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愛 玩 人 体〔99〕
しおりを挟むレインの結婚式へ行くことができるエイジだが、結局、贈物を買う機会は得られず、手ぶらのまま当日を迎えることになった。
招待状の日付は本日である。医局から式場までの距離や、開始時間がわからないエイジだが、ひとまずバージルが事前に用意した服に着替えることにした。
「うおぉ、これって正装ってやつか……?」
結婚式などの式典では、ふだんの着こなしではなく礼装が求められる。最上級のスーツを着用する必要はないが、数多くのルールやマナーが存在した。なにもかも初体験のエイジだが、バージルと一緒に出席するため不安感はなく、むしろ楽しみのほうが強かった。皺ひとつないホワイトシャツに袖を通して釦を留める。ネクタイの結び方がわからないため、後回しにした。まもなくして、研究室にバージルが到着する。
(どわーーーっ、やっぱり、そうきたか!!)
姿をあらわした医師は、いつもの白衣ではなく麗しさ倍増のダークスーツを着こなしている。しかも、ジャケットと同色のベストを重ねているため、すっきりとしたシルエットでありながら貫禄さえ感じ取れた。
(やべぇ! 今日のバージル、ヤバすぎるだろ。鼻血でる……!!)
頭がクラクラするエイジをよそに、バージルは中央テーブルに置かれたシルバーグレイのネクタイを目に留めると、「ネクタイはどうした?」と訊ねた。
「し、しようと思ったけど、結び方がわからなくて……」
エイジが口ごもると、バージルはネクタイを手にして「こちらへ」と云う。首の後ろに腕をまわし、衿もとでバージルの指が動く。エイジは(むやみに)緊張してしまい、直立不動の姿勢で目を瞑っていた。
「できたぞ」
と云うバージルの声で瞼をあけると、小型のクラッチバッグを差し出された。
「なに、これ?」
「必要と思う物を入れなさい」
「……招待状とか、コインケースとか?」
「ああ、それでいい」
「わかった。すぐ入れてくる」
エイジは、仮眠室にあるサイドテーブルの抽斗から招待状を取り出した。ついでに手巾などもバッグにしまうと、バージルのところまで戻った。
「忘れ物はないね」
「うん、大丈夫!」
「では、行こうか」
「ああ!」
バージルと研究室をあとにしたエイジは、久しぶりにレインと顔を合わせることになる。個人的に本人へ確認したい事柄があるため、なんとかして接触できないか真剣に考えた。
(レインさん、待っててくれ。今、会いに行くからな!)
+ continue +
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