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第二章 亡霊、勇者のフリをする。
第十一話 世の中のことは、大体筋肉で説明がつきます。 #3
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――姫?
レイが思わずミーシャを見上げると、彼女は心底うんざりしたような顔で、頭を抱えていた。
「お願い。誰だか知らないけど、姫はやめて……。エルフには王も姫も無いんだから。おじいちゃんが長老っていうだけで、パパが長老位を継ぐわけでも無いんだし……」
「しかし! 王妃殿下の妹君であらせられる方を、他に呼びようも御座いません!」
――なるほど、そういうことか。
思わず頷いたレイを、ミーシャがギロリと睨む。
ほぼ、八つ当たりである。
「姫、再び相見えることが出来て、このゴディン。感涙に堪えませぬ」
本当に目を潤ませている大男に、ミシャは戸惑いの表情を浮かべて問いかけた。
「えーと……アンタ、誰?」
「無理も御座いませんな。前にお会いした時には、私もまだ紅顔の美少年でありました故」
ミーシャといい、こいつといい。自意識過剰な連中ばっかりなのかと、レイは思わず肩を竦めた。
「ごめん、全っ然覚えが無いわ」
「左様でございますか……以前、姫がヌーク・アモーズに滞在なさられている間、護衛を命じられておりました、ゴディンでございます」
「ゴディン?」
ミーシャが眉間に皺を寄せた次の瞬間、その表情が驚愕の色に染まった。
「ええぇぇぇっ!? あのひょろひょろ!? 原型ないじゃないの! 何? 人間ってそんなに変わっちゃうものなの?」
「人間二十年もすれば、筋肉もつきます」
「筋肉の問題なの!?」
「世の中のことは、大体筋肉で説明がつきます。こんなところで姫は何を?」
ゴディンは聞き捨てならない科白を言いっぱなっしのまま話題を変え、ミーシャはツッコむタイミングを失って、僅かに口元を引き攣らせながらも、それに応じる。
「ヌーク・アモーズへ向かう途中なの」
「それは、それは! 王もさぞやお喜びになられましょう!」
ゴディンは破顔すると、背後を振り返って部下に命じる。
「おいお前! その馬を姫と従者殿に差し上げろ!」
「はっ!」
どうやら、ゴディンは勝手にレイの事を従者だと思い込んでいるらしい。
そして副官と思われる兵に、
「後は任せた。ワシは姫を砦へご案内する」
そう告げると、ミーシャの前に恭しく跪いた。
「姫! ハノーダー砦へ、どうぞお立ち寄りください。我が家と思って旅の疲れを落としていただければ、恐悦にございます」
レイが思わずミーシャを見上げると、彼女は心底うんざりしたような顔で、頭を抱えていた。
「お願い。誰だか知らないけど、姫はやめて……。エルフには王も姫も無いんだから。おじいちゃんが長老っていうだけで、パパが長老位を継ぐわけでも無いんだし……」
「しかし! 王妃殿下の妹君であらせられる方を、他に呼びようも御座いません!」
――なるほど、そういうことか。
思わず頷いたレイを、ミーシャがギロリと睨む。
ほぼ、八つ当たりである。
「姫、再び相見えることが出来て、このゴディン。感涙に堪えませぬ」
本当に目を潤ませている大男に、ミシャは戸惑いの表情を浮かべて問いかけた。
「えーと……アンタ、誰?」
「無理も御座いませんな。前にお会いした時には、私もまだ紅顔の美少年でありました故」
ミーシャといい、こいつといい。自意識過剰な連中ばっかりなのかと、レイは思わず肩を竦めた。
「ごめん、全っ然覚えが無いわ」
「左様でございますか……以前、姫がヌーク・アモーズに滞在なさられている間、護衛を命じられておりました、ゴディンでございます」
「ゴディン?」
ミーシャが眉間に皺を寄せた次の瞬間、その表情が驚愕の色に染まった。
「ええぇぇぇっ!? あのひょろひょろ!? 原型ないじゃないの! 何? 人間ってそんなに変わっちゃうものなの?」
「人間二十年もすれば、筋肉もつきます」
「筋肉の問題なの!?」
「世の中のことは、大体筋肉で説明がつきます。こんなところで姫は何を?」
ゴディンは聞き捨てならない科白を言いっぱなっしのまま話題を変え、ミーシャはツッコむタイミングを失って、僅かに口元を引き攣らせながらも、それに応じる。
「ヌーク・アモーズへ向かう途中なの」
「それは、それは! 王もさぞやお喜びになられましょう!」
ゴディンは破顔すると、背後を振り返って部下に命じる。
「おいお前! その馬を姫と従者殿に差し上げろ!」
「はっ!」
どうやら、ゴディンは勝手にレイの事を従者だと思い込んでいるらしい。
そして副官と思われる兵に、
「後は任せた。ワシは姫を砦へご案内する」
そう告げると、ミーシャの前に恭しく跪いた。
「姫! ハノーダー砦へ、どうぞお立ち寄りください。我が家と思って旅の疲れを落としていただければ、恐悦にございます」
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