お前らなんか好きになるわけないだろう

藍生らぱん

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第一章 賽は投げられた

009 もう一人の運命の番

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入学式の翌日から学園は通常日程となる。

平坂伊吹と土方樹生は仲良く手を繋いで校舎へ向かって歩いていた。
きちんと制服を着ている伊吹に対して、樹生は制服のジャケットの代わりにフード付のブカブカのトレーナーを着込んで、目深にフードを被っている。

「あの・・・」

背後から遠慮がちに二人に声を掛ける生徒がいた。
二人が立ち止まって振り返ると、そこには背が高くてガッチリした男らしい風貌の男子生徒がいた。
伊吹はニッコリと愛くるしい笑顔を男子生徒に向けた。
「おはようございます?」
「お、おはよう、ございます。」
「・・・」
「何か、僕達に用ですか? 僕の運命の番さん。」
視線が合っても平然と男子生徒を見つめる伊吹に対し、男子生徒-秋月大雅は苦しげに言った。
「俺は・・・認めない、から・・・君が俺の運命だなんて、絶対に認めない。」
「態々それを言いに?」
平然とした姿勢を崩さない伊吹に秋月は苛立った。
「君はっ、平気なの?」
「そうですね。平気でいられることに、自分でもビックリです。」
ふふっ、と伊吹は微笑んだ。
「ありがとうございます。」
「は?」
「お陰で兄の仮説を証明する一助になれました。」
「仮説?」
「あ、詳しい内容は言えません。変なこと言ってスミマセン。」
「はぁ・・・」
「じゃあ、お互いに、これからも赤の他人、ということで。」
「えっ?」
伊吹は樹生と共に秋月にペコリと頭を下げて足早に去って行った。
その後ろ姿を見つめながら、秋月は呆然と立ち尽くしていた。


★★秋月視点★★

運命を拒絶すると決めて、決死の覚悟で声を掛けた。
それなのに、あまりの呆気なさに笑いがこみ上げる。

「ふふっ」

心から笑ったのは何年ぶりだろう。
「きれい、だったな・・・」
いっちゃんに似ている子が運命だった。
いっちゃんと同じ空色の瞳がとても綺麗だった。
けれど、『いっちゃん』じゃない運命は要らない。
向こうも俺という運命を求めていなかったのが幸いだった。

それにしても・・・

あの子の平然とした態度と言葉が引っ掛かる。
まるで最初から「運命の番」が誰か判った上で、何かしらの対策をしていたとしか思えない。

運命に抗う方法があるのだろうか?



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