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第三章 亡霊、竜になる
第二十八話 ライジングドラゴン! #2
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漆黒の空へと、再び舞い上がる蒼い翼。
口に咥えた大剣を閃かせながら、レイは真っ直ぐに古竜に向かって飛んでいく。
古竜はレイの姿を捉えると、金色の目でそれを見据え、再び人の言葉を叫んだ。
『盟約に従いて、その命を貰い受ける!』
――覚えは無いが、降りかかる火の粉は払うだけだ!
古竜が大きく顎を開くと、鋭い牙の向こう側で再び、蒼い炎が渦を巻く。
炎に照らし出されて、暗闇の中に巨大な顎が浮かびあがった。
轟と音をたてて、放たれる蒼炎。
帯状に伸びる火柱が、レイを迎え撃つように迫ってくる。
だが、レイは速度を露とも落とさず、くるくると錐揉みしながら、迫りくる炎を躱して宙を舞う。
だが、いつまでも逃げ切れるものではない。
炎は途切れることなく、レイを追い掛けてくる。
――そう簡単には近づかせてくれないか……ならば。
身体は軽い。
ついさっきまで重量級の荷物を背負っていたのだから当然と言えば当然なのだが、それだけではない。
飛ぶという行為そのものに慣れてきたのだ。
今や、歩くのと感覚としては大して変わらない。
レイは、翼へと一気に気を送り込む。
それは剣士の高速移動術――『歩法』。
薄らと光を放ち始める膜質の蒼い翼。
途端に、恐ろしいほどの勢いで、レイの体が加速する。
空気を切り裂き、音をその場に置き去りにして、彼の通った後に衝撃波が巻き起こった。
あまりにも異常な動き。
それを見据える古竜の目に、たじろぎの色が浮かんだ。
ほとんど姿を捉えられないほどの速さで火線を掻い潜り、レイは古竜へと迫る。
そして、竜の首、そのすぐ脇を通り過ぎようというその瞬間、レイは、それまで翼に流し込んでいた気の、送り込む先を一気に変える。
瞬時に光に包まれる剣。
刃の無い模造刀に、光が刃を形作る。
許容量を超える気に、刀身そのものが、今にもはじけ飛びそうなほどに震えた。
カタカタと小刻みに震える剣を、必死の形相で抑え込みながら、レイは、古竜の首、その脇を一気に通り抜けた。
一瞬の静寂。
その直後に、まるで岩礁にぶつかった荒波の様な勢いで、竜の首から血が噴き出す。
グウオァァァァァァァァァアアアアアアアアアア!
古竜の体が僅かに揺らいで、怒りに塗れた絶叫が、大地を激しく揺らした。
ビリビリと空気が震える。
東側の城壁が、まるでその上を何かが走っていくかのように、土煙を上げながら、端から順番に倒壊していく。
だが、
――浅い。
宙に浮かぶ古竜の更に上空を旋回しながら、レイは悔しげな呟きを洩らした。
この竜は首回りの太さだけでも、幾万年を生き延びた霊木ほどの太さがあるのだ。
深く切り裂いたつもりでも、せいぜい皮の下の肉に届くかどうか。僅かに傷をつけた程度でしかない。
火柱の絶えた顎から、濛々と煙を立ち昇らせながら、レイの姿を探すかのように古竜は身体をくねらせ、尻尾を振り回す。
そして、何を思ったか、古竜は、高度を落として地へと舞い降りる。
カノカの街の東半分が一気に押し潰され、地軸を揺るがす轟音とともに、雲の上にまで到達するほどの土煙が舞い上がった。
――ミーシャ!
