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第一章 亡霊、大地に立つ
第六話 一点突破 #4
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レイと背後のゴブリン達の間に、かなりの距離が開いた。
レイは足を止めると、遠ざかって行くミーシャの背中を眺めて、胸の内で彼女へと声を上げる。
――ミーシャ! そのまま走り続けろ! 私はここで連中を足止めする!
「な!? 大丈夫なの? 死んじゃダメだからね! ちゃんとヌーク・アモーズまで護衛してよ!」
――心配するな。すぐに追いつく。
レイは降りしきる雨の向こうに、ミーシャの姿が見えなくなるのを見届けると足を止めた。
そして、その場でくるりと振り返り、両の手の鉈を胸の前で交差させる。
守らなければならないものがなければ、思う存分戦える。
ここへ至るまでに、ゴブリン達も随分と脱落していた。
ざっと見回した限りでは、三十匹を下回っている。
ゴブリン達は静かに佇んでいるレイを見つけると、遠巻きに取り囲みはじめた。
レイを無視して、ミーシャを追うゴブリンはいない。
もしいたならば、真っ先に屠るつもりにしていたのだが、すでに姿の見えなくなったミーシャは、完全にゴブリン達の意識から外れたらしい。
ゴブリンの知能ならばさもありなん。
――そう言えば……赤鶏冠と言ったか?
レイを取り囲んで牙を剥いているゴブリン達を、ぐるりと眺める。
一目する限り赤い鬣を持ったゴブリンの姿はない。
やはり只の噂の類だったか。と、レイが苦笑したその時。
「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
はるか遠くの方で、微かな悲鳴が響いた。
ともすれば聞き逃しかねない程の遠い響き。
だが、聞き間違えようがない。
それはミーシャの声。
レイはビクリと身体を跳ねさせると、思わず声の聞こえてきた方向へと振り返る。
そして、自分の判断の誤りに思い至った。
人間以上の知恵を持つという赤鶏冠ならば、この展開を予測して、待ち伏せの一つも用意している可能性がある。
なぜそこに思い至らなかったのかと、思わず顔を歪めて項垂れた。
――悪いが、お前達の相手をしていられる状況では無くなった。
項垂れながら胸の内でそう呟くと、レイは顔を上げて、目の前のゴブリンへと飛び掛かる。
――どけっ! 道を開けろ!
雨は降り止む気配も無く、更に激しくレイの身体を叩いていた。
レイは足を止めると、遠ざかって行くミーシャの背中を眺めて、胸の内で彼女へと声を上げる。
――ミーシャ! そのまま走り続けろ! 私はここで連中を足止めする!
「な!? 大丈夫なの? 死んじゃダメだからね! ちゃんとヌーク・アモーズまで護衛してよ!」
――心配するな。すぐに追いつく。
レイは降りしきる雨の向こうに、ミーシャの姿が見えなくなるのを見届けると足を止めた。
そして、その場でくるりと振り返り、両の手の鉈を胸の前で交差させる。
守らなければならないものがなければ、思う存分戦える。
ここへ至るまでに、ゴブリン達も随分と脱落していた。
ざっと見回した限りでは、三十匹を下回っている。
ゴブリン達は静かに佇んでいるレイを見つけると、遠巻きに取り囲みはじめた。
レイを無視して、ミーシャを追うゴブリンはいない。
もしいたならば、真っ先に屠るつもりにしていたのだが、すでに姿の見えなくなったミーシャは、完全にゴブリン達の意識から外れたらしい。
ゴブリンの知能ならばさもありなん。
――そう言えば……赤鶏冠と言ったか?
レイを取り囲んで牙を剥いているゴブリン達を、ぐるりと眺める。
一目する限り赤い鬣を持ったゴブリンの姿はない。
やはり只の噂の類だったか。と、レイが苦笑したその時。
「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
はるか遠くの方で、微かな悲鳴が響いた。
ともすれば聞き逃しかねない程の遠い響き。
だが、聞き間違えようがない。
それはミーシャの声。
レイはビクリと身体を跳ねさせると、思わず声の聞こえてきた方向へと振り返る。
そして、自分の判断の誤りに思い至った。
人間以上の知恵を持つという赤鶏冠ならば、この展開を予測して、待ち伏せの一つも用意している可能性がある。
なぜそこに思い至らなかったのかと、思わず顔を歪めて項垂れた。
――悪いが、お前達の相手をしていられる状況では無くなった。
項垂れながら胸の内でそう呟くと、レイは顔を上げて、目の前のゴブリンへと飛び掛かる。
――どけっ! 道を開けろ!
雨は降り止む気配も無く、更に激しくレイの身体を叩いていた。
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