亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。

円城寺正市

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第四章 亡霊、魔王討伐を決意する。

第三十二話 私は愚かなのだろうな。 #1

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 くらい海に白波を立てて、巨大な影が陸地へと迫っている。

 それは、巨大な竜。

 遠く沖合で海へと降りて、海中を進む古竜エンシェントドラゴンであった。

 鎌首を持ち上げたその頭上には、今、四人の女の姿がある。

「流石に、物見には気づかれているでしょうね……」

「あはは、なら、今頃きっと、蜂の巣を突いたみたいな騒ぎになってるわね」

 修道衣姿の女が溜め息混じりに呟くと、それを揶揄やゆする様に、赤いドレス姿のなまめかしい女が軽薄に笑う。

「軍人がいくら慌てたって、知ったこっちゃないわよ。街中でパニック起こされるより、全然マシだもの」

 二人の会話に割り込むように、エルフの少女がそう吐き捨てると、その隣の赤毛の少女は、

「にゃぁ……お腹空いたにゃ」

 と、興味無さげに、き出しのお腹をさすった。

 徐々に近づいてくるヌーク・アモーズの港。

 その岸壁の上には、幾つもの篝火かがりびが揺れている。

 おそらく、迫りくる竜を迎え撃つべく、兵士達が集結しているのだろう。

 実際、竜が陸地に近づくにつれて、聞こえてくる男達のざわめく声が大きくなっていく。

 やがて竜は港のすぐ傍まで辿り着くと、首を伸ばして、その巨大なあごを岸壁の上へと乗せる。

 途端に、兵士達は悲鳴を上げて、一気に後退あとずさった。

「めちゃくちゃビビってんじゃないのよ。みっともない……」

 呆れたような物言いをするアリアにとがめる様な目を向けて、ミーシャは竜の頭から鼻先を渡り、岸壁へと飛び降りる。続いて、ドナ、アリア、ニコが、順番に岸壁へと降り立った。

 緊張の面持ちで、取り囲む兵士達を見回して、ミーシャは声を張り上げる。

「私は王妃オリビアの実妹、ミーシャよ! 義兄ジェラール王に会いに来たの。取り次いでちょうだい」

 その途端、兵士達の間に、戸惑うようなざわめきが広がっていく。

「あらま、あの、王族だったのね、一応。おしとやかさの欠片かけらも無いから気づかなかったわ」

「まあ……耳長みみながですから」

 仲が悪い癖に、こんな時だけ声を潜めてささやき合うドナとアリアを、ミーシャがギロリと睨みつけたのと同時に、この場の指揮官らしき男が、兵士達の間から進み出てきた。

「ミーシャ様とのことではございますが、我々では判断出来ませぬ。王宮に伺いを立てます故、しばしお待ちの程を」

「まあ良いわ。でも、できるだけ早くしてよね」

 ミーシャはそう言い放つと、古竜エンシェントドラゴンの方へと振り返って、その鼻先を撫でる。

「レイ、悪いんだけど、沖合に出て、待っててくれる? たぶん二、三日」

 ――ああ、かまわない。だが……私も一緒には行くつもりだ。

 一緒に行くつもり?

 レイの言葉に、ミーシャは思わず首を傾げる。

 その途端、古竜エンシェントドラゴンは、鎌首を持ち上げて、大きくそのあぎとを開いた。

「ちょっ! ちょっとレイ、何する気よ!」

 思わず慌てるミーシャ。

 喰われるとでも思ったのだろう。兵士達は悲鳴を上げて逃げ惑う。

 それを他所よそに、竜がブンブンと首を振ると、牙の一本が抜け落ちて、岸壁の上へと転がった。

 無論、牙とは言っても、そのサイズは人一人ほどの大きさがある。

「にゃ? 虫歯かにゃ?」

 ニコが落ちた牙へと駆け寄って、指でつんつんと突いた途端、それが淡い光を放ち始めた。

「にゃにゃにゃ!?」

 彼女が慌てて飛び退くと、それは徐々に鎧をまとった骸骨へと形をかえていく。

「な、なんにゃ!?」

「うわっ……気持ち悪っ!」

 慌てるニコの背後で、アリアが自分の身を抱いて、顔をしかめた。

「レイ! なんなのよ、あれ!」

 ミーシャのその問いかけに、レイは平然と応じる。

 ――竜牙兵トゥースウォーリアだ。私の精神と完全にリンクした……まあ、分身のようなものだな。

「分身……ふーん、分身ねぇ……もうちょっとかわいい分身はないの? モフモフした感じの」

 ――無茶いうな。

「でも、そっちもレイで、こっちもレイっていうのは、ややこしいわね……じゃあ、こっちの骨の方のレイは、『レイボーン』って呼ぶことにする。骨だけに」

 ――まあ、かまわないが……。

 レイは何か言いたげに口籠くちごもると、静かに沖に向かって後退し始める。

 ――では私は行く。用があれば竜牙兵トゥースウォーリアに言ってくれればいい。私にも聞こえている。

 レイが沖の方へと消えてしばらくすると、兵士達の間を抜けて、伝令の兵士がミーシャの前にひざまずいた。

「ミーシャ姫! 王がお会いになると仰っております。どうぞこちらへ!」

「ご苦労様」

 澄ました顔をしてミーシャが歩き始めると、兵士達は慌てて道を開ける。

 そして、

 エルフ、神官、妖艶な美女、露出過多な少女、最後に骸骨。

 仮装行列と見紛みまがわんばかりの一団が、兵士達の間を通り過ぎて行った。
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