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第四章 亡霊、魔王討伐を決意する。
第三十一話 魔王の花嫁 #2
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「海だにゃ!」
緑の大地が途切れて、視界を蒼い色が占め始めると、ニコはぴょんぴょんと跳ねまわりながら燥いだ声を上げた。
「こら! そんなに飛び跳ねたら危ない。落ちても知らないわよ」
「大丈夫にゃ!」
ミーシャが呆れ顔でそれを窘めても、ニコに言う事を聞く様子は無い。
実際、落ちるとは言ってみたものの、それが大袈裟なことは、ミーシャにだって分かっている。
今、彼女達がいる場所―― 古竜の背は、平らな部分だけを見ても、王都の聖堂ほどの広さがあるのだ。
ミーシャ達四人は今、古竜の身体を乗っ取ったレイの背に乗って、空を北へと向かっている。
ヌーク・アモーズのある西では無く北。
それには当然、訳がある。
カノカの街を飛び立って、そのまま真っ直ぐ西へと飛べば、おそらく日が暮れるまでには、ヌーク・アモーズまで辿り着けることだろう。
だが古竜が王都に迫って来たとなれば、パニックは避けられない。
そこで、まずは北へと飛んで陸地を離れ、沖の方から西へぐるりと回りこむルートをとることにしたのだ。
ヌーク・アモーズは半島の西端。
ミーシャ達がヌーク・アモーズに滞在している間は、レイは付近の海中で息を潜めていることになっている。
ミーシャは相変わらず燥いでいるニコから、残りの二人の方へと目を向ける。
ドナとアリアは互いに距離をとって、それぞれ背びれに凭れ掛かって目を閉じている。
実際、神官と魔物という、本来であれば不倶戴天の敵同士なのだ。
仲良くしろと言ったところで、それこそ無理というものだ。
実際、アリアがヌークアモーズに同行すると言った時には、ドナは猛反対したのだが、『勇者が良いと言ってる』の一言で、しぶしぶ折れた。
とは言え、ドナはヌーク・アモーズにつけば神官としての務めに戻るのだろうし、アリアは商売を始めるつもりでいるようだ。
ヌーク・アモーズに到着してしばらく経てば、それぞれの道はあっさりと分かれていくことだろう。
「ねぇ、レイ」
――どうした?
ミーシャが小さな声で呟くと、レイが即座に応じた。
声を張り上げずとも、背中で話されている内容はレイには大体聞こえているらしい。
恐ろしい地獄耳。
こんな小さなところでも、古竜が規格外の存在であることを実感させられる。
「あんた、まさか、ほんとに勇者だったりする?」
ミーシャは再びニコの姿を目で追いながら、レイへと問いかけた。
――わからない。
「そりゃそうか……ねぇ。ニコちゃん、ちょっと!」
「何にゃ?」
ミーシャが手招きすると、ニコは獣の様に四つん這いで駆け寄ってきた。
「ニコちゃん。あなた、レイのこと勇者……えーと、コータだって言ってたわよね」
「そうにゃ! コータにゃ!」
「なんで、そう思ったの?」
「だって、昇竜斬が出来るのはコータだけにゃ!」
「ふーん、そうなんだ……」
――それだけでは、私が勇者だという事にはならないな。実際、記憶の中にあったから、やってみたら出来たというだけだ。もしかしたら私は、その勇者とやらが使っている所を見たことがあるだけなのかもしれない。
レイの声は無論、ニコには聞こえていない。
ミーシャは声を潜めて、ニコに聞こえない様に呟いた。
「でもまあ、好都合だわ。勇者の仲間だったって子が、あんたを勇者だって主張してくれるなら、王都でもはったりを通しやすくなるもの」
――あくまで、それで押し通すのだな。一体、キミは何をしようとしているのだ?
