亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。

円城寺正市

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第四章 亡霊、魔王討伐を決意する。

第三十五話 もう一人いた。 #1

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 少し時間をさかのぼる。

 ミーシャとレイが丘の上を目指して、坂道を登っている頃。

 オーランジェが二人に追いついた、丁度その頃のことである。

 ドナとニコはヌーク・アモーズの北の端。大聖堂の正面扉ファサードの前へと辿り着いていた。

「うん、にゃ……っ!」

 ニコは大聖堂の重い扉をわずかに押し開けると、その狭い隙間に頭をつっこんで、グリグリと身体を扉の内側へとじ込んでいく。

「ちょ、ちょっと、そんな無理に入らなくても、今開けますから!」

 慌ててドナが扉を押し開くと、ニコは勢いのままに大聖堂の中へと飛び込んで、そのまま鳥の様に両手を広げて駆け出し始めた。

「にゃー! にゃー! にゃー!」

「ま、待ってください! ニコ殿!」

 扉の内側、大祭壇の前にひざまずいて祈りを捧げていた神官たちが、一斉にニコの方へと目を向ける。

 だが、騒がしいと、彼女をとがめるものは誰もいない。

 むしろ微笑ましげに、彼女の走っていく姿を、目を細めて追っていた。

「あらあらぁ、ニコちゃん帰って来たのねぇ」

「うん! おばちゃん! ただいまっ!」

 祭壇のすぐ脇にいた中年女性とニコの通りすがりのやり取り、それを目にして、ドナは盛大に顔を引きらせる。

 ニコが今、おばちゃん呼ばわりしたのは、教会の序列第三位、エンリケ司教。

 ドナにしてみれば、雲の上の存在だ。

 ひーーーーっ!?

 内心、悲鳴を上げながら、ドナは小走りでニコの後を追う。

 だが、ニコはドナのことなど気に留める様子も無く、祭壇脇の扉を乱暴に開いて中へと飛び込むと、その奥の階段を駆け上がり始める。

 二階、三階、四階。

 そして、最上階の大司教の居室フロアまで昇り切ると、スタッと着地する様なポーズを決めて、息絶え絶えに後をついてくるドナを振り返った。

「にゃー、ドナちん遅いよー!」

「ド、ドナちん?」

 我々は、いつの間にそんなに親しくなったのかと、戸惑うドナの手を掴んで、ニコはそのまま大司教の居室へと突っ込んでいく。

「ちょ、ちょっと、ま、待ってください。そこ大司教猊下げいかの!」

 慌てるドナを気に掛けもせずに、「にゃはは!」とバカっぽい笑い声を上げながら、ニコは扉を蹴り開けた。

「たっだいまーーーーーー!」

 部屋の奥にはマホガニーの執務机。その向こう側にいた人物が手元から顔を上げる。

 白い円形帽カロッタを被った黒髪の女性。年齢はドナより少し上で、細い顎と銀縁の眼鏡が怜悧れいりな印象を与えている。

 彼女は一瞬、目を大きく見開いた後、柔和な微笑みを浮かべる。

 そして、静かに席を立って両手を広げると、飛びついてくるニコを、

「扉を足蹴にするんじゃありません!!」

「にゃぎょ!!」

 ぐーで叩き落とした。

 ひーーーーーーーっ!?

 めり込む勢いで地面に叩きつけられたニコを目にして、ドナが声にならない悲鳴を上げた。

「まったくもう、ニコったら、居なくなるのも帰ってくるのも唐突なんですから!」

「い、痛い。ライトナちん……めっちゃ痛いにゃ……」

「痛くしましたもの!」

 腕組みして、涙目のニコを見下ろす、大司教ライトナ。

 彼女は、ニコの背後で硬直しているドナに気付くと、小さく首を傾げた。

「誰でしたっけ、あなた?」

「あ、え、はい、も、も、も、申し訳ございません。侍祭じさいのドナ・バロットです。ハノーダー砦より帰着のご報告に伺いました」

「ドナ・バロット……?」

 ライトナは、不思議なものを見る様な顔をした。
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