思わずレイの脳裏を、エルフの少女の姿が過る。
だが、冷静に考えてみればミーシャ達がいたのは町の西側。おそらく無事な筈だ。その半面、東の城門に群れていた者達は間違いなく押し潰されたことだろう。
これで分かった。
竜たちは人間を襲わないのでは無い。
襲うだけの価値を見出していないのだ。
口に咥えた大剣を閃かせながら、レイは真っ直ぐに古竜に向かって飛んでいく。
古竜はレイの姿を捉えると、金色の目でそれを見据え、再び人の言葉を叫んだ。
『盟約に従いて、その命を貰い受ける!』
――覚えは無いが、降りかかる火の粉は払うだけだ!
古竜が大きく顎を開くと、鋭い牙の向こう側で再び、蒼い炎が渦を巻く。
炎に照らし出されて、暗闇の中に巨大な顎が浮かびあがった。
轟と音をたてて、放たれる蒼炎。
帯状に伸びる火柱が、レイを迎え撃つように迫ってくる。
だが、レイは速度を露とも落とさず、くるくると錐揉みしながら、迫りくる炎を躱して宙を舞う。
だが、いつまでも逃げ切れるものではない。
炎は途切れることなく、レイを追い掛けてくる。
――そう簡単には近づかせてくれないか……ならば。
身体は軽い。
ついさっきまで重量級の荷物を背負っていたのだから当然と言えば当然なのだが、それだけではない。
飛ぶという行為そのものに慣れてきたのだ。
今や、歩くのと感覚としては大して変わらない。
レイは、翼へと一気に気を送り込む。
それは剣士の高速移動術――『歩法』。
薄らと光を放ち始める膜質の蒼い翼。
途端に、恐ろしいほどの勢いで、レイの体が加速する。
空気を切り裂き、音をその場に置き去りにして、彼の通った後に衝撃波が巻き起こった。
あまりにも異常な動き。
それを見据える古竜の目に、たじろぎの色が浮かんだ。
ほとんど姿を捉えられないほどの速さで火線を掻い潜り、レイは古竜へと迫る。
そして、竜の首、そのすぐ脇を通り過ぎようというその瞬間、レイは、それまで翼に流し込んでいた気の、送り込む先を一気に変える。
瞬時に光に包まれる剣。
刃の無い模造刀に、光が刃を形作る。
許容量を超える気に、刀身そのものが、今にもはじけ飛びそうなほどに震えた。
カタカタと小刻みに震える剣を、必死の形相で抑え込みながら、レイは、古竜の首、その脇を一気に通り抜けた。
一瞬の静寂。
その直後に、まるで岩礁にぶつかった荒波の様な勢いで、竜の首から血が噴き出す。
グウオァァァァァァァァァアアアアアアアアアア!
古竜の体が僅かに揺らいで、怒りに塗れた絶叫が、大地を激しく揺らした。
ビリビリと空気が震える。
東側の城壁が、まるでその上を何かが走っていくかのように、土煙を上げながら、端から順番に倒壊していく。
だが、
――浅い。
宙に浮かぶ古竜の更に上空を旋回しながら、レイは悔しげな呟きを洩らした。
この竜は首回りの太さだけでも、幾万年を生き延びた霊木ほどの太さがあるのだ。
深く切り裂いたつもりでも、せいぜい皮の下の肉に届くかどうか。僅かに傷をつけた程度でしかない。
火柱の絶えた顎から、濛々と煙を立ち昇らせながら、レイの姿を探すかのように古竜は身体をくねらせ、尻尾を振り回す。
そして、何を思ったか、古竜は、高度を落として地へと舞い降りる。
カノカの街の東半分が一気に押し潰され、地軸を揺るがす轟音とともに、雲の上にまで到達するほどの土煙が舞い上がった。
――ミーシャ!
思わずレイの脳裏を、エルフの少女の姿が過る。
だが、冷静に考えてみればミーシャ達がいたのは町の西側。おそらく無事な筈だ。その半面、東の城門に群れていた者達は間違いなく押し潰されたことだろう。
これで分かった。
竜たちは人間を襲わないのでは無い。
襲うだけの価値を見出していないのだ。
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