃は自分を鼓舞し、覚悟を決めて口を開いた。
「ヘッドボードの裏と、テーブルの間接照明だけで」
「了解」
姫乃が言ったとおりに照明を落とすと、神野がおもむろにバスローブの前を寛げた。引き締まった胸筋は驚くほど均整が取れており、日頃からきちんと鍛えているのがわかる。
それだけならまだしも、全体のフォルムがセクシーで、その肉体美といったら時折女性誌の表紙を飾る男性モデル以上に魅惑的だ。
(す、すごい……。洋服を着ている時は、それほどじゃなかったのに、脱いだらフェロモンだだ漏れって感じ……!)
だが、ここで怯んではいけない。
姫乃は自分を奮い立たせ、彼の前に進んで右手を差し出した。
「では、神野友哉さん。改めて、どうぞよろしく」
「よろしく」
神野が姫乃の手を掴み、ギュッと握ってきた。
こちらを見つめてくる瞳が、磨き上げた宝石のように綺麗だ。彼は、それからすぐに姫乃の手を離し、なんの躊躇もなくバスローブを脱いでベッドサイドに置かれたカウチの上に置いた。
一糸纏わぬ姿になった神野が、ベッドの上のハートマークに視線を向ける。その立ち姿は、モデルどころか、ギリシア神話に出てくる男神さながらという感じだ。
姫乃は目のやり場に困り、彼の上体に視線を固定させた。
「せっかく祥子さんが演出してくれたんだ。あとでしつこく感想を聞かれるだろうし、一応ハートの上にダイブでもしておくか」
そう語る彼の眉間には、薄っすらと皺が刻まれている。
(うわっ、いかにも迷惑そう)
確かに、祥子はノリノリで「どうだった?」と気が済むまで聞いてきそうだ。神野の機嫌を損ねないためにも、ここは彼の言葉に従っておくべきだろう。
姫乃は頷きながら彼に一歩近づき、バスローブの腰ひもを解いた。そして、ひと思いにそれを脱いで、カウチの上に放り投げる。
「そうね。どうせならダイブして花びらをそこら中に撒き散らしましょ」
裸を見られまいと神野のすぐそばまで近づくと同時に、腕の中に取り込まれ、そのまま仰向けになってベッドの上に倒れ込んだ。
その途端、何枚もの薔薇の花びらが飛び散り、神野の背後をふわふわと舞い踊る。
姫乃はポカンと口を開けたまま、目をパチクリさせる。まさか、いきなり抱き寄せられるとは思っていなかったし、薔薇の花びらを背負う神野は、昔見た少女漫画のヒーローのようだ。
「は……花びらの上にダイブすると、こうなるのね」
何か言わなければと話した声が、明らかに上ずっている。
我ながら間の抜けた事を言ったものだと悔やんでいると、姫乃の身体を囲むようにして手をついていた神野が、おもむろに身を起こした。
姫乃の腰を挟む位置で膝立ちになった彼の顔には、白けたような表情が浮かんでいる。
少なくとも、神野がまったくこの演出を喜んでいない事だけは確かだ。その証拠に、眉間の縦皺がより深くなっている。
「ふん……まるで新婚初夜を迎えるカップルだな」
「確かに」
短くそう答えた姫乃を、神野が上から見下ろしてきた。そして、そのまま視線を姫乃の胸元に移動させる。彼の位置からは、姫乃の全身が見えるわけではない。けれど、さすがに全裸だと落ち着かないし、かなり強い羞恥心も感じる。
『これじゃ興奮しないし、見るからに感度も悪そうだな』
『胸、小さすぎて揉み甲斐がないよ』
姫乃の頭の中に、かつて元カレ達に言われた言葉が思い浮かぶ。
顔同様、姫乃の身体は凹凸に乏しく、胸に至っては寄せて上げてようやくCカップだ。身体つきは割とバランスがよく、骨格もしっかりしている。けれど、女性らしい丸みに欠けるし、お世辞にもセクシーとは言い難かった。
ビジネス上必要を感じて、外見には気を付けている。けれど、恋愛から遠ざかるうちに、服を脱いだ時の自分と向き合う機会は格段に減った。エチケットとして全身のメンテナンスはしたが、どこを取っても完璧な神野には対抗できないし、自分では明らかに力不足だ。
(元カレ達と同じような事を言われたらどうしよう……)
そう思いながら顔を横に向けて黙り込んでいると、神野が再び肘を折って姫乃の目前まで顔を近づけてきた。
「もしかして、緊張してるのか?」
そう訊ねられ、姫乃はギクリとして顔を上げた。
神野は彼氏ではなく、単なる子種の提供者だ。ここに来て緊張して固まるなんて、彼にしたら迷惑でしかないし、今は過去の感情に囚われている場合ではない。
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