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第一章 亡霊、大地に立つ
第四話 そういう場合は、だいたい詐欺です。#2
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――世間知らずなお嬢さんに、良い事を教えてやろう。
「な、なに?」
戸惑うミーシャの目をじっと見つめて、レイは重々しい口調で言った。
――会釈を交わす程度の知り合いが、突然、強く何かを勧めてくる時は、大体詐欺だぞ。
一瞬、ぽかんとした表情を浮かべた後、ミーシャは頭痛を堪える様に、眉間を指で押さえた。
「あのねぇ……記憶も無い癖に、どんな角度から説教ぶっこんできてんのよ、この偽ゴブリン」
――偽ゴブリン? ……いや、確かに生来のゴブリンでは無いが、そこはかとなく罵られているように聞こえるな。
「そこはかとなくじゃなくって、あきらかに罵ってんのよ! そもそも会釈を交わす程度の知り合いって何よ! 土精霊だって、とーっても仲良しなんだから! ただ、あの子たちが自分から何かを言ってくることなんて、滅多にないだけで……」
ミーシャの話の途中で、レイが唐突に大きく頷いた。
――ふむ、では、仮ゴブリンというのはどうだろう?
「話を聞きなさいよぉお!」
山中での出来事である。
薄闇の中に、よぉお、よぉお、よぉお……と、ミーシャの絶叫が木霊した。
なんとも言えない沈黙の後、ミーシャは疲れた様な表情で、力なく項垂れる。
そして、それ以上話すのも馬鹿らしくなったのか、ミーシャは無言のままにごそごそと背嚢を弄って、布の小袋を取り出すと、レイの方へと放り投げた。
――なんだ、これは?
「ご飯を食べさせるって約束でしょ。拾っておいた木の実よ。まだまだあるから、それは全部食べちゃっていいわよ、このヒモゴブリン」
――ヒモゴブリン!?
「なによ? 女の子にご飯たかろうっていうんだから、ヒモじゃない。違うとは言わせないわよ」
そういうとミーシャは、情けない表情で立ち尽くすレイを眺めながら、自分も小袋を取り出して、木の実をぽいぽいっと、口の中に放り込み始める。
レイは何か言いたげな顔のまま(無論、胸の内に浮かべた反論はミーシャには筒抜けな訳だが)、袋から取り出した木の実を、掌の上で転がして、じっと眺めた。
味が想像できない。
記憶に引っかかる物も、思い起こされるものも何もない。
たぶん、身体を失う以前にも、この木の実を食べた事はないのだろう。
焦げ茶色の栗に似たその木の実を摘まんで、ポイポイと口の中へと放り込む。
歯ごたえはあるが、決して旨いものではない。
灰汁のような渋みが、僅かに舌の上に残る。
だがまあ、喰えなくは…………。
――苦アアアアアアアアッ!?
最後に強烈な苦味が喉の奥の方に絡みついて、レイは慌てて口の中に残った木の実を吐き出す。
途端に苦味に加えて嘔吐した直後の様な、凄まじいエグみがこみあげて来て、ただでさえ凶悪なゴブリン面を、苦みがそのまま顔の表面にまで溢れ出てきたかのように歪めて、転げまわった。
「あらあら、バカねぇ、渋皮剥かないで食べちゃったの?」
ニマニマっと口元に笑いを張り付けた、わざとらしいミーシャの物言いに、レイは憮然とした顔を向ける。
――さ、先に言ってくれ!
