亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。

円城寺正市

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第四章 亡霊、魔王討伐を決意する。

第四十一話 ダークエルフはやっぱり口が悪い #1

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「九つ。これで終わりだ」

 レイボーンは抑揚よくようの無い声でそうつぶやくと、襲い掛かってくる牙を跳躍してかわし、蛇の頭上に槍を突き立てる。

 そのまま体重を乗せて、脳天から顎の下へと槍を突き通すと、九つ目の頭を潰されたヒドラは完全に息絶えた。

 城壁に力なくもたれ掛かった巨体が、ズルズルと滑り落ちていくのを目にして、周囲の兵士達がワッ! と歓声を上げる。

 だが、レイボーンはそれを気に留める様子も無く、すぐ傍で乱れた息を整えている少年兵の腰から、勝手に剣を引き抜いた。

「借りる」

「え、あ、ぇ?」

 彼は戸惑う少年兵を置き去りにして、城壁の中央に向かって走り始める。

 残りのヒドラはあと二体。

 幾つかの頭が垂れ下がっているのを見る限り、兵士達はそれなりに奮戦していると言って良いだろう。

 だがあくまで、ヒドラとの戦闘は戦場の一局面でしかない。

 未だに城門を叩く音は途切れていない。

 いや、むしろ竜巻から逃れようと、前線にかかる魔物達の圧力は大きくなっている様にさえ思える。

 レイボーンは走りながら、町の方へと目を向ける。

 城門から続く大通りに、兵士や神官たちが隊列を組んで待ち受けているのが見えた。

 続々と集結しているところを見ると、城門が破られるのも時間の問題。そういう事なのだろう。

 レイボーンが城壁の中央に辿り着くと、今まさに、ヒドラが倒れ込んだ兵士へと喰いつこうとしているところだった。

 彼は走ってきた勢いのままに、兵士を追って伸び切ったヒドラの首に斬りかかる。

 左腕一本。刀身に気をみなぎらせて、逆手に握った剣を、下から上へと一気に跳ね上げる。

 ぐぎゃあああああああ!

 首の一つが城壁の上に落ちて跳ねると、ヒドラは残りの首を激しく振り回しながら、ずるずると音を立てて後退あとずさり始めた。

「さっきの奴に比べれば、根性が足りない」

 再び襲い掛かってくる様子もなく、ズルズルと後退していくヒドラを眺めて、レイボーンが独り言ちる。

 だがその途端、彼のいる場所、その真下から、メリメリと何かがへし折れる不吉な音がした。

「マズいな……」

 恐らく今のは、城門のかんぬき。その横木がへし折れる音だ。

 その証拠に後退あとずさっていくヒドラの脇を、ミノタウロスやオーガといった比較的大型の魔物達が、勢いを増して城門の方へと殺到し始めている。

 ちらりと残りのヒドラの方へと目をむけると、兵士達が必死に抗っているのが見えた。

「あっちは、もう少しつか……」

 レイは一つ頷くと、助走距離をとって、城壁の上からその内側、大通りの方へと身を躍らせる。

 宙を舞う骸骨。

 そして、例によって例の如く、地面に叩きつけられた骸骨は、ガシャン! と身体の各パーツを飛び散らせた。

「な、なんだ!?」

 突然、空から落ちてきた骸骨に、隊列を組む兵士や神官達が目を丸くする。

 その目の前で、次第に骨の各パーツが寄り集まって、すっくと骸骨が立ち上がった。

「ス、スケルトン!? 魔物が入り込んだぞ!」

 慌てて身構える兵士達を見据えて、レイボーンは声を張り上げる。

「私は敵ではない」

「スケルトンが……喋った!?」

 戸惑いながら顔を見合わせる兵士達、それをレイボーンは、がらんどうの眼で見回して、更に言葉をつむぐ。

「門が破られたら、私が魔物を城壁の外に押し返す。キミたちは、すぐに門を閉じて、かんぬきに代りの横木を差し込め! いいな!」

 呆然とする兵士や神官達の中で、壮年の司祭が頷く。

「わ、わかった。だが、キミは一体……」

「来るぞ!」

 司祭の言葉をレイボーンがさえぎった途端、半ばまで折れていた横木が勢いよく弾け飛んで、城門が開いた。

 ぐぉおおおおおおおおおおお!

 まさに怒涛の勢い。

 せきを切ったつつみの如くに、魔物の群れが突進してくる。

 先頭は牛頭の魔物、ミノタウロスの群れ。

「ひっ!」と女神官達が息を呑んで、恐怖をこらえる様に男達が唸る。

 それを背中に聞きながら、レイボーンは向かってくる魔物達の前へと身を晒す。

 そして次の瞬間、彼のがらんどうの頭蓋骨の内側で、蒼い炎が渦を巻いた。

 レイボーンがその口を大きく開いた途端、蒼い炎が勢いよく噴き出して、殺到する魔物の群れを呑み込んだ。

 瞬時に消し飛ぶ、直線上の魔獣の群れ。

「えぇぇ…………」

 背後からは、どこか魂の抜けたような声が聞こえてくる。

 だが、そんな事に構っている場合ではない。

 というか、うっかり振り向きでもしたら大変な事になる。

 レイボーンは炎を勢いよく噴き出しながら、一歩一歩、前進し始めた。
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