亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。

円城寺正市

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第三章 亡霊、竜になる

第二十八話 ライジングドラゴン! #1

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 西門の方へと走っていく人々を尻目に、ニコは細い路地に入り込むと、東の方角へと走り始めた。

 結局、パンツは見つからなかった。

 彼女の装いは、丈の短いシャツに赤の胸甲ブレストプレート、ローライズ気味の短袴ショートパンツ

 剣帯けんたいに下げた中短剣グラディウスが脚の動きに合わせて、カチャカチャと音を立てる。

 布切れ一枚の違いなのに、短袴ショートパンツの下に何も履いていないという事実が、やけに心細い気がした。

 大通りの方からは逃げ惑う人々の、悲鳴にも似た声が響いてくる。

「路地の方でも、騒がしいのはあんまり変わんにゃいにゃぁ……」

 彼女は小さく溜め息を吐くと、短い赤毛を揺らして走りながら、道の両側に並ぶ建物に切り取られた、細長ほそながい空を見上げ、そこに浮かぶ巨大な影へと大声で叫ぶ。

「にゃにゃにゃ! おじーちゃーん! 竜のおじーちゃーーん!」

 だがその声は、やはり大通りから響いてくる喧騒けんそうに掻き消されて、古竜エンシェントドラゴンの耳には届かない。

「にゃーーー! おじーちゃんってばあぁ!!」

 彼女は、十字路の真ん中で立ち止まると、ぴょんぴょんと跳ねながら、必死に古竜エンシェントドラゴンに呼びかける。

 だが、やはり古竜エンシェントドラゴンが、彼女に気付く様子は無かった。

 その時、彼女の視界の内側に、何かキラリと光る物が入り込んだ。

 それは街中の方から飛び出して、古竜エンシエントドラゴンの方へと、真っ直ぐに昇っていく。

「にゃんだろ?」

 彼女が小首を傾げると同時に、まるで疑問に答えるかの様な声が、十字路の横の方から聞こえてきた。

「レイ! あれはレイよ!」

「まさか!? 本当に勇者様なのですか?」

『勇者』という言葉に、ニコは思わず目を見開く。

 髪の中に隠していた耳が跳ねだしそうになって、彼女は慌てて手で押さえた。

「勇者? 勇者ってコータのことにゃ!?」

 小さく呟きながら、彼女は咄嗟とっさに十字路の影に身を隠して、声がした方を覗き見る。

 そこには壁際で話をする、二人の女の姿があった。

「変な奴らだにゃ……」

 大きな背嚢リュックを背負った少女と、物騒な大槌スレッジハンマーを担いだ女。

 よくよく見てみれば少女の耳は長く尖っていて、女の方は青い十字を描いた修道衣を着ている。

「エルフと……ライトナちんと同じ服?」

 ニコは怪訝けげんそうに眉をひそめると、息を殺して二人の会話に耳をそばだてた。

「間違いないわ。さっき飛び上がっていった飛竜ワイバーン、口に剣を咥えてたでしょ? あんな頭のおかしい飛竜ワイバーンが他にいる訳無いわよ!」

「頭がおかしいは、言い過ぎだと思いますけど……」

「よりによってあんなのに飛び掛かっていくなんて、頭がおかしい以外に、どう表現していいのか分かんないわよ!」

「まあ……そう……かもしれませんね」

 エルフの少女は、苦笑する修道衣の女をじっと見据えると、

「でも……レイが戦うって決めたんなら、ちゃんと最後まで見届ける。出来る事なんてないけど……レイは私の使い魔なんだから!」

 そう言った。

 二人の話はどうにも意味が分からない。

 コータ以外に勇者なんている訳が無いのに、勇者と言いながらも彼女達の話に出てくる人物は、どう聞いてもコータでは無い。

 少し期待してしまったことが、ニコの心のやわらかい部分を刺激した。

 一つ向こう側の筋を東へと走り始める二人を見送って、彼女は思わず、ぐすっと鼻を鳴らす

「コータぁ……竜のおじいちゃんを止めてよぉ……」

 少女はごしごしと顔をぬぐって、再び、古竜エンシェントドラゴンの浮かんでいる方角へと駆け出した。
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