亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。

円城寺正市

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第二章 亡霊、勇者のフリをする。

第十四話 悪霊憑き #1

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 剣先で揺れる黒い髪束を眺めて、

「うわぁ…………」

 と、ミーシャがドン引きする様な素振りを見せると、レイは怪訝けげんそうに眉根を寄せた。

 ――なんだ?

「なんだじゃないわよ、アンタ。女の子の髪を斬り落とすなんて」

 ――そのうち、また伸びる。

「そりゃそうだけど。それだけ伸ばそうと思ったら、何年かかると思ってんのよ」

 その物言いに、レイは珍しく顔をムッとさせる。

 ――キミが殺すなというから。

「人の所為せいにしないでよね。気絶させるなり、なんなりやりようってのがあるでしょ。ほんと……これは私も流石にかばいきれないわ」

 ――待て! 待て! そんなに責められる事か?

 レイが思わず慌てると、ミーシャは大袈裟おおげさに肩をすくめてみせた。

「見てみなさいよ、ほら」

 ミーシャが指さす方に目を向けると、そこには、こうべを垂れて、穴が開きそうな程に石畳の一点を見つめているドナの姿があった。

 ――うっ……。

「相当凹んでるわよ、あれ」

 ミーシャに、じとりとした視線を向けられて、レイはねる様に唇を尖らせる。

 ――戦ってたんだぞ? 命のやり取りをしてたんだぞ? 別に手足を斬り落とした訳ではないんだぞ?

「人として、やっちゃダメなことってあんのよ?」

「ぎゃぎゃ」

「ゴブリンのフリしてもダメ」

 思わず周囲を見回してみると、兵士達までがドン引きした顔で、レイの事を見ている。

 レイは、むむむと考え込んだ末に、斬り落とした髪束を手に取ると、テトテトとドナの方へと歩み寄った。

 そして、あろうことか、小首を傾げて「ぎゃ?」と、ドナへと髪束を差し出したのだ。

 水だと思い込んで、火に油をぶっかけるバカの姿があった。

「あちゃー……」

 ミーシャが、思わず天を仰いだその瞬間、

 ドナのこめかみの辺りでブチン! と人体からは、決してする筈の無い野太い音が聞こえてきた。

「アンタねぇ! そりゃ怒るわよ! そんなことしたら!」

 ミーシャが慌てて声を上げると、レイは振り返って、胸の内で声を荒げる。

 ――では、どうしろというのだ!

 だが、その途端、

「レイ! 後ろ! 後ろ!」

 と、ミーシャが顔を引き攣らせて、声を上げた。

 振り返ればすぐ後ろに、首を傾げたまま、瞳孔の開ききった目で彼を見下ろすドナの姿があった。

 そして次の瞬間、

「くぁwせdrftgyふじこlpッ!!!」

 彼女は意味不明な叫び声を上げて、大きく身体をけ反らせた。

「ぎゃぎゃっ!」

 その余りの不穏さに、レイが『歩法ウォーク』を発動させて、弾けるように背後へと跳ぶと、

「なにしてくれとんじゃあああ!! アホゴブリン!」

 ドナの背後で、ジタバタと足を踏み鳴らすソフィーの姿が見えた。

 そして、彼女は間髪入れずに、周囲の兵士達に向かって大声を張り上げる。

「退避! 退避! 逃げるのじゃ! 早よぅ! 巻き込まれるぞ! トアナベの悪霊じゃ!」 

 途端に、

「トアナベ!? ま、まさか、ドナ様がトアナベの悪霊!?」

「うわああああああ、トアナベの再現だ!」

「逃げろ! 悪霊に殺されるぞ!」

 そう口々に叫びながら、兵士達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出し始めた。
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