「……その時が来たら、ちゃんと言うから」
ミーシャは取り繕うように周囲に目を泳がせると、アリアがニヤニヤしながらこっちを見ていることに気付いた。
「そう言えば……蜘蛛女は、レイの言葉が聞こえるんだった……わね」
魔物である彼女が、ミーシャのしようとしている事を邪魔する理由など無いが、計画の詰めの段階で邪魔をされたのでは、目も当てられない。
もうすぐだ。
ミーシャが小さく溜め息を吐いて見回せば、陸地は既に水平線の向こう側へ消え去っていた。
周囲は空と海が繋がった一面の蒼い世界。
――そろそろ西へ進路を変える。
レイの声が脳裏に響いて、太陽の位置がぐるりと回り始めた。
緑の大地が途切れて、視界を蒼い色が占め始めると、ニコはぴょんぴょんと跳ねまわりながら燥いだ声を上げた。
「こら! そんなに飛び跳ねたら危ない。落ちても知らないわよ」
「大丈夫にゃ!」
ミーシャが呆れ顔でそれを窘めても、ニコに言う事を聞く様子は無い。
実際、落ちるとは言ってみたものの、それが大袈裟なことは、ミーシャにだって分かっている。
今、彼女達がいる場所―― 古竜の背は、平らな部分だけを見ても、王都の聖堂ほどの広さがあるのだ。
ミーシャ達四人は今、古竜の身体を乗っ取ったレイの背に乗って、空を北へと向かっている。
ヌーク・アモーズのある西では無く北。
それには当然、訳がある。
カノカの街を飛び立って、そのまま真っ直ぐ西へと飛べば、おそらく日が暮れるまでには、ヌーク・アモーズまで辿り着けることだろう。
だが古竜が王都に迫って来たとなれば、パニックは避けられない。
そこで、まずは北へと飛んで陸地を離れ、沖の方から西へぐるりと回りこむルートをとることにしたのだ。
ヌーク・アモーズは半島の西端。
ミーシャ達がヌーク・アモーズに滞在している間は、レイは付近の海中で息を潜めていることになっている。
ミーシャは相変わらず燥いでいるニコから、残りの二人の方へと目を向ける。
ドナとアリアは互いに距離をとって、それぞれ背びれに凭れ掛かって目を閉じている。
実際、神官と魔物という、本来であれば不倶戴天の敵同士なのだ。
仲良くしろと言ったところで、それこそ無理というものだ。
実際、アリアがヌークアモーズに同行すると言った時には、ドナは猛反対したのだが、『勇者が良いと言ってる』の一言で、しぶしぶ折れた。
とは言え、ドナはヌーク・アモーズにつけば神官としての務めに戻るのだろうし、アリアは商売を始めるつもりでいるようだ。
ヌーク・アモーズに到着してしばらく経てば、それぞれの道はあっさりと分かれていくことだろう。
「ねぇ、レイ」
――どうした?
ミーシャが小さな声で呟くと、レイが即座に応じた。
声を張り上げずとも、背中で話されている内容はレイには大体聞こえているらしい。
恐ろしい地獄耳。
こんな小さなところでも、古竜が規格外の存在であることを実感させられる。
「あんた、まさか、ほんとに勇者だったりする?」
ミーシャは再びニコの姿を目で追いながら、レイへと問いかけた。
――わからない。
「そりゃそうか……ねぇ。ニコちゃん、ちょっと!」
「何にゃ?」
ミーシャが手招きすると、ニコは獣の様に四つん這いで駆け寄ってきた。
「ニコちゃん。あなた、レイのこと勇者……えーと、コータだって言ってたわよね」
「そうにゃ! コータにゃ!」
「なんで、そう思ったの?」
「だって、昇竜斬が出来るのはコータだけにゃ!」
「ふーん、そうなんだ……」
――それだけでは、私が勇者だという事にはならないな。実際、記憶の中にあったから、やってみたら出来たというだけだ。もしかしたら私は、その勇者とやらが使っている所を見たことがあるだけなのかもしれない。
レイの声は無論、ニコには聞こえていない。
ミーシャは声を潜めて、ニコに聞こえない様に呟いた。
「でもまあ、好都合だわ。勇者の仲間だったって子が、あんたを勇者だって主張してくれるなら、王都でもはったりを通しやすくなるもの」
――あくまで、それで押し通すのだな。一体、キミは何をしようとしているのだ?
「……その時が来たら、ちゃんと言うから」
ミーシャは取り繕うように周囲に目を泳がせると、アリアがニヤニヤしながらこっちを見ていることに気付いた。
「そう言えば……蜘蛛女は、レイの言葉が聞こえるんだった……わね」
魔物である彼女が、ミーシャのしようとしている事を邪魔する理由など無いが、計画の詰めの段階で邪魔をされたのでは、目も当てられない。
もうすぐだ。
ミーシャが小さく溜め息を吐いて見回せば、陸地は既に水平線の向こう側へ消え去っていた。
周囲は空と海が繋がった一面の蒼い世界。
――そろそろ西へ進路を変える。
レイの声が脳裏に響いて、太陽の位置がぐるりと回り始めた。
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