レイのその抗議の声を受け流して、ミーシャは腕組みをしながら、どこか厭らしさを感じさせる黒い笑顔を浮かべた。
「世間知らずのバカゴブリンに良い事を教えてあげる」
――な、なんだ。
「知り合ったばかりの人間が、突然、さりげなく何かを勧めてくる時は、大体詐欺なのよ」
エルフ(負けず嫌い)とゴブリン(やや天然)。
誰がどう見ても普通でない二人組が共に過ごす、最初の夜はこうして更けていった。
「な、なに?」
戸惑うミーシャの目をじっと見つめて、レイは重々しい口調で言った。
――会釈を交わす程度の知り合いが、突然、強く何かを勧めてくる時は、大体詐欺だぞ。
一瞬、ぽかんとした表情を浮かべた後、ミーシャは頭痛を堪える様に、眉間を指で押さえた。
「あのねぇ……記憶も無い癖に、どんな角度から説教ぶっこんできてんのよ、この偽ゴブリン」
――偽ゴブリン? ……いや、確かに生来のゴブリンでは無いが、そこはかとなく罵られているように聞こえるな。
「そこはかとなくじゃなくって、あきらかに罵ってんのよ! そもそも会釈を交わす程度の知り合いって何よ! 土精霊だって、とーっても仲良しなんだから! ただ、あの子たちが自分から何かを言ってくることなんて、滅多にないだけで……」
ミーシャの話の途中で、レイが唐突に大きく頷いた。
――ふむ、では、仮ゴブリンというのはどうだろう?
「話を聞きなさいよぉお!」
山中での出来事である。
薄闇の中に、よぉお、よぉお、よぉお……と、ミーシャの絶叫が木霊した。
なんとも言えない沈黙の後、ミーシャは疲れた様な表情で、力なく項垂れる。
そして、それ以上話すのも馬鹿らしくなったのか、ミーシャは無言のままにごそごそと背嚢を弄って、布の小袋を取り出すと、レイの方へと放り投げた。
――なんだ、これは?
「ご飯を食べさせるって約束でしょ。拾っておいた木の実よ。まだまだあるから、それは全部食べちゃっていいわよ、このヒモゴブリン」
――ヒモゴブリン!?
「なによ? 女の子にご飯たかろうっていうんだから、ヒモじゃない。違うとは言わせないわよ」
そういうとミーシャは、情けない表情で立ち尽くすレイを眺めながら、自分も小袋を取り出して、木の実をぽいぽいっと、口の中に放り込み始める。
レイは何か言いたげな顔のまま(無論、胸の内に浮かべた反論はミーシャには筒抜けな訳だが)、袋から取り出した木の実を、掌の上で転がして、じっと眺めた。
味が想像できない。
記憶に引っかかる物も、思い起こされるものも何もない。
たぶん、身体を失う以前にも、この木の実を食べた事はないのだろう。
焦げ茶色の栗に似たその木の実を摘まんで、ポイポイと口の中へと放り込む。
歯ごたえはあるが、決して旨いものではない。
灰汁のような渋みが、僅かに舌の上に残る。
だがまあ、喰えなくは…………。
――苦アアアアアアアアッ!?
最後に強烈な苦味が喉の奥の方に絡みついて、レイは慌てて口の中に残った木の実を吐き出す。
途端に苦味に加えて嘔吐した直後の様な、凄まじいエグみがこみあげて来て、ただでさえ凶悪なゴブリン面を、苦みがそのまま顔の表面にまで溢れ出てきたかのように歪めて、転げまわった。
「あらあら、バカねぇ、渋皮剥かないで食べちゃったの?」
ニマニマっと口元に笑いを張り付けた、わざとらしいミーシャの物言いに、レイは憮然とした顔を向ける。
――さ、先に言ってくれ!
レイのその抗議の声を受け流して、ミーシャは腕組みをしながら、どこか厭らしさを感じさせる黒い笑顔を浮かべた。
「世間知らずのバカゴブリンに良い事を教えてあげる」
――な、なんだ。
「知り合ったばかりの人間が、突然、さりげなく何かを勧めてくる時は、大体詐欺なのよ」
エルフ(負けず嫌い)とゴブリン(やや天然)。
誰がどう見ても普通でない二人組が共に過ごす、最初の夜はこうして更けていった。
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