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第三章 亡霊、竜になる
第二十二話 蜘蛛の女王 #1
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――ふむ。
レイは少し考え込む様な素振りを見せた後、ミーシャの方へと振り返って言った。
――ミーシャ、教えてくれ。どうやらこの女に勧誘されているようなのだが、今の話のどこに、私のメリットがあったのか良くわからないのだ。
「は?」
レイにふざけている様子は無い。
きょとんとするアリアを目にして、ミーシャは思わず「ぷぷぷっ……」と噴き出す。
絶対優位に立っているつもりのアリアにしてみれば、メリット云々以前に、命は助けてやっても良い。その程度の意味だったのだろう。
この兎には、それが分からなかったのだ。
もしかしたら、ピンチだという認識すら無いのかもしれない。
「さあ? 女の子に大人気ってあたりじゃないの?」
洩れそうになる笑いを口の中でかみ殺しながら、ミーシャが適当な事を言うと、レイは、
――これ以上、モフりにくるヤツが増えたら、心労でハゲる。
と、心底イヤそうに顔を顰めた。
そして、相変わらずきょとんとした顔で、二人の会話を聞くともなしに聞いていたアリアに向き直ると、レイはぺこりと頭を下げる。
――今回はご縁が無かったと言うことで。
その瞬間、アリアの顔が怒りに歪む。
艶っぽい口元から、ギリリと歯ぎしりする音が零れ落ちた。
「バッカじゃないの! 珍しいからって仏心を出してみれば、首狩り兎ごときが調子にのってぇ! 良いわ! 皮を剥いで襟巻にしてあげるわよ!」
――ミーシャ。なんだか怒らせたみたいなんだが?
「さぁ? なんか栄養が足りてないんじゃないの? ああ、あれよ、あれ。更年期ってヤツじゃない?」
レイが再び振り向いて問いかけると、ミーシャは揶揄う様にそう言って、ドナの肩を支えに立ち上がる。
治癒は既に終わっているらしい。
頬を汚している血の痕は痛々しいが、額の傷は既に塞がっている。
ミーシャもドナも擦り傷だらけで、服もかぎ裂きだらけ。
どこの浮浪者かと見紛う有様ではあったが、レイの目に、ミーシャの額以外には、大きな怪我は無さそうに見えた。
だが、せっかく凄んでみせたというのに、軽く流されてしまっては、アリアの立場が無い。
緊張感のないレイたちの様子に、彼女のこめかみがミチミチと音を立てた。
「アンタ達! そこの娘を捕まえなさい! 殺しちゃダメよ。自分から殺してくれって懇願するぐらい、酷い目に合わせてやるんだから!」
男達に向かって甲高い声で叫ぶと、アリアはレイを血走った目で睨みつける。
「アンタは、この子たちの餌にしてあげるわよ!」
途端に、アリアの足元に擦り寄っていた二匹のヒュージスパイダーが、かさかさと八本の足を蠢かせて、レイを取り囲んだ。
――まあ……そうしてもらえると助かるな。
「なにがよ?」
後ろ脚だけで立っていたレイが、身体を折って前脚を地面につけた。
――この身体では手加減が出来ないからな。相手は人間じゃない方がありがたい。それに……
レイの背後で、男達が足下をふらつかせながら、ドナとミーシャの方へと迫っていく。
――あの女は強いからな。
迫りくる男達の姿に、ミーシャが顔を引き攣らせた途端、
「テンバァァァァァツ!」
ドナはいきなり意味不明な叫び声を上げながら、手近な男に殴り掛かった。
レイは少し考え込む様な素振りを見せた後、ミーシャの方へと振り返って言った。
――ミーシャ、教えてくれ。どうやらこの女に勧誘されているようなのだが、今の話のどこに、私のメリットがあったのか良くわからないのだ。
「は?」
レイにふざけている様子は無い。
きょとんとするアリアを目にして、ミーシャは思わず「ぷぷぷっ……」と噴き出す。
絶対優位に立っているつもりのアリアにしてみれば、メリット云々以前に、命は助けてやっても良い。その程度の意味だったのだろう。
この兎には、それが分からなかったのだ。
もしかしたら、ピンチだという認識すら無いのかもしれない。
「さあ? 女の子に大人気ってあたりじゃないの?」
洩れそうになる笑いを口の中でかみ殺しながら、ミーシャが適当な事を言うと、レイは、
――これ以上、モフりにくるヤツが増えたら、心労でハゲる。
と、心底イヤそうに顔を顰めた。
そして、相変わらずきょとんとした顔で、二人の会話を聞くともなしに聞いていたアリアに向き直ると、レイはぺこりと頭を下げる。
――今回はご縁が無かったと言うことで。
その瞬間、アリアの顔が怒りに歪む。
艶っぽい口元から、ギリリと歯ぎしりする音が零れ落ちた。
「バッカじゃないの! 珍しいからって仏心を出してみれば、首狩り兎ごときが調子にのってぇ! 良いわ! 皮を剥いで襟巻にしてあげるわよ!」
――ミーシャ。なんだか怒らせたみたいなんだが?
「さぁ? なんか栄養が足りてないんじゃないの? ああ、あれよ、あれ。更年期ってヤツじゃない?」
レイが再び振り向いて問いかけると、ミーシャは揶揄う様にそう言って、ドナの肩を支えに立ち上がる。
治癒は既に終わっているらしい。
頬を汚している血の痕は痛々しいが、額の傷は既に塞がっている。
ミーシャもドナも擦り傷だらけで、服もかぎ裂きだらけ。
どこの浮浪者かと見紛う有様ではあったが、レイの目に、ミーシャの額以外には、大きな怪我は無さそうに見えた。
だが、せっかく凄んでみせたというのに、軽く流されてしまっては、アリアの立場が無い。
緊張感のないレイたちの様子に、彼女のこめかみがミチミチと音を立てた。
「アンタ達! そこの娘を捕まえなさい! 殺しちゃダメよ。自分から殺してくれって懇願するぐらい、酷い目に合わせてやるんだから!」
男達に向かって甲高い声で叫ぶと、アリアはレイを血走った目で睨みつける。
「アンタは、この子たちの餌にしてあげるわよ!」
途端に、アリアの足元に擦り寄っていた二匹のヒュージスパイダーが、かさかさと八本の足を蠢かせて、レイを取り囲んだ。
――まあ……そうしてもらえると助かるな。
「なにがよ?」
後ろ脚だけで立っていたレイが、身体を折って前脚を地面につけた。
――この身体では手加減が出来ないからな。相手は人間じゃない方がありがたい。それに……
レイの背後で、男達が足下をふらつかせながら、ドナとミーシャの方へと迫っていく。
――あの女は強いからな。
迫りくる男達の姿に、ミーシャが顔を引き攣らせた途端、
「テンバァァァァァツ!」
ドナはいきなり意味不明な叫び声を上げながら、手近な男に殴り掛かった